業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績

 

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

増減額 /  増減率

売上高     (億円)

9,914

12,693

2,778 /  28.0%

営業損益    (億円)

△53

550

603 /    -%

経常損益    (億円)

1,336

7,217

5,881 / 440.2%

親会社株主に帰属する
当期純損益   (億円)

900

7,088

6,187 / 687.1%

 

為替レート

¥105.95/US$

¥111.52/US$

 ¥5.57/US$

船舶燃料油価格 ※

US$355/MT

US$585/MT

 US$230 /MT

 

※平均補油価格(全油種)

 

 当期の業績につきましては、売上高12,693億円、営業損益550億円、経常損益7,217億円、親会社株主に帰属する当期純損益は7,088億円となりました。なお、当社持分法適用会社OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(以下「ONE社」)の大幅な増益などにより、営業外収益で持分法による投資利益として6,573億円を計上いたしました。うち、同社からの持分法による投資利益計上額は6,357億円となります。

 

 売上高は、ドライバルク船市況の上昇や自動車船事業における完成車輸送台数の大幅な増加等の要因により、前期比増収となりました。

 経常損益は、旺盛な荷動きと供給面での混乱を背景に、高いスポット賃率が継続したコンテナ船事業での増益に加えて、ドライバルク事業や自動車船事業における損益改善とLNG船・海洋事業における安定的な利益の確保が寄与し、前期比大幅な増益となりました。

 親会社株主に帰属する当期純損益は、経常損益の増益に加えて、FSRUに関する減損損失や、事業再編関連損失を計上した前期と比べて特別損失が減少した結果、前期比増益となりました。なお、経常損益と親会社株主に帰属する当期純損益では過去最高益を達成しました。

 

  セグメント毎の売上高及びセグメント損益(経常損益)、それらの対前期比較及び概況は以下の通りです。

 

  上段が売上高(億円)、下段がセグメント損益(経常損益)(億円)

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

増減額/増減率

ドライバルク事業

2,221

3,609

1,387 /    62.4%

△42

432

475 /      -%

エネルギー・海洋事業

2,875

3,031

155 /     5.4%

297

198

△99 /  △33.3%

製品輸送事業

3,964

5,166

1,202 /    30.3%

1,026

6,629

5,603 /   545.9%

 

うち、コンテナ船事業

2,205

2,773

567 /    25.7%

1,171

6,532

5,361 /   457.7%

関連事業

981

1,081

99 /    10.1%

94

74

△19 /  △20.9%

その他

225

242

17 /     7.5%

26

27

0 /     1.9%

 (注)売上高にはセグメント間の内部売上高又は振替高が含まれております。

 

 

① ドライバルク事業

 ドライバルク船の市況は、堅調な鉄鋼原料、穀物、石炭などの輸送需要と中国における新型コロナウイルスの水際対策や台風の影響等による滞船で船腹需給が逼迫し、秋口まで高い水準で推移しました。その後、ケープサイズの市況は調整局面を迎え、年始以降、雨季に入ったブラジルからの出荷ペース減速によってやや低迷した一方、パナマックスの市況は年明けのインドネシアにおける石炭輸出規制の影響やロシア・ウクライナ情勢による混乱はあったものの、冬場の石炭需要や南米穀物等の輸送需要を背景に、通期では総じて堅調に推移しました。

 このような市況環境下において、ドライバルク事業全体では、2021年4月に発足した商船三井ドライバルク㈱における配船効率化による収益力向上等も寄与し、前期比で大幅な損益改善となりました。

 

② エネルギー・海洋事業

<油送船>

 原油船市況は、長引くOPECの協調減産による荷動きの伸び悩みや老齢船のスクラップの進展が見られなかったこと等を背景に、船腹需給が締まらなかったことから、年間を通じて低迷しました。石油製品船市況についても、原油船同様に需要回復が鈍く、輸出荷動きが減少し苦しい市況環境が続きました。

 このような市況環境下において、安定的な長期契約の履行やコスト削減に努めましたが、油送船部門全体では好況を呈した前期比で減益となりました。

 

<LNG船・海洋事業>

 LNG船部門においては、新たに竣工したLNG船1隻及びLNG燃料供給船1隻を含めて、既存の長期貸船契約を主体に安定的な利益を確保し、前期比で増益となりました。海洋事業部門においては、FPSO事業及びFSRU事業でそれぞれ1隻が新たに竣工したほか、既存プロジェクトが順調に稼働し、前期比でほぼ横ばいの損益となりました。

 

③ 製品輸送事業

<コンテナ船>

 コンテナ船は、ONE社において、北米・欧州航路を中心に旺盛なコンテナ荷動き需要が通期に渡り継続したことに加え、特に北米における港湾・内陸輸送の混雑等、サプライチェーン全体の混乱が継続しており、結果スポット賃率は前期を大幅に上回るレベルで推移しました。また港湾・ロジスティクス事業における取扱量回復に伴う増益も寄与し、コンテナ船事業は前期比で大幅な増益となりました。

 

<自動車船>

 新型コロナウイルスの影響を受けた前期と比べて、世界的な自動車販売の回復を受け、完成車輸送台数は大幅に増加しました。半導体不足による完成車減産の影響はあったものの、船腹量や各運航船の投入先を柔軟かつ機敏に調整し、損益は前期比で大幅に改善しました。

 

 

<フェリー・内航RORO船>

 年間を通じて緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の発令期間が長く続き、旅客事業は新型コロナウイルス感染拡大以前の水準には回復せず低調な結果となりました。物流事業は、巣ごもり消費を追い風に回復基調を維持しました。一方で燃料油価格の高騰が響き、フェリー・内航RORO船事業全体としては、前期比で損益悪化となりました。

 

④ 関連事業

 不動産事業は、当社グループの不動産事業の中核であるダイビル(株) が保有する一部オフィスビルの建替えに伴い若干の減収となりましたが概ね安定的に推移いたしました。客船事業は、新型コロナウイルス感染再拡大の影響を受け、長期に亘り運航休止を余儀なくされたことから前期同様に損益は低迷しました。曳船事業は各社各港おいて状況に差はあるものの、グループ全体では概ね前期並みの損益となりました。その他の商社等の業績は概ね堅調に推移しましたが、関連事業セグメント全体では前期比で減益となりました。

 

⑤ その他

 主にコストセンターであるその他の事業には、船舶運航業、船舶管理業、貸船業、金融業などがありますが、前期比でほぼ横ばいの損益となりました。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

 当社グループ(当社及び連結子会社。以下同じ。)は「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載したとおり、5つの事業区分からなり、提供するサービス内容も、多種多様であります。従って、受注の形態、内容も各社毎に異なっているため、それらをセグメント毎に金額、数量で示しておりません。

 

セグメントの売上高

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

ドライバルク事業

360,913

162.4

エネルギー・海洋事業

303,165

105.4

製品輸送事業

516,699

130.3

 

うち、コンテナ船事業

277,346

125.7

関連事業

108,103

110.1

その他

24,293

107.5

1,313,175

127.8

調整額

(43,865)

合 計

1,269,310

128.0

 

(3) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ5,911億円増加し、2兆6,867億円となりました。これは主に投資有価証券が増加したことによるものです。

負債は、前連結会計年度末に比べ445億円減少し、1兆3,518億円となりました。これは主に長期借入金が減少した ことによるものです。

純資産は、前連結会計年度末に比べ6,357億円増加し、1兆3,348億円となりました。これは主に利益剰余金が増加したことによるものです。

以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、19.9ポイント上昇し、47.4%となりました。

 

(4) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて、136億円増加し、971億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、持分法適用会社からの受取配当金等により3,076億円(前年同期988億円)となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△1,074億円(前年同期△546億円)となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出等により△1,917億円(前年同期△617億円)となりました。

 

(5) 財務戦略

 当連結会計年度末の自己資本比率47%、ネットギアリングレシオ0.71倍と前連結会計年度末から大幅に改善しました。2022年4月に策定した経営計画「Rolling Plan 2022」においては、堅固になった財務状況を背景に環境や不動産関連を始めとする非海運事業の投資を加速しますが、財務規律を維持する方針です。具体的には、ネットギアリングレシオが22年度末〜23年度末に0.6倍〜0.7倍で推移した後、2027年度末にかけて1.0倍を切る程度で安定するようにしてまいります。

 

① 資金調達の方針

当社は事業活動を支える資金調達に際して、調達の安定性と低コストを重視しております。

また、金利変動リスクや為替変動リスク等の市場リスクを把握し、過度に市場リスクに晒されないように金利固定化比率や借入通貨構成を金利スワップや通貨スワップ等の手法も利用しながら、リスクを許容範囲に収めるようにしております。

 

② 資金調達の多様性

当社は調達の安定性と低コスト調達を実現するために、調達方法の多様化や調達期間の分散を進めております。

直接調達については、2022年3月末の国内普通社債発行残高は682億円、劣後特約付社債発行残高は500億円となっております。2018年に資金使途を環境関連プロジェクトに限定したグリーンボンドを機関投資家向け及び個人投資家向けに発行しました。また、2019年に資金使途をSDGs全般に拡大したサステナビリティボンドを機関投資家向け及び個人投資家向けに発行しました。このようなESG債や個人投資家向け社債については、環境や社会に貢献したいという投資家のニーズを形にする機会を提供するとともに、新たな投資家層を拡大する手段として引き続き活用を図ります。円滑な直接調達を進めるため、当社は国内2社及び海外1社の格付機関から格付を取得しており、2022年3月末時点の発行体格付は格付投資情報センター(R&I)「A-」、日本格付研究所(JCR)「A」、ムーディーズ(Moody's)「Ba3」となっております。 また、短期債格付(CP格付)についてはR&I/JCRより「a-1」/「J-1」を取得しております。

間接調達についても、ESGファイナンスへの取組みを進めており、2021年9月にLNG燃料フェリー向けのトランジション・ローンを組成すると共に2021年11月にLNG燃料供給船向けトランジション・リンク・ローンを組成しました。

当社は500億円の社債発行登録や1,000億円のCP発行枠を設定しているほか、政府系や内外金融機関との幅広い取引関係をベースとする銀行借入により、運転資金需要や設備資金需要にも迅速に対応できるものと考えております。

 

③ 資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ドライバルク事業、エネルギー・海洋事業、及び製品輸送事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業の運営に関わる労務費等の役務原価、各事業についての人件費・ 情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。また、設備資金需要はエネルギー・海洋事業と製品輸送事業への投資やそれ以外の船舶・物流設備・不動産等への投資があり、当連結会計年度中に1,140億円の設備投資を実施しました。また、「Rolling Plan 2022」においては、環境投資、事業拡大・資産拡大、非海運事業も念頭においたM&A等を含めた約10,000億円の投資を2022~2024年の3年間で予定しておりますが、年度毎の凹凸はあるものの、投資キャッシュ・フローを営業キャッシュ・フローの範囲に概ね収める運営を目指してまいります。

株主還元については、2022年度は、連結配当性向25%程度を目安として業績に連動した配当を行い、2023年度以降については東証プライム市場の動向を踏まえた見直しを検討する方針です。

 

④ グループ資金の効率化

当社及び主要子会社間でキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、グループ内の資金効率化を図ることにより、外部借入の削減に努めております。

 

(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)並びに2 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針) 」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。また、当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目は、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

・固定資産の減損

当社グループは、資産又は資産グループが使用されている事業の経営環境及び営業活動から生ずる損益等から減損の兆候判定を行っており、減損の兆候が識別された場合、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。将来の市況悪化等により減損の兆候及び認識の判定の前提となる事業計画等が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。

・貸倒引当金

当社グループは、売上債権及び貸付金等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

(7) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 当期は、好調な海運市況の恩恵を受けた各事業が前年度を大きく上回る業績となり、過去最高益を大幅に更新する経常利益7,217億円、親会社株主に帰属する当期純利益7,088億円を達成しました。また財務指標については、ROE 76.5%、ギアリングレシオ0.78倍(ネットギアリングレシオ0.71倍)となり、経営計画「ローリングプラン2021」の中で2027年度末までの目標を前倒しで達成することができました。ドライバルク事業や自動車船事業では、堅調な輸送需要を背景に船腹需給が改善し、新型コロナウイルス感染拡大により荷動きが停滞した前年度から大幅な損益改善となりました。コンテナ船事業では、旺盛な輸送需要と物流混乱により短期運賃市況が高騰したことから、大幅な増益となりました。エネルギー・海洋事業では、LNG船部門・海洋事業部門においては新造船の竣工含め、長期貸船契約の順調な稼働により業績は想定通りに推移しましたが、油送船事業ではOPECの協調減産による荷動きの伸び悩みや老齢船のスクラップが進まなかったことから、年間を通じて厳しい市況が続き苦しい業績となりました。

 2022年度は、ロシア・ウクライナ紛争など地政学的緊張の高まりや、広範なインフレの進展による世界経済の減速懸念、環境負荷低減に向けた施策強化に対する社会的要請の高まりなど、当社グループを取り巻く事業環境は厳しさを増していますが、今期策定したサステナビリティ計画「MOL Sustainability Plan」および経営計画「Rolling Plan 2022」の下、グループ総合力を発揮しグローバルな成長を目指します。

経営計画の主な内容は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。なお、「Rolling Plan 2022」で掲げる利益計画・財務計画・投資計画は以下の通りです。

 

<利益計画>

 2017年度にローリング型経営計画を導入した際、中期的な利益目標として経常利益800~1,000億円、2027年度の利益目標として経常利益2,000億円を設定していますが、「Rolling Plan 2022」においても、当初設定した利益目標を達成する計画としています。

 

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<投資計画>

 財務体質の改善を踏まえ、経営計画「Rolling Plan 2022」では積極投資を進め、グループの更なる成長を目指します。投資規模(*)は、2022~2027年度の6年間で総額1.9兆円(うち、新規投資は1.6兆円)を想定しています。このうち2022~2024年度では総額10,000憶円(*)の投資を見込みます。前年度経営計画「ローリングプラン2021」から引き続き環境投資を積極的に進め、非海運事業への投資もより強化していきます。

 また成長の手段としてのM&A機会も狙い、2022~2024年度計画では1,000億円程度を織り込みます。

(*)いずれも対象期間中に発生する投資キャッシュアウト額を示す。

 

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<財務計画>

 2027年度の利益目標として、経常利益2,000億円を設定しています。ROEは、2023~2024年度は7~8%に留まるものの、2025年度以降は安定的に9~10%を維持することを目指します。

 また、財務指標として2027年度までネットギアリングレシオを1.0倍未満の範囲で維持することを目標とし、年度によって変動はあるものの、投資CFを営業CFの範囲内に概ね収めるよう運営していきます。

 

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 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。

 

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