課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「より多くの人々が幸せに暮らせる住環境を創造し、豊かな社会作りに貢献する」という経営理念のもと、「誰もがあたり前に家を買える社会」の実現を目指し、理想の住まいづくりを通じて社会の発展に貢献していくことを経営の基本方針としております。

更に、今後展開を進める海外市場においては、「良質で安全、安価な住宅を供給して社会に貢献する」という経営方針を掲げ、「時代の変革をいち早く読み、素早く対応できる企業集団」として、常に変革に挑みながら、世界中により良い住まいを提供できるよう、更なる発展・成長を続けてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは株主資本の有効活用を目指しつつ、安定的に成長投資資金を調達できる強固な財務基盤の確保を目指すために、在庫回転率と営業利益率を重要な経営指標としており、下記の数値を目標として取り組んでおります。

目標とする経営指標

目標値

在庫回転率(分譲戸建)(注)

年2回転

営業利益率

10%以上

(注)在庫回転率:365日/土地の仕入決済~物件のお客様への引渡しまでの日数

 

また、サステナビリティ経営を推進する上での重要課題(マテリアリティ)に対しても、経営目標を設定し、計画的な取り組みを推進すべく検討しております。

 

(3)経営環境

当社グループの主要な事業である不動産事業の経営環境は以下のとおりです。

① マクロ環境

国内における人口・世帯数の減少、特に住宅の一次取得者層である生産年齢人口が減少することにより住宅市場の縮小が懸念されます。他方、長寿命化が進むことにより、住宅に求められる機能やニーズは変化していくことが予想されます。また世界全体を見ると、人口・世帯数の増加により住宅需要の拡大が見込まれる国や、市場規模が大きく安定的な需要が見込まれる国があります。

 

② 市場動向

中長期的には人口・世帯数の減少により住宅市場の縮小が懸念されますが、注文住宅市場、賃貸住宅市場、分譲マンション市場と比較すると、分譲戸建市場は安定的に推移しております。他方、優良な住宅ストック市場の拡大に伴い、今後は中古住宅市場とリフォーム市場の成長が予想されます。

 

③ 競合動向

戸建分譲業界は、中小事業者を含めた多数の競合企業が存在する業界構造です。また参入障壁が低いことから、他業界からの新規参入もあり競争環境は厳しくなっていくことが予想されます。

 

④ 当社グループの構造

当社グループは、持株会社である当社を中心に、戸建分譲事業を主業とする6つの事業会社と、機能別事業会社で構成されております。各事業会社は、グループ統一的な事業方針のもと、それぞれの自主性、独自性を尊重した事業運営を行っております。

 

⑤ 主要な製品・サービスの内容

戸建分譲事業では、「誰もがあたり前に家を買える社会」を実現するために、住宅の一次取得者を主要ターゲットとして、耐震性能や断熱性能などに優れた住宅を、お買い求めしやすい適正な価格で提供しております。また、住宅を購入して頂いたお客様に対しては、定期的なメンテナンスを行うことにより、住宅の性能を維持し、長く安心して快適に暮らして頂けるようなサービスも提供しております。

戸建分譲事業以外にも、マンション分譲事業、注文住宅事業、メンテナンス・リフォーム事業や、不動産賃貸事業、住宅設備機器販売事業、スパ温泉事業など幅広くお客様の人生や日常生活に寄り添う商品・サービスの提供を行っております。

⑥ その他

当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症拡大による生産、販売、資金調達等に対する影響は限定的であり、引き続き、社会・経済活動は緩やかに回復するものとみられます。

しかしながら、同感染症の再拡大や、より感染力の強い変異株の発生による、建築資材工場の操業停止、物流の遅延・停滞などのマイナス影響も払拭することはできません。また、足許では諸外国との政策金利の格差拡大により円安が進んでおり、非資源国であるわが国のエネルギー価格、資源調達価格は上昇傾向にあり、景気の先行きは不透明感が続くものとみられます。更に、ウクライナ情勢により木材をはじめとする必要資材のバリューチェーンが寸断されるリスクも高まっており、調達不安や調達コストの上昇等のリスクが高まっているため、今後の動向に注意する必要があります。

 

(4)中期的な経営戦略

当社グループは、“人生100年時代”に向けて既存ビジネスモデルを進化、変革し、持続可能な社会の実現と企業の持続的な成長との両立を図るべく、2024年3月期を最終年度とする「第3次中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)」に基づき「コア事業の競争力強化」と「事業ポートフォリオの拡大」の2つの戦略を推進してまいります。当社グループの成長の原動力である“グループ内の健全な競争”を更に加速させるため、戸建分譲事業で培った“競争と協調のコントロール”を他事業にも展開し、成長させていく方針です。

その結果、中期経営計画の最終年度である2024年3月期には、売上収益1兆7,200億円、営業利益1,650億円~1,720億円を目指します。

 

① コア事業の競争力強化

戸建分譲事業は当社グループの中核的事業であり、安定的な収益を上げる事業と位置付けております。競争が厳しくなる事業環境の中で、土地仕入や建築資材の調達から設計、施工、販売、アフターサービスまで一貫してグループ内で行うというビジネスモデルを進化させ、お客様の求める商品をより高いコスト競争力を持って提供できる仕組みの構築を図ります。特に、主要な建築資材である木材の安定調達に向けた取組みとして、大規模な森林資源を取得しバリューチェーンの強化を推進してまいります。

更に、長寿命化による“人生100年時代”の到来に備えて、お客様に長く安心して暮らして頂けるよう、当社グループが提供する分譲戸建住宅は、全棟で住宅性能表示制度4分野の最高等級を取得し、購入後は、定期的なメンテナンスを徹底する体制を構築することで時代の変化に対応したビジネスモデルへと強化・再構築を図る方針です。

 

② 事業ポートフォリオの拡大

戸建分譲事業で培った“競争と協調のコントロール”をマンション分譲事業、注文住宅事業、メンテナンス・リフォーム事業、収益不動産ビジネス等のストック事業等にも展開し、事業育成に取り組むことで、安定的な収益構造の構築を図ります。戸建分譲事業の事業基盤、顧客基盤を活かした事業展開に加え、提携、M&Aなども選択肢として検討してまいります。また、海外市場においても中長期的に市場成長が見込まれるエリアをターゲットとして、事業展開を進めてまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、サステナビリティ経営の推進を第3次中期経営計画の重点施策の一つとして掲げております。当社グループは、「誰もがあたり前に家を買える社会」の実現という事業コンセプトに基づき、安全・快適・健康に暮らせる住環境をお客様に提供してまいりました。この「誰もがあたり前に」というコンセプトは、サステナブルな社会を実現する上でも極めて重要であると考えております。

 このような考えに基づき、当社グループのサステナビリティの基本的な考え方を明文化し活動をより一層加速させるため、サステナビリティ基本方針を制定しました。サステナビリティ基本方針に基づき、推進体制の強化、マテリアリティの特定とKPIの設定、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)のシナリオ分析などを行っております。

 

① サステナビリティ基本方針

人生100年時代、持続可能な社会の創造へ。

私たち飯田グループは、住宅業界のリーディングカンパニーとして持続的成長と社会貢献で、より多くの人々が幸せに暮らせる豊かな社会づくりを推進し、企業価値の向上に努めます。

 

・より多くの人々が長く安心して活き活きと暮らせる住環境の実現を目指します。

・事業を通じて環境に配慮した住宅・サービスを提供し、CO2排出量削減や廃棄物の抑制、生物多様性の保全などに取り組みます。

・個人の人権、多様な価値観を尊重するとともに、安全で快適な職場環境を実現し働きがいのある健康的な職場環境の整備に努めます。

・あらゆる法令、規則等やルールを厳格に遵守するとともに腐敗防止に取組み、誠実かつ公正な企業活動を遂行します。

・適切な情報開示により、透明性や信頼性を高め、ステークホルダーとの積極的な対話に努めます。

 

② サステナビリティ推進体制

当社グループは、取締役会による監督のもと、代表取締役社長を委員長とし、主要グループ会社の代表取締役を委員とする「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。同委員会の下部組織として「サステナビリティ推進部会」を設置しており、サステナビリティ推進委員会での決定事項をグループ一体となって統一的に推進しております。

 

「サステナビリティ推進体制」

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③ マテリアリティの特定

当社グループは、健康経営の推進により組織全体の生産性を高め、社会課題の解決と当社グループの持続的成長の両立を図るべく、ステークホルダーにとっての重要度と当社グループの企業価値向上の2つの観点から社会課題の重要度を分析し、優先度の高いものをESGマテリアリティとして特定しております。ESGマテリアリティは、社会や地球環境に及ぼす影響度が大きい重要な項目であり、定量的に測定が困難なものも含まれます。

 

マテリアリティ特定プロセス

 

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当社グループのマテリアリティ

 

 

マテリアリティ

主な取り組み内容

企業と組織

(G)

健康的で働きがいのある職場環境の維持

・ワークライフバランスの推進

・人材育成と雇用の確保

法令・規則の厳格な遵守と公平公正な企業活動及びリスク管理

・リスクマネジメント体制の構築

社会

(S)

誰もが安全・快適・健康に暮らせる住環境の実現

・誰もが家を持てる社会の実現

・安全性の高い住環境の創出

・健康に暮らせる住環境の創出

・住宅の長寿命化・資産価値の維持

環境

(E)

地球環境保全・クリーンエネルギーへの貢献

・温室効果ガスの削減

・商品・サービスによるエネルギー効率の改善

 

(6)TCFD提言に基づく開示

当社グループでは、サステナブルな社会を実現するためには、地球温暖化がもたらす気候変動問題に対して、温室効果ガスの排出量削減だけでなく、環境性能の高い商品・サービスを誰もが当たり前に手に入れられるようにすること、すなわち、環境対策に必要なコスト負担と、誰もが享受できる値ごろ感を両立させることが重要であると考えております。

当社グループは、気候変動や環境規制の強化等による事業環境の変化が当社グループに与えるリスク及び機会について評価、分析を行い、事業戦略への反映とTCFDの提言に沿った情報開示の拡充を進めてまいります。

なお、TCFDに基づく情報開示につきましては、当社ウェブサイトに詳細を記載しております。

 

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