事業等のリスク

2【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは以下のとおりです。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。

なお、記載内容のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループは、2021年4月1日に、グループ全体のリスクを一元的に管理することを目的として、社長執行役員を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しました。本委員会は、統括執行役員会議メンバーおよび委員長が指名したメンバーで構成され、設置初年度である2021年度は4回開催しました。

本委員会では、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)を統括する他、グループ全体のリスク管理に関する方針を策定し、実効的かつ持続的な組織・仕組みの構築と運用を目指すことにより、リスク管理体制の強化に努めています。

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当社グループでは、事業を通じて社会課題の解決に貢献し、従業員が誇りとやりがいをもって働き続けられる会社、持続的に成長できるサステナブルな会社をめざし、2025中期経営計画を策定しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2025中期経営計画では2022年度をスタートとし、当社グループが特に重視する経営指標の目標を示しています。これらの目標については、策定時に当社グループが入手可能な情報に基づいて策定したものですが、新型コロナウイルス感染症の流行が繰り返され、さらにウクライナ情勢が見通せないなか、原燃料価格の高騰、為替の動向など事業環境の不透明感は強まっています。加えて、以下の(1)から(16)のリスクもしくは以下に記載したリスク以外のリスクが顕在化し直接的または間接的に影響を受けるなど外部環境が変化した場合、種々の対策を講じているもののそれらの対策が有効に機能しない場合や想定以上の事態が生じた場合などには、2025中期経営計画で定めた目標が達成できない可能性があるとともに、当社グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

<既発生もしくは発生の蓋然性の高いリスク>

(1)災害・事故・感染症の発生

当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、事故防止のため、それぞれの工場ほか各事業所で老朽設備の更新や設備管理の充実をはかるとともに、事故を想定した訓練やオペレータ教育を推進するなど、可能な限りその発生を未然に防ぐように努めています。しかしながら、それらの工場ほかで大規模な地震、風水害、雪害などの自然災害や火災等の事故および新型コロナウイルスや新型インフルエンザなどの感染症が発生した場合、あるいは取引先において同様の災害被害等が発生した場合には、当社グループの生産活動ほかに著しい支障が生じるなど、事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

2020年9月の当社犬山工場における火災事故を踏まえ、当社グループでは、安全・ 防災に関する体制・教育などの見直しを実施しました。2020年12月には、傘下に「保安防災部」と「労働安全部」を持つ社長直轄の「安全・保安防災推進本部」を新設しました。その後、環境関連リスクの重要性が増したことにより2022年4月に「安全防災部」と「環境管理部」を傘下にもつ「安全防災本部」に改編しました。同組織が中心となって安全・保安防災のPDCAを回しています。2021年1月より第3者の視点を入れた防災管理プロジェクトを始動し、火災・爆発リスク低減活動を強化しました。また、「事業部門」「管理部門」「監査部門」が、それぞれの責任を踏まえたリスク低減活動を行う「スリーラインディフェンス」の考え方に基づいた体制を構築し、安全・保安防災リスクの低減に努めています。事業部門では、SMSやEMSに基づく防災総点検、現場総点検を実施、管理部門では、工場、管理プロジェクトでリスクを抽出し、「リスクマップ」に反映します。リスクマネジメント委員会では、リスクマップに基づき、安全防災本部とともに全社レベルでリスク低減を推進します。また取締役会などに、リスク低減のための各種施策を提言します。

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新型コロナウイルス感染症再拡大の波が繰り返されるなか、当社グループにおいては、特に衣料繊維事業などが影響を受けています。一方、新型コロナウイルスによる感染が沈静化した後もPCR検査需要に応じて、引き続き、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などの提供に尽力していきます。

 

 

(2)政治・経済情勢のさらなる悪化

当社グループは、フィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンスなどの各種製品を、国内外の各地で生産し、国内外の様々な市場で販売しています。このため、当社グループの当該生産拠点や主要市場において、政治的混乱や深刻な景気後退などが生じた場合には、当社グループの生産や販売が縮小するとともに、それらの事象による影響が長期にわたって続くことが予想される場合には、固定資産の減損損失の計上や繰延税金資産の取崩が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、販売に際し、与信取引を行っています。そのため、取引先の信用悪化や経営破綻などによる損失が発生する与信リスクを負っています。当社グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、過去の貸倒実績率等に基づき、貸倒引当金を計上しています。しかしながら、景気後退などにより重要な取引先が破綻した場合には、貸倒引当金を大幅に超える貸倒損失が発生するなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。そのため、与信管理制度のもと、取引先別に限度額を設定し、主な取引先の信用状況を決算期ごとに把握するなど、与信リスクをミニマイズするための対応策をとっています。

当社グループでは、中国において、新型コロナウイルスの流行を受けた移動制限の広がりにより中国経済の景気が減速することを懸念しています。当社グループは、中国向け輸出および中国国内での売上高は連結売上高の約10%を占めています。そのため、中国国内の景気が悪化した場合には、アクリル繊維事業やエンジニアリングプラスチック事業などの販売への影響が懸念されることから、サプライチェーンの見直しや他用途展開などの対策を図っています。

また、当社は、ウクライナを取り巻く状況を深く憂慮しています。当社グループにおいて、当連結会計年度におけるロシア、ウクライナとの取引金額は僅少で、直接的な影響は軽微です。しかし、ロシア・ウクライナ情勢に起因して、原燃料価格の高騰が生じており、最適な調達方法を探索するなど、必要な対策を進めていきます。

 

(3)第三者認証登録内容における不適切行為等

当社は、米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(以下「UL」といいます)によって認証を受けているエンジニアリングプラスチック製品の一部の品番について、認証に関する確認試験時に、顧客に販売している製品と異なる組成のサンプルを提出していたことや、UL認証を取得している製品を製造する登録を受けていない工場で製造を行っていること等(以下「本件不適切行為」といいます)を確認しました。本件不適切行為についてULに報告等を行った結果、2020年10月28日付でUL認証を取り消された1製品に加えて、3製品について2021年2月3日付にてUL認証登録を取り消され、他の3製品の一部品番(以下、本件不適切行為のあった製品を「本件不適合製品」と総称します)について当社よりUL認証登録の取消しを申し入れた結果、2021年3月26日付にて取り消されました。これまで本件不適合製品を使用した最終製品に関して事故等の報告は受けていません。

また、本件に関連し、ISO(国際標準化機構)の登録認証機関であるロイドレジスタークオリティアシュアランスリミテッドによる特別審査を受けた結果、2021年1月28日付で、当社が取得しているISO9001認証のうち、本件不適合製品を担当する部門に関わる認証範囲について認証を取り消されるとともに、当該ISO9001認証範囲に含まれる形でマルチサイト認証(統一認証)を取得している部門の認証範囲について認証を一時停止されましたが、一時停止されていた認証範囲については、2021年6月9日付にて一時停止は解除されました。

当社は、度重なる不適切な事案を重く受け止め、既に実施した第三者による調査等も踏まえて、実効性のある再発防止策を策定し、確実に実施してまいります。再発防止策の一つとして、2021年4月1日付で新たに品質保証本部を設置しました。これまで各事業部門(ソリューション本部)にあった品質保証統括部および品質保証部を、品質保証本部に統合することで品質保証部門の独立性を担保し、事業部門に対する牽制機能の強化を図りました。また、当社は、2022年3月17日付「品質に関する不適切な事案の類似案件調査に関するご報告」にて公表したとおり、2021年2月から同年3月にかけて無記名式で、2021年7月から2022年1月にかけては記名式で品質に関する不適切な事案の有無を調査する目的のアンケートを国内外の当社グループ役員、社員(契約社員や派遣社員を含む)を対象に実施しました。有価証券報告書提出日現在において、品質に関する重大な不適切事案は確認されていません。引き続き、適切な品質管理体制の再構築やガバナンスの向上に取り組むことにより、信頼の回復に全力で努めます。

今後、本件不適切行為に係る信用低下による受注の減少やお客様等への補償費用を始めとする損失の発生等が生じた場合には、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<中長期的なリスク>

(4)原材料の購入

当社グループは、フィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンス分野における各種製品を生産するため、様々な取引先から原材料を購入しています。主要な原材料として、主に石油化学製品であるポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン樹脂などがあります。これらの原材料はリスク管理の観点からも可能なかぎり複数の取引先からの購入を行っていますが、自然災害、疾病、ストライキ、輸送上の問題、取引先の破たんや事業撤退、縮小や事故などが発生した場合、必要量の原材料を確保できない可能性があります。また、新型コロナウイルス変異株の感染拡大の影響やロシア・ウクライナ情勢に起因して、サプライチェーンの混乱や原材料の確保が難しくなり、当社グループの生産、販売へ影響を及ぼす可能性があります。また、都市封鎖や外出制限が実施された際には、物流網も混乱し、必要な原材料調達に支障をきたす可能性もあります。さらに、原材料の確保ができた場合でも、原油価格の上昇や当該原材料の需給バランスなどにより、購入価格が高騰する可能性もあります。そのような場合には、当社グループで生産縮小やコスト上昇が生じる可能性があります。

当社グループでは、適正な取引方針を確立し、持続可能な社会の発展を支える責任ある調達・物流を行っています。法令遵守、公正な取引、人権尊重、環境配慮など、サプライチェーンの中でSDGsを達成していくために、「CSR調達ガイドライン」に基づく調達・物流の実現を目指しています。

 

(5)製品の欠陥等

当社グループは、所定の品質保証を行いながら製品の欠陥などの発生リスクを未然に防止し、フィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンスなどに関する各種製品を生産しています。しかしながら、全ての製品に欠陥がなく、将来的に不良品が発生しないという保証はありません。特に、エアバッグ用基布などの自動車の安全に係わる製品や医薬品製造受託事業などで何らかの原因で製品の安全性や品質に懸念が生じた場合には、お客様の生命にかかわるとともに、製品回収等により、お客様ならびに関係先に対する補償につながる可能性があります。当社グループは、製造物責任賠償保険に加入していますが、最終的に負担する損害額を保険でカバーできるとも限りません。このため、重大な製品の欠陥などが発生した場合には、多額の損害賠償の支払いや当社グループの信用失墜が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、常設委員会としてPL(Product Liability:製造物責任)およびQA(Quality Assurance:品質保証)を統括する「PL/QA委員会」を設けています。本委員会は、品質保証本部の統括役員を委員長とし、各事業の責任者、スタッフ部門責任者(役員)で構成され、定例委員会を原則として年2回、部長クラスを推進委員とした推進委員会を年6回開催しています。2021年度は計8回開催しました。

また、事業推進から独立した品質保証本部および他部門の品質保証担当者によるPL/QAアセスメントを実施し、各部門、グループ会社のPS(Product Safety:製品安全)活動を確認、改善しています。さらに、PSとPLのリスク度合いを判定する基準を設け、この基準に基づき、製品開発から販売までの各段階で審査を行い、リスクに事前に対応することで、お客さま等に掛かるリスクの低減に努めています。

 

(6)人材の確保

当社グループでは、人材を最も重要な経営の源と考えています。多様な個性や意見を持つ従業員一人ひとりの成長をサポートし、社内で活躍・キャリアアップできる環境を整えることで、グループ全体の存続・発展が可能になると考えています。一方、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や雇用情勢の変化などで、高度な専門性を有した人材や将来の幹部になりうるリーダーシップを兼ね備えた人材を確保、育成できない場合は、組織の競争力が低下し、事業活動が停滞するなどの可能性があります。

当社グループでは、成長戦略実現への寄与を目指し、次世代経営人材の育成に力を入れています。併せて、人材の多様性を活かすことを主眼に、キャリア採用者の教育や女性活躍推進活動にも積極的に取り組んでいます。

また、当連結会計年度は新型コロナウイルス感染症の影響で開催出来ていませんが、例年はグローバル対応として、海外事業所の選抜人材を対象とした「ナショナルスタッフ研修」や日本から海外事業所で研修を行う「短期海外業務研修」を企画し、働き方・キャリア・性別・国籍・人種・信条の異なる人たちが互いに認め合い、価値創造を実現するための組織力の向上を目指しています。

 

 

(7)気候変動

地球温暖化に伴う気候変動の影響が、台風や集中豪雨といった自然災害の増加や亜熱帯化による自然生態系の変化といった形で顕在化し、社会にも多大な影響を及ぼしつつあります(物理リスク)。一方、移行リスクとして、温室効果ガス排出に対する規制強化や炭素税導入などにより、原材料価格の上昇や化石燃料の使用が難しくなることなどが想定されます。当社グループは2020年1月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)提言に賛同し、気候変動が当社グループ事業に及ぼすリスクと機会に関する分析を開始しました。今回は主力事業であり、気候変動影響が比較的大きいことが想定される「フィルム事業」を対象として、2つのシナリオに基づき、気候変動が事業に及ぼす影響を分析し、その対応策を検討しました。

産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオ(主として移行リスク)においては、脱炭素社会への移行に伴う社会変化(例えば、炭素税の導入とそれに伴う原材料価格上昇、再生可能エネルギーの拡大など)が、事業に影響を及ぼす可能性があります。その対応として、製造プロセスの合理化検討や再生エネルギーへの切り替え、CO2フリー燃料(水素やアンモニア等)の導入検討に着手します。

産業革命前からの気温上昇が+4℃となるシナリオ(主として物理リスク)においては、風水害の激甚化による生産設備の損壊や原材料の供給停止などが事業に影響を及ぼす可能性があります。その対応として、BCP訓練強化や在庫水準の見直しや複数購買の検討などを進めます。一方、顧客の低炭素貢献製品への要求の高まりに、当社の技術・製品が対応することなどにより、新たな事業成長機会を獲得できる可能性があると分析しています。

当社グループでは、地球温暖化・気候変動が当社事業に及ぼす影響をリスク・機会の両面から認識し、2030年度は温室効果ガスの排出量を46%削減(Scope1,2、2013年度比)、2050年度までにネットゼロ(実質ゼロ)とする「カーボンニュートラルの実現」を目標に掲げています。事業活動における温室効果ガス排出について、当社の岩国事業所では自家火力発電所を2023年10月の運転開始を目指して更新し、燃料転換(脱石炭)と高効率設備の導入による省エネ化を進めるなど、大幅な排出量削減を進めていきます。また、カーボンニュートラルの実現に向けては、再生可能エネルギーの導入、生産プロセスの電化推進、カーボンフリー燃料(水素やアンモニアなど)への転換等を進め、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)や森林吸収により、2050年度までにネットゼロを目指します。また、製品の軽量化や原材料の見直し、グリーン物流の推進などによりバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量削減に取り組むとともに、当社グループ独自の製品・技術によるソリューションを通じた温室効果ガスの削減貢献量拡大を進めています。具体的には、海水淡水化プラントの省エネ化に貢献するRO中空糸膜の開発や、自動車の燃費向上に貢献するエンジニアリングプラスチックの軽量化、風力発電や浸透圧発電に用いられるフィルムやFO膜などの提供、室内光で世界最高クラスの高発電効率を誇る有機薄膜太陽電池セルの開発、二酸化炭素を分離・回収するカーボンリサイクルの技術開発などを進めていきます。

2021年4月には、カーボンニュートラルの実現に向けた戦略の策定と推進を目的として、「カーボンニュートラル戦略検討会議」および「カーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチーム」を設置しました。統括執行役員をメンバーとするカーボンニュートラル戦略検討会議は、全社一丸となってカーボンニュートラルの実現に着実に取り組んでいくための戦略とマイルストーンを策定します。全社横断的なメンバーで構成されるカーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチームは、2021年度の活動として、温室効果ガスの排出削減シナリオを策定しました。今後、このシナリオに則り、対応を進めていきます。また、製品毎の温室効果ガス排出量の算定にも着手しています。加えて、長期的な視点でイノベーションの促進、アライアンスの推進、研究開発の加速、新たなソリューションビジネスの創出など、実質的な施策にも取り組んでいきます。

当社は、2022年4月1日から二酸化炭素の排出量を自社の基準で仮想的に費用換算し、設備投資判断の参考とする「インターナルカーボンプライシング制度」を導入しました。今後、同制度を投資判断の基準の一つとして活用していくことで、低炭素・脱炭素設備・省エネ投資はもとより削減貢献量の拡大等を目的とした開発設備への投資など、二酸化炭素の排出量削減に貢献する投資を加速していきます。

 

 

(8)環境負荷

近年、海洋プラスチックごみによる海洋汚染問題は、グローバルな共通課題となっており、ポリマー(プラスチック)を基幹素材として幅広く事業展開する当社グループにとって、プラスチックごみ問題は重要な課題と認識しています。今後、グローバルに廃棄プラスチックに関する規制が強化されることで、プラスチック製品の需要が減退し、当社グループの売上が減少するなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、環境負荷を低減する製品・技術を積極的に展開してきました。主力のプラスチック製品では、リサイクル樹脂やバイオマス(植物由来)原料の使用比率の向上、高い機能性を保持するバイオマスプラスチックの実用化に取り組んでいます。

また、当社グループはさまざまな企業や団体と協力し、循環型経済の時代にふさわしいプラスチックバリューチェーンの構築に貢献するため、各種イニシアチブに積極的に参画しています。2019年8月に欧州のコンソーシアムCEFLEX(Circular Economy for Flexible Packaging)に参加しました。回収システムやレギュレーションなどに関する情報・動向を把握しながら技術や製品の開発・提供に注力していきます。また、海洋プラスチックごみの削減に向けて日本で2019年に設立されたCLOMA(Clean Ocean Material Alliance)にも当初から参加しています。同団体に参加する容器包装などの素材製造事業者や加工事業者、利用事業者と連携しながら、代替素材の開発・普及などに取り組んでいきます。その他、日本バイオプラスチック協会、Petcore Europeなどにも参画しています。

 

(9)情報セキュリティ

当社グループは、事業の遂行に関連して顧客情報や機密情報など多くの重要情報を管理しています。これらの情報についてセキュリティ対策を講じていますが、自然災害等による通信障害、システムへの不正アクセスやサイバー攻撃を受けた場合、従業員の過誤など、システムの障害に伴う事業活動の停止、顧客情報や機密情報等の漏洩、詐欺被害などにより、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「情報セキュリティポリシー」を策定するとともに各種規程を整備し、全情報資産の適切な管理・活用に努めています。

また、「サイバーセキュリティ委員会」を設置し、技術的・専門的な対策のみならず、従業員の意識レベル向上や社内専門家の育成などを進めています。今後、事故時の対応力強化などを推進していきます。

 

(10)法規制およびコンプライアンス

当社グループは、事業を展開する各国において、製品の製造、品質、安全、環境、競争、輸出入、情報、労働、会計などに関する様々な法令等による規制を受けています。たとえば、主要な事業所で、環境関連の法規制強化や取水制限などが行われる場合、あるいは、現在使用している化学物質が使用禁止になる場合や使用濃度規制が行われる場合には、生産活動ほかの事業活動が大幅に制限され、あるいは、同規制を遵守するために、多額の設備投資や租税ほかの費用負担を余儀なくされる可能性があります。海外の主要市場国において、アンチダンピング法などの規制により、関税引き上げ、数量制限などの輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受け、当社グループの売上減少が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらに、これらの規制に対し、当社グループおよび取引先において、不遵守や違法行為が発生した場合には、当社グループの信用失墜や行政処分など多額の損害が生じる可能性があります。

また、当社グループでは、コンプライアンス活動の核として企業理念である「順理則裕」を掲げ、コンプライアンスマニュアルの推進に取り組んでいますが、国内外の法令等に抵触するなどのコンプライアンス違反が発生した場合には、当社グループの信用低下や行政処分、損害賠償責任が課されることなどにより、多額の損害が生じるおそれがあります。

当社グループでは、コンプライアンスを推進するため、具体的に様々な取組みを実施しています。例えば、「東洋紡グループ企業行動憲章」および行動規範である「東洋紡グループ社員行動基準」の解説や違反事例等をまとめたコンプライアンスマニュアルを、当社を含むグループ従業員に配付するとともに、職場にて読合わせを実施しルールの徹底に努めています。また、国内外グループ会社を含めた38社の管理者層を対象としたコンプライアンス勉強会を実施するとともに、法令違反等のトピックを掲載したケーススタディを毎月発行するなどコンプライアンス意識の向上を図っています。コンプライアンス徹底月間には、コンプライアンスアンケートを実施し、遵守状況や推進活動に関する課題の把握に努めるとともに、改善に向けた対応に取り組んでいます。

 

 

(11)海外での事業活動

当社グループは、米国をはじめ、欧州、中国、東南アジア、中南米などグローバルに事業を展開しています。そのため、世界経済全体の動向に加え、各国での予期しない法令、規制や政策等の変更、またはテロ、戦争、政変やその他の要因による社会的混乱などが生じた場合は、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、これらリスクに対しては、グループ各社での情報収集や外部コンサルタント情報等を通じて早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処ができるよう、国ごとに「危機管理マニュアル」を策定し、海外リスクマネジメント体制の整備に努めています。

また、当社グループでは、各国の税法に準拠し、適正に納税を行っており、適用される各国の移転価格税制などの国際税務リスクについても細心の注意を払っています。しかしながら、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。

 

(12)訴訟

当社グループは、当連結会計年度において重要な影響を及ぼす訴訟は提起されていません。当社グループは国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、その過程において、製造物責任、環境、労務、知的財産等に関し、当社グループに対し訴訟を提起される可能性があります。重要な訴訟を提起された場合には、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

<財務リスク>

(13)為替レートの大幅変動

当社は、海外から原材料の一部を輸入し、国内で生産した製品の一部を海外へ輸出しています。製品輸出高と原材料輸入高の差は大きくないため、中期的に見ると為替変動による業績に与える影響額は大きくないものと考えています。しかし、短期的に著しい変動があった場合は、製造リードタイムが比較的長い製品などは業績に対して影響を与える可能性があります。このようなリスクに対して、先物為替予約などによりリスクを最小限にするよう努めていますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。

また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成において円換算されるため、換算時の為替レートにより連結財務諸表に影響を及ぼします。加えて、円高が進行した場合、在外子会社等の換算差額を通じて自己資本が減少するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)金利の大幅上昇

当社グループは、事業資金を主に金融機関からの借入や社債の発行などにより調達しています。これらの有利子負債のうち、金利変動リスクに晒されている借入金の一部は、支払金利の変動リスクを回避するために、金利スワップを主としたデリバティブ取引を利用しています。また、当社グループは「有利子負債と純資産(非支配株主持分を除く)の比率(D/Eレシオ)」を重視しています。当連結会計年度末ではD/Eレシオは0.98倍となりました。

 

(15)株価の大幅下落

当社グループは、市場性のある株式を保有しており、株価変動リスクを負っています。株価が大幅に下落した場合には、その他有価証券評価差額金の減少や売却時に損失が発生する可能性があります。また、当社の企業年金においては、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しており、株価の下落は年金資産を減少させるリスクがあります。当社は、純投資目的以外の目的である投資株式について、将来の事業戦略や事業上の関係などを踏まえ、当社の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に資するかどうかを毎年、取締役会で個別に検証を行い、株式保有継続の可否判断を行っています。当連結会計年度において、当社および当社の子会社は、保有する投資有価証券の一部を売却し、65億円の売却益を計上しました。

 

(16)固定資産の減損

当社グループは、工場用土地、建物、製造設備など事業用固定資産を保有し、生産・販売活動を行っています。これらの製造設備で生産される製品は市場や技術開発等の環境変化の影響を受け、収益状況が大きく低下する可能性があります。また、土地の時価下落等により保有資産の評価額が著しく低下するリスクもあります。収益性が低下した場合や保有資産価値が大幅に低下した場合、当該資産について減損損失の計上が求められるなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

なお、当連結会計年度において、医薬品製造受託事業の事業用資産など94億円の減損損失を計上しました。

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