事業等のリスク

2【事業等のリスク】

以下において、当行及び当行グループ(当行並びにその連結子会社及び関連会社)の事業その他に関するリスクについて、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。なお、当行は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)経営戦略に関するリスク

①.当行の経営戦略について

当行グループのビジネスモデルは、当行グループが提供する商品・サービスに強みがあり、成長性・収益性が見込まれる分野を、小口ファイナンス及び機関投資家向けビジネス、海外ビジネスと位置づけ、積極的に経営資源配分を行うことを企図しております。こうしたビジネスモデルの実践は、当行グループが長期的・継続的に利益を上げるために有効であると考えておりますが、その理解が正しいという保証はありません。また、「新生銀行グループの中期ビジョン」では、中期ビジョン実現のための基本戦略の1つとして「グループ内外の価値共創の追求」を掲げ、SBIグループ及び当行グループの各社が持つ顧客基盤、金融機能、サービスを真にお客さまの視点で結びつけ、従来の発想を超えた商品やサービスを開発・提供することに取り組んでまいりますが、これが持続可能となるためには、提供される当行グループの商品・サービスがお客さまに受け入れられ支持されることが前提となります。さらには、今後、経営環境、顧客ニーズ、SBIグループ及び当行グループの財務状況等が当初想定と異なる状況となった場合には、中期ビジョンの達成が困難となり、見直しが必要となる可能性があります。

 

②.法人向け銀行業務の戦略的拡充について

当行は、法人向け銀行業務の拡充のため企業向け貸出及び貸出以外の業務を強化する戦略を掲げております。当行がかかる戦略を実行するに際しては、わが国経済全体の景気動向に加えて、以下のようなリスク及び課題があります。

・法人顧客ベースの規模が、国内大手銀行グループより小さいため、既存の顧客に対する貸出増強には限界がある可能性があります。

・わが国の銀行業界における過当競争により、他行の貸出利率が当行が考えるリスク見合いより低い水準となった場合、新規融資獲得における競争力に欠けることがあります。

・わが国の銀行業界における競争が厳しいことから、貸出利率における利幅の拡大や債務者のリスクに応じた適切な貸出金利設定が困難となる場合があり、全体としての取引関係の維持及び関連業務の獲得のため、当該顧客の信用格付に鑑みて適切と判断される利率より低い貸出利率で貸付を実行しなければならないことがあります。

・当行が経営資源を投入しているプロジェクトファイナンス、ノンリコースローンやレバレッジドファイナンス等の新しい貸出形態を含むオルタナティブ投資は、更なる成長やその収益性の維持・拡大が保証されているわけではありません。

・貸出以外の業務の一部で、国内大手銀行グループや証券会社、外資系金融機関との競争激化により、想定した収益の獲得が困難となることがあります。

・政府並びに政府系金融機関が企業再生を主導・関与することにより、企業再生に対する融資及びアドバイザリー業務の機会が縮小したり、収益性が低下したりする可能性があります。

・当行が重点的に取り組もうとしている特定の業種・分野について、今後の社会環境の変化や経済動向等に伴って当初想定していた成長が見込めなくなる等といった事態が発生することにより、業務戦略の一部見直しが必要となる可能性があります。

 

③.リテールバンキング業務の戦略的拡充について

当行は、リテールバンキング業務において、継続的に必要な人員及び情報システムに多大な経営資源を投入してきております。当行のリテールバンキング業務を将来に亘って拡大していくに当たっては以下のような課題があります。

・当行は、順調に顧客基盤を拡大してきましたが、メガバンクと呼ばれる他の大手銀行と比較した場合には、相対的にリテール顧客基盤の規模がまだ小さいため、当行が企図する収益性を実現できない可能性があります。

・当行は、ニューノーマル(新しい常態)に向けて、これまでの店舗のあり方やお取引の方法を見直し、お客さまとスタッフが時間や場所に縛られない新しい接客サービスの構築を進めており、既存の物理店舗と、デジタル技術等を活用したリモートチャネルを組み合わせながら、個人のお客さまのさまざまなニーズに対して最適なサービスの提供に取り組んでおりますが、競合他社もこうしたサービスを提供し、或いは提供しようとしており、これにより、他社との差別化が困難となる可能性があります。

・当行が提供する資産運用商品や、住宅ローン等のローン商品が、お客さまの嗜好の変化等によって受け入れられない可能性があり、当行はこうした局面に適切に対応していく必要があります。

・将来の法令及び規制等や行政処分が当行のリテールバンキング業務の成長を阻害する可能性があります。

 

④.コンシューマーファイナンス業務の経営環境について

当行は、2004年度以降事業会社の買収(子会社化)や事業譲受を通じて、中小企業向け融資、消費者金融(個人向け無担保ローン)及び個品割賦市場等に参入し、これらの業務を拡大してきました。

当行及び当行子会社によるコンシューマーファイナンス業務において我々が直面している課題には、関連する法改正等により大きく変化した事業環境下、いくつかの商品の市場規模がピーク時から比べ縮小するとともに、異業種・業態の参入もしくはボーダーレス化により更に競争が激化している中で取扱量を維持・向上させること、成長市場においては新たな商品・スキーム・IT化促進への取り組みが不可欠なこと、引き続き取引先との緊密な関係を維持する必要があること、並びに当行及びグループ各社の業務の効率性を向上させるために、各社が保有する機能や業務ノウハウの連携や統合をより一層進める必要があること等が含まれます。

当行子会社によるコンシューマーファイナンス業務については、上限金利及びいわゆる「グレーゾーン金利」の取扱に関する法令及び規制等の変更により影響を受け、当行は2007年3月期以降、必要に応じて株式会社アプラス(「事業等のリスク」においては、同社、傘下の子会社及び株式会社アプラスインベストメントを包括して「アプラス」という。)及び新生パーソナルローン株式会社(旧商号:シンキ株式会社、2016年8月社名変更。以下「新生パーソナルローン」という。)についてのれん及び無形資産の減損並びに投資損失の計上を実施いたしました。アプラスはこれまで一連の経営変革を行い着実に収益を伸長してまいりましたが、コンシューマーファイナンス業界の経営環境の悪化等により、十分な収益を確保することが出来なくなった場合、または、新生パーソナルローンがコンシューマーファイナンス業界の経営環境の変化に対応するために採る方策が十分でない場合、コンシューマーファイナンス業務が当行グループの経営成績に将来に亘って悪影響を与え続ける可能性があります。(法令及び規制等の変更については下記(7)③.をご参照ください。)

また、債務者一人当たりに対する全貸金業者からの貸付可能総額についての上限を定める総量規制も、貸金業者一般にとって業務上大きな制約となっております。返済期限を迎えた個人向け無担保ローンの債務者は、借り換えが不可能な場合、かかる返済金の支払ができなくなる可能性があります。こうした債務者は複数の貸主から借入れを行っておりますが、法改正が行われて以降、新生フィナンシャル株式会社(旧商号:GEコンシューマー・ファイナンス株式会社。以下「新生フィナンシャル」という。)を含む多くの貸金業者は、厳格化された信用査定基準に従って、これらの債務者に対する追加貸付を制限しております。現時点では顕著な影響を与える現象は生じていないと認識しておりますが、こうした債務者が貸金業者から借入れを続けることができなくなると、アプラス、新生パーソナルローン及び新生フィナンシャルからのローンも含め、既存のローンについて債務不履行となる可能性があります。

これらの法令等の変更を受けて、アプラス、新生パーソナルローン及び新生フィナンシャルは必要に応じて過払金返還及び貸倒損失に関する追加の引当て(詳細は下記(6)①.をご参照ください。)を実施しておりますが、今後、さらなる業務規制が課せられた場合、当行グループのコンシューマーファイナンス業務が影響を受ける可能性があります。

 

⑤.当行グループの無担保カードローン事業の展開について

当行グループでは、お客さまのニーズに合わせて、銀行カードローンのニーズがあるお客さまに対しては当行の「新生銀行スマートカードローン プラス」を、消費者金融商品のニーズがあるお客さまに対しては新生フィナンシャルの「レイクALSA(アルサ)」(以下「アルサ」という。)を提供しております。(なお、当行で扱っていた消費者金融商品である「新生銀行カードローン エル」は2018年3月末に、新生パーソナルローンで扱っていた「ノーローン」は2020年6月末に、それぞれを以って新規申込の受付を停止しており、そのときまでにご契約いただいたお客さまに対してのみ、引き続き各々でサービスを提供しております。)

アルサでは、従来の消費者金融商品の顧客層に加えて、デジタルリテラシーの高い、若年層のお客さまに向けた商品開発やマーケティングに力を入れております。

貸金業法改正による規制の強化等により、2006年以降、貸金業者による消費者向け貸付残高は大幅に減少した一方、当該規制等の対象外である銀行カードローン残高が増加し過剰な貸付け等が問題視されたことを背景に、銀行による消費者向け貸付けについて、貸金業法の趣旨を踏まえた態勢整備の一層の徹底が求められています。当行では、無担保カードローン事業を注力分野の一つと位置づけ、お客さまのニーズに基づく商品の再構築を行い、貸金業法の趣旨に則った運営を行うとともに、新生フィナンシャルおよび新生パーソナルローンでは貸金業法に基づく厳格な運営を行うことで、社会的に責任ある貸し手として、無担保カードローン市場の健全な形成に寄与してまいります。また、2022年4月からの成人年齢引き下げに関しましても貸金リテラシーを重視した対応を行ってまいります。

新生フィナンシャルは、新たな商品の取り扱いに加え、当行本体による個人向け無担保ローンについての保証サービスを継続するとともに、他の金融機関向けの信用保証業務に注力し、今後とも安定的な収益を上げ、さらなる成長を図っていく方針です。

当行グループは、上記事業を展開することにより、収益力の向上とコンシューマーファイナンス業界での確固たる地位の構築を目指してまいりますが、個人のお客さまのニーズの変化、法令等の規制動向、同業他社との競合状況等により、当初目標を達成することが困難となり、または事業展開の再検討が必要となる可能性があります。

 

⑥.金融商品及びサービスの範囲の拡大について

当行の主要な事業戦略は、アプラス、昭和リース株式会社、新生フィナンシャル等のグループ会社とともに、業態を超えた新しい発想による顧客価値の創造にあります。その過程で金融商品、サービス及び投資活動の範囲を拡大したり、引き続き適正なリスク管理の下、様々な資産への投資を検討したりする可能性があります。それら事業活動拡充を行う場合には、以下を含むリスク及び課題があります。

・新規の業務活動は、見込みどおりとは限らず、また、収益を生むものとなる保証もありません。

・当行は、新規事業活動を監督し、指導することのできる人材を獲得し、継続的に雇用することが必要となります。

・情報システム、特に顧客が直接にアクセスできるサービスをさらに拡充する必要があります。

 

⑦.海外業務の拡大によるリスクについて

当行の業務の大部分は日本国内におけるものですが、その他の市場における事業・投資の可能性について選別的に検討しております。

例えば、ユーロ債の引受け及び資本市場のアドバイザリー業務を行うShinsei International Limited(在英国子会社)の設立、海外での不良債権の買取・再編並びに処理を専門に行う合弁会社の設立や、台湾の金融持株会社である日盛金融控股股份有限公司に対する戦略的投資を行い(2021年3月にエグジット)、さらに、自己勘定によるトレーディング・投資業務を拡大し、米国住宅ローン市場関連、その他の米国・欧州向けを中心としたアセットバック投資等の海外投融資を増加させてまいりました。しかしながら、サブプライム・ローン問題等による世界的な金融市場の混乱の中、海外投融資に係る損失の計上を余儀なくされたことから、当行としては、海外業務の見直しを含む経営資源の戦略的な再配分を行っており、これらリスクの高い海外投融資を縮小してまいりました。

一方で、近時は、アジア・オセアニア地域を中心とした優良案件に対する買収を含めた取り組み強化や地場の金融機関との提携等、限定的ながら海外での業務展開を推進しているところであります。例えば、ニュージーランド最大手のノンバンクであるUDC Finance Limitedを買収(完全子会社化)し、オーストラリアのコンシューマーファイナンスのリーディングカンパニーであるLatitudeグループと資本業務提携しました。

当行が海外において行う業務活動は、以下のような一般的に国際的な業務及び投資に関連するリスク及び課題に直面する可能性があります。

・外貨建資産及び負債に関連する金利及び為替リスク

・外貨資金調達が困難になった場合、外貨資金繰りが不安定化するリスク

・法制度・取引慣行等の相違や事前調査の制約に起因する想定外の事象が事後的に判明・発生することによる、対応費用や課徴金等の発生及び与信関連費用が増加するリスク

・紛争や経済制裁措置の発動等に伴う、当該国でのビジネス機会の縮小・喪失及び対応費用が発生するリスク

・金融サービスの提供及び直接投資に関連する税務及び規制環境の相違

・社会的、政治的及び経済的な状況の変化

・専門人材の不足や確保の困難化により競争力が低下するリスク

・能力があり、地域市場の知識の豊富な従業員の雇用の必要性

このようなリスクは、当行グループとしての投資経験の浅い資産及び地域に投資する場合に高まる可能性があります。

 

(2)信用リスク

①.貸倒引当金の十分性について

当行グループは、顧客の状況、差し入れられた担保の価値及び経済全体の見通しに基づいて、貸倒引当金の額を決定しています。実際の貸倒損失は、予測したそれと大きく異なり、引当額を大幅に上回り、貸倒引当金が不十分となる可能性があります。また、経済状況の悪化により当行が前提及び見通しを変更したり、担保価値が下落したり、またはその他の要因により予測を上回る悪影響が生じた場合には、貸倒引当金を増やす可能性があります。

例えば、利上げによる長期金利の急上昇を通じた不動産価格の下落に伴う不動産ノンリコースローンの信用リスクの増加や、新型コロナウイルス感染症がもたらす資源価格や物流コストの上昇、半導体不足、環境変化を始めとする影響の長期化、新たなパンデミックや大規模自然災害等の発生、ロシア・ウクライナ情勢等の地政学リスクの発現に伴う経済活動の停滞、さらには景気後退により、株安、業績不振や雇用悪化が生じ、企業倒産件数や失業者数の増加に伴う貸出金の信用リスクの増加等は、貸倒引当金を増やす可能性があります。これらのリスクに関して、当行はシナリオ分析による想定損失額や自己資本(比率)への影響を把握しており、事象発生時に想定される財務上の影響が、危機的な規模には達せず、自己資本・資金流動性等について一定水準を確保できることを確認しております。不動産市況の悪化のリスクに関しては、国内外の市況・ビジネス動向を定期的に把握し、取組方針レビューを行う取り組みに加え、マクロ経済指標や市場・規制動向等の変化に基づくリスクヒートマップや影響度分析等の予兆管理を実施するとともに、与信制御手段の適切な発動や機動的見直しを行う態勢整備を行っております。

当行グループは、現状の貸倒引当金計上額で、当行グループが認識する信用リスクから発生しうる損失を十分にカバーしていると考えておりますが、今後、これら以外に信用リスクからの損失が発生しない保証はありません。

 

②.ローン・ポートフォリオにおける与信集中について

2022年3月末現在、連結ベースで当行グループの上位10位までの貸出先は、当行グループの有する貸出金の約6%を占めており、かかる主要な取引先の業績悪化または当行との関係の著しい変化により、当行及び当行グループの業績及び財政状況が悪影響を受ける可能性があります。

2022年3月末現在、当行グループの有する貸出金残高のうち、連結ベースで最も高い集中度を示しているのが約15%を占めている不動産業分野でありますが、そのうち約3割はノンリコースローンであります。また、金融・保険業分野の占める割合は約10%でありますが、そのうち消費者金融会社向けの貸出金は、金融・保険業分野に対する貸出金の約18%、当行グループの有する貸出金の約2%をそれぞれ占めています。これらの分野において、業界全体の低迷や不動産市況の悪化等が生じた場合には、当行及び当行グループの業績及び財政状況が悪影響を受ける可能性があります。

 

③.自己資本比率規制について

当行は、銀行法及び金融庁長官の告示に基づく自己資本比率規制に服しており、2022年3月末における連結自己資本比率11.72%(バーゼルⅢ(国内基準)ベース。詳細は後述。)となっております。当行は、海外に支店等の営業拠点を有しない銀行として、自己資本比率を4.0%以上に保つことが義務付けられておりますが、「事業等のリスク」に記載する各種リスクの顕在化等により、自己資本比率は低下する可能性があります。この最低比率を維持できない場合には、当行は行政処分を受ける可能性があり、間接的に当行の業務遂行能力に影響を受ける可能性があります。当行が将来追加的な資本を必要とする要因としては、以下のようなものがあります。

・将来における重要な事業または資産の取得:当行は、コンシューマーファイナンス業務等を買収によって拡大してきました。また、不良債権やその他の金融資産の市場にも積極的に参加してきました。当行が将来、魅力的な機会を見出した場合、当行はこれらの機会を追求するために必要な追加的な資本を必要とする可能性があります。

・政府の保有する当行株式の取得:政府は、2022年3月末現在、当行の普通株式46,912,888株を保有しております。当行は、政府が保有する株式を買い取る義務を負っていませんが、かかる買取り(自己株式の取得)を行えば、当行が現在負っている金融庁への健全化計画の提出及び履行状況の報告の義務がなくなります。かかる買取りを行おうとする場合、当行は追加的な資本を必要とする可能性があります。

・バーゼル銀行監督委員会による自己資本に関するバーゼル合意(バーゼルⅢ)に沿った自己資本比率規制では、当行は国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出において基礎的内部格付手法を採用しておりますが、内部格付手法においては債務者の信用状況の悪化等により所要規制資本が増大する可能性があります。

・かかるバーゼルⅢにおける国内基準は2014年3月末から適用が開始されておりますが、経過措置を導入して十分な移行期間を確保しながら段階的に実施されています。当行は、継続的にビジネスを安定的かつ円滑に展開していくため、バーゼルⅢの規制枠組みの達成を念頭に置いた自己資本の量・質の向上を図っていく所存であります。

・上記の自己資本比率規制のさらなる高度化や見直しに加えて、レバレッジ比率規制や流動性規制をはじめ、新たな規制強化策の導入が決定または議論されていますが、かかる規制強化策が将来適用された場合、規制の内容によっては、当行の業務運営や業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

しかしながら、当行が、かかる状況に対処するため、またはその他の理由によりさらなる追加的な資本増強を必要とした場合に、適切な時期にそれを行えず、または資本増強が困難な状況に直面した場合、当行によるビジネスチャンスの追求や事業戦略の遂行は制約される可能性があります。

 

(3)市場リスク

①.マーケットの変動及び不安定要因による影響について

当行は、債券、株式、デリバティブ商品等の多種の金融商品に対し、日本の国内外において、広く取引・投資活動を行っております。これらの活動による業績は、金利、外国為替、債券及び株式市場の変動等により変動します。例えば、金利の上昇は、一般的に、債券ポートフォリオに悪影響を与えます。さらに、当行のポートフォリオ中の債券に対する信用格付の低下またはデフォルトは、当行業績に悪影響を与える可能性があります。当行が当行の取引・投資に関連して、将来において投資による損失を計上しない保証はありません。

また、近時では、2007年以降のサブプライム・ローン問題に端を発する世界的な金融・資本市場の混乱、2011年3月に発生した東日本大震災による日本経済の一時的な落ち込み、さらには2010年の欧州債務危機をはじめとした、いわゆるソブリンリスクの高まり、マイナス金利を含む金融政策の変更や2020年年初に顕在化した新型コロナウイルス感染症の影響の長期化、2022年2月の地政学リスクの高まり等、実体経済や金融市場の動揺を引き起こす事態が連続して発生しております。このような事態が発生した場合、貸出先顧客の破綻による貸倒等の損失の発生、貸出先顧客の信用力低下によるリスクアセットの増加、急激な株式相場の下落や長期金利の上昇に伴う債券価格の下落等による資産の目減り、優良な貸出先顧客の減少等に伴う貸出業務や投資銀行業務等における収益の減少、利鞘の縮小、地政学リスクを有する国の国債や株式を組み込んだ金融商品の価格下落や売却受付停止等が予想され、これらが当行グループの経営成績に悪影響を及ぼし、さらには、お客さまに最適なサービスを提供することが困難となり顧客離反が起きた場合、レピュテーションを毀損する可能性があります。

 

②.ローン及びその他の資産への投資に関するリスクについて

当行は、クレジットトレーディングや証券化業務において、住宅ローン、不良債権、売掛債権、リース資産等の多様な資産に対する投資を行っており、最終的には、これを回収、売却または証券化することを目的としております。そのため、特定の資産または特定の格付もしくは種類の有価証券を集中的に保有する場合があります。かかる営業資産から得られる当行の収益が予想より少ない場合(当行により証券化された資産のプールにおいて、当行グループ自身がその残余持分を保有している場合におけるその残余持分の価値の下落を含む)には、当行及び当行グループの損益及び財政面が悪影響を受ける可能性があります。また、こうした当行が取得できる資産の市場規模及びその価格は常に変動していることから、当行が魅力的な投資機会を常に得られるとは限らず、投資活動の結果が大きく変動する場合もあります。

 

(4)流動性リスク

①.資金調達について

近年、安定的な資金繰り運営を継続することを目的として、資金調達方法の多様化や、調達環境の状況に応じた流動性リスク指標のモニタリングを通じ、適切な流動性リスク管理に努めておりますが、以下のとおり、資金の効率的な調達が困難となるリスクがあります。

・今後、リテールバンキング業務及び同業務にかかる預金の営業基盤・顧客基盤が伸び悩む可能性があります。

・国内の公社債市場の変化や市況動向により、社債またはその他の債券を発行することに制限が生ずる可能性があります。

・日本銀行のマイナス金利を含む金利に係る方針の変更により、金融市場における資金需給が変化した場合、当行の資金調達は何らかの影響を受ける可能性があります。

・新たなパンデミックや大規模自然災害の発生や地政学リスクの発現等を端緒とした海外の金融市場の混乱や金融経済環境の悪化等により、資金調達の条件悪化を含め、外貨資金調達が不安定化、非効率化する可能性があります。

・人々の認識や市場環境の著しい変化により、資金調達のコストが増加し、または十分な流動性を確保することが予期に反して困難となる可能性があります。

 

②.信用格付の影響について

格付機関により信用格付が下げられると、銀行間市場での短期資金調達あるいは資本調達活動等において相手方との取引を有利な条件で実施できず、または一定の取引を行うことができない可能性があります。そのため、当行の資金調達コスト増加ないし流動性の制約、デリバティブ取引あるいは信託業務上の制約等により当行及び当行グループの損益・財務面が悪影響を受ける可能性があります。

 

(5)オペレーショナル・リスク

①.事務事故・不正等について

当行グループでは、幅広い金融業務において大量の事務処理を行っております。当行では、事務フローの改善、事務指導、研修等の実施や、表記方法の見直し等による手続内容の明確化等事務水準の向上にも努めており、具体的な事務管理策としては、事務処理状況の定期的な点検等により事務レベルをチェックする体制等を整えております。また、お客さま本位の業務運営に反した行為等のコンダクトリスクに対して、ミスコンダクト事案の広範な捕捉やリスク軽減策の実施等の管理体制の高度化にも努めております。しかしながら、こうした対策が必ずしも有効に機能するとは限りません。当行グループや外部委託先の役職員が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こした場合には、損失の発生、行政処分、レピュテーションの毀損等により、当行グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

2020年1月に、アプラスで取り扱う「投資用マンションローン」及び「提携型サポートクレジット」において、審査書類の改ざんや不自然な不動産評価があった等の一部報道がなされたことを受け、社外の弁護士を委員長とする特別調査委員会(以下「本委員会」という。)をアプラス内に設置し調査を進めた結果、収入証明書の改ざんが行われたと認定された案件が確認されました。アプラスの役職員の関与や、第三者評価機関の不動産評価がアプラス社内で改ざんされるなどの不正は認められず、第三者評価機関によって不当な不動産評価がなされたといった事実も認められませんでしたが、本委員会より、収入証明書の改ざんを生じさせた背景として、投資用マンションローンの商品設計・審査体制上の問題や、アプラスのガバナンス・内部統制の体制に関する問題が指摘されました。

アプラスでは、既に「投資用マンションローン」及び「提携型サポートクレジット」の取扱を停止しており、これまでもリスクコントロールの観点から、段階的に手続きや審査基準の厳格化を行っており、これが結果的には収入証明書の改ざん等の不正防止に一定の効果があったと考えられる旨を公表しておりますが、本委員会より再発防止策として、(ⅰ)今後の新規商品導入における商品特性の重視、(ⅱ)事業運営における審査機能の独立性確保、(ⅲ)事業者管理の再確認、(ⅳ)効率性とリスク管理のバランス、について提言を受けており、アプラスはこれをビジネス遂行全般の問題として真摯に受け止め、お客さまの保護、営業・審査等の体制面の強化、ガバナンス体制の見直しを重点に、再発防止に取り組んでいます。この「投資用マンションローン」及び「提携型サポートクレジット」の収入証明書の改ざんが、当行グループに及ぼした影響は限定的ですが、今後アプラスの再発防止策が有効に機能しなかった場合には、損失の発生、行政処分、レピュテーションの毀損等により、当行グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

2022年1月に、新生インベストメント・マネジメント株式会社は、投資一任業務における善管注意義務違反及び公募投資信託業務における善管注意義務違反、忠実義務違反の事実が認められたとして、金融庁より金融商品取引法第51条に基づき、業務改善命令を受けました。

2022年3月から4月にかけて、当行で2013年12月31日までに投資信託特定口座の取引を開始したお客さまの口座に関し、保有されていた投資信託の取得価額及び取得単価(以下「取得価額情報」という。)に誤りがあった口座が存在することが判明いたしました。対象特定口座の一部において、取得価額情報に誤りが存在する結果、投資信託の売却に伴う譲渡所得金額、国税・地方税等の金額及び源泉徴収後の入金額に誤りが生じていたことが判明しました。今後の対応により、損失の発生、行政処分、レピュテーションの毀損等により、当行グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

②.情報システムへの依存について

当行の業務の中でも、とりわけリテールバンキング業務においては、その業務戦略の一つとして、当行の情報システム及びインターネットにより顧客にサービスを提供しております。この方法は費用効率がよいものではありますが、当行の業務はシステムの容量及び信頼性に大きく依存しております。過去に、ATMやインターネットバンキング・サービス、あるいは他行宛送金取引における不具合が発生しました。これらについては原因の究明及び十分な再発防止策を講じており、今後同様の不具合を繰り返すことのないよう万全を期してまいりますが、顧客数及び取引数の増加またはその他の理由により、今後とも不具合やサービスの停止が生じない保証はありません。

当行のハードウェア及びソフトウェアは、人為的なミス、地震等の自然災害、停電、妨害・不正行為、コンピューターウイルス等によるサイバー攻撃またはインターネットプロバイダー、クラウドサービス事業者等の第三者からのサポートサービスの中断等により、損害を受け、または機能しなくなる、又は機密情報漏洩や、ハッキング・フィッシングを通じた銀行口座やウォレット等での不正利用や不正送金が増加する可能性があります。

当行の情報システムは、緊急性・重要性の高い業務についてのバックアップ機能を備えておりますが、これらの機能が十分である保証はありません。さらに、当行のバックアップ・プランは、サービスの大規模な中断時に生じるおそれのあるあらゆる偶発事象に対処できない可能性があり、レピュテーションや営業基盤の棄損等により、当行グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③.個人情報等の保護について

近年、企業や金融機関等が保有する個人に関する情報や記録の漏洩または不正アクセスに関する事件が多発しています。2005年4月より「個人情報の保護に関する法律」(以下「個人情報保護法」という。)が全面的に施行されたことに伴い、当行としても、個人情報を保有する金融機関として、個人情報保護法に従い個人情報の保護に努めております。しかしながら、万一事故があった場合、それによる損害に対し賠償を行わなければならない事態が発生し、または監督機関の処分を受ける可能性があります。さらに、そうした事故が発生することにより、当行の営業やブランドに対する一般の認識に悪影響が及ぶおそれがあり、その結果として顧客や市場の当行に対する信用が低下する可能性があります。

 

④.訴訟について

当行は、当行グループ全体の訴訟について一元的に管理を行い、グループの法務リスクの極小化に努めており、現在のところ経営に重大な影響を及ぼす可能性のある訴訟案件はありません。しかし、当行グループは銀行業務を中心にコンシューマーファイナンス業務(消費者金融業務、信販業務)、リース業務等の各種金融サービスを提供しており、このような業務遂行の過程で、損害賠償請求訴訟等を提起されたり、損害に対する補償をしたりする可能性があります。このような訴訟等の動向によっては、当行グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤.有能な従業員の雇用について

既存の市場における当行の地位及び顧客基盤を最大限活かすために、卓越した商品知識・技術及び専門的で豊富な経験や実績を有した従業員を採用し、活用することが事業戦略上重要であります。当行は、投資銀行業務、リテールバンキング業務や財務会計等のさまざまな分野において、豊富な実績と経験を有する従業員を必要としております。さらに、情報システムにおけるインフラを維持し、向上させるためには、熟練した技術者を雇用し、訓練し、かつ定着させる必要があります。これらに対して、兼業・副業を受入れ外部人的資源を活用し、データサイエンティスト等の専門コースの設定により専門人材を受入れる仕組づくりを構築しております。また、リファラル採用やアルムナイ制度による雇用経路の拡大、ニューノーマルに対応した多様な人材が能力を発揮できる柔軟な働き方の整備、グループ内での人材発掘、選抜、育成強化実践等の施策を打ち出しております。しかしながら、当行は、他の銀行のみならず、証券会社及びその他の金融機関との間で、このような従業員の採用において競合関係にありますので、当行が業務戦略遂行のための有能な人材を採用し、定着させられる保証はなく、当行グループの競争力低下、業績・財務状況への悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥.重要な経営陣の退社による事業への影響について

事業を引き続き成功させることは、当行の業務執行取締役や執行役員等、上級経営陣の業務能力にかかっています。上級経営陣の誰かの将来における退社が、当行の業務遂行に悪影響を与える可能性があります。

 

(6)財務面に関するリスク

①.コンシューマーファイナンス子会社における引当金について

「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(以下「出資法」という。)の上限金利を年20%に引き下げる改正(2006年12月成立、2010年6月施行)以前から、「利息制限法」は貸付金額に応じて年15%から年20%を、貸付債権に適用できる上限金利として定めていました。そして、「出資法」の上限金利と「利息制限法」の上限金利との差額は一般に「グレーゾーン金利」、超過利息あるいは過払金と呼ばれていました。「利息制限法」の下では、超過利息の支払を定める契約は、かかる超過部分に関して無効であるとされます。しかし、かかる利息制限にかかわらず、「貸金業法」では、超過利息の支払が任意になされ、かつ貸金業者が貸付実行及び返済に関する各種書面交付義務を遵守している限りは、「出資法」の上限金利以下であれば、超過利息の支払は有効であるとされておりました。

しかし、2006年1月の最高裁判所の判決では、超過利息の支払は原則として任意になされたものとはみなされないものとされました。(詳細は下記(7)③.をご参照ください。)

アプラス及び新生パーソナルローンは過払金返還及びそれに関連する貸倒損失について引当金を計上しておりますが、過払金返還のための引当てに関する2006年10月の日本公認会計士協会公表の監査委員会報告を適用した影響もあり、2006年9月中間期に、両社は引当金を増額しました。さらに、上限金利を引き下げる改正法が2006年12月に最終的に成立したことを受けて、アプラスは、大手貸金業者が高リスク債務者への貸付を制限することやそれによって生じる債務不履行の増加及び過払金返還請求の最新の動向を含む、マーケットの変化を考慮して、改めて引当金計上の前提を検討し、現在に至るまで、必要に応じて相当額の追加引当てを行ってきております。また、新生パーソナルローンは適切に引き当てを行ってきております。

新生フィナンシャルについては、同社は、2008年9月にGEジャパン・ホールディングス株式会社(買収当時。以下「日本GE」という。)よりその子会社を含めて取得したものですが、買収に際して相当額の利息返還損失引当金を計上したほか、日本GEとの取り決めに従って一定額を超える部分の過払金返還等損失について日本GEから補償金を受領していました。2014年3月末、同時点以降の将来に発生が見込まれる過払金返還等損失の額の現金一括払いを日本GEから新生フィナンシャルが受けることにより、日本GEによる損失補償は終了し、新生フィナンシャルは同金額を利息返還損失引当金として追加計上いたしました。

近時では過払利息返還の対象となる母集団の口座数の減少や債務者等の代理人となる弁護士事務所及び司法書士事務所の広報活動の減少を背景として、「グレーゾーン金利」に関する取引履歴開示請求の件数や過払金返還額は過去のピークを大きく下回って推移しており、当行といたしましては、上記の措置を講じたことにより、過払金返還に係る追加的な損失の発生は限定的なものになると認識しておりますが、引当金額は過去の経験に基づく要素をもとに計算されており、将来的に発生する過払金返還請求を考慮するために適切ではない可能性があるため、現在の引当金額が過払金返還請求によって生じる損失に対処するために十分であるという保証はありません。現在の引当金額が将来の過払金返還請求及び関連する貸倒損失への対応として不十分である場合、将来追加の費用が生じる可能性があり、当行グループの損益状況や財務状況に影響が生じる可能性も皆無とはいえません。

 

②.年金制度及び年金資産に関するリスクについて

当行の年金資産の時価が下落した場合や、将来の退職給付債務の予測計算の基礎に関する事項が変動した場合(年金資産の期待運用収益率が低下する等)、さらに、退職給付制度が変更された場合、年金費用計上額が増加する可能性があります。また、利子率を巡る環境の変化や他の要因が未積立退職給付債務額や毎年の費用処理額に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)金融諸環境等に関するリスク

①.金融サービス市場における競合について

規制緩和、当行を含む国内銀行による収益源の多様化に対する取り組み並びに外国企業及び外国人投資家の参入により、わが国の金融サービス市場は極めて競争の激しいものとなっております。当行は、数多くの金融サービス企業と競争関係にあり、当行より優位に立つ企業もあります。当行の主要な競争相手は以下のとおりです。

・大手銀行:わが国における大手銀行グループは、資産、顧客ベース、支店数及び従業員数の観点から見ても、当行より規模が大きく、また、これらの銀行グループは、様々な投資銀行業務を行っており、かつ、子会社または関係会社として証券会社を有しているうえ、当行同様その収益源を多様化する戦略を採っています。さらに、大手銀行グループ同士の経営統合が成功した場合には、日本の金融市場における競争がより激しくなる可能性があります。また、当行は下記(8)②.に記載のとおり金融庁への経営健全化計画の提出・定期的な見直しの義務を負っていますが、上記の大手銀行グループは、既に政府が保有していた株式を消却するとともに金融庁への健全化計画の提出義務から解放されており、より柔軟な経営を行える可能性があります。

・証券会社/投資銀行:国内の証券会社及び主要な外国投資銀行の日本における関係会社を含み、当行は、コーポレート・アドバイザリー及び投資活動を含む様々な事業領域において、このような企業と競争関係にあります。

・その他の銀行:信託銀行、地方銀行、一部の海外商業銀行の日本支店及びリテール専門のインターネット専業銀行等とは、これらのその他の銀行が営むそれぞれの分野において競争関係にあります。

・政府系金融機関:日本のリテールバンキング部門においては、株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」という。)が依然として最大の預貯金総額を有しております。2012年4月に成立した「郵政民営化法等の一部を改正する等の法律」では、政府が大部分の株式を保有する日本郵政株式会社(以下「日本郵政」という。)によるゆうちょ銀行等の株式処分が期限のない努力義務とされた一方、ゆうちょ銀行等に対する新規業務規制については日本郵政がゆうちょ銀行等の株式の二分の一以上を処分した後は認可制から届出制に移行するとされております。また、2016年4月にはゆうちょ銀行の預入限度額規制が1,000万円から1,300万円に、2019年4月には1,300万円から2,600万円(通常貯金と定期性貯金についてそれぞれ1,300万円)に引き上げられました。2015年11月にはゆうちょ銀行等は東京証券取引所に上場され、2017年9月には政府による日本郵政の株式の第2次売出しが実施され、2019年4月には日本郵政による株式会社かんぽ生命保険の第2次売出しが実施され、2021年10月には政府による日本郵政の株式の第3次売出しが実施されましたが、依然として、ゆうちょ銀行等の完全民営化に向けた具体的な道筋は示されておらず、引き続き政府がゆうちょ銀行等の相当部分の株式を実質的に保有しています。このように政府関与が残されたまま届出制に移行する場合や業務規制が緩和される場合には、ゆうちょ銀行等の業務範囲拡大による民業圧迫の懸念がある上、当行を含む民間との適正な競争が担保されないことが懸念されます。また、政府系金融機関については、日本政策投資銀行及び商工組合中央金庫について完全民営化への動きが進捗した時期もありましたが、2015年5月に「株式会社日本政策投資銀行法」及び「株式会社商工組合中央金庫法」において、完全民営化の時期を「できる限り早期に」とする、具体的な年限を示さない法改正が成立しました。今後、完全民営化等が実現されなかった場合や、新たな形での政府の金融市場への参画が行われた場合、当行の事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

・消費者金融会社及びノンバンク:当行が自ら及び子会社を通じて行っている業務において競争関係にあります。

・その他の金融サービス提供者:当行または当行の子会社、関連会社は、債権回収会社及びプライベート・エクイティ・ファンド並びに他の投資家と競争関係にあります。

さらに、金融サービス市場には、特に個人・中小企業向けローン市場を中心に、当行や当行の子会社を含む既存の金融サービス企業及び新規参入企業により、手軽で安価な手数料で行うことを可能とする決済サービス、クラウドファンディング、仮想通貨や人工知能(AI)の活用等、お客さまのニーズと金融技術(以下「FinTech」という。)を融合させた新しい金融サービスが導入されており、当行の貸出金残高の縮小及び金利競争による利鞘縮小の可能性があります。このリスクに対しては、FinTech企業への出資及び提携を通じて、異業種の持つサービス、データやノウハウ等の共有、融合による価値共創ビジネスを主な戦略に掲げておりますが、FinTechへの対応が遅れた場合、当行や当行の子会社が提供するサービスが陳腐化し競争力を失う可能性があります。また、FinTech等スタートアップ企業と大手金融機関の連携の流れが加速し、連携について競争が激化することで当行グループの価値共創戦略の優位性が低下する可能性があります。さらには、デジタル・トランスフォーメーション分野における戦略策定・業務推進において、必要なスキルを有した専門人材の不足や確保の困難化に起因して競争力が低下する可能性があります。

当行の業務にかかる競争は今後も激化を続けることが見込まれ、当行が現在及び将来の競争相手と効果的に競争できない可能性があります。

 

②.金融機関に対する監督官庁による広範な規制等について

当行グループは業務を行うにあたり、会社法、銀行法、独占禁止法、金融商品取引法、貸金業法、外国為替及び外国貿易法、犯罪による収益の移転防止に関する法律等並びに外国における同様の法律等の広範な法令上の制限及び監督官庁による監視を受けております。当行及び当行の関係会社は、金融当局による自己資本規制その他の銀行業務規制に加えて、業務範囲についての制限を受けており、これによって、ビジネスチャンスを追求できないことがあります。当行及び当行のいくつかの関係会社は、業務全般及び貸出資産分類に関して、金融庁またはその他の政府機関によりモニタリングを受けております。加えて、金融関連法規・規制をはじめ、その他の適用法規・規制の遵守を怠った場合には、重大なレピュテーショナルリスクに晒されるほか、当行または当行のそれらの関係会社が銀行法第26条その他の法令の規定に基づく「業務改善命令」や「業務停止命令」といった行政処分やその他の制裁・罰則・損害賠償請求を受けること等により、当行または当行のそれらの関係会社の業務に制限を受け、評価が悪化し、または経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、当行及び当行の関係会社は、これらの命令が発せられた際には、これを厳粛に受け止め、再発防止に向けた抜本的な措置を講じるとともに、全行・全社が一丸となってその履行に努めてまいります。

当行並びにその子会社及び関連会社は、コンシューマーファイナンス業務に関する規制、とりわけ貸金業法(並びに出資法及び利息制限法)の規制に服しています。これらの法令に係る裁判所や金融庁による解釈及び2006年12月に成立した改正法により、コンシューマーファイナンス業務は影響を受けてきました。金融庁や他の政府機関によるコンシューマーファイナンス業務に対する規制上の監視強化によって、かかる業務に従事する当行の子会社や関連会社が適用法令の遵守を怠ったことが判明した場合、これらに対する行政措置がとられる可能性があります。

当行を含む銀行がお客さまに対して販売する仕組預金は通常の預金と異なる投資リスクを内包しているため、銀行は各顧客の知識、経験、財産の状況及び契約を締結する目的に応じて仕組預金の性質や詳細について適切な説明をすることを求められます。金融商品取引法には、仕組債やその他の投資商品についての説明義務を強化する規定が盛り込まれており、これに伴って、銀行法上も、デリバティブ預金、外貨預金及び通貨オプション組入型預金等の投資性の強い預金について、広告等に関する規制や契約締結前の書面交付義務、適合性原則等、金融商品取引法上の行為規制が準用されることになっております。例えば、円建て仕組預金にお預け入れいただく際には、利息等の一部が預金保険の対象外となっているため、お客さまに対して、その旨周知徹底を図っております。これらの新たな規制の導入に伴い、当行は、内部コンプライアンス体制のより一層の強化を図っておりますが、これらの遵守を怠った場合は、民事責任を負いまたは行政上の措置を受ける可能性があります。

 

③.コンシューマーファイナンス業務にかかる法令及び規制等について

当行のコンシューマーファイナンス業務を行う子会社におけるカードローン等の融資業務事業(以下「貸金業事業」という。)は、「貸金業法」、「利息制限法」及び「出資法」並びに外国における同様の法律等の適用を受けております。また、2011年10月より事業を開始した当行本体における個人向け無担保ローン事業については、「出資法」、「利息制限法」の適用を受けており、さらに貸金業者の適正な運営確保と借り手の利益保護という「貸金業法」の趣旨を踏まえつつ、銀行法の下において適切に運営していくことが求められているものと認識しております。2010年6月に施行された改正「出資法」の貸付上限金利は年20%であり、また、利息制限法では、元本金額に応じて利息の最高限度を定めており、これらを超える金利で貸付を行うことはできません。

また、「利息制限法」第1条で、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、利息の最高限度(元本金額により年利15%乃至20%)の超過部分について無効とするとされております。2010年6月施行にかかる改正前の「貸金業法」第43条では、同法所定の書面が金銭貸付時及び弁済時に債務者等に交付され、かつ、当該超過部分について債務者が利息として任意に支払った場合において、その支払が同法に規定する書面が交付された契約に基づく支払に該当するときは、「利息制限法」第1条第1項(当時)の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなすとされておりました。

しかし、貸金業業界において、「貸金業法」に定める契約書記載事項等の不備を理由に、「利息制限法」に定められた利息の最高限度額の超過部分(超過利息)について返還を求める訴訟が多数提起され、これを認める判決も多数下されております。最高裁判所は、2006年1月、貸付けに関する契約書に、債務者が超過利息を含む約定利息の支払を遅滞したときには期限の利益を喪失する旨の特約が含まれる場合、特段の事情がない限り、当該超過利息は任意に支払われたとは認められないとする判断を下しました。金融庁も、かかる最高裁判所の判断に従った貸金業法の施行規則の改正を行いました。当行の貸金業事業も含め、多くの貸金業者が用いる貸付けに関する契約書には、このような期限の利益喪失特約条項が設けられていたことから、最高裁判所の判断及び金融庁による貸金業法の施行規則改正は、超過利息について支払いを拒む債務者や、既に支払った超過利息の返還を求める債務者の増加等により、当行の貸金業事業を含む貸金業一般に対して重大な悪影響を与えております。さらに、2010年6月に施行された改正貸金業法では、一人の顧客が貸金業者から借り入れることのできる総額についても、原則として年収の3分の1を上限とする新たな規制(総量規制)を課しており、このことも貸金業者にとって業務上大きな制約となっております。

一方で、銀行による個人向け無担保ローンについては、借入人の年収確認義務や年収に対する貸付限度等の規制は、現状、対象外となっており、一部では、行き過ぎた広告や過剰融資が問題として指摘される動きが出てきたことにより、業界の自主規制というかたちで、適正化が図られておりますが、更に今後の動向次第では、当行本体における個人向け無担保ローン事業や新生フィナンシャルが行う金融機関向けの信用保証業務に影響が生じる可能性も皆無とはいえません。

アプラスの消費者金融、新生パーソナルローン及び新生フィナンシャルについては、2007年度より新規顧客及び既存顧客の一部については既に引き下げ後の上限金利を適用して新たな貸付を行ってきましたが、2010年6月の完全施行により、新規貸付は全て利息制限法の範囲内で実施しております。今後、さらなる業務規制が課せられた場合、当行グループのコンシューマーファイナンス業務が影響を受ける可能性があります。

当行グループのコンシューマーファイナンス業務における包括信用購入あっせん事業及び個別信用購入あっせん事業は「割賦販売法」の適用を受けており、これにより各種の事業規制(取引条件の表示、書面の交付・情報の提供等、契約解除等に伴う損害賠償等の額の制限、信用購入あっせん業者に対する抗弁、支払能力を超える購入の防止、継続的役務に関する消費者トラブルの防止等)を受けております。2018年6月の同法改正施行では、新たな事業規制として「カード加盟店調査等の義務」等が加わり、特に信用購入あっせん業者に対する抗弁に関連し、顧客が商品、指定権利または役務につき販売業者に対し抗弁を有する場合、それをもって信用購入あっせん業者への支払を停止しまたは支払を免れることが可能となる場合がありえます。また、2021年4月の同法改正施行では、近年のクレジットカードのセキュリティリスクの高まりを踏まえ、監督官庁による包括信用購入あっせん業者の監督手段を強化するため、業務の全部または一部の停止を命ずることができる旨の規定が導入されました。当行グループのコンシューマーファイナンス業務は、法令等を厳格に遵守する体制にありますが、今後万一、意図せずに同法に抵触する行為等が生じた場合、当行グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当行グループのコンシューマーファイナンス業務が直接適用を受けるものではありませんが、当行グループのコンシューマーファイナンス業務の提携先の中に「特定商取引に関する法律」(以下「特定商取引法」という。)の適用を受ける提携先があります。「特定商取引法」は、特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引)に関する法令ですが、これまでにクーリングオフの延長、役務取引、電話勧誘販売や訪問購入取引の規制、特定継続的役務における指定役務の追加、訪問販売等における指定商品・指定役務制の廃止等の改正が実施されてまいりました。同法の適用を受ける提携先の動向によっては、包括信用購入あっせん事業及び個別信用購入あっせん事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

④.法令及び規制等の変更等の影響について

当行は現時点の規制に従って業務を遂行していますが、法律、規則、税制、実務慣行、法解釈、財政及び金融その他の政策の変更または当局との見解の相違並びにそれらによって発生する事態が、当行の業務運営や業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。しかし、どのような影響が発生しうるかについて、その種類・内容・程度等を予測することは困難であり、当行がコントロールしうるものではありません。

 

⑤.わが国の金融システム全般の不振に伴うリスクについて

わが国の金融システムの健全性に懸念が持たれた場合、当行を含む銀行の業務及び財政状態に、以下のような影響を与える可能性があります。

・わが国の金融市場に関する否定的な報道により、預金者からの信頼が損なわれ、当行の企業イメージまたは当行の株価が悪影響を受ける可能性があります。

・国際金融市場において、当行を含む国内金融機関がリスク・プレミアムの要求または信用規制を受ける可能性があり、それにより、当行の海外での資金運用・調達が影響を受ける可能性があります。

・政府は、社会経済全体の利益を保護する政策を導入する可能性があり、それは個々の銀行の株主の利益とは反する可能性があります。

・金融庁は、当行を含む銀行に対する定期検査または特別検査の結果、規制、会計等についての政策を変更する可能性があります。

 

⑥.災害等の発生による悪影響について

当行グループは、国内外において店舗、事務所やデータセンター等の施設等を保有しておりますが、このような施設等は常に地震や台風等の災害やテロ・犯罪等の発生による被害を受ける可能性があります。また、新型インフルエンザ等感染症の流行や影響の長期化により、当行グループの業務運営に支障が生じる可能性があります。当行グループは、各種緊急事態を想定したコンティンジェンシープランを策定し、緊急時における態勢整備を行っておりますが、被害の程度によっては、当行グループの業務の一部が停止する等、当行グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、2020年年初に顕在化した新型コロナウイルス感染症の影響の長期化、あるいは新たなパンデミックや大規模自然災害等の発生、さらには地政学リスクが発現した場合は、景気の悪化、多数の企業の経営状態の悪化、株価の下落等が生じる可能性があります。その結果、当行グループの不良債権及び与信関連費用が増加したり、保有している金融商品等において売却損や評価損が生じること等により、当行グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦.環境・社会に配慮しない投融資等について

当行グループは、環境・社会の持続可能性(サステナビリティ)への取り組みに関する基本的な考え方と方向性を示す「グループサステナビリティ経営ポリシー」を制定しております。経営理念を実現するために必要な持続可能な成長機会の獲得には、持続可能な社会の構築に貢献することが企業グループの社会的責任であるとの認識に立つ基本方針として、本ポリシーを位置づけております。また、当行は、2020年1月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に賛同、同年4月には「赤道原則」(Equator Principles)を採択しました。

近年、気候変動問題などの環境課題及び社会課題の顕在化に伴い、当行グループのステークホルダーからは、資金提供者として、環境・社会のサステナビリティに一層配慮することが期待されています。かかる背景から、当行グループにおいても、統合的なリスク管理のフレームワークにおいて、気候変動問題・社会問題等のサステナビリティに関するリスクを重要なリスクとして特定するとともに、TCFDのフレームワークに基づきシナリオ分析や物理リスク・移行リスクの計測等を行っています。ビジネス活動においては、環境・社会課題に適切な対応を行わない事業への投融資や企業等との取引を経営リスクと捉え、「責任ある投融資に向けた取組方針」を制定の上、リスクと経済合理性とを適切に判断して取り組んでいます。一方で、環境・社会のサステナビリティへの取り組みは、大きなビジネス機会であると捉え、当行グループは金融業として持てる力を総動員し、環境・社会課題の改善に資する事業に資金使途が限定されたグリーンローン、ソーシャルローン、サステナビリティローンをはじめとする様々なファイナンス手段を通じて、こうした課題解決を支援しています。

しかしながら、ステークホルダーからの期待・目線は日増しに高まっており、当行グループの取り組み、リスク管理態勢の整備、それらの情報開示が期待から大きく乖離した場合等には、当行グループの競争力の低下及びレピュテーションの毀損等により、当行グループの業務運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)その他

①.リスクマネジメントポリシーの有効性について

当行は、金融機関として健全性・収益性の高い業務運営を確保するために当行グループの抱える様々なリスクをコントロールする必要があるとの認識のもと、そのリスクの総和を把握し、能動的な管理を行うため、リスクについての基本的認識及びリスク管理の基本方針を、リスクマネジメントポリシーとして制定しております。このポリシーのもとで、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、法務・事務・システム等のオペレーショナル・リスク等、各種のリスクの内容に応じて特定の委員会を設置し、リスクを管理する体制を構築しております。

当行は、リスクマネジメントポリシー及びそのための手続に則り、リスク管理の強化に注力しておりますが、急速な業務展開に伴い、かかるポリシー及び手続が、リスクの認識及び管理に際して充分に機能しない可能性があります。当行のリスク管理方法には、過去の市場動向の観測を基準にしているものがあるため、将来のリスク・エクスポージャーを必ずしも正確に予測できない可能性があります。業務上の諸リスク並びに法令及び規制等に対応するためには、多くの取引及び事象の検証に基づいて、ポリシー及び手続を適切に制定、改廃する必要があり、そうした調整が充分に行われるまではこのようなポリシー及び手続は、効果が十分でない可能性があります。また、当行が買収する可能性のある事業については、より広範な統合手続の中の一環として行わなければならないため、リスクマネジメントポリシーの実施及び管理が特に困難なものとなる可能性があります。これらの結果、当行の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②.当行の経営に対する政府の影響力について

当行の普通株式の保有者である政府(預金保険機構及び整理回収機構)は、当行の経営に影響力を有します。金融庁は、2005年10月28日に、「公的資金(優先株式等)の処分の考え方について」を公表し、公的資本増強により取得した優先株式等の処分について、「納税者の利益」の立場により重きを置いた財産管理という観点を踏まえ、公的資本増強行の経営の健全性の維持及び市場への悪影響の回避を前提としつつ、金融システム安定化の果実として公的資金から生じる利益を確実に回収することを基本とするとの方針を確立しました。また、預金保険機構に対し、公的資本増強行を巡る局面の変化に応じ、今後とも、公的資本増強行自らの資本政策に基づく申出による処分を基本としつつ、あわせて、優先株式の商品性やその時点での株価の状況等を踏まえ、適切かつ柔軟な対応を行いうるようにしておくよう求めました。預金保険機構は、これを踏まえ、同日、「資本増強のために引受け等を行った優先株式等の処分に係る当面の対応について」を公表し、金融機関からの申出があった場合の対応に加え、新たに、申出がなくても処分を検討する場合の考え方・判断基準を示しました。しかし、政府が当行の普通株式をいつまで保有するかは明らかではありません。政府がこれらの株式を保有する限り、当行が政府から公的資金の注入を受けている状態が継続します。

整理回収機構から公的資金を受ける際に、当行は、法律に基づき経営健全化計画を作成し、これを定期的に見直しするよう義務づけられております。当行は、経営健全化計画の収益目標と実績値が大幅に乖離した場合には、金融庁より、業務改善命令を受ける可能性があります。さらに、その際には業務改善命令に基づく業務改善計画を提出した後、その内容を反映した経営健全化計画の修正計画を提出いたしますが、同計画が達成されないときはさらなる行政処分を受ける可能性があります。また、同計画については、中小企業に対する貸出に関する計画目標を達成できない場合等には、金融庁から業務改善命令を受け、業務改善計画の提出・履行等を求められる可能性があります。

今後も、政府が当行経営に必要に応じて影響を与える可能性があります。政府は、株主及び監督当局の両方の立場から、当行の経営陣が当行の戦略全般に沿っていないと考える活動を求める可能性があります。

 

③.普通株式の配当に関する制約について

当行の普通株式の配当につきましては、経営健全化計画等に基づき、原則として、経営健全化計画に記載された普通株式配当金の数値が当該年度の配当金の上限であると考えられております。

かかる制約により、当該年度の当行の利益に照らして十分な配当が行われないおそれがあります。

 

④.当行による募集株式の発行・自己株式の処分による影響について

当行の取締役会は、通常は株主総会決議を経ずに、発行可能株式総数の範囲内で募集株式を発行することができます。

将来当行が新規に募集株式を発行し、または自己株式を処分した場合、株式が希薄化するおそれがあります。募集株式の発行等及びその可能性があることが、当行の株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤.政府による当行の普通株式の売却の可能性について

2006年7月、預金保険機構は整理回収機構が保有していた第三回乙種優先株式の半数である3億株を普通株式200,033千株(2017年10月1日付の株式併合後の株式数に換算すると20,003千株)に転換(当行が優先株式の取得と引換えに行う普通株式の交付をいいます。以下同様。)し、翌8月に東京証券取引所の立会時間外取引であるToSTNeT-2により売却しました。これを受けて、当行は当該転換にかかる普通株式の87.7%に相当する175,466千株(同株式併合後17,546千株)を当該ToSTNeT-2取引により総額1,321億円で買い入れました。その余の普通株式は一般投資家によって購入されました。

また、整理回収機構が保有していた第三回乙種優先株式の残り3億株は、2007年8月1日に普通株式に一斉転換され、整理回収機構は当行の普通株式2億株(同株式併合後2千万株)を保有することとなりました。

さらに預金保険機構は、当行の第二回甲種優先株式全てを保有しておりましたが、2008年3月31日、預金保険機構の請求により、360円の転換価額で全て当行の普通株式269,128,888株(同株式併合後26,912,888株)に転換されました。

その結果、預金保険機構及び整理回収機構は、2022年3月末現在、合計で当行の普通株式を46,912,888株(当行の自己株式を除く発行済普通株式の約22.9%)を保有しています(預金保険機構保有分26,912,888株(当行の自己株式を除く発行済普通株式の約13.1%)、整理回収機構保有分20,000,000株(当行の自己株式を除く発行済普通株式の約9.7%))。当行は、預金保険機構及び整理回収機構が保有する普通株式を買い取る法的義務を負っておりませんが、かかる普通株式は政府により売却される可能性があり、実際に売却された場合には、当行の普通株式の市場価格に影響を与える可能性があります。

 

⑥.当行の親会社について

SBIホールディングス株式会社(以下「SBIHD」という。)の完全子会社であるSBI地銀ホールディングス株式会社(以下「SBI地銀ホールディングス」という。)が、2021年9月10日から2021年12月10日までを公開買付期間として行った当行の普通株式に対する公開買付け(以下「本公開買付け」という。)により、本公開買付けの決済の開始日である2021年12月17日をもって、SBI地銀ホールディングスは当行の普通株式56,922,199株を取得するとともに、SBIHDはSBI地銀ホールディングスを通じて間接的に保有する部分を含め当行の議決権の47.77%(2021年9月30日現在の当行の発行済株式数および自己株式の数を基準としています。)に相当する99,659,999株を保有することとなりました。これにより、SBIHDは当行の親会社かつ銀行主要株主に、SBI地銀ホールディングスは当行の銀行主要株主かつ筆頭株主となるとともに当行のその他の関係会社に、それぞれ該当することとなりました。

その後、当行の親会社であるSBIHDは、同社が所有する当行株式(42,737,700株)について、SBI地銀ホールディングスに2022年2月1日付で譲渡しました。

これにより、SBI地銀ホールディングスは、当行のその他の関係会社から当行の親会社となり、また、SBIHDはSBI地銀ホールディングスの完全親会社であることから引き続き当行の親会社であり、両社が当行の銀行主要株主であります。

これまで、当行では取締役、銀行主要株主等関連当事者との間の利益相反取引について社内規程を制定し、適切な管理を行う体制となっておりましたが、SBIHDグループとの間の重要な取引の決定に際しては、当該取引が当行の少数株主にとって不利益をもたらさないかについて、より慎重な管理体制を構築するため、独立社外取締役全員で構成される「親法人取引諮問委員会」を設け、同委員会において事前の審査及び事後のモニタリングを行うことで、利益相反管理体制に遺漏無きことを期してまいります。

 

重要なリスク

当行グループは、経営上の重要なリスクについては、定量化が困難な非財務リスクも含めて、経営陣による議論を踏まえて認識する体制としています。現在、地政学リスクの発現を端緒とする与信関連費用の増加や保有有価証券の価値下落のほか、サイバー攻撃等によるシステム障害、各種戦略リスクなどを重要なリスクとして認識しています。これらのリスクに対する予兆管理や対応力の強化を継続的に進めていきます。

 

2022年3月現在、以下を重要なリスクとして選定しております。

 

リスクシナリオ

内容・影響

1.地政学リスク

地政学リスクの発現を端緒とする下記2~5のほか、当該国でのビジネス機会の縮小・喪失及び対応費用の発生。地政学リスクを有する国の国債や株式を組み込んだ金融商品の価格下落等に伴うレピュテーションの毀損。

2.与信関連費用の増加

地政学リスクの発現のほか、コロナ禍の長期化、新たなパンデミックや大規模自然災害の発生、各国中央銀行の金融政策転換による金利上昇などを端緒とした、景気悪化や不動産担保価格の下落による与信関連費用の増加。

3.保有有価証券の価値下落

地政学リスクの発現のほか、各国中央銀行の金融政策転換、新たなパンデミックや大規模自然災害の発生などを端緒とした、内外金融市場の混乱や景気悪化による保有有価証券の価値下落。

4.外貨調達環境の不安定化

地政学リスクの発現のほか、新たなパンデミックや大規模自然災害の発生などを端緒とした、金融市場の混乱による、外貨流動性の低下及び外貨調達コストの上昇。

5.サイバー攻撃・大規模なシステム障害

地政学リスクその他を背景とするサイバー攻撃によるサービス停止・情報漏洩、ハッキング・フィッシングによる銀行口座・ウォレット等の不正利用・不正送金、その他の要因による大規模なシステム障害。これらに伴う直接的な損失及びレピュテーションの毀損。

6.重大な法令違反・不適切な行為

お客さま保護の視点を欠く行為により損害を与えるなど、役職員等による社会的規範に反する行為に伴うレピュテーションの毀損。マネー・ローンダリングやテロ資金供与対策等の不備に伴う直接的な損失及びレピュテーションの毀損。

7.DX戦略推進に関するリスク

デジタル・トランスフォーメーション分野における競争激化や異業種からの参入が活発化する中、戦略策定・業務推進における人材リスクの顕在化による対応力・競争力の低下。

8.海外ビジネス戦略推進に関するリスク

海外ビジネスの戦略策定・業務推進における人材リスクの顕在化による対応力・競争力の低下。法制度・取引慣行等の相違や事前調査の制約に起因する想定外の事象に対する対応費用等の発生及び与信関連費用の増加。

9.サステナビリティに関するリスク

気候変動問題や社会問題の解決に向けた取組み、リスク管理態勢の整備、情報開示が不十分であることに起因する競争力の低下及びレピュテーションの毀損。対応が不十分な投融資先の業況悪化による与信関連費用の増加。

 

 なお、「事業等のリスク」は、重要なリスクも踏まえて選定しています。

 

 

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