(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返されたものの、政府による各種経済対策の効果もあり製造業を中心に企業収益に改善が見られ、個人消費も持ち直しの動きが見られていましたが、新たな変異株の流行もあり未だ感染収束が見通せないうえ、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、急激な為替変動、物流の混乱、人件費や原材料価格の高騰など今まで以上に不透明な状況となっております。
世界経済(連結対象期間1-12月)につきましては、欧米では感染者数こそ増加したものの、ワクチン普及を背景に外出制限等の措置が徐々に解除され個人消費や設備投資が増加しました。
当社および当社グループにつきましては、水産事業は国内外の養殖事業が改善し、水産物の販売も経済活動の回復に伴い改善が見られましたが、北米のすけそうだら加工事業が苦戦しました。食品事業は欧米で家庭用・業務用ともに販売が堅調に推移しましたが、国内は円安や原材料価格高騰の影響を受け苦戦しました。
このような状況下で当連結会計年度の営業成績は、売上高は6,936億82百万円(前期比786億37百万円増)、営業利益は270億76百万円(前期比90億77百万円増)、経常利益は323億72百万円(前期比97億2百万円増)、減損損失55億16百万円を特別損失に計上(注)したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は172億75百万円(前期比28億83百万円増)となりました。
配当金につきましては、期末配当金を1株当たり8円と致しました。これにより実施済みの中間配当金1株当たり6円とあわせ、年間配当金は1株当たり14円(前期9.5円)となりました。
(注)第3四半期連結会計期間において当社の連結子会社であるUniSea, Inc.の固定資産について減損の兆候が認められたことから、減損損失50億2百万円を計上したことが主な内容です。
(単位:百万円)
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
(単位:百万円)
① 水産事業
水産事業につきましては、漁撈事業、養殖事業、加工・商事事業を営んでおります。
<当連結会計年度の概況>
水産事業では売上高は2,877億68百万円(前期比379億88百万円増)となり、営業利益は127億21百万円(前期比68億31百万円増)となりました。
漁撈事業:前期比で増収、減益
・日本、南米とも漁獲が堅調に推移し増収となりましたが、燃油価格の上昇などにより減益となりました。
養殖事業:前期比で増収、増益
<日本>
・ぶり・銀鮭の販売価格が堅調に推移しました。また、昨年苦戦したまぐろ養殖のコスト削減効果もあり増収・増益となりました。
<南米>
・鮭鱒は販売数量・販売価格とも堅調に推移したことにより増収・増益となりました。
加工・商事事業:前期比で増収、増益
<日本>
・主力の鮭鱒の販売価格が改善するなど総じて魚価の回復があり増収・増益となりました。
<北米>
・経済活動の改善に伴い販売が堅調に推移し増収・増益となりました。一方、米国アラスカ州のすけそうだら加工工場において新型コロナウイルスのクラスターがあり、フィレ・助子などの生産数量が減少したうえ、想定以上にコロナ対策経費が発生しました。
<欧州>
・経済活動の改善に伴い販売が好調に推移し増収・増益となりました。
② 食品事業
食品事業につきましては、加工事業およびチルド事業を営んでおります。
<当連結会計年度の概況>
食品事業では売上高は3,286億2百万円(前期比274億19百万円増)となり、営業利益は154億円(前期比13億84百万円増)となりました。
加工事業:前期比で増収、増益
<日本>
・販売は堅調に推移しましたが、円安やすりみなどの原材料価格の上昇もあり増収・減益となりました。
<北米・欧州>
・外食需要の回復に伴い、業務用食品の販売が大きく伸長するなか、家庭用食品の販売も引き続き堅調に推移し増収・増益となりました。
チルド事業:前期比で増収、増益
・コンビニエンスストア向けチルド弁当(注1)やおにぎりなどの販売が改善したことに加え、人件費他、経費削減効果もあり増益となりました。
③ ファイン事業
ファイン事業につきましては、医薬原料、機能性原料(注2)、機能性食品(注3)、および診断薬、検査薬などの生産・販売を行っております。
<当連結会計年度の概況>
ファイン事業では売上高は340億74百万円(前期比80億19百万円増)となり、営業利益は40億52百万円(前期比16億64百万円増)となりました。
<医薬原料、機能性原料、機能性食品>
・米国向け医薬原料の輸出が開始されたことに加え、機能性食品の通信販売が好調に推移したことにより増収・増益となりました。
<診断薬、医薬品>
・新型コロナウイルスのPCR検査薬や海外向け培地の販売が堅調に推移したことにより増収・増益となりました。
④ 物流事業
物流事業については、冷蔵倉庫事業、配送事業、通関事業を営んでおります。
<当連結会計年度の概況>
物流事業では売上高は157億78百万円(前期比8億96百万円減)となり、営業利益は20億41百万円(前期比1億59百万円減)となりました。
・一部事業の譲渡により減収となり、電力料の増加などにより減益となりました。
(注1) 冷蔵状態(5℃前後)で流通・販売することにより素材の鮮度を長く保つことができるため、常温弁当に比べて販売できる時間が長くなり、食品ロス削減につながる商品。
(注2) サプリメントの原料や乳児用粉ミルク等に添加する素材として使用されるEPA・DHAなど。
(注3) 主に通信販売している機能性表示食品「ごま豆乳仕立てのみんなのみかたDHA」、特定保健用食品「イマークS」などの健康食品。
生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次の通りであります。
(注) 1.金額は、販売価格によります。
② 受注実績
受注生産は行っておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次の通りであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がいないため、記載を省略しております。
(単位:百万円)
資産合計は前連結会計年度末に比べて302億62百万円増の5,057億31百万円(6.4%増)となりました。
流動資産は332億82百万円増の2,650億90百万円(14.4%増)となりました。売上増加などにより受取手形及び売掛金が142億82百万円増加したこと、棚卸資産が150億1百万円増加したことが主な要因です。
固定資産は30億19百万円減の2,406億40百万円(1.2%減)となりました。
負債合計は前連結会計年度末に比べて94億43百万円増の2,971億33百万円(3.3%増)となりました。
流動負債は241億17百万円増の1,778億28百万円(15.7%増)となりました。運転資金需要増などにより短期借入金が146億19百万円増加したことが主な要因です。
固定負債は146億73百万円減の1,193億4百万円(11.0%減)となりました。返済により長期借入金が172億90百万円減少したことが主な要因です。
純資産合計は前連結会計年度末に比べて208億18百万円増の2,085億98百万円(11.1%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益を172億75百万円計上したこと、剰余金の配当を35億83百万円行ったこと、円安の影響により為替換算調整勘定が77億47百万円増加したことが主な要因です。
① キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
営業活動によるキャッシュ・フローは、291億18百万円の収入(前期比167億92百万円の収入減)となりました。税金等調整前当期純利益および減価償却費の合計が469億19百万円となった一方で、売上債権をはじめ運転資本の増加による資金の減少が125億36百万円、法人税等の支払額が90億42百万円あったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、172億60百万円の支出(前期比7億62百万円の支出減)となりました。主として、米国および国内における生産設備への投資等に伴う有形固定資産の取得による支出が176億9百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が15億77百万円あったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、112億65百万円の支出(前期比335億20百万円の支出減)となりました。長期借入金の返済による支出が128億37百万円、配当金の支払額が35億79百万円あった一方で、短期借入金の増加が58億14百万円あったことが主な要因です。
② 資金調達方針
当社は、事業活動を円滑に行うため、コストを抑えた安定資金の調達を目指し、直接金融を含めた多様な手段の中から最適な資金調達方法を選択しています。
間接金融については、スワップ等を利用した長期固定資金と変動の短期資金のバランスを概ね1:1を基本に、経済情勢等に応じ長期固定資金の比率を上げるなど、機動的に対応することで金利変動リスクを低減し安定資金を確保しています。調達通貨は円・米ドル・ユーロを基本に各国の事業規模に応じた調達とすることで為替リスクを軽減しています。また、複数の金融機関とコミットメントラインを設定しており、経済環境の急激な変化による資金調達難等の流動性リスクに備えております。
資金の効率性の側面では、国内はキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を活用、海外は各国の税制等を考慮のうえ、海外グループ間の資金融通等を本社で一元管理しています。なお、北米は日本同様、統括会社でCMSを導入し北米における資金を管理しています。
③ 調達方法
四半期ごとにグループの資金需要を予想し市場環境を考慮したうえで、最適な資金調達方法を策定、取締役会で審議しています。
長期資金については、毎期の償還額にも配慮しつつ、長期間に亘り構築してきた幅広くかつ良好な関係にある複数の金融機関から借入を行っています。また、相対借入に加え、市場性の高いシンジケート・ローンや健康経営・環境対応などESG関連の格付けを活用した調達も行っています。短期資金については、借入枠を締結し資金需要に応じて機動的に調達しています。
今後もコストを抑えた安定資金を調達するため調達方法の多様化を図ってまいります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表を作成するにあたって、棚卸資産の評価、固定資産等の減損、繰延税金資産の回収可能性などの資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。過去の実績等を踏まえ合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。なお、特にIFRSを適用している在外子会社で保有する生物資産の評価(在池魚評価)については、生物資産を販売費用等の追加コスト控除後の公正価値で測定し、取得原価との差額の変動額を純損益として認識しており、その測定には生物資産の正味売却価額や生残率等を見積もる必要があることから、市場動向や養殖成績などによって公正価値評価額が大きく変動する可能性があります。海外及び国内養殖会社の仕掛魚の評価、国内養殖会社の固定資産の減損に関する見積りや前提条件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
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