研究開発活動

5【研究開発活動】

当社グループは、「私たちは、素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになります」というビジョンを掲げています。「素材+サイエンス」として、自社保有のコア技術のさらなる進化に加え、積極的なオープンイノベーションの考え方の下、新製品の拡大、新事業の創出に注力しました。

当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究部門と、中長期的視点から次代を担う新製品・新技術を開発する全社共通のコーポレート研究部門とに大別されます。これらの研究開発のマネジメントは研究開発委員会方針のもとイノベーション戦略部が担当し、各部門相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しました。

 

(フィルム・機能マテリアル)

包装用フィルム分野において、環境対応商品の拡販が進みました。薄肉化(プラ減量化)では高強度な熱収縮性ポリエステルフィルム“スペースクリーン”及び高耐熱高剛性ポリプロピレンフィルムの用途が拡大しました。またバイオマス原料を使用した“バイオプラーナ”として、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、シーラントの各該当製品の採用が進みました。更にリサイクル原料を使用したポリエステルフィルム“サイクルクリーン”も順調に採用が増えました。新規開発の一つとして、食品や化粧品などの外装ラベル向けに、レーザー印字対応フィルム“レザイア”を開発し、サンプル提供を開始しました。顧客要望に応じた用途開発にも取り組んでいきます。

工業フィルムでは環境に配慮したリサイクル原料を使用したフィルム製品“クリスパー”、“カミシャイン”、“リシャイン”の開発・改良、販売促進に加え、環境負荷の少ないリサイクルシステムの開発も積極的に進めています。さらに電子情報通信分野、自動車分野で拡大しているセラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”においても、薄層化、リサイクルによる環境対応に注力しています。また、液晶ディスプレイに最適な超複屈折フィルム“コスモシャインSRF”も、薄層化対応の新製品の開発を積極的に進めています。また、力学的・熱的特性に優れたポリエチレンナフタレートフィルム“テオネックス”の開発を進め、エネルギー分野に貢献する商品としていきます。

重金属を含まず環境に優しいポリエステル重合触媒“TOYOBO GS Catalyst”については、その優れたリサイクル性を活かし、用途展開が進み循環型経済に貢献しています。GS触媒ライセンス事業についても海外大手PETメーカーにおける商業生産が拡大しています。また、環境に配慮したバイオ由来の優れたバリア性の樹脂開発や植物由来原料を100%使用したバイオPET樹脂の重合にも成功し、プラスチックとの共生社会を目指し、再生可能な素材へのシフトを加速しています。

高機能共重合ポリエステル樹脂“バイロン”、高耐熱共重合ポリアミドイミド樹脂“バイロマックス”、変性ポリオレフィン樹脂“ハードレン”は、電気電子、自動車内外装の塗料、リチウムイオンバッテリー用包材接着用途等で開発を進めています。“バイロン”では通信、電子製品分野の接着用途で次世代高速通信に対応する高周波でも伝送損失が少ない低誘電性接着剤を新たにラインナップし、“バイロマックス”は、高耐熱と高耐久性が評価され、スマートフォン周辺デバイスでさらに拡大を続けています。“ハードレン”は接着が難しいポリオレフィン用の接着付与剤として、国内外の自動車外装プラスチック塗料用途での展開を強化し、リチウムイオンバッテリー用の包材接着剤としても拡大を続けています。“バイロン”、“ハードレン”共に、北米、欧州、中国での環境問題から、自己架橋型、水性化、ホットメルト化、低温養生をキーワードに取り組みを強化しています。

以上、当事業に係る研究開発費は55億円です。

 

(モビリティ)

エンジニアリングプラスチック分野では、自動車産業における100年に一度の変革期の流れで、CASE、MaaSのキーワードに乗った、自動車の電動化、電気電子部品の増加に向け、特長を有する材料の開発を進めています。具体的なニーズとして、熱伝導、電磁波シールド、低誘電率、高熱伝導、高CTI、防音機能が、実現するシーズとして、カウンタープレッシャー発泡、有機無機複合材料の組合せ、新規ポリマー重合等により新商品提案を実現しています。さらに、環境負荷低減としてカーボンニュートラルを進める材料が、新たな切り口での採用も検討されています。これらの材料開発だけでなく、コンピューターによる解析技術(CAE解析(Computer Aided Engineering)、DX(Digital transformation)、MI(Materials Informatics))の導入によるメリットも享受し、お客様へのトータルソリューションの提案を続けています。

エアバッグ事業分野ではグローバルでの生産販売体制の拡大を継続的に進めています。特にタイでの原糸新工場の建設をインドラマ・ベンチャーズと実施中で来年から本格生産の予定です。原糸から基布に至る体制強化と新商品を含めた品揃えをグローバルで展開しています。

以上、当事業に係る研究開発費は12億円です。

 

 

(生活・環境)

スーパー繊維“イザナス”は、浮体式洋上風力発電設備などの長期係留索用途を目指した高耐クリープ性を有する原糸の開発を進め、スケールアップに向けた生産技術開発を検討しています。“ツヌーガ”は、用途拡大を目指して多色糸の研究開発を進めています。

エステル短繊維や三次元スプリング構造体“ブレスエアー”及びスパンボンドは、環境に配慮した製品づくりへの取り組みを行い、環境負荷低減に貢献できる商品開発を進めています。

フィルター材料においては、主力製品である静電フィルター“エリトロン”をベースに高機能、高耐久化を図っています。更に、環境対応の製品開発も進めています。

水処理膜では、中空糸RO、FO膜の開発とモジュールの高性能化、ならびに省エネ海水淡水化や浸透圧発電、BC濃縮技術を用いた排水処理などの応用研究を進め、実用化に進んでいます。

また、VOC排気ガス処理分野では市場ニーズに対応した溶剤回収装置の処理量増大や省エネ化によるCO2削減技術の開発を進めました。

繊維では、高密度ニット生地“スクラムテック”を開発。独自の特殊高捲縮糸と高弾性糸を組み合わせて高密度に編み上げることで高いストレッチ性を獲得し、優れた保形性も備えました。従来の布帛やニットとは一線を画す緻密な素材感の生地で、スポーツウェア用途のみならず、シャツ・ジャケット・セットアップなど幅広い用途で好評を得ました。

フィルム状導電素材“COCOMI”では、心拍計測用サイクリングシャツの販売を一般消費者向けに開始しました。また畜産用心拍計測ベルトなどのアニマル関連分野への検討、スマートテキスタイルのヘルスケア関連分野への検討に加え、高精度心拍計測により導きだされる自律神経活動指標マップ“ANAIM”、心拍と呼吸の同時計測技術の利用による理想呼吸誘導システム“BREASsist”など、生体情報を利用したサービスの提案、検討を始めました。

工業材料分野では、省エネ・安全資材として遮熱シートおよび防炎シートの用途開発および拡販を行いました。またマスク分野では医療グレード不織布マスクを厚生労働省向けに納品しました。

機能資材分野では、海外拠点と連携したアルコール消毒綿・特殊防護服など、環境衛生や生活分野の製品を上市し拡販しました。

以上、当事業に係る研究開発費は18億円です。

 

(ライフサイエンス)

診断原料分野では、富山大学との共同研究でSARS-CoV-2に対する抗体の開発に成功し販売を開始しました。診断システムでは、全社共通部門であるコーポレート研究所の協力を得て、SARS-CoV-2抗原検査の診断薬の開発に成功し、販売を開始しました。研究試薬では、理化学研究所との共同研究で1細胞からのmRNAで遺伝子発現解析が可能な逆転写システムの開発に成功し、販売を開始しました。

医療機器分野では、米国の薬事承認である510(k)を取得していた神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”が2021年10月に米国市場へ本格展開を開始しました。また、骨再生誘導材である“ボナーク”は2022年度上市に向け、販売準備を進めています。

人工腎臓用中空糸膜では、透析患者の負担を低減しつつ老廃物を効率よく除去できる製品の開発を進めました。また、製薬の精製工程で用いられるプロセス用中空糸膜の開発に取り組みました。

以上、当事業に係る研究開発費は16億円です。

 

 

(全社共通)

イノベーション部門においては、全社成長戦略(ソリューション志向)に基づいた価値提供領域及び大型テーマの設定と加速を進めました。

全社共通の研究開発組織であるコーポレート研究所は、当社グループの将来を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務、コンピューターシミュレーションなどデジタル技術を用いた解析業務を通じて、研究開発全般を支援する全社研究インフラとしての機能も有しています。また、昨年度、総合研究所長直下に設置したDX推進室の活動においては、MI(Materials Informatics)技術の展開を所内全域に広め、一部の研究所、技術センターにおいては研究員が自走できるような体制を整えるに至っています。

具体的な研究開発内容として、コーポレート研究所、リニューアブル・リソース事業開発部、フイルム・機能マテリアルソリューション本部は、サントリーグループと米国バイオ化学ベンチャー企業・アネロテック社が共同開発した、植物由来原料を100%使用したペットボトルの試作にあたり、原料となる100%バイオPET樹脂の重合に成功するなど、当社使用原料のサステナブル化に向けて検討を続けています。

加えて、ライフサイエンスソリューション本部と共同で、コーポレート研究所が基礎検討を行っていたイムノクロマト技術をSARS-CoV-2抗原検査に適用展開し、診断薬の早期開発に寄与しました。

新規事業企画・開発においては、引き続き、オープンイノベーションの考え方の下、ナショナルプロジェクトへの参画や国内外の企業、大学、研究機関との連携を積極的に進めています。

例えば、有機光ダイオードにおいては、フランス政府系研究機関のCommissariat à l'énergie atomique et aux énergies alternativesとの共同研究により、世界トップクラスの高感度モジュールの試作に成功しました。

また、スタートアップ企業への投資活動拡大のために、材料メーカー4社とともにJMTC ケミカル&マテリアルズファンドを立ち上げて、事業化への道のりが長い、材料系スタートアップ企業の支援を行う一方、バイオベンチャー企業のDMC Biotechnologies Inc.(米国)に出資を行いました。そのほかにも数社のベンチャー企業への出資、共同研究なども順次立ち上がっています。

以上、全社共通のコーポレート研究に係る研究開発費は37億円です。

 

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