本項目に記載する当社グループの事業等のリスクは、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクを有価証券報告書提出日現在において判断し記載しております。本項目は、当社取締役会で審議した事項であり、毎年、取締役会において審議し更新してまいります。
<当社グループのリスクマネジメント体制>
当社グループは、水産物をはじめとする資源から様々な食品や医薬品原料などを製造し、世界の人々に対して供給することを使命としており、その責務を果たすべく安定した生産・販売の継続に努めております。そのような観点から、当社グループは、事業活動の妨げとなるリスクを未然に防止し損失発生を最小限に抑え、経営資源の保全と事業の継続に最善を尽くすため、「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクマネジメント委員会(注1)がリスクマネジメントシステムの構築と運用と定期的な取締役会への報告を行っております。影響の大きいリスク群については重要リスク(注2)として専門部会を設置し、とりわけ、2019年末から世界に拡大した新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大など、不測のリスクが発生した場合には、代表取締役社長執行役員(社長)を本部長とする対策本部を立ち上げ、日々変化する情勢を踏まえながら、迅速かつ柔軟にリスク対応を行っております。
(注1)リスクマネジメント委員会:全執行役員で構成され、社長が委員長を務めております。
(注2)重要リスク:「品質保証」「環境」「労務・安全」「コンプライアンス」「情報セキュリティ」「災害BCP(事業継続計画)」等
1.気候変動(世界的な気温上昇)による影響
2015年に開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、各国が世界的な気温上昇を抑えるため温室効果ガスの削減に取組んでいます。また2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書によれば、工業化以降、2030~2050年に1.5℃上昇すると言われています。
当社グループの水産事業、食品事業、ファインケミカル事業は、持続可能な水産物資源、農畜産物資源から水産品、食品、健康食品、医薬品原料を製造・販売しており、気候変動が進むと各事業が大きな影響を受けることが想定されます。
気温上昇は、海洋における海水温と海水面の上昇、海水温の分布や海流の変化をもたらし、海洋環境を変化・悪化させる可能性があります。さらに陸上環境においても、各地の気温の上昇や天候不順などの変化・悪化が予想されます。これにより、海洋・陸上における水産物資源、農畜産物資源の生態系への影響が懸念されております。
また消費者・取引先など社会における環境問題への関心は年々高まっており、環境問題に対する活動に後れが生じた場合は、当社グループの事業収支に影響を与えるおそれがあります。
当社は、環境問題への対応を重要な課題と認識し、2003年に制定した「環境憲章」により環境理念や行動方針をしサステナビリティ委員会(注)直下の環境部会が、温室効果ガス排出などの環境負荷に関して以下ⅰ)~ⅵ)の取組みを行うとともに従業員への啓蒙活動を行っています。
(注) サステナビリティ委員会(旧:CSR委員会):当社グループが取り組むべき社会課題を明らかにし、活動方針を定め、その推進により企業価値の向上を図る目的で設置しています。社長を委員長とし、全ての執行役員をメンバーとして年6回開催しています。重要課題を推進する7部会(水産資源持続部会、サステナブル調達部会、海洋環境部会、プラスチック部会、フードロス部会、ダイバーシティ部会、人権部会)と環境部会で構成され、部会長には執行役員、メンバーは主に関係各署の部長、課長から選任されています。
ⅰ)CO2排出量、使用水量、事業所外排出物量、リサイクル率、フロン漏洩量の管理による環境負荷低減活動
当社グループ中長期目標としてCO2排出量(Scope1・2 総量)を、2018年度比で2024年度までに10%削減、2030年度までに30%削減する。
ⅱ)当社グループの国内外の主要な事業所において、環境マネジメントシステムISO14001の認証を取得
ⅲ)再生可能エネルギー発電の拡大、重油からガスへの燃料転換、派生油の燃料活用
ⅳ)省エネ、高効率設備の導入による温室効果ガスの削減とコストダウン
ⅴ)冷蔵倉庫や生産工場における高効率自然冷媒冷凍機への転換拡大
ⅵ)物流におけるモーダルシフト(フェリー等内航船の活用)の拡大
2021年4月には気候変動サミットが開催され、日本を含めた先進国を中心に、2030年までの温室効果ガスの削減目標を引き上げる動きが広まりました。当社は2021年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに加入しました。また、気候変動に係るリスク及び機会を特定し、シナリオ分析を通じて事業インパクトと財務影響を評価した上で、今年度よりTCFD提言で推奨される「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの開示項目に沿って情報を開示しております。
詳細はこちらをご覧ください。https://nissui.disclosure.site/ja/223
(1)資源アクセス確保に与える影響
地球温暖化による気候変動は、漁獲量や農畜産物の収量の減少をもたらす可能性があり、以下のとおり、当社事業の資源アクセスに影響することが考えられます。
≪海洋環境の変化が各事業の資源アクセスに与える影響≫
当社グループの各事業は、水産物を主原料とする製商品が多くあることから、各事業の収支や事業継続に影響を与える可能性があります。著しい海洋環境の変化が生じると下記のようなリスクが生じることが考えられます。
① 各水産品種の生息可能な水域が変化することにより、漁撈や海面養殖場への影響として、当社グループが取扱う水産品種における従来の漁場、海面養殖場の環境(海水温条件など)が、その魚種の生息条件に適さなくなり、漁獲量・養殖生産量が減る可能性があります。
② 現在、水産物市場は世界で拡大しておりますが、海洋環境が変化した場合には、当社グループに限らず、水産業界全体に及ぶ可能性があることから、漁獲量・養殖生産量減少により水産物の流通量が減ることで、水産物の価格が上昇し、消費者の水産物離れを招くなど、水産物市場が縮小することが考えられます。
③ 水産物市場全体の縮小が生じれば、商事事業(買付)においても影響が出ることが考えられます。
④ 漁獲可能な水産品種の減少や漁獲量減少により、各国の漁獲制限などの規制の強化につながる可能性があります。
⑤ 当社グループの食品事業においても、水産物を主原料とする製商品が売上高の約6割を占めるなど、水産物原料の必要量確保が難しくなると大きな影響を受けることとなります。
≪陸上環境の変化が事業の資源アクセスに与える影響≫
当社グループの食品事業は、水産物以外にも米や野菜などの農産物、鶏肉などの畜産物を原料とする製商品を販売しております。陸上環境の変化は、各地の農畜産物原料の収量に影響を与え、原料である農畜産物の産地の環境変化により、中長期的に現在の調達エリアの変更が必要になる等、食品事業の収支に影響を与える可能性があります。
また、水産物における資源アクセス確保が経営の重要な課題であると認識しております。主要戦略のひとつとして、持続可能な水産資源の利用と調達の推進を掲げており、現在、サステナビリティ委員会傘下の「水産資源持続部会」により、当社グループの事業活動による水産資源への影響を把握するため、漁獲地・魚種・漁法毎の資源状態の調査活動などを進めています。また当社グループでは、漁業におけるMSC認証(注1)や、養殖業におけるASC認証(注2)、MEL認証(注3)などの取得と、これらの水産エコラベルを表示した水産物の活用に取り組むとともに、世界の水産業界のリーダー企業が参画するSeaBOS(持続可能な水産ビジネスを目指すイニシアティブ)(注4)へも参画しています。
さらに持続可能な資源アクセスの確保を進めるため、養殖事業戦略として、チリのサルモネス・アンタルティカ社をはじめ、国内外グループ会社における生産基盤の安定と魚種の充実を掲げており、トラウト・ブリ・クロマグロ・ギンザケ・カンパチの養殖を行っています。また陸上施設でのバナメイエビ養殖(注5)、マサバの循環式陸上養殖(注6)など環境負荷を低減した養殖の研究・開発・商品化にも取り組んでいます。
養殖事業の重要性が高まる中、将来海面の養殖適地は飽和状態になることが考えられることから、当社グループでは、水産物のサステナブルな調達力強化の一環として、海外養殖事業会社との提携や養殖の技術開発も進めています。
2020年4月には、当社100%子会社のニッスイヨーロッパ社が、丸紅㈱(東京都)とともに、デンマークでサケの閉鎖循環式養殖事業を営むダニッシュ・サーモン社へ資本参加いたしました。
世界的に水産物の需要が高まるなか、サケ・マス類は、生産量の約8割を養殖が占めていますが、海面の養殖適地に限界があることから、近年では陸上での養殖が注目されています。同社はアトランティック・サーモンの閉鎖循環式養殖で成功している数少ない先端企業であり、閉鎖循環式養殖は飼育環境が安定的であること、環境負荷の抑制が可能であること、消費地近隣での養殖により鮮度向上や物流コスト低減が実現できることなど、多くのメリットが期待できます。2022年には新規設備が完成予定であり、現在の水揚げ量1,000トンを2023年に2,750トンに引き上げる計画です。
国内では、当社と日鉄エンジニアリング㈱(東京都)が協力し、弓ヶ浜水産㈱のギンザケ養殖場で「大規模沖合養殖システム」の技術開発を進めています。2016年12月より開始した「大規模沖合養殖システム」の実証試験では、沖合養殖で必要な(1)海上での飼料の大量貯蔵技術、(2)貯蔵タンクから生簀への飼料の長距離搬送技術、(3)遠隔漁場における適正な給餌管理等の技術検証を行いました。2022年4月時点では、実証試験機の改善・改良を進めながら拡張し、弓ヶ浜水産が操業する鳥取県境港市の沖合3キロメートル程度の美保湾の漁場に、約300平方メートルのプラットフォーム上に飼料を100t程度貯蔵できる飼料サイロを設置し、ここから直径25mの円形生簀15基に設置している自動給餌機への自動搬送を行い、飼育管理を行っております。海上飼料サイロの設置により、既存の給餌機設備と比較して、1生簀に対し約6倍量を貯蔵できるようになりました。飼料サイロから自動給餌機への飼料補給は、海底の配管を通じて自動的に搬送・充填されるため、海況悪化による給餌機会のロス削減や省力化を図ることができます。また、この設備は耐波浪性と耐潮流性を有するため、沖合での設置が可能となり、適切な給餌量をコントロールする事が可能な給餌制御システム「アクアリンガル」(注7)を併せて活用しております。
(注1)MSC認証:海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)の厳正な認証規格に適合した漁業で獲られた持続可能な水産物(天然魚)に対する認証です。通称「海のエコラベル」とも呼び、海洋の自然環境や水産資源を守って獲られた水産物(天然魚)に与えられます。MSC認証を取得した漁業で獲られた水産物は国際的なトレーサビリティが可能であり、適切な水産資源管理につながります。当社グループはアラスカのスケソウダラの他、複数の漁場魚種でMSC認証を取得した水産物を取り扱っております。
(注2)ASC認証:養殖業が持続可能な方法で運営され、周辺の自然環境や地域社会への配慮が行われている「責任ある養殖水産物」であることを証明するもので、WWF (World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)とオランダの持続可能な貿易を推進する団体であるIDH(The Sustainable Trade Initiative)が設立支援した水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)が運営しています。この認証制度は自然資源の持続可能な利用を補いながら、養殖そのものが及ぼす環境への負荷を軽減し、これらに配慮した養殖業に携わる地域の人々の暮らしを支えるための社会的な仕組みのひとつです。当社グループでは、サルモネス・アンタルティカ社(チリ)のトラウトと黒瀬水産㈱(宮崎県)のブリが本認証を取得しております。
(注3)MEL認証:2016年12月に設立された一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会が運営する認証スキーム。水産資源の持続的利用や生態系保全に資する活動を積極的に行っている生産者や、そのような生産者からの水産物を積極的に取扱う加工・流通業者の取り組みを促進すること、漁業や養殖、加工、流通段階での水産物の取扱いについての透明性を担保し、関係事業者や消費者の選択や信頼に寄与することを目的とした認証スキームです。①漁業認証、②養殖認証、③流通加工段階(CoC)認証(CoC: Chain of Custody)の3つがあります。当社グループでは黒瀬水産㈱がブリの養殖認証と流通加工段階認証、金子産業㈱(長崎県)がクロマグロ、マダイの養殖認証、弓ヶ浜水産㈱がギンザケの養殖認証と流通加工段階認証を取得しております。
(注4)SeaBOS:Seafood Business for Ocean Stewardshipの略。日本、ノルウェー、タイ、米国、韓国など世界各国から水産業界のリーダー企業が参画し、海洋環境および海洋資源の保全と持続的な資源利用を進め、持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブです。スウェーデンストックホルム大学のストックホルム・レジリエンスセンターが事務局として活動を推進し、毎年1回、参加企業のCEOが集まる会議において、活動の進捗を確認しています。
(注5)バナメイエビ養殖:投薬をしない安全安心で生食可能な国産陸上養殖エビ。飼育水中に微生物の集合体(バイオフロック)を浮遊させながら、水質を浄化させる「閉鎖式バイオフロック法」を採用しています。飼育水の量を必要最低限に抑制でき、従来の陸上養殖と比較して、環境負荷が低く、設備が簡易なことから事業コストの低減が期待できます。
(注6)マサバの循環式陸上養殖:地下から汲み上げた海水に近似する塩分を含む地下水を利用し、日立造船㈱の水処理技術により水温・水質をコントロールし、マサバの生育に最適な環境を保ちます。外海の海水を使用しないため、寄生虫や魚病リスクを低減、自然環境に左右されない安定供給が可能となります。
(注7)アクアリンガル:海上生簀での養殖において、給餌の自動化と、養殖魚が疑似餌を引く動作に基づいて食欲をはかり給餌量をコントロールする当社独自のシステムです。養殖魚の最大成長を達成しつつ、魚の食欲に合わせた飼料量の管理が可能であり、残餌による環境負荷の低減につながります。また、インターネットを活用して、天候や水温、溶存酸素濃度などの養殖環境、魚の空間分布を継続的に解析することができ、給餌時間、給餌量、給餌間隔などの遠隔での調整も可能です。すでに当社グループの弓ヶ浜水産㈱のギンザケ「境港サーモン」の養殖に実用化されており、現在、対象魚種の拡大に向けて、ファームチョイス㈱のぶり「天草ぶり」での実証試験に取り組んでおります。
(2)自然災害の頻度増加と激甚化によるリスク
地球温暖化による気候変動は、近年、台風、ハリケーン、時化、豪雨、洪水、干ばつ等の自然災害の頻度を増加させ、激甚化させる傾向にあります。当社グループではリスクマネジメント委員会に「災害BCP(事業継続計画)部会」を設置し、各拠点のBCPを作成の上、体制・災害対応力の強化を図っておりますが、想定外の災害が生じた場合には、各事業に及ぼす影響が拡大する可能性があります。
≪各事業共通のリスク≫
① 当社グループの食品製造や冷蔵倉庫、養殖場、工場などの施設・設備や漁船への直接被害と修繕コスト増加
② 長期停電や水道水停止等による生産・物流への影響
③ 原料となる水産物・農畜産物への直接被害による確保困難
④ 予防・安全対策コストとしての設備費や保険費用の増加
≪水産事業のリスク≫
水産事業では、台風等の悪天候による時化の増加が、漁業での漁撈日数の減少、これに伴う漁獲量の減少をもたらし、養殖事業では、海面養殖の生簀損壊、給餌回数の減少による魚の成長不足の可能性があります。
また、漁撈、海面養殖の労働環境の悪化に繋がり、深刻な人手不足を招きかねないため、当社グループでは「大規模沖合養殖システム」などの海面養殖において前述の給餌制御システム「アクアリンガル」の導入や、台風等の被害による海面養殖の生簀損壊を防ぐ、沈下式生簀の導入などの対策を進めております。
(3)温室効果ガスに関する法規制強化・エネルギー政策の影響
欧州では排出されるCO2に価格付けをするカーボンプライシングを拡充する動きが広がっています。また日本においても、2050年の温室効果ガスの排出量実質ゼロ実現のため、カーボンプライシングの導入が検討されています。今後も温室効果ガスに関する法規制が強化され、国のエネルギー政策に伴う電力・燃料価格の上昇が見込まれます。気候変動やこれら法規制・エネルギー政策の影響で、製商品の製造原価や、冷蔵庫・物流におけるコールドチェーン維持の管理コストが増加し、事業収支に影響を与える可能性がありますが、当社グループは、法規制を遵守することは当然として、再生可能エネルギーへの使用率向上、省エネ・高効率化設備への設備投資、その他前出の温室効果ガス排出削減に向けた取り組みを引き続き進めてまいります。
2.原料調達等に関するリスク
当社グループが主要な原料としている水産物は、従来より、漁獲量・養殖生産量の増減などによる水産物市況の変動の影響を度々受けておりましたが、さらに、前出の気候変動がもたらす海洋・陸上環境の変化が水産物や農畜産物等の原料の収量を減少させ、原料価格が高騰するおそれがあります。
気候変動以外でも、水産資源の乱獲や違法操業、農業における乱開発や環境破壊、畜産物における動物福祉の規制強化等が、当社グループの調達のリスクにつながる可能性があります。
また、政治・経済情勢、テロ・紛争による治安の悪化や社会的混乱などの外的要因によっても、原料価格や調達・生産に係るエネルギーコスト等が高騰するリスクがあります。
2019年の国際連合の発表では、世界人口は2050年に97億人を超えることが見込まれております。当社グループの事業にとっては、人口増による食料需要の増加が市場拡大をもたらし、チャンスにつながる可能性がありますが、一方で、資源獲得競争が熾烈になり、安定的な原料等の調達が困難となるおそれもあります。このような外部環境の変化による調達のリスクは、各事業の収支に影響するおそれがあります。
当社グループは、従前より安定的な原料確保と製品供給の重要性を認識し、グローバルな調達先との提携やM&A、養殖事業における研究・技術開発による資源アクセスの安定的確保に努めてまいりました。今後も安定的な原料確保と商品供給のための施策を推進してまいります。
3.人為的な海洋汚染によるリスク
近年、日常生活に欠かせない飲料・食品の容器包装や、事業活動に使用されているプラスチックの海洋環境への影響が社会課題として取り上げられています。当社グループは、食品や水産事業を中心に事業活動を行っており、この問題の深刻さが増すと事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。
プラスチックごみによる海洋汚染は、海洋の生態系破壊や海洋生物の減少につながるおそれがあり、食品や水産事業での原料調達や、食の安全性に影響を及ぼす重要な問題であると認識し、事業全般でのプラスチック使用に対する対策を進めており、2019年度よりサステナビリティ委員会の下に部会を設置し活動を行っています。
(1)海洋環境部会
海洋環境へのプラスチックの流出ゼロにつながる活動を推進、プラスチック製の漁具の管理強化や素材変更、外部団体における海洋へのプラスチック流出調査の支援を行っております。具体的には、海面養殖での生簀に使用する発泡スチロール製の浮き具からのプラスチック流出を防ぐため、堅牢な樹脂で覆った浮き具や、発泡スチロールを使用せず内部が空洞の樹脂製浮き具への全面転換を進めております。また、国内グループ養殖・漁業会社で使用する漁具の海洋流出防止に取り組む中で漁具の管理ルールの強化を進めており、自社の既存の管理ルールを、GGGI(注1)「Best Practice Framework for the Management of Fishing Gear」(注2)を参考にし、漁具の海洋流出防止という観点で改めて見直しました。この漁具の管理ルールは、設備状態のチェック、従業員への教育、使用済み漁具の適切な廃棄、万が一漁具の紛失・遺棄があった際の報告フロー等を含みます。
(注1)Global Ghost Gear Initiative、漁具の海洋流出防止に取り組む国際団体
(注2)漁業関係者を対象とした漁具管理のガイドライン。Prevention(防止)、Mitigation(緩和)、Recover(回収)から構成されている
(2)プラスチック部会
プラスチック資源の3R(リデュース、リユース、リサイクル)+R(リニューアブル(再生材の利用))の推進、プラスチック削減の中長期目標の策定、環境配慮型容器包装への一層のシフト、および「みらいの海へ」マーク対象品の拡大などを進めています。具体的には、生産事業所からの廃プラスチック発生量の削減、容器包装の減容化、紙等の代替素材への変更に加え、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチック等の利用も視野とした検討を行っています。
また、当社グループでは、海面養殖事業が海洋環境に与える負荷の低減策を進めています。例えばブリの養殖において、飼料形態の変更や、前出の給餌制御システム「アクアリンガル」の開発導入による魚の食欲に合わせた投餌などを行っています。また抗生物質の使用量削減にも取り組んでいます。さらに海面養殖設備の定期的な点検・補修による堅牢化や、台風被害による設備損壊を避けるための大型沈下式生簀の利用拡大、前出のプラスチック流出を防ぐ生簀の浮き具への全面転換を進めております。
4.海外事業展開におけるリスク
当社グループ主要戦略のひとつとして、海外展開の加速を目指し、水産・食品事業における欧州での更なる拡大とアジアでの事業基盤構築、ファインケミカル事業における医薬品原料の海外展開を掲げております。事業展開する国において政治的な問題から生じる紛争、法規制の変更等のリスクが顕在化した場合、事業の基本的戦略や収支に影響を与える可能性があります。また海外市場における情勢の変化について早期の情報収集に努めるとともに迅速な対応を心掛けておりますが、想定を超える情勢の変化が生じた場合には、事業収支に影響を与える可能性があります。考えられる主なリスクは以下のとおりです。
・各国の法令変更 ・為替リスク ・カントリーリスク(政治、紛争、テロ等の発生)
・訴訟 ・各国の保護主義台頭 ・サステナビリティ課題への対応
5.知的財産に関するリスク
当社グループは、養殖事業における養殖魚の成熟制御や育種ノウハウ、ファインケミカル事業におけるオメガ3系の必須脂肪酸EPA(エイコサペンタエン酸)の高度精製技術等、当社グループの事業に重要な知的財産を所有しております。当社グループが目指す海外進出や各事業の技術革新により、知的財産の重要性が高まる中、当社グループの知的財産が漏洩した場合は、事業収支に影響を与える可能性があります。また当社グループが第三者の知的財産権を侵害したと認定された場合は侵害訴訟や製商品販売・事業活動の差止請求を受け、当社グループの事業戦略・収支に影響を及ぼす可能性があります。当社では後述の情報管理の徹底に加え、守秘義務契約の徹底はもとより、研究・開発部門の従業員への知的財産に関する教育に取り組んでおります。
6.人権侵害に関するリスク
1998年、国際労働機関(ILO)でILO宣言(中核的労働基準)が採択され、労働における基本的原則および権利が定められ、経済成長と共に企業活動のグローバル化が進む中、社会が一致団結しつつ労働者の権利を保護することが求められました。2000年には、国連グローバルコンパクトが発足し「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の分野で、企業が影響力を発揮すべき10原則を定めており、2011年には「ビジネスと人権に関する国連指導原則」として人権を尊重する責任が国家のみならず、企業にもあることが明示されました。
さらに2015年に発表されたSDGsでも、その前文に「誰一人取り残さない」として、全ての人々の人権とジェンダー平等の実現を目指す記述があり、働きがいのある人間らしい雇用、貧困をなくす、ジェンダー平等など具体的な目標が示されています。
企業が最も重視すべき人権リスクは、企業活動に係るバリューチェーン上で、ライツホルダー(企業が尊重すべき人権の主体)に負の影響を与えるリスクです。
また近年、ESG 投資の普及・拡大が進み、企業活動のグローバル化が引き起こす人権侵害には特に厳しい目が注がれるようになっております。自社のみならず、バリューチェーンを含めて企業が引き起こす人権侵害は、ブランドの毀損、さらには、ダイベストメントにつながるなど企業にとってリスクを生じさせるものと認識し、以下の取り組みを推進しております。
(1)人権尊重推進体制の整備
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「ニッスイグループ人権方針」を2020年9月に策定し、人権尊重を経営課題として位置づけました。2021年度よりサステナビリティ委員会の下に新たに人権部会を設置して体制を整備し、人権デューデリジェンスに取り組むとともに、ステークホルダーとの対話や人権尊重の重要性についての従業員への理解促進にも努め、あらゆるライツホルダーの人権に配慮した企業活動を推進しています。
(2)サステナブル調達
ニッスイグループ調達基本方針と、「遵法・調達倫理」「環境配慮」「人権配慮」「お取引先様との協働」「品質・安全性確保」「情報セキュリティ」「社会貢献」の7項目で構成するサプライヤーガイドラインを策定しています。主要な原材料、製品を調達するサプライヤーを対象に説明会を実施し、セルフチェックシート(全132項目)に回答いただいています。回答結果は集計しグラフ化するだけでなく、「人権配慮」と「環境配慮」への認識・取り組みに焦点を当てたコメント付きのフィードバックシートを返却し、各社へ今後取り組みを強化いただきたい点をお伝えしています。また、回答の意図と実態を確認するために、サプライヤーへの訪問やオンラインでのヒアリングも実施し、各サプライヤーの課題確認とそれに対する改善アドバイス、他サプライヤーの好事例共有なども行っています。
(3)ハラスメントの撲滅
当社グループでは、倫理憲章を制定・周知しており、その中で個人の尊重と差別・ハラスメントの禁止を定めております。また当社の人事部にハラスメントデスクを設置し全従業員を対象に集合研修やEラーニングを実施し意識向上を進めるとともに、国内各グループ会社にもハラスメント相談窓口を設置し、専任担当者の集合研修を実施するなど、グループ各社の認識を高めています。2021年度は改めて全ての事業所において「ハラスメント防止」をリスクマネジメント課題に掲げて、部署長・課長向けのハラスメント研修やハラスメント防止ハンドブックの社員への配布、各部署での読み合わせなどを実施しています。また、2022年4月よりパワハラ防止法が中小企業にも拡大適用されることを受けて、2022年3月には社長より国内外グループの全従業員に向けたメッセージとして、改めてハラスメント撲滅を強く呼びかけました。
(4)ダイバーシティの推進
2016年度よりサステナビリティ委員会に「ダイバーシティ部会」を設置し、国籍、性別、年齢、身体的特徴などへの差別なく、多様な人財が働き互いに多様な価値観を尊重しつつ働ける企業を目指しています。2021年1月から「30% Club Japan」に参画し女性の採用および登用に関する数値目標を定め、社内制度の整備を進めながら女性がより一層活躍できる風土の醸成に取り組んでいます。2021年度の「ダイバーシティ部会」では、「管理職及び女性自身の無意識バイアス自覚とコントロール」、「女性の定着・育成課題の抽出と対策立案」、「ライフイベント(結婚・育児ブランクの最小化)施策の検討」を中心に討議を行いました。2022年3月には、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している、女性活躍推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」に準じる「準なでしこ銘柄」に初めて選定されました。
7.人財の確保と育成に関するリスク
当社グループでは、海外事業展開を含めた中長期における当社グループの経営計画達成のために、事業創出・企画運営の能力のある経営を担う人財、海外国内を問わず活躍できるグローバル人財やプロフェッショナル人財、各生産拠点で成果を上げる人財の確保と育成が必要であると考えています。しかし、日本国内の少子高齢化と人口減少が進むにつれ、国内での優秀な人財確保が難しくなりつつある中、多様な人財が働けるダイバーシティ対応に後れをとると、必要な人財確保が困難になると想定されます。
当社グループは、雇用した人財が国籍、性別、身体的特徴などの差別なく、多様な人財が、多様な価値観を尊重しつつ健康に働ける環境を整えることが必須であると考えており、サステナビリティ委員会の中で、「健康経営」推進、「働き方改革」などの活動を進めております。本年度も経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄2022」に選定され、4年連続の受賞となりました。人財の確保と育成については、通年で計画的に、経営や事業関連のスキルを持つ経験者や新卒者の採用を国籍に関係なく行いながら、キャリア開発チームによる従業員教育の強化や、サクセッションプランに基づく経営・マネジメント人財の早期育成に取り組んでおります。2021年度は新たに「カムバック制度」を導入し、退職した社員が、再び当社での就労を希望する場合に、再入社の機会を提供することで、優秀な人財の再確保を図っています。
また、長年経験を重ねてきた従業員にそのスキルを生かし活躍する場を提供するため、60歳の定年退職後の継続雇用希望者に対し、シニア職員制度を設けております。さらに全国にある国内グループ会社間のネットワークを生かし、異動・教育の仕組みを構築しております。
8.製商品の品質・安全性リスク
当社グループは、製商品の品質事故や、表示偽装などの品質不正が発生すると、お客様からの当社グループ全体への信用を損ない、ブランドが棄損され、事業に多大な影響が生じると認識しており、サステナビリティ行動宣言において「安全・安心でお客様にとって価値ある品質の商品をお届けする」ことを謳っております。
このリスクに対応するため、「品質保証憲章」に品質保証理念や品質方針、行動指針を定め、お客様に安全な製商品をお届けするための品質保証に最大限努めており、従業員への品質教育や、生産工場における予防管理強化の基準・仕組みの構築、商品設計時の品質確認、使用原材料の品質確認、表示確認の仕組みを構築しています。
(1)品質保証委員会、お客様満足推進部会
社長を委員長とする「品質保証委員会」を毎月開催し、お客様から寄せられた声を共有し、必要とされる基準やルールの策定・徹底を図っております。また、同委員会の傘下にお客様サービスセンター所長を部会長とする「お客様満足推進部会」を設置し、お客様から寄せられた声をもとに、商品設計やパッケージ表示の改善などに取り組んでいます。
(2)ニッスイ品質保証基準と認定工場制度
製商品の品質の安全性を確保する基準として、HACCP(注)の考え方を基本とした、関連法規より厳格な当社独自の「ニッスイ品質保証基準」を設けております。同基準には、生産工場認定基準を核に、その詳細基準として使用水基準、薬剤管理基準、防虫管理基準、樹脂部品基準、原材料基準、包材基準、アレルギー物質のコンタミ防止基準、フードディフェンス基準などがあります。ニッスイブランド商品は生産工場認定基準により認定した工場のみで生産しており、認定後も品質保証部による定期的な監査を実施、工場指導を行っております。 また工場間の情報共有や課題解決を目的とし、工場経営者会議、工場品質管理担当者会議などを定期的に開催しております。
(注)HACCP :Hazard Analysis and Critical Control Pointの略。食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス) 委員会が発表し,各国にその採用を推奨しております。
(3)生産工場におけるFSSC22000(注)認証取得の推進
国内の直営工場・関係会社工場の16拠点で、国際的な食品安全マネジメントシステム規格であるFSSC22000(注)認証を取得しております。
(注)FSSC22000:Food Safety System Certificationの略。FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)により開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格。食品小売業界が中心の非営利団体、国際食品安全イニシアティブ(GFSI:Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認された規格です。
(4)原材料情報の一元管理体制
当社では、全ての原材料について、配合、由来原料、産地、遺伝子組み換え情報、アレルゲン、規格、食品添加物、農薬・動物用医薬品・飼料添加物情報等を記載した「原材料規格保証書」を作成し、「原材料管理システム」に登録・一元管理しており、新しい原材料を使用する場合は、三次原料まで遡ることを基本に、原材料の製造現場の情報を収集しながら安全性を確認しております。
(5)検査体制とエクセレントラボによる検査精度の向上
原材料から製品まで、安全性を確認する検査体制を確立するため、当社グループの全工場に検査室を設置し、加えて食品分析部(東京イノベーションセンター)、青島日水食品研究開発有限公司(青島)、タイ品質管理課(サムットサコーン)の3拠点で検査を行える体制を構築しています。
食品分析部では、当社グループの生産工場の検査室の検査制度の維持と検査レベル向上を目指した取り組み「エクセレントラボ」活動を展開しております。具体的には、検査マニュアルを定期的に更新して配布、エクセレントラボ専用培地を全検査室で共通使用するとともに、全検査員を対象として精度管理試験を年1回実施し、検査精度を確認しています。さらに各検査員の検査技術向上のため、OJTプログラムによる教育や、レベル別の認定講習会、エクセレントラボ推進会議の定期開催による検査員のレベルアップを図っています。
(6)青島日水食品研究開発有限公司、タイ品質管理課による海外工場の管理
青島日水食品研究開発有限公司ならびにタイ品質管理課では、中国、東南アジアのニッスイ認定工場で生産する当社製商品の品質管理を行っており、生産工場への品質指導に加え、製商品のサンプリング検査や輸出時検査を実施、各工場の品質管理責任者の集合研修を年1回開催しています。
(7)品質事故時の対応
万が一品質事故が生じた際には、製品回収、状況把握と原因究明、お客様への対応等、迅速かつ適切な対応をとるための体制を整備しております。
9.消費者意識とニーズの変化に対応した新しい技術開発への後れによるリスク
前出の気候変動や自然災害の頻度増・激甚化、人為的な海洋汚染による地球環境の保全への消費者の意識の高まりや、世界人口の増加と国内の人口減・少子高齢化など、消費者の生活ニーズとライフスタイルは刻々と変化し、即食・簡便ニーズや健康志向に対応した商品に対する需要が高まってきています。また、世界では代替タンパク製品の市場の出現などへの新しい技術も日々更新されております。これらの消費者意識・ニーズの変化への対応や、先端技術の開発に後れをとると、当社グループの成長に影響をおよぼすリスクがあると考えています。
当社グループは、常に消費者の生活ニーズを考えながら、研究開発投資を行い、地球環境の持続可能性と人々の健やかな生活を“食”のイノベーションで解決することを研究開発の基本方針としています。2011年には、事業展開の礎である研究開発力の強化を目指し、約75億円を投じて東京都八王子市に東京イノベーションセンターを建設し、中央研究所、商品開発部、技術開発部、食品分析部を集約しました。最先端の基礎研究からそれを応用した製商品化まで、さらには安全性の確認まで、部署間の連携を円滑に進め、消費者意識とニーズの変化に迅速に幅広くお応えできる体制を構築しています。また1994年設立の中央研究所大分海洋研究センター(大分県)も、東京イノベーションセンターと連携を取りながら、水産資源の持続可能性につながる養殖に特化した基礎研究から事業レベルの応用研究まで幅広く取り組んでいます。
水産事業においては、水産加工技術と養殖の研究投資を行っています。養殖では中長期的な視点による養殖魚の育種や陸上養殖の拡大、新規魚種の開拓、データサイエンスによる養殖技術の先端化など新規事業の創出につながる研究に取り組んでいます。
食品事業においては、独自の加工技術の開発に加え、農産品や鶏肉の研究開発、タンパク質摂取の在り方の多様化に対応するための植物タンパク質の利用研究や味・香りに関する基礎研究も行っています。また、スケソウダラは食べるだけで、特別な運動をしなくても除脂肪量(筋肉量の目安となる)が優位に増加することが研究成果として発表されており、「速筋タンパク」シリーズとしてスケソウダラすり身100%を使用した商品を展開しています。食品事業全般において、従来の開発体制に加え、「人間起点」を主眼に考えて発想する「デザイン思考」による新しい開発手法を取り入れる「未来型創造開発会議」を設置し、5~10年先の生活ニーズに応える取り組みを進めております。
10.情報セキュリティリスク
当社グループでは、通信販売事業などにおいてお客様の個人情報を保有しており、このような個人情報や経営、事業、研究などに関する重要な情報の漏洩・紛失を防止するため、リスクマネジメント委員会の傘下に「情報セキュリティ部会」を設置し、「情報セキュリティ基本方針」などの規程やルールの整備、システムの管理体制の強化、定期的な従業員に対する教育や訓練を実施し、情報セキュリティ管理を徹底しております。
また、グループ経営を進める中、当社グループ内でデータ漏洩、システム破壊が起きると、グループ全体の事業に大きく影響することが考えられます。そこで、当社国内グループ会社の情報セキュリティ基本方針や利用者ルールの徹底、技術的対策、教育や訓練を含めた人的対策の領域において、各到達点を具体的に策定し、ニッスイグループIT部門会議を定期的に開催するなどの取り組みにより均質化を進めてまいりました。今後はグループ会社の情報セキュリティ対策が有効に機能しているか定期的に確認し、情報セキュリティ確保への継続的な改善・向上に努めてまいります。
今後、各拠点の省人化や、生産、物流、販売でのシステム連携による効率化が進むにつれ、自然災害などによる物理的なシステム破壊や、長期停電、外部からの攻撃などの要因を問わず、そのシステムの停止による事業活動への影響が増加すると考えられ、システム停止を想定した対策や有事対応の体制づくりを進めております。
11.感染症の拡大によるリスク
新型コロナウイルス(COVID-19)については、経済活動を再開させる動きが広がりつつあるものの、変異株の出現等もあり、先行き不透明な状況が続いています。当社への影響は、予想が困難ではありますが、漁撈・養殖や食品の生産拠点において感染が拡大した場合は生産の停止や縮小、調達先や物流の過程で感染が拡大した場合は原料の調達が難しくなるなど、安定的な製商品の供給に支障が生じる可能性があります。
また、コロナ禍による世界的な外食・観光需要減、需要減による水産市況の悪化、安定生産を継続するための人員確保に伴うコスト増などが継続した場合、収支に影響する可能性があります。また、感染症予防による渡航規制が長期化すると、事業の海外展開に後れが出るおそれや、海外グループ会社とのコミュニケーション不足がガバナンスの低下を招くおそれがあります。
当社グループでは、当社製商品を継続的・安定的に世界の人々に供給する使命を全うするため、現時点で考えられる最大限の措置を講じてきました。社長を本部長とする新型コロナウイルス対策本部を本社に設置し、当社の各事業所はもとより国内グループ会社には現地対策本部、南米、北米、欧州、アジア・オセアニアとは、各エリアの事業執行とのWEB会議等を通じて、時々刻々と変化する各国や国内情勢についての情報収集を行っております。また、WHOや関係省庁・保健行政機関から収集した情報を共有した上で、新型コロナウイルスによる当社グループへのリスクを可能な限り予測し、基本的対策を定めて実施しております。在宅でのテレワークの推進、衛生管理を徹底、罹患者(疑いを含む)が発生した場合に拠点機能を速やかに回復させるための対策など、今後も適宜、対策を講じてまいります。
各リスク間の関係図
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