課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、究極的に成し遂げようという事業の志である「一人ひとりの、生きるに、活きる。」を起点とし、基本的な価値観である経営理念「自然と健康を科学する」、社会から必要とされる存在意義である企業使命「漢方医学と西洋医学の融合により、世界で類のない最高の医療提供に貢献します」を基本理念として掲げ、理念に基づく経営を継続的に実践しております。

 

(2)経営戦略等

当社グループでは、2022年4月1日、TSUMURA Group DNA Pyramidを刷新し、プリンシプル「順天の精神」及び究極的に成し遂げる事業の志であるパーパス「一人ひとりの、生きるに、活きる。」を新たに制定しました。また、サステナビリティビジョン「自然と生きる力を、未来へ。」と、3つの“P”(PHC:Personalized Health Care 一人ひとりに合ったヘルスケア提案、PDS:Pre-symptomatic Disease and Science “未病”の科学化、PAD:Potential-Abilities Development 潜在能力開発)を通じて、心と身体、個人と社会が「“Cho-WA”(調和)のとれた未来を実現する企業へ」を掲げた、長期経営ビジョン「TSUMURA VISION “Cho-WA” 2031」を策定しました。

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2022年5月10日に公表した、第1期中期経営計画(2022年度-2024年度)は、長期経営ビジョン実現のための基盤構築のステージとして位置づけ、成長(事業規模の拡大)と収益力(利益率の向上)による企業価値の向上を目指し、取り組んでまいります。

第1期中期経営計画 戦略課題

① 医師一人ひとりにあった漢方ソリューションの提供による漢方市場の継続的拡大

② KAMPOmicsによる漢方のエビデンス構築と未病の科学化の推進

③ 中国における生薬・飲片の売上拡大と中成薬事業への参入

④ 漢方バリューチェーン改革に向けたIT基盤刷新と生薬選別、製造工程におけるAI・ロボット活用の推進

⑤ 組織資本・人的資本による価値の創造と働きがい改革の推進

 

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

第1期中期経営計画(2024年度)数値目標は以下のとおりです。

 

2024年度

売上高

1,620億円以上

営業利益

290億円以上

ROE

8%以上

前提条件:(薬価改定)   2022年度、2023年度、2024年度

(為替レート) 2022年度   19.5円/元、125.0円/米ドル

2023-24年度 19.0円/元、120.0円/米ドル

■企業価値の向上

 第1期中期経営計画では、5つの戦略課題に取り組み、さらなる成長(事業規模の拡大)と収益力(利益率の向上)による財務基盤の改善、事業を通じた社会課題解決への貢献により、企業価値を高めていきます。また、将来に向けた成長投資として国内外での大型投資を実施いたします。

 

成長(事業規模の拡大)

 TSUMURA VISION“Cho-WA”2031においては、海外事業比率50%を掲げ、成長(事業規模の拡大)により将来キャッシュ・フローを創出いたします。

 第1期中期経営計画では、国内事業において、処方医師数の増加に伴う市場拡大により、持続的な安定成長を目指します。また、中国事業においては、生薬プラットフォームでの飲片※1の販路拡大などにより高成長を目指し、製剤プラットフォームでの中成薬※2企業のM&Aによる基盤構築を早期に進めていきます。

 

収益力(利益率の向上)

 TSUMURA VISION“Cho-WA”2031においては、スマートファクトリー化や生産性2倍を掲げ、収益力・利益率の向上を目指します。

 第1期中期経営計画では、天津工場の稼働や資源価格の高騰、為替の影響などにより、営業利益率は一時的に低下するものの、事業規模の拡大とともに、労働生産性向上による原価低減、販管費の圧縮をすることにより向上する見通しです。

 

将来に向けた成長投資

 第1期中期経営計画では、将来の成長(事業規模の拡大)に向けて、生産能力の増強及び自働化・DX化への先行投資をいたします。国内事業関連投資として、国内での製造工程(抽出・乾燥、造粒、包装・表示)及び天津津村での抽出・乾燥工程に約1,000億円、中国事業関連投資として、中薬研究センター建設及びIT基盤構築に約150億円、合計約1,150億円の投資を計画しております。このように、生産能力の増強だけではなく、革新的な自働化設備の開発やDX推進のためのIT投資を実施することで、効率化・省人化による生産性向上を推し進め、大型投資に伴う原価の上昇を最小限に抑えていきます。なお、中国の製剤プラットフォームにおける中成薬企業のM&Aの投資は含めておりません。

 

-戦略課題-

 第1期中期経営計画では、5つの戦略課題に取り組み、さらなる成長(事業規模の拡大)と収益力(利益率の向上)による財務基盤の改善、事業を通じた社会課題解決への貢献により、企業価値を高めてまいります。また、将来に向けた成長投資として国内外での大型投資を実施してまいります。

 

① 医師一人ひとりにあった漢方ソリューションの提供による漢方市場の継続的拡大

・漢方医学に基づき、10処方以上の漢方製剤を処方する医師が2人に1人以上となる医療現場の実現に貢献できるよう、情報提供活動の進化・定着を図る。

・漢方デジタルソリューションとして、ハイブリッド型プロモーションをより進化させ、医療従事者一人ひとりが必要とする情報を最適なチャネルから適切なタイミングで入手し、ご活用いただけるよう、当社メディカルサイトを拡充する。

・「高齢者関連領域」、「がん領域(支持療法)※3」、「女性関連領域」を重点領域とし、育薬処方※4、Growing処方※5及び診療領域基本処方※6を中心に情報提供の量・質を飛躍的に向上させる。

 

② KAMPOmics※7による漢方のエビデンス構築と未病の科学化の推進

・漢方治療の個別化のためのプラットフォーム構築に向けて、漢方医学に基づく診断方法である望診及び問診の診断サポートツールを開発し、そのテスト運用を開始する。

・未病の科学化への取り組みとして、未病状態を科学的に解明し、定義化する。

・漢方治療の標準化のさらなる展開のため、重点領域を中心にエビデンス集積を推進し、診療ガイドラインへの新規収載及び推奨度の向上を目指す。

・米国におけるTU-100(大建中湯)上市に向けた開発を推進する。

 

③ 中国における生薬・飲片の売上拡大と中成薬事業への参入

・高品質な生薬・飲片・「薬食同源」製品※8の安定供給とブランド化を通じて、中薬※9業界のリーディングカンパニーに成長する。

・原料生薬は、品質や取扱量、価格などにおいて、優位性のある品目数を増やす。

・飲片は、重点品目を中心に、公立病院の販路及びオンライン販売を継続拡大する。

・「薬食同源」製品は、優位性のある生薬を用い、高付加価値で養生のニーズに沿った製品を開発する。

・古典処方※10を保有する中成薬企業のM&Aを完了し、上市申請をする。

 

④ 漢方バリューチェーン改革に向けたIT基盤刷新と生薬選別、製造工程におけるAI・ロボット活用の推進

・先進技術による設備の自動化、データ有効活用による新たな生産システム構築のためのデータ収集とデータの見える化、価値創造業務への転換に向けた省力化、作業負荷の軽減を実施し、労働生産性を20%向上させる(対2021年度)。

・生薬AI自動選別機を4拠点(石岡センター、夕張ツムラ、深セン津村、盛実百草)に導入し、AI自動選別が可能な品目数を順次増やす。

・ツムラ生薬GACPの運用により蓄積された生薬栽培に関する様々な情報を、生産性向上や品質・安全性の確保などにつなげる研究を実施する。

・漢方バリューチェーンの効率化及びデータドリブン経営の実現に向けて、グループ全体のIT基盤を刷新する。

 

⑤ 組織資本・人的資本による価値の創造と働きがい改革の推進

・パーパスを掲げた理念経営・ビジョン経営を実践し、当社グループを牽引する人財を養成するため、各種養成プログラムの実施、タフアサインメント、アセスメント、選出の仕組みを高度化する。

・理念を求心力とした組織作りにより、一人ひとりの働きがいを高め、“潜在能力”を自ら発揮できる企業文化を醸成する。

 

※1 飲片

原料生薬を切裁したもの。刻み生薬。

※2 中成薬

中医学の理論に基づいた処方を顆粒や丸剤等の形にした薬剤。

※3 がん領域(支持療法)

がんそのものに伴う症状や、がん治療による副作用の症状を軽減させる等の治療。

※4 育薬処方

近年の疾病構造を見据え、医療ニーズの高い領域において新薬治療で難渋している疾患で、医療用漢方製剤が特異的に効果を発揮する疾患に的を絞り、エビデンス(科学的根拠)を確立する処方。

※5 Growing処方

育薬処方に続く戦略処方として、治療満足度や薬剤貢献度の低い領域でのエビデンス構築(安全性・有効性データ等)により診療ガイドライン収載を目指す処方。

※6 診療領域基本処方

各診療領域において患者数が多い疾患・症状に対して、適正に使用することのできる(適応を有する)処方。

※7 KAMPOmics®

ツムラの強みである先端技術(メタボローム・遺伝子・腸内細菌・システムバイオロジーなど)の研究を組み合わせ、日本の伝統医学である漢方医学と、多成分で複雑な漢方薬を統合的に理解するためのツムラ独自の研究パッケージ。当社の登録商標。

※8 「薬食同源」製品

生薬を使用した健康食品。

※9 中薬

中医学で使用する薬剤(中成薬、飲片など)。

※10 古典処方

数千年前に編纂された中国の著名な医学書などの古書に記載され、長年使用されてきた処方。

(4)経営環境

① 国内市場

超高齢社会において、医療費の増大にともなう各種制度変更、地域医療のあり方や、生活者のセルフメディケーション意識の向上など、製薬会社が直面する課題は少なくありません。

国の施策においては漢方への期待と役割が大きくなっております。2015年に厚生労働省より公表された「医薬品産業強化総合戦略」の中のひとつに、漢方薬は「我が国の医療において重要な役割を担っている」と明記されております。また、「がん対策加速化プラン」では、支持療法の開発・普及のために実施すべき具体策として、「漢方薬を用いた支持療法」があげられています。当社は、このような政策に準ずる施策に加え、「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」や総合診療医・在宅医療の推進などを含む「地域包括ケアシステム」の構築などの医療政策、人口動態にともなう疾病構造の変化(高齢者疾患、女性特有の疾患など)を踏まえた取り組みを進めてまいります。

「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」において、医療関連のオーソリティによって、漢方医療を取り巻く課題と対応策が「提言書」として2017年に取りまとめられました。その後、健康寿命の延伸に資する観点から個別化医療が重要視され、漢方薬の必要性がより一層見直されてきている現状を踏まえ、2021年に提言書が更新されております。当社は、日本漢方生薬製剤協会の活動を通じて、この提言を実現するために、産官学共同の課題として取り組んでおります。

外部環境の変化としては、新型コロナウイルス感染症拡大により精神疾患、めまいへの漢方製剤の処方機会が増加いたしました。また、補剤といわれる病後の疲労倦怠、食欲や体力等の低下した状態に用いる処方が伸長しましたが、一方で感染予防対策の励行により、風邪関連処方が減少しております。

当社は、漢方薬を取り巻く外部環境の変化を踏まえ、中長期的な観点から計画を立案し、活動してまいります。

 

② 中国市場

中国における高齢化は、今後日本と同じ速度で進むことが予測され、中国国民の健康意識は高まっております。また、中国においても新型コロナウイルス感染症を契機に、中薬に関する認知が向上しております。

2016年に国務院が発表した「健康中国2030計画綱要」では、現代医学と中国医学の双方を重視し、中薬生産の規範化、規模化を推進するとともに、理論研究と薬品開発に取り組むという方針が発表されております。また、2022年1月に「第14次五カ年医薬工業発展計画」が発表され、中薬の研究開発、技術と品質、製造レベルなど多方面から計画を行っていく方針が示されております。

中国における中薬の市場規模は、中成薬、飲片(刻み生薬)を合わせて現在約11.2兆円と大きな規模でありますが、環境の変化を踏まえると、さらに拡大するとみられております。

当社は、これまで積み上げてきた技術・ノウハウを最大限活用し、中国平安保険グループとの協業のもと、中国国民の健康に貢献する企業を目指し、中国における事業基盤の構築に取り組んでまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 第1期中期経営計画に基づく取組み

「(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。

 

② 製商品の品質と安全性の追求

1)品質保証

当社は、製商品の品質と安全性の追求を最も重要なテーマであると考えております。この品質重視の考え方「ツムラクオリティカルチャー」を漢方バリューチェーンの基盤とし、品質保証における継続的な改善と強化に取り組んでおります。

 「ツムラ品質マネジメントシステム」

当社は、「品質方針」のもと品質保証システムのさらなる充実を目指した「ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程」を制定し、法令の改正やグローバル化(PIC/S※対応を含む)などにも適正に対応できる仕組みを構築し、品質を重視する取り組みを推進しております。このシステムは、当社グループ全体を取り込んだ包括的なものであり、これによって経営陣の責務をさらに明確にいたしました。

 

品質方針

 当社及びグループ会社は、価値創造企業を目指し、“KAMPO”で人々の健康に寄与するため、以下の品質方針を定めております。

・高品質かつ安全で信頼される製品を安定的に供給します

・医薬品に関する薬事関連法規を遵守します

・お客様の声を聴き、継続的な品質改善に努めます

・安全な生薬の安定確保を実現します

・研究の信頼性を確保し、研究成果を適切に提供します

・全役職員に対し、適切な教育を実施し、高い意識を持つ人財を育成します

・これらを実現するため、経営資源を適正に配分します

 

 ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程のもと、生薬栽培から最終製品のデリバリーまでのサプライチェーン全般を対象として法令遵守や当社として守るべき基準を明記した文書をそれぞれ社規として体系的に構築いたしました。

 これは当社独自の「品質システム」であり、当社及びグループ会社のすべての事業における品質重視体制を構築し、高品質な漢方製剤を患者様に提供するための活動となっております。

 

※ PIC/S:

Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Cooperation Schemeの略称。医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキームのことであり、GMP基準などの国際化を推進する枠組み。

 

2)「ツムラ生薬GACP※」

 当社は、「ツムラ生薬GACPポリシーに関する規程」を制定し、運用しております。この規程は、「ツムラ品質マネジメントシステムに関する規程」に基づき、当社及びグループ会社による生薬生産の管理において、生薬の安全及び品質を保証するために遵守すべき基本的要求事項を定めることを目的としております。

 ツムラ生薬GACPは、「ツムラ生薬GACPガイドライン」「生薬生産標準書」「生薬トレーサビリティ」「教育・監査・認証」で構成されております。

 そのひとつである生薬トレーサビリティは、生薬の生産地から生薬製造所に納入される各段階で、生産団体・生産者の情報や栽培・加工などの記録を収集・保管し、情報の追跡と遡及を可能とする仕組みであり、漢方製剤の製造工程、流通過程の履歴情報と併せ、医療機関から生薬生産地までの全履歴情報の追跡・遡及を可能としております。

 今後も、生薬の安全性・品質保証体制をより強固なものにし、安全で安心できる生薬の安定確保のために、ツムラ生薬GACPを継続的に強化し運用してまいります。

※ GACP:Good Agricultural and Collection Practice(生薬生産の管理に関する基準)

 

(6)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

自然の恵みである生薬を原料として取り扱う当社グループが持続的に成長するためには、自然環境の変化や危機に最も敏感であるべきと考えており、サステナビリティビジョン「自然と生きる力を、未来へ。」を掲げております。カーボンニュートラルの実現に向けて温室効果ガス排出量の削減に取り組むとともに、気温や降水量の変化等、気候変動リスクに対応してまいります。

当社は2021年10月にTCFD提言への賛同を表明するとともに、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)最終報告書」に基づき、4つの開示項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)を経営課題として認識しております。

ガバナンス

気候変動を含むリスクと機会や、ツムラグループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るための重要な意思決定は、取締役会が担っています。また取締役会にて戦略の決定、投資判断等を行うに際しては、気候変動に係る影響を踏まえて意思決定を行っています。

取締役会は、取締役会規則に基づき毎月報告される業務執行状況に対し、助言と監督を行っています。

気候変動に関しては、主にサステナビリティに関するテーマを取り扱うサステナビリティ委員会(2021年10月設置、年2回以上開催)と、経営リスクに関するテーマを取り扱うリスク管理委員会(年2回開催)があり、両委員会が情報を共有しています。両委員会で審議されたテーマのうち、重要な案件は取締役会に報告されます。2021年度はリスク管理委員会が1回、サステナビリティ委員会が4回、取締役会への報告を行いました。なお、サステナビリティ委員会は取締役会からの方針提示・監督を受けています。また、気候変動関連のリスクに関しては、サステナビリティ委員会とリスク管理委員会が情報を共有しながら、評価・管理しています。

気候変動を含むサステナビリティに関する業務の担当役員は、Co-COOであるサステナビリティ推進室担当執行役員であり、サステナビリティ委員会の委員長を担っています。Co-COOは、気候変動関連のリスクと機会の評価及び管理の両方の監督を統括しています。

戦略

2015年のパリ協定締結、2018年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「1.5℃特別報告書」を受け、当社グループでは気候変動への対応を経営戦略に組み込みました。

当社グループは、TCFD提言の要請に基づき、外部専門家の助言も踏まえ、気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び2050年時点の世界を想定した当社グループの戦略のレジリエンスと、さらなる施策の必要性の検討を目的にシナリオ分析を実施しました(後述の<シナリオ分析>をご覧ください。)。

シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関するIPCCが公表する複数の既存のシナリオを参照の上、パリ協定の目標である産業革命以前に比べて全世界の平均気温の上昇を2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求するシナリオ(1.5℃未満シナリオ)、及び新たな政策・制度が導入されず、世界の温室効果ガスが現在より増加するシナリオ(4℃シナリオ)の2つの世界を想定しました。

リスク管理

気候変動関連のリスクに関しては、サステナビリティ委員会とリスク管理委員会が情報を共有しながら、評価・管理しています。

サステナビリティ委員会は、外部専門家の助言も踏まえ、気候変動が中長期的に当社グループの経営戦略に与えるリスクとインパクトの分析と対策の検討を行います。その結果については取締役会に報告し、取締役会は必要な指示を行い、対応状況を監督します。

リスク管理委員会は、気候変動に関する工場の操業停止等のリスクを、財務上の影響の多寡、発生確率の高さを勘案し、優先順位を決定のうえBCP対応を含む対策の検討を行います。その結果については取締役会に報告します。

サステナビリティ委員会とリスク管理委員会で検討するリスクは、事業リスクとして統合・管理しています。

指標と目標

1.指標

当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope 1、2、3のGHG排出量を定めています。

2.実績

Scope 1、2、3のGHG排出量実績(2020年度)は、以下のとおりです。

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

37,637t

(前年度比3.3%増)

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

58,850t

(前年度比1.9%減)

Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

211,938t※

 ※Scope3については、2020年度分において初めて関連するすべてのカテゴリの算定を行ったため、前年度比の表記をしておりません。なお、2020年度分についてはScope1、2、3とも第三者検証済です。

3.目標

当社グループは、2022年度から、Scope 1、2のGHG排出量について、「2030年度に2020年度比50%削減」、「2050年度までに実質ゼロ」とする目標を設定しております。なお、Scope 3のGHG排出量については、今後集計のさらなる精緻化を図りながら、目標設定に向けて取り組んでいく予定です。

<シナリオ分析>

シナリオ

概要

想定される世界の状況

1.5℃

シナリオ

2100年までの平均気温の上昇が産業革命以前と比べて1.5℃に抑えられている世界

脱炭素社会への移行に伴う変化が事業に影響を及ぼす(移行リスク)

・気候変動に関する規制が強化され炭素税等の法規制が導入される

・低炭素技術などの技術革新が進展する

・社会全体が脱炭素に向かい、企業の脱炭素への取り組みが評価される

4℃

シナリオ

2100年までの平均気温が産業革命以前と比べて4℃上昇する世界

気象変動による物理的な被害が事業に影響を及ぼす(物理リスク)

・気候変動に関する規制は導入されるものの限定的

・異常気象の激甚化が進み、自然災害が頻発

・気温上昇や水不足により、生薬の生育状況の変化、取水制限、感染症の拡大等が生じる

 

●1.5℃シナリオにおける影響度

分類

区分

リスク・

機会項目

発現

時期

リスク

と機会

当社グループへの影響

影響度

対応策

移行リスク・機会

政策・

法規制

炭素税の導入

中・長期

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税負担の増加

設備投資コストの増加

省エネ、再エネ利用及びサプライヤーとの協業等

新たな規制の導入

中・長期

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原料生薬調達量の減少あるいは調達コストの増加

生薬栽培拠点の複線化等

技術

低炭素技術の進展

中・長期

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研究コストや設備投資コストの増加

AIの活用やDXによる技術開発・革新等

中・長期

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操業コストの減少

GHG排出量削減

評判

投資家の評判変化

短期~長期

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売上や株価の下落、資金調達の困難化

ステークホルダーへの適切な情報開示とコミュニケーション

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評価向上による企業価値創出

資源

効率

水資源の再利用

中・長期

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操業コストの減少

再利用設備の導入及び循環利用の推進

エネル

ギー源

再生可能エネルギーの拡大

中・長期

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電力コストの減少

 

●4℃シナリオにおける影響度

分類

区分

リスク・

機会項目

発現

時期

リスク

と機会

当社グループへの影響

影響度

対応策

物理リスク・機会

急性

異常気象の激甚化

長期

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自然災害の激甚化や感染症等の増加に起因する操業中断や在庫の毀損による生産・物流量や売上の減少、修繕費用の増加

 

・生薬栽培技術の革新

・生薬栽培拠点の複線化

・適正在庫の確保

・BCP体制の構築・拡充

・輸送・保管形態の変更

・契約農家が利用する生薬用の栽培管理システムへの災害関連情報の付加や災害補償体制の構築による契約農家との取引の維持または増加等

慢性

水リスク

長期

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操業中断、生産量減少、売上減少等

平均気温の上昇

長期

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原料生薬の調達量の減少、売上減少や生薬栽培地の移転コストの発生

中・長期

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空調コストの増加

中・長期

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乳糖の価格上昇

製品と

サービス

気候変動に伴う疾病の増加

中・長期

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疾病構造の変化による売上の増加または減少

新しい製品・サービスの開発及び販売戦略の策定と実行等

※詳細については、Webサイトをご覧ください。

https://www.tsumura.co.jp/sustainability/tcfd/index.html

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