研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

(EPC事業)

当連結会計年度において、当社グループは研究開発費2,661百万円を投入し、技術力強化方針として「新たなビジネス・商品開拓」、「基幹ビジネスの基盤強化」、「各事業部のビジネス戦略強化」につき、以下の研究開発活動を当社グループ内および産官学連携により実施いたしました。

 

《新たなビジネス・商品開拓》 

IoT分野では、デジタル基盤を介したプラント運営支援を目指し、DX-PLANT®のソリューション深化と拡販を進めております。そのためにシステム基盤を構築し、工場オーナーにとって導入しやすく、その要求に柔軟に対応できる体制を整えました。2021年度は新たに、海外の1件の肥料工場、1件の地下資源生産設備に加え、国内エチレン工場においても導入を行い、計8件の導入実績となります。また、尿素プラント向け運転監視・最適化システム(PMOS®)や、エチレン分解炉の運転状態予測・最適化支援システム(RL-Tracker®)など、当社の知見を活かした高付加価値ソリューションの運用を行っております。今後は尿素・エチレン以外の化学工場やCN関連設備など様々な産業設備へ適用のアプローチを進め、更に技術支援サービスにおけるDX技術の活用など新しい顧客支援領域を拡張し、顧客のプラント運営の収益改善に貢献してまいります。 

 

環境・省エネ分野では、低炭素社会に貢献すべく、革新的省エネルギー蒸留システム“SUPERHIDIC®”に加え、プラントを構成するプロセス系・用役系を省エネ・GHG排出削減の観点から数学的に同時最適化するコンサルタントサービス“HERO(Hybrid Energy system Re-Optimization)”のビジネスを積極的に展開しております。“SUPERHIDIC®”ではライセンス契約を受注し基本設計図書を納入、“HERO”では国内顧客に続き、海外顧客からも受注し検討実施中です。両技術とも、これらの案件で大規模な温室効果ガス削減に繋がる提案が創出されております。

 

世界的に急速に加速している温室効果ガスのゼロエミッション実現に向け、エネルギーシフトも促進される現在、CCSは二酸化炭素排出削減の不可欠な技術となっております。当社は、二酸化炭素の分離回収・貯留に関する技術分野において、Baker Hughes社などの協業パートナーと連携を行い、CCUS案件の実現を図っております。当社が推し進めているアンモニアバリューチェーン事業においては、CCS/CO2-EORを組み合わせることにより、CO2排出ゼロのアンモニア燃料の実現を目指しております。2022年度より東証市場再編後のプライム市場上場会社に気候変動によるリスク情報の開示(TCFD提言)が実質的に義務付され、今後益々、企業のCO2削減努力が求められていきます。そのような顧客を支援すべく、CCUSの分野では後述するようにCO2利活用の分野にも取り組んでおります。また、日本CCS調査株式会社への出資・派遣などの対外的な活動も引き続き実施しております。

 

次世代環境技術分野では、バイオマス燃料製造において、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受け、三菱パワー株式会社、株式会社JERA、およびJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と共同で、木質系バイオマス等を原料としたバイオジェット燃料を合成する一貫製造実証プロジェクトに参画しております。バイオジェット燃料合成装置では、パートナー企業との共同開発による小型FT(Fischer-Tropsch)合成技術(一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する)を採用しております。2021年度は、JERAの新名古屋火力発電所構内に設置の実証プラントで、木くずから一貫製造した持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)を、世界で初めて商業フライトに供給、成功裏にプロジェクトを終了いたしました。本プロジェクトに引き続き、NEDOの助成を受け、株式会社JERA、三菱重工業株式会社、伊藤忠商事株式会社と共同で、国内における将来のSAF供給の一端を担うべく、商業規模での製造技術確立とサプライチェーン構築検討を進めております。

水素燃料キャリアとしてのアンモニア利用技術開発の一環として、CFAA(一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会)に理事会員として参画しており、CO2フリーアンモニアサプライチェーン実証を目的として、石炭火力発電所等でのNH3混焼によるCO2排出低減や海外でのアンモニアバリューチェーンの事業化について検討を継続しております。

アンモニア利用による化石燃料代替技術として、三井化学株式会社、丸善石油化学株式会社、双日マシナリー株式会社と共同で、エチレン分解炉におけるアンモニア燃料実用化研究開発に取り組み始めております。本開発は、燃料アンモニア利用を促進するとともに、エチレン分解炉のCN化によって石化セクタのCO2排出量の大幅削減を目指すものであり、グリーンイノベーション基金によるNEDO実証事業として採択されました。また、もう一つのエチレン分解炉のCO2排出技術として、当社独自の分解炉の電化技術(e-FurnaceTM)の研究開発も進めております。こちらもNEDOの国際実証事業の第一段階調査事業として採択されました。いずれも社会実装実現に向けて開発を進めてまいります。

2020年度からは、早期水素社会を構築することを目的とした水素バリューチェーン推進協議会に参画し、水素利用の社会実装に向けてプロジェクトの提案、需要創出、規制整備等の政策提言などについて検討しております。また、NEDOの委託を受けて、海外の水素製造技術の調査を行い、2021年度は中間調査報告書を提出いたしました。2022年度は海外水素ベンチャーの水素製造装置を用いた実証試験を実施の上報告いたします。更に、人工光合成水素を活用するプロセス開発においても、光触媒技術を有する富山大学と当社の分離技術を組み合わせる共同研究契約を締結し、早期の社会実装に向けて開発を進めております。

回収CO2の有効利用については、CO2とH2を原料とする新型メタノール合成やメタネーションを中心としたCO2固定化の検討を続けております。例えば、CO2とH2を原料とするメタノール関連では、g-Methanol®として国内外での具体的な案件創出を目指しております。また、東芝エネルギーシステムズ株式会社、株式会社東芝、出光興産株式会社、全日本空輸株式会社、日本CCS調査株式会社と共同でCO2電解技術とFT合成技術を組み合わせてSAFを製造する炭素循環ビジネスモデルを検討しております。本取り組みは、環境省の2021年度委託事業として採択されており、同事業の後押しを受けて、脱炭素化の促進と地域振興を両立させる検討を進めております。

廃プラスチックリサイクルについては、廃プラのガス化および油化のケミカルリサイクルを中心に検討を進めております。その一環として、タイのSCGケミカルズが60%出資しているCircular Plas Company Limited (CirPlas)と同社が保有する混合廃プラスチックの油化技術の商業化に向けた共同検討に関する基本合意書を締結いたしました。現在、当社はSCGケミカルズ、CirPlasとともに早期の商業化に向けたスケールアップの検討を実施しております。

 

原子力分野では、廃炉先進国ドイツで使用済燃料や廃棄物の貯蔵技術、同施設運営の実績を有するGNS(ゲゼルシャフト原子力サービス)社との協力関係を継続強化するとともに、新たに英国で同じく廃炉関連実績を有するJacobs社との協力関係を進め、国内の廃炉分野で主にプロジェクト・マネージメント、エンジニアリングサービスに関する共同提案を行うなどの取り組みを継続実施しております。また、廃止措置業務支援の一環として、業務の効率化、廃棄物管理の最適化のための管理システムツールの構築支援も視野に入れて、社内DX(Digital Transformation)技術の活用や社外最新技術情報を入手し、廃止措置の計画、実行管理に有用となるシステム検討を行っております。具体的な事例としては、放射線量が高く人のアクセスが限定される場所(格納容器等)での解体と放射性廃棄物の管理の生産性および品質向上を目指した現場スキャンによる3D-CAD化(見える化)と管理システムへの統合、廃止措置工程管理システムの構築等に注力しております。

 

《基幹ビジネスの基盤強化》

 ICT分野では、当社の基幹ビジネスであるEPC遂行力強化や競争力強化を加速するため、2019年7月にDXoT(Digital Transformation of Toyo)推進部を立上げ、2025年に向けたビジョンとロードマップ、それを実現させるためのICT中期戦略を策定いたしました。本ロードマップに基づき、Engineering, Procurement, Construction, Projectのそれぞれの分野において、デジタル技術を活用したデジタルツインを構築することによるマネジメント強化、設計品質の向上、納期遵守、工期短縮を図っております。デジタル技術を活用したデータセントリックなプロジェクト実行手法が海外拠点展開を含め徐々に定着してきており、引き続き、プロジェクトへのAWP(Advanced Work Packaging)実装を深化させ、プロジェクト遂行における一気通貫のデジタリゼーションを目指します。また、開発・検証が完了した工事性に関する異常予兆検知支援AIを活用したリスクマネジメント強化と合わせることで更に生産性と業務スピードの向上を目指します。また、全社的ICT化推進活動を通じて、高い変化への対応力、イノベーションを生み出せる文化の醸成を図ってまいります。

 

工事技術分野では、上記のAWPや4D(3次元および時間軸)計画情報を使った施工性検討の実用化推進の他、AIを活用する事によって、地下構造物の危険検知、設計変更による対応、工事シーケンスの見直し等の工事リスクの早期対策を図っております。また、現場業務のDX(Digital Transformation)化の一環として、溶接管理システム、および品質管理システムを深化させて、高圧ガス配管関連の検査図書整備の効率化を進めております。更に、工程管理システムを深化させることで、各種工事の進捗に関するKPI(Key Performance Indicator)を自動更新できるようにいたしました。この機能を活用することで問題点の分析作業性の向上や見える化を進化させ、現場管理業務の生産性を向上させることに取り組んでおります。なお、建設ICTの具体的な手段としては、3次元レーザー測量技術を中心とした新技術の調査と実用化を進めております。

 

調達分野では、品質管理業務の確実性の向上とそれに伴う損失コスト極小化を目的に、各種の新規技術を検証実施中および活用中です。例えば、レーザー測定技術活用に関しては塔槽類内部品の測定精度向上の検証を行っており、スマートグラス利用に関しては実用化に移行することで遠隔検査技術の利便性向上に寄与しております。

 

《各事業部のビジネス戦略強化》

尿素プロセス“ACES21®”は、当社が開発した保有プロセスであり、大型化と省エネを図るためのプロセス改良に日々取り組んでおります。またカーボンニュートラルに向けた尿素プロセスの開発も進めております。世界最大生産量となるナイジェリア向け尿素製造設備(4,000 t/日)の2号機は無事引渡しを完了し商業運転を開始いたしました。試運転では原料の初投入から尿素の安定生産までを短期間で到達し、円滑な設備立上げを達成いたしました。当社の技術力とリーダーシップに対しお客様から高い評価をいただいております。また、インド向け尿素製造設備(3,850 t/日)は2022年3月に引き渡しに向けた試運転を開始いたしました。今後も一層のプロセス改良に取り組み、IoT技術との連携を推進することにより設備の運転および保全の最適化にも貢献してまいります。

 

鉄道分野では、鉄道システムインテグレーター(鉄道SI)を目指して約15年前から本格的に取り組みを開始し、当社初の鉄道EPCプロジェクトであるジャカルタMRTが2019年に完工しました。本プロジェクトの経験を活かし、現在もSIとしての構成要素技術のレベル向上に取り組んでおります。今後も当社として差別化できる案件を選別の上、海外鉄道プロジェクトのEPCに一括で対応する鉄道SIビジネスに注力してまいります。

 

バイオマス発電分野では、完工済みもしくは現在進行中の複数の50MW/75MW案件の知見・ノウハウを生かし、50MW/75MW案件と同じCFBボイラ(Circulating Fluidized Bed:Andritz社製)とSTG(Steam Turbine Generator:Siemens社製)の組み合わせで112MW案件へのスケールアップへの取り組みを開始しております。また、EPC請負のみならず、発電事業参画やアフターサービス事業、更には燃料供給等への展開も検討し、バイオマスバリューチェーン構築に取り組んでまいります。更に、国内での実績・知見を活かし、当社の海外EPC拠点やローカルパートナーとも連携して、海外でのバイオマス発電案件にも積極的に取り組んでまいります。

 

海洋資源開発の分野では、近年急速に需要が高まるデジタル機器、再生可能エネルギー設備、ハイブリッド車や電気自動車等の電池材料、磁気材料等に欠かせないレアメタル・レアアース等の鉱物資源を深海から回収する国策技術開発の支援を行ってまいりました。内閣府SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)のもと、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が率いる日本勢は、大水深6,000mからレアアースを回収するプログラムを進めております。当社がこれまで培ってきた資源開発技術やサブシー技術を活用してレアアース泥回収システムの技術開発に携わっております。具体的には、2019年度の概念設計、2020年の基本設計に引き続き、2021年度には「レアアース泥回収用解泥・揚泥機の製作」業務をJAMSTECから受託し、2022年度に予定されている実証試験に向けたシステムの実現に取り組んでおります。更に、2021年度から新たに「海洋鉱物資源調査に係るコバルトリッチクラスト用採鉱試験機の設計に向けた技術開発等調査」をJOGMECから受託し、深海でのレアメタル採取技術についても取り組みを開始いたしました。従来のメタンハイドレート開発への取り組みも継続するとともに、統合的な海洋資源開発に向けたビジネス強化を進めております。

 

医薬品分野では、テックプロジェクトサービス株式会社(100%出資子会社)が、医薬品製造企業の多様なニーズに応えるエンジニアリングサービスを提供すべく、将来を見据えた革新的な技術開発を行っております。低分子医薬品向けの原薬連続生産技術開発では、省エネ・省人型革新的連続生産システムとして関係各社と取り組んでいるiFactoryが2022年1月に第4回日本オープンイノベーション大賞「経済産業大臣賞」を受賞いたしました。中分子・バイオ医薬品向けには、シングルユース技術を活用した自動化装置開発を行っており、2020年度の精製工程連続化の運転設備納入に続き、不活化システム、清澄化システム、無菌ろ過システムの省力化システムを2021年度に納入いたしました。また、2020年12月に実施した大成建設株式会社との先端医薬・ファイケミカル分野のエンジニアリング事業での業務提携により、2021年度にバイオ医薬系プラントを受注し、プロジェクトを遂行しております。

 

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