研究開発活動

5 【研究開発活動】

 

当社グループは「『社会』、『生命』、『環境』に貢献する。」という基本理念に基づき、無機化学、有機化学の各分野における新製品の開発や生産技術の向上に取り組むとともに、世界的な関心が高まる環境、エネルギー、バイオ、IT、食料等の各領域において、無機、有機の垣根にこだわることなく、新規事業の探索にも取り組んでおります。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、8,165百万円となりました。

 

セグメントごとの研究開発は、次のとおりであります。

 

(無機化学事業)

長年に亘る酸化チタン事業で蓄積されてきた技術をベースに、高機能・高付加価値品の開発に力を入れて取り組んでおります。
 高付加価値品に関しては、板状チタン酸は“シルクのような質感”と“光輝感”を両立した世界唯一の色彩を有する顔料で、本顔料をSILKIAブランドとして市場投入するべく、安定製造方法の確立と表面改質に取り組んでおります。艶消し材料については、既存品に対して耐候性や塗布ムラが少なくなることを特徴に、塗料分野やプラスチックス分野向けの技術データ採取に取組んでおります。また、黒色顔料については、当社製品のマンガン系黒色遮熱顔料より漆黒度が高い硫化ビスマス顔料について商品化検討を加速させております。
 機能性材料に関しては、電気自動車や第5世代通信(5G)用に需要が期待される次世代の積層セラミックコンデンサー(MLCC)用の高純度酸化チタンの開発に注力しております。微粒子で分散性に優れた開発品を含め種々の粒子径サイズ品をラインナップすることで、顧客の汎用から最先端用途までの要求に応えるべく改良を進めております。また、有機/無機の材料合成技術を活かして開発した酸化チタンの溶剤分散体は、“酸化チタンの特徴である高屈折率”と“微粒子化による透明性”を両立させており、次世代の光学材料用途向けに顧客が要望する改良に取り組んでおります。
 一方、新たな無機事業の創出を目的としている新規事業開発関連では、大学との共同研究を進めてきた銅ナノ粒子において既存品では未達であった低温で成膜する粒子のスケールアップ合成法を確立し、市場投入に向けての検討を行っております。また、再生可能エネルギーへの取り組みとして、有機薄膜太陽電池材料の開発にも注力しております。
 

当事業における研究開発費は、1,292百万円となりました。

 

(有機化学事業)

農薬については、自社開発原体を中心に新規製剤や新規混合剤の開発の他、農薬登録国や適用作物の拡大などに向けた研究開発に注力して取り組んでおります。
 近年開発した新規剤では、うどんこ病に卓効を持つ殺菌剤ピリオフェノンが各国で農薬登録を取得後、上市が進んでいるほか、菌核・灰色かび病など広いスペクトラムを持つ殺菌剤イソフェタミドは、2015年のカナダ、米国での上市を皮切りに、2018年には日本、欧州で、さらに中南米、大洋州でも販売を開始しました。また、チョウ・蛾類を初め広いスペクトラムを持つ殺虫剤シクラニリプロールは、2017年に韓国、2018年には日本、米国、カナダでも販売を開始しました。現在は、アジア及び中南米を中心に開発を進めており、2021年にブラジル、メキシコでの販売を開始しました。人畜・作物安全性に優れるトウモロコシ用除草剤トルピラレートは、2017年の国内及び米国における単剤販売開始以降、アルゼンチン、メキシコ、カナダ、韓国及びフィリピンに販売地域を拡大し、2021年には米国及び日本で混合剤を上市しました。水稲用除草剤ランコトリオンは、国内で2019年に単剤登録が、2020年に混合剤登録が認可され、2021年より販売を開始しました。
 さらに、国内の食の安全・安心指向の高まりや、抵抗性発達のために有効な既存化学農薬が不足しているなどの市場ニーズに対応するため、微生物殺菌剤、接触型忌避剤及び天敵昆虫などのバイオラショナル製品群の開発にも注力しております。特に2種の天敵昆虫類については、農家の利便性に配慮した簡易型組立資材(バンカーシート)を付帯した製品を開発、農食事業26070Cで実用化技術を確立し、2016年からバンカーシートと組み合わせた3製品をJA全農の全国組織を通じて販売しております。また、2019年より食品添加物を有効成分とするコナジラミ忌避剤ベミデタッチを販売開始し、難防除の植物ウイルス病を低減できる剤として好評を得ております。当社は、近未来の植物防疫の姿を見据え、これら一連のバイオラショナル製品と、安全性が高く環境負荷に配慮した当社創製化学農薬群を組み合わせて、独自のIPMやICMプログラムを確立していきます。また、従来の農業用化学農薬コンセプト・分野とは異なる防疫、環境保全などの様々な場面においても、当社全製品を含む有機化学技術の普及拡大を目指しております。
 当社の農薬事業は、自社の創生・開発の新農薬をベースとしておりますが、環境変化の激しい昨今、他社開発剤の導入や他社との共同開発にも積極的に取り組んでおり、2010年以降、海外企業から導入した水稲除草剤を国内で開発・上市したほか、2015年には海外他社の非選択性除草剤を全世界で共同開発する契約を同企業と締結し、昨年より米国で販売を開始しております。既に、カナダ、ブラジル及びアルゼンチン等でも登録申請を済ませており、更に東南アジア、中南米各国でも開発、登録作業を進めております。
 農薬以外では、ヘルスケア事業(医薬・動物用医薬品関連)についても、特色ある商品開発を進めております。長年にわたる研究開発で培った技術とシーズ化合物を活かし、IKV-741(フザプラジブナトリウム)が、動物用医薬品の第一弾であるイヌ膵炎急性期用抗炎症剤として、2021年3月より自社製品『ブレンダ』として発売されております。本薬剤は米国でも開発を進めており、2022年度の商業化を目指しております。さらに、皮膚系疾患や内分泌系疾患の治療薬において、後続するパイプラインの整備を推進中であります。
 また、人体用医薬原薬「セビメリン塩酸塩」の製造受託事業においてもその拡大に取り組んでおります。
 

当事業における研究開発費は、6,732百万円となりました。

 

なお、当連結会計年度におけるセグメントに帰属しない全社共通の研究開発費の金額は140百万円となりました。

 

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