業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

 

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行などで先行き不透明な状況が継続しましたが、ワクチン接種の広がりなどにより、業種及び国・地域で度合いは異なるものの全体として概ね景気回復基調となったことに加え、為替が円安基調で推移しました。一方で、半導体などの部材の調達難や世界的なコンテナ不足による物流の滞りや海上運賃高騰、燃料・資源価格の急騰などに加えて、ロシア・ウクライナ情勢などの地政学リスクの高まりによる世界経済への悪影響なども生じており、非常に厳しい状況が継続しています。当社グループの主力事業を取り巻く環境は、無機化学事業においては、各国の経済活動回復に伴い、自動車及び建築用途向けなどが堅調に推移したことに加え、電子部品材料分野の需要が拡大しました。有機化学事業においては、主力の農薬については、国内販売は減収となり、海外ではサプライチェーンの混乱が見られたものの、米州での穀物栽培の拡大などもあり、海外向け販売は殺菌剤及び除草剤を中心に順調に推移しました。

このような状況下、当社グループは、長期ビジョンとして「Vision 2030 独創・加速・グローバル。化学の力で暮らしを変える。」を掲げ、2021年度から2023年度の3か年の中期経営計画「Vision 2030 StageⅠ」を発表し、ESG・SDGs視点での経営強化を推進することにより、サステナブルな企業価値創造を目指して、重点施策等の取り組みを進めています。
 この結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高1,109億円(前期比91億円増)、営業利益115億円(前期比63億円増)、営業外では円安が進み為替差益を計上するなどで経常利益132億円(前期比73億円増)、親会社株主に帰属する当期純利益116億円(前期比83億円増)となりました。

 

事業の種類別セグメントの状況は次のとおりであります。

 

(無機化学事業)

酸化チタンは、国内外ともに自動車及び建築関連を中心に需要回復があり、売上高は459億円(前期比80億円増)となりました。機能性材料は、電子部品用材料が自動車関連や5G関連などで需要が大幅に増加したことに加え、導電性材料も堅調に推移したことなどにより、売上高は138億円(前期比19億円増)となりました。
 損益面でも、原燃料価格の高騰などがあったものの、市況回復に伴う増収増益の他、操業度改善による固定費負担減や、国内外での販売価格改定浸透などが寄与し、増益となりました。
 この結果、無機化学事業の売上高は598億円(前期比100億円増)、営業利益は60億円(前期比50億円増)となりました。

 

(有機化学事業)

農薬は、新型コロナウイルス感染症や天候異常などの影響を大きく受けることなく、海外販売が堅調に推移しました。欧州では殺菌剤や除草剤の需要増加などで増収となりました。米州では、南米で穀物生産拡大などにより殺菌剤が好調に推移し、北米でも新規の除草剤が好調に推移した他、流通在庫の改善などもあり販売が堅調に推移しました。国内販売については、主力殺線虫剤や殺菌剤の販売減などにより前期を下回りました。
 この結果、有機化学事業の売上高は、482億円(前期並み)、営業利益は77億円(前期比14億円増)となりました。

 

(その他の事業)

売上高は27億円(前期比7億円減)、営業利益は4億円(前期並み)となりました。

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比57億円増加の1,857億円となりました。これは、現金及び預金が11億円、棚卸資産が30億円、無形固定資産が4億円、投資有価証券が12億円、その他流動資産が7億円それぞれ増加しましたが、受取手形、売掛金及び契約資産が4億円、有形固定資産が5億円減少したことなどによるものです。
 負債は、前連結会計年度末比66億円減少の938億円となりました。これは、支払手形及び買掛金が32億円増加しましたが、長短借入金・社債が97億円減少したことなどによるものです。
 純資産は、利益剰余金が107億円、その他有価証券評価差額金が7億円、為替換算調整勘定が9億円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末比123億円増加の918億円となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ11億円増加し、270億円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは165億円の収入(前期比117億円の収入増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益130億円、減価償却費及びその他の償却費46億円、仕入債務の増加28億円、投資有価証券評価損益23億円などの資金増加要因がありましたが、持分変動損益27億円、売上債権・棚卸資産の増加13億円、法人税等の支払9億円などの資金減少要因があったことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、43億円の支出(前期比18億円の支出減)となりました。これは、固定資産の取得などによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、116億円の支出(前期比179億円の支出増)となりました。これは、長短借入金・社債の返済97億円、リース債務及び割賦債務の返済11億円、配当金の支払7億円などがあったことによるものです。

 

当社グループは、事業の収益力を高めることで経営環境の変化に耐え得る強固な財務基盤の構築を目指しております。具体的には、安定した期間利益を計上し、着実に自己資本比率を高めるとともに、高いキャッシュ・フローの創出力を通じた有利子負債の削減を進めております。

当社グループの資金需要の主なものは、原料費、労務費、委託費など製品の製造にかかわる製造費用の他、販売費や農薬を中心とした研究開発費を含む一般管理費など事業活動に必要な運転資金に加えて、装置産業である酸化チタンを製造するための設備の新設や維持更新を中心とした設備資金であります。
 原料鉱石価格の高止まりや設備投資、研究開発による高い資金需要が引き続き想定されることから、今後の資金調達については、手元資金や営業活動によるキャッシュ・フローから創出するとともに、金融機関からより安定的で低コストの借入を実施していきます。さらに新型コロナウイルス感染症等の影響を含む事業等のリスクの顕在化などによる突発的な資金需要に備え、主要金融機関と契約しているコミットメントラインを80億円から100億円へ増額し、手元流動性を確保しております。

 

 

当社の企業集団のキャッシュ・フロー指標を示すと、次のとおりであります。

 

 

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

自己資本比率(%)

42.0

44.7

44.5

44.2

49.5

時価ベースの自己資本比率(%)

32.6

26.7

12.8

20.2

23.2

債務償還年数(年)

3.1

10.1

15.8

12.7

3.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

19.0

6.6

5.5

8.3

30.8

 

(注)1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。

2 有利子負債にはリース債務等を含んでおります。

3 各指標は以下の算式により計算しております。

※自己資本比率:自己資本/総資産

※時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 (株式時価総額は期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。)

※債務償還年数:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

※インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

なお、連結決算日における資産及び負債の連結貸借対照表上の金額及び連結会計年度における収益及び費用の連結損益計算書の金額の算定には、将来に関する判断、見積りを行う必要があり、当社グループは過去の実績や状況等を勘案し、合理的に判断しておりますが、今後の環境、条件等の変動により、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、以下に記載する会計上の見積りは当社グループにとって重要であると判断しております。

① 投資の減損

当社グループは、取引関係維持のために販売先や金融機関の株式を保有しております。これらの株式には、価格変動性の高い公開会社の株式と株価の決定が困難な非公開会社の株式が含まれております。公開会社の株式への投資の場合、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回収可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。また、非公開会社の株式への投資の場合、それらの会社の純資産額が取得原価に比べ50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回収可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。

 

② 繰延税金資産

当社グループは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しております。評価性引当額の算定においては、将来の課税所得と実現性の高いタックスプランニングに基づいて検討を行っております。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

 

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年比(%)

無機化学事業

59,893

29.0

有機化学事業

27,028

△12.7

合計

86,922

12.3

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

 

(2) 受注状況

当社グループは、主として見込み生産を行っております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年比(%)

無機化学事業

59,875

20.1

有機化学事業

48,296

△0.1

その他の事業

2,783

△21.7

合計

110,955

9.0

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

なお、前連結会計年度において、長瀬産業株式会社に対する販売割合は、10%未満であるため、記載を省略しております。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

三井物産株式会社

10,264

10.1

12,633

11.4

長瀬産業株式会社

11,177

10.1

 

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得