業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用したことに伴い、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに関する説明における前連結会計年度末や前年同期との比較は、当該会計基準等を適用する前の前連結会計年度の連結財務諸表を基礎に算定しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載しております。

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの世界的流行の継続、ウクライナ情勢の長期化等による地政学リスクの増大などに伴う、世界的なサプライチェーンの混乱、半導体等に関する各種材料や部品の供給不足による価格の上昇や納期の長期化、そして各国におけるインフレ抑制に向けた金融引締めに伴う景気後退懸念の高まりなど、世界経済の先行きに対する不透明感が高まりました。

当社グループを取り巻く事業環境は、半導体業界においては、ファウンドリーやロジックメーカーによる先端投資が活発化するとともにメモリ投資も高水準で推移しています。エレクトロニクス業界においては、5Gの普及に伴うスマート社会化の実現に向けた各種電子デバイス投資、グリーンエネルギー化やEV化進展等に伴うパワーデバイス投資、その他中国のエレクトロニクス国産化に向けた投資が活発化しています。フラットパネルディスプレイ(FPD)業界においては、タブレットやPC、車載用などのITパネル用液晶投資が活発化するとともに、スマートフォンやタブレットなどについての液晶から有機ELディスプレイ(OLED)へのシフトに対応した投資も継続しています。さらに、タブレットやPC、医療用・車載用・ゲーム用の有機EL大型基板量産開発への取組みもみられます。

なお、新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大の継続による各国の移動制限などにより、世界各地で事業を展開している当社グループの事業にも影響が出ておりますが、状況に応じた必要な対策を講じることで、事業活動への影響を最小限にとどめるよう努めてまいりました。

その結果、当連結会計年度につきましては、受注高は2,700億95百万円(前年同期比711億86百万円(35.8%)増)、売上高は2,412億60百万円(同582億50百万円(31.8%)増)となりました。また、損益面では、営業利益は300億61百万円(同128億64百万円(74.8%)増)、経常利益は322億円(同142億34百万円(79.2%)増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は202億11百万円(同53億81百万円(36.3%)増)となりました。

 

企業集団の事業セグメント別状況は次のとおりであります。

 

「真空機器事業」

真空機器事業を品目別に見ますと下記のとおりです。

 

(FPD製造装置)

ITパネル用液晶投資やスマートフォンやタブレット用の有機ELパネル投資により、受注高、売上高ともに前年同期を上回りました。

 

(半導体及び電子部品製造装置)

半導体製造装置は、メモリについての投資の継続やロジック向け投資の活発化により、電子部品製造装置は、パワーデバイスやオプトデバイス、センサーなどの投資活発化や中国のエレクトロニクス国産化に向けた商談活発化などにより、受注高、売上高ともに前年同期を上回りました。

 

(コンポーネント)

半導体製造装置、電子部品製造装置、EV用バッテリー向けの真空ポンプ、計測機器、電源機器などの受注が好調に推移し、受注高、売上高ともに前年同期を上回りました。

 

(一般産業用装置)

自動車部品製造用真空熱処理炉、高機能磁石製造装置や漏れ検査装置などの受注が好調に推移し、受注高は前年同期を上回りましたが、売上高は前年同期を下回りました。

 

その結果、真空機器事業の受注高は2,241億16百万円、受注残高は1,073億60百万円、売上高は2,000億98百万円となり、271億29百万円の営業利益となりました。

 

「真空応用事業」

真空応用事業を品目別に見ますと下記のとおりです。

 

(材料)

半導体、電子デバイス及びFPD関連の装置稼働率上昇により、受注高、売上高ともに前年同期を上回りました。

 

(その他)

表面分析機器関連や高精細・高機能ディスプレイ向けマスクブランクス関連が好調に推移し、受注高、売上高ともに前年同期を上回りました。

 

その結果、真空応用事業の受注高は459億78百万円、受注残高は128億9百万円、売上高は411億62百万円となり、29億30百万円の営業利益となりました。

 

また、当連結会計年度末の財政状態は以下のとおりとなりました。

資産合計は、前連結会計年度末に比べ615億43百万円増加し、3,543億4百万円となりました。これは、当社グループの中期経営計画の施策のひとつであるキャッシュ・フローマネジメントの強化により、営業キャッシュ・フローが改善したことで現金及び預金が264億96百万円、受注増加を主な要因として受取手形、売掛金及び契約資産が200億42百万円、棚卸資産が122億82百万円それぞれ増加したことなどによります。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ387億58百万円増加し、1,578億20百万円となりました。これは、受注増加を主な要因として支払手形及び買掛金が189億57百万円、契約負債が125億87百万円増加したことなどによります。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ227億86百万円増加し、1,964億84百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上を主な要因として利益剰余金が149億41百万円、円安の影響により為替換算調整勘定が81億50百万円それぞれ増加したことなどによります。この結果、自己資本比率は53.3%となりました。今後もキャッシュ・フローマネジメントの強化等により、財務基盤のさらなる強化を目指してまいります。

 

②キャッシュ・フロ-の状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりとなりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費等の計上に加え、受注が増加傾向にある中で、資金効率改善を目標としたキャッシュ・フローマネジメントの強化等によるキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の改善もあり、339億31百万円の収入となりました。中期経営計画において2022年度の目標として掲げている営業キャッシュ・フロー290億円の実現に向けて、引き続きキャッシュ・フローマネジメントの一層の強化に努めてまいります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出などの減少要因に対し、関係会社株式の売却による収入などの増加要因により、74億32百万円の支出となりました。

その結果、フリー・キャッシュ・フローは264億98百万円のプラスとなりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、創出したフリー・キャッシュ・フローを配当金の支払などに充当し、64億45百万円の支出となりました。

以上に加え、円安による為替影響39億91百万円のプラスもあり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ240億44百万円増加し、1,071億6百万円となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高

(百万円)

前年同期比

(%)

真空機器事業

203,902

132.2

真空応用事業

41,205

129.7

合計

245,107

131.8

 (注)金額は、販売価格をもって表示しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

真空機器事業

224,116

135.4

107,360

135.6

真空応用事業

45,978

137.9

12,809

186.5

合計

270,095

135.8

120,169

139.7

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高

(百万円)

前年同期比

(%)

真空機器事業

200,098

132.3

真空応用事業

41,162

129.7

合計

241,260

131.8

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な品目別販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。

セグメントの名称

品目

当連結会計年度

販売高

(百万円)

割合

(%)

真空機器事業

FPD製造装置

81,327

40.6

半導体及び電子部品製造装置

67,799

33.9

コンポーネント

30,183

15.1

一般産業用装置

20,790

10.4

200,098

100.0

真空応用事業

材料

21,904

53.2

その他

19,258

46.8

41,162

100.0

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの経営成績については、売上高は2,412億60百万円(前年同期比31.8%増)となりました。FPD製造装置においては、タブレットやPC、車載用などのITパネル用のLCD投資が活発化したことに加え、スマートフォンやタブレットなどのOLED投資も継続したことにより受注高及び売上高が増加しました。半導体及び電子部品製造装置においては、メモリ向け投資が継続していることやロジック向け投資が活発化していることに加え、電子部品関連ではパワーデバイス、オプトデバイスなどの受注増により、部品の長納期化の影響はあるものの、売上高が前年同期に比べて増加しました。

営業利益率12.5%(前年同期比3.1ポイント増)となり、前年同期から大きく改善しました。これは、中期経営計画の取組みであるモノづくり力強化の成果と、売上高の増加が主な要因です。

なお、研究開発費の総額は103億40百万円となり、前年同期から19億65百万円増加しました。研究開発費の売上高に対する比率は、売上高の増加により、前年同期から0.3ポイント減少し4.3%となりました。研究開発力強化は、中期経営計画における主な取組みのひとつであり、将来の成長に向けた投資を引き続き強化しております。

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、当社グループは2021年6月期を初年度とする3年間の中期経営計画「Breakthrough 2022」を推進しております。この中期経営計画において、「成長に向けた開発投資(選択と集中)」及び「体質転換による利益重視の経営」の2つの基本方針を掲げております。この方針のもと、売上高、売上総利益率、営業利益率、ROE(自己資本利益率)、営業キャッシュ・フローを中期経営計画上の財務モデルにおける指標としております。

中期経営計画3年目の数値目標について、2022年8月に修正を行いました。修正後の数値目標は、売上高2,500億円(修正前目標2,350億円)、売上総利益率33%(同35%以上)、営業利益345億円(同380億円)、営業利益率13.8%(同16%以上)、ROE12%(同13%以上)、営業キャッシュ・フロー240億円(同290億円)としております。この財務モデルの達成に向けて、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載した具体的取組みにより、中長期の視点で更なる成長を目指してまいります。

セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

・真空機器事業

当連結会計年度における当セグメントの事業環境は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

売上高は、前年同期比32.3%増の2,000億98百万円となりました。FPD製造装置において、ITパネル向けなどのLCD装置及びOLED装置の受注が増加したことが主な要因です。加えて、半導体及び電子部品製造装置においても、メモリ向け、ロジック向けの半導体製造装置の受注増加や、電子部品関連ではパワーデバイスやオプトデバイス向けなどの受注が増加したことなどにより、売上高が前年同期を上回りました。

セグメント利益率については、当連結会計年度は13.6%と、前年同期の10.3%から改善しました。これは、FPD製造装置や電子部品製造装置において、中期経営計画の取組みであるモノづくり力強化の成果が出ていることに加え、売上高の増加が主な要因であります。

 

・真空応用事業

当連結会計年度における当セグメントの事業環境は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

売上高は、前年同期比29.7%増の411億62百万円となりました。半導体、電子デバイス、FPD関連の顧客工場の稼働率上昇による材料における売上増加や、表面分析機器、高精細・高機能ディスプレイ向けマスクブランクス関連の売上高増加により、当セグメントの売上高が増加しました。

セグメント利益率については、当連結会計年度は7.1%と、前年同期の6.8%から改善しました。これは、利益率の高い製品の売上高増加が主な要因であります。

財政状態の分析は「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの主な資金需要は、新たな成長戦略の足がかりとなる研究開発投資や設備投資、事業により生じる運転資金に基づくもので、とりわけ成長事業として強化を図っていく半導体や電子分野の開発投資を拡大する予定です。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金などにより対応し、資金調達にあたっては、リファイナンスリスクの低減や返済負担の軽減を図るために、年度別の返済額の平準化に努めております。

また、新型コロナウイルスの世界的流行、ウクライナ情勢の長期化等による地政学リスク増大等、先行きが不透明な中、不測の事態に備え十分な手元流動性資金を確保するとともに、コミットメントラインを設定し追加資金を確保できる体制を整えており、当面安定的な経営が可能な状態にあります。事業環境の急激な変化にも対応できるよう、引き続き、適時に必要資金を確保できる体制を維持してまいります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りの仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。

 

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