課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社が判断したものです。

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、商船三井グループの企業理念、グループビジョン、価値観・行動規範(MOL CHARTS)を以下の通り設定しています。

 脱炭素脱炭素化を始めとする環境意識の高まりや、企業として社会のサステナビリティに貢献することへの期待が高まるなか、輸送にとどまらない事業領域への拡大やそれに伴う価値観の変化を反映し、更なる成長を実現するために、社会における当社グループの存在意義、目指す姿、および価値観を確認したものです。

 

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(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題

 当社は2017年度に経営計画「ローリングプラン」を導入して以来、2027年のありたい姿に向けて、年度ごとの具体的な重点項目を設定しその実現に向けて取り組んでまいりました。2021年度は、コロナ禍の影響による荷動き低迷からの回復途上にあり、成長軌道復帰に向けた基礎固めとして、環境戦略と地域戦略に重点的に取り組みました。環境戦略では、長期的な指針として「環境ビジョン2.1」を発表し、自社及び社会のGHG排出削減に向けた取り組みとしてLNG船、及びLNG燃料船の発注を中心に、環境投資を積み上げました。地域戦略では、中国・インドを中心として営業活動を強化し、LNG船・油送船を中心に新規顧客の開拓・新規契約の締結を達成しました。また、環境戦略や地域戦略と同様に掲げるポートフォリオ戦略として、ダイビル㈱、及び㈱宇徳への株式公開買い付けを実施しました。

 2021年度は、これらの取り組みを始めとして、コンテナ船事業を含む当社グループの各事業が好調に推移した結果、財務体質が急速に改善し、ローリングプラン2021で掲げた財務目標(2027年度)を本年度で達成することができました。

 2022年度は、ローリングプラン形式の最終年と位置付けて新経営計画「Rolling Plan 2022」を策定しました。「ローリングプラン2021」における各戦略を継続しつつ、新たに2035年を目標年とする次期計画を2023年度から立ち上げるため、その準備を進める一年とします。「Rolling Plan 2022」では、2022年4月に策定したサステナビリティ計画「MOL Sustainability Plan」との関係を整理し、両輪で取り組み推進します。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)については、組織の力の向上・働き方改革の基盤となる取り組みとして経営計画における重要項目として追記し、MOL Sustainability Planにおける”Innovation”と連動し、推進していきます。

 

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 <新経営計画(Rolling Plan 2022)における主要なテーマ>

 (1)ポートフォリオ戦略

 「非海運事業(海洋事業・洋上風力発電・物流・不動産)の利益水準を2021年度実績の約140億円から2035年度600~

  800億円レベルに引き上げる」

  ・海運事業においては、低脱炭素化の流れを受けた代替エネルギーの輸送需要のみならず、そのサプライチェーン上

   流分野への投資機会も追究する。

  ・非海運事業においては、海洋事業・洋上風力発電・物流・不動産への積極投資を継続する。その内不動産事業には

   3年間で約1,000億円の新規投資を実施する

 (2)環境戦略

 「環境ビジョン2.1への取り組みを継続し、環境投資に新たに3年間で3,600億円を振り向ける。」

  ・LNG燃料焚き新造船の投資やLNG船・LPG/アンモニア船・洋上風力発電事業への投資それぞれ継続的に進める。

  ・2030年までの排出原単位削減目標(年率1.4%)達成に向けたPDCAの運用を開始する。

  ・アンモニア焚きアンモニア輸送船を開発する。

 (3)地域戦略

 「当社全体戦略にマッチする潜在案件を複眼的に追求し、アジアを重点に輸送に留まらない大型案件を、グループ総合

 力を発揮して獲得する。」

 ・アジア地域を2つに分け、それぞれに地域担当役員・総代表を設置。南アジア・中東地域担当役員に現地事情に通じ

  たインド出身者を起用。

 ・インドをパイロットケースとして、本社事業部と地域営業組織の新たな連携体制を構築。

 ・インドでの取り組みを他のターゲット国に横展開する。

 ・国内地域戦略の立案・推進、特に環境戦略と重なる分野について重点的に取り組む。

 ・ロシア・ウクライナ情勢の変化に適切に対応する。

 (4)DX

 「特定済みの課題への取り組みと並行して中長期的ビジョンも策定し、双方の流れを次期計画では統合させる。」

  ・当社及び業界の未来像を踏まえた長期的な当社のありたい姿から、バックキャストで取り組みを洗い出し、MOL-DX

    Visionを策定する。

  ・『事業戦略のDX』、『働き方のDX』、『組織のDX』の3項目について、基盤としての具体的な施策を実行する。

 (5)組織の力の向上・働き方改革、セーフティ

 「今後の積極投資の基盤となる優秀な船員の確保・育成を含む人材への取り組みを最重点項目に据える。」

  ・働き方改革を継続して取り組む。

  ・更に多様化した組織としての数値目標を拡充させる。

  ・グループ全体の中長期的に目指す組織像を見直し、それに基づく新たな人財計画を立ち上げる。

  ・今後の自社配乗・管理船舶隻数の増加を見据えて追加の船員育成に着手する。

  ・傭船チェーンマネジメント体制の全社的見直しに取り組む。

 (6)ガバナンス

 「ガバナンスのさらなる向上に継続的に取り組む。」

  ・コーポレート・ガバナンス基本方針の見直しに着手する。

  ・全社的なリスク管理の枠組みについて再度見直しを行い、カントリーリスクなどの高まりにより一層適切に対処す

   る体制を整備する。

  ・2021年度から開始したリスクマッピングを継続実施する。

  ・グループ会社管理におけるリスクアセスメントシートを導入、活用する。

 

<Rolling Plan 2022の定量目標(利益計画・財務計画・投資計画・株主還元策)>

 (1)利益計画

 利益計画については、第2 事業の状況 3「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」

  (5) 「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。

 (2)財務計画・投資計画

 財務計画・投資計画については、第2 事業の状況 3「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状

 況の分析」 (5) 「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。

 (3)株主還元策

 株主還元策については第4 提出会社の状況 3「配当政策」をご参照ください。

 

<サステナビリティ課題(マテリアリティ)への取組み>

当社は、持続可能な社会の実現及び当社グループの企業価値向上に向けた取り組みとして、2022年4月にサステナビリティ計画「MOL Sustainability Plan」を策定しました。本計画の策定にあたっては、当社グループが事業を通じて優先的に取り組むべき社会課題「サステナビリティ課題(マテリアリティ)」(2019年に特定)の見直しを行うとともに、各課題に紐づく具体的な目標・KPI・アクションプランを設定しました。

 当社は、環境・サステナビリティ委員会を中心とした体制の下、本計画を着実に遂行することで「サステナビリティ課題」の解決を図り、「グループビジョン」の実現を通じたグループ全体の企業価値の拡大を目指します。また、このような取り組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。

 

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 またこのうち社会的懸念が高まっている環境問題への取り組みについては、2021年6月に「商船三井グループ環境ビジョン2.1」を策定しています。2050年ネットゼロ・エミッションを軸とする3つの中長期目標を掲げ、その実現に向けた具体的な計画を設定しました。

 

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<当社のモーリシャス環境回復・社会貢献活動への取り組み>

 2020年8月、当社がチャーターしていたばら積み貨物船がモーリシャス共和国で座礁による油濁を起こし、現場水域と地域の自然環境や、地域社会とその産業にも大きな影響を及ぼすこととなりました。

 当社は、船主との間における傭船契約において本船を利用していた関係者として、現地のニーズに沿った支援を通じ、環境回復や地域社会への貢献に注力して取り組んでおり、今後もこれを継続してまいります。

 具体的には、事故直後より当社社員を現地に派遣し様々な現地支援活動を行うとともに、専門家等を現地に派遣し事故影響のアセスメントを行いながら、現地NGO、学術機関等への寄付を実施、自然回復活動・現地住民支援活動をサポートいたしました。

 また当社が委託者となり、国内における公益信託基金とモーリシャスにおける支援基金を設立いたしました。総額8億円規模の基金を通じ、現地での自然環境保護・回復活動及び、水産、文化・教育などの地域社会産業各分野への貢献活動を助成し、モーリシャス国民の健康的な生活及び持続可能な経済発展に努めます。

 

<コンプライアンス上の対処すべき課題>

 当社グループは、2012年以降、完成自動車車両の海上輸送に関して各国競争法違反の疑いがあるとして、米国等海外の当局による調査の対象となっております。また、本件に関連して、当社グループに対し損害賠償及び対象行為の差止め等を求める集団訴訟が英国等において提起されています。このような事態を厳粛に受け止め、当社グループでは独禁法をはじめとするコンプライアンス強化と再発防止に引き続き取り組んでまいります。

 

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