研究開発活動

5 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、お客様に充分満足していただける製品を追求し、その創造と拡大にチャレンジすることを基本に、既存事業における技術開発及びそれを支える基盤技術開発、ならびに業容を拡大するための新商品開発を積極的に行っております。

なお、研究開発費は、総額で712百万円であり、その内訳は、交通事業部313百万円、産業事業部97百万円、情報機器事業部30百万円、その他(共通)270百万円であります。

 

当連結会計年度の主な開発成果は、以下のとおりです。 

 (1) 交通事業部門

 ① 燃料電池試験車用高周波絶縁型DC-DCコンバータ装置の開発

従来製作した燃料電池用装置は双方向チョッパ回路のみで構成されていたため、燃料電池を含むすべての回路が架線電圧であるDC1500Vの高圧回路となり絶縁距離確保や機器の大型化が問題でしたが、高周波絶縁型のDC-DCコンバータ回路を適用することにより、燃料電池側がDC750V未満の低圧回路となって装置の小型化が実現しました。

 

 ② 昇降圧チョッパGTOインバータ方式車両用電源装置更新用制御ユニットの開発

約30年前に製品化された昇降圧チョッパGTOインバータ方式車両用電源装置は、使用される圧接構造のGTO素子寿命が非常に長い一方で、制御ユニットの集積回路部品寿命が短く、装置更新需要対応のネックとなっていました。今後拡大する更新需要に応えるべく、形状・インターフェイス互換で従来品と交換可能な制御ユニットを現行品の集積回路部品を用いて新規に設計製作・動作確認を実施しました。

 

 ③ 鉄道車両用シングルアーム形パンタグラフの開発

従来型シングルアームパンタグラフの枠形状と各部設計を見直し、品質およびメンテナンス性の向上を図りました。上下枠の断面形状は溶接品の角パイプからシームレス丸パイプに変更し、溶接個所の削減と降雪時の動作不良対策も実施しました。併せて主ばねやバランスロッドのサイズアップ、軸受の変更など、寿命延伸を考慮した設計を適用しました。

 

 (2) 産業事業部門

 ① 次期標準インバータの開発

現行標準インバータVF66シリーズの次期標準インバータとしてVF100シリーズの開発を進めており、その内、小容量機種(2.2~7.5kW)の開発は既に完了しました。

VF100シリーズは、制御盤収納を前提とした構造とし、小容量機種ではVF66シリーズよりも設置面積を大幅に削減しました。さらに、長寿命部品の採用や、板金部材の変更による耐環境性の強化を行い、お客様のメンテナンスコスト低減を図っています。

今後は、開発を完了した小容量機種をベースに、容量・機能・性能をさらに広げて開発を進めます。

また、カーボンニュートラル実現のコア製品として、永久磁石同期電動機EDモータを提供していますが、さらなる高効率化を目指した次期EDモータの開発も進めていきます。

 

 ② 1000V級直流電源装置の開発

急速なEV化の中で、バッテリー容量の増加に伴い、充電時間を短縮するため高電圧化に移行する動きがあります。当社も、自動車試験装置に適用するため、バッテリー急速充電やバッテリーシミュレータに対応した、1000V直流電源装置を開発中です。現在、VF66シリーズの直流電源装置、開発中の690Vインバータの設計を取り入れ推進し、試作機製作および評価試験の準備中です。

また、大容量の加工機システム適用を目的に開発している、690Vモータ、インバータ・コンバータを含め、高電圧産業製品のラインナップの拡充を進めていきます。

 

 (3) 情報機器事業部門

 ① チケットレスシステムの開発

磁気券やICカードなどの媒体に代わるチケットレスシステムを目指し、個人所有のスマートフォンを利用した乗車システムを検討し試作および評価を行ないました。運用や利用料などの面で解決すべき課題が判明しましたが、スマートフォンを利用したシステムは今後増えていくことが期待されます。今年5月の鉄道技術展で参考出展したスマートフォンを利用した「スマート車補」は乗車システムではありませんが、スマートフォンを利用した車内補充券発行システムの一例です。今後もスマートフォンなどを利用した次世代に向けたシステムの開発・提案を進めていきます。

 

 ② AI技術の調査およびAI搭載システムの試作

AIを適用した画像認識の技術について調査を行い、実際に社内食堂内の混雑状況を画像認識により表示するシステムを試作し評価しました。

画像認識の判定結果を画面上の座席に正しく表示することができたため、目的に合わせた画像認識精度のモジュールを選定すればシステムとして実用化も可能であることを確認しました。

今後は画像認識だけではなくデータ分析、データサイエンスの分野にも取り組んでいきます。

 

 (4) 事業開発部

 ① IoT端末の開発と機能拡充

当社製品IORemoterⅡ(クラウド型遠隔監視・制御システム端末ユニット)を鉄道車両用VVVFインバータ装置に適用し、鉄道車両用電機品のIoTシステム(システムデザインとプログラム)を開発しました。現在、京成電鉄様に試験的に搭載させて頂き、リアルタイムにデータを採取し確認できることを実証しております。

産業分野においては、工場のラインモニタシステムを開発しました。工場内ラインに設置することで、遠隔地からWebブラウザによって状況確認することが可能となり、また消耗品の管理機能も付加しているため、お客様の利便性を更に向上しました。

現在開発中の5G対応次世代端末開発は順調に推進中で、実適用の経験もフィードバックし基本的なデザインを完了しています。今期には量産試作が完了する予定です。

 

 ② 分散電源

系統連系インバータVF66Gに、停電時の非常用電源として使用する自立運転機能があります。従来は三相出力のみでしたが、近年需要が高まっている、携帯電話やバッテリー、照明器具などへの電力供給に応えるため、単相出力機能を追加したソフト開発を行いました。

 

  ③ EDM海外生産対応  

中国に設立した合弁会社「中稀東洋永磁電機有限公司」で生産開始した永久磁石型同期電動機(CTEDM)は、IP55、GB規格に適合し、効率においても1級を取得(19型・27型・31型 脚据え置きタイプ)しました。

7.5kW~200kWのシリーズ設計完了に向けて、22型(22kW・30kW)と35型(160kW・200kW)標準タイプ(電動ファン・PGセンサ付き)の開発を進める以外に、市場要求の高い自己ファンタイプ(センサレス)、ファンレスタイプ(センサレス)を製品化するため、設計のサポートを行っています。また、回転数も標準の1500回転に加え、1000回転シリーズも2022年中に設計完了する予定です。

さらに、モータ設置方法としてGB規格に準拠したフランジタイプの開発も、お客様からの引合を受けながら、シリーズ化に向けて設計対応をしています。

 

 (5) 研究所

 ① IE5対応小容量PMモータの開発

世界規模で省エネルギー化への関心が高まる中,モータの高効率化が注目されています。1.5kW,1500min-1,200Vの永久磁石モータに対してCAE(Computer Aided Engineering)による磁界解析を駆使して、極数・スロット数の最適化、ステータ巻線の占有率の向上、鉄損の低減、小型化を図り、ファンレスの自然空冷でモータを設計しました。試作機において国際高効率規格の最高レベルであるIE5(1.5kWの場合は90.4%)を大きく上回る93.0%を実現しました。

 

 ② 高速スキャナー式角線レーザー溶接調査

脱炭素社会を目指し急速に進行する電動化に対応してモータを大量生産するための自動化が必要で、コイル材には平角線を使用することのメリットが大きいとされています。平角線コイルを結線するための方式として、当社ではガルバノスキャナを用いたレーザー溶接の検討を進めています。モータに適用可能なサイズの平角線で溶接試験を繰り返し、高速かつ安定した品質の加工が可能であることを確認しました。

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