(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、昨夏以降に米中などの海外経済が回復基調に転じたことが追い風となって製造業の景況感に改善は見られたものの、非製造業では、長引く新型コロナウイルスの影響で景気は低迷したままという「経済の二極化」の様相となりました。
建設業界においては、防災・減災工事などの国土強靭化関連の公共工事は底堅く推移しましたが、設備投資を中心に民間工事の受注は減少しました。また、新型コロナウイルスの影響により海外工事の受注が落ち込むという状況になりました。
このような状況の中、当連結会計年度における当社グループの売上高は、24,608百万円(前年同期比 17.1%増)となりました。
損益面では、増収により、営業利益は 975百万円 (前年同期比 522.1%増 )となり、経常利益は 1,066百万円 (前年同期比 307.8%増 )となりました。
法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、 729百万円 (前年同期比 327.9%増 )となりました。
なお、当連結会計年度は、新型コロナウイルスによる工事の中断や資機材の調達遅延等は、一部限定的であったため、連結財務諸表への影響は軽微であります。
セグメントの業績は次のとおりであります。
(エンジニアリング事業)
前期から繰り越された非鉄金属関連の大型工事案件が完成となったこと、及び進行基準による売上が計上されたことなどにより、売上高は18,854百万円(前年同期比 25.4%増)となりました。
この増収に伴い、経常利益は1,116百万円(前年同期比 178.5%増)となりました。
(パイプ・素材事業)
上下水道、農業用水などの用途のベース案件の受注件数は増加しましたが、売上高は6,130百万円(前年同期比 5.7%減)に留まりました。
一方、経常利益は軍事施設関連などの大型工事案件をはじめとするパイプ工事案件の利益率が改善したことなどにより、679百万円(前年同期比 19.2%増)となりました。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は16,673百万円となり、前連結会計年度末に比べ903百万円減少しました。これは主に預け金が1,196百万円増加したこと及び受取手形・完成工事未収入金等が1,878百万円減少したことによるものです。固定資産は2,272百万円となり、前連結会計年度末より33百万円減少しました。
この結果、総資産は18,946百万円となり、前連結会計年度末に比べ937百万円減少しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は3,823百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,227百万円減少しました。これは主に支払手形・工事未払金等が1,413百万円減少したことによるものです。固定負債は1,121百万円となり、前連結会計年度末より21百万円増加しました。
この結果、負債合計は4,944百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,206百万円減少しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は14,001百万円となり、前連結会計年度末より268百万円増加しました。これは親会社株主に帰属する当期純利益729百万円の計上及び剰余金の配当421百万円の支払いにより、利益剰余金が308百万円増加したことが主たる要因であります。
この結果、自己資本比率は、73.9%(前連結会計年度 69.1%)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローが2,363百万円の資金の流入となり、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フローは、それぞれ、311百万円、423百万円の資金の流出となりました。
これに、現金及び現金同等物に係る換算差額9百万円を減算した結果、資金は1,618百万円の増加となり、当連結会計年度末には、6,943百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、2,363百万円の資金の流入(前年同期 資金流出114百万円)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益1,067百万円、未成工事受入金の増加による流入増1,431百万円、未成工事支出金の減少による流入増473百万円、売上債権の減少による流入増356百万円が資金の主な増加要因となる一方、仕入債務の減少による支出増1,413百万円などの資金の減少要因があり、これらが相殺された結果によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は311百万円(前年同期比 17.6%支出増)となりました。これは主に定期預金の預入による支出169百万円及び有形固定資産の取得による支出133百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は423百万円(前年同期比 49.8%支出減)となりました。
これは主に配当金の支払423百万円によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、「生産実績」は記載しておりません。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
エンジニアリング事業 |
12,312,439 |
58.8 |
4,968,978 |
42.9 |
パイプ・素材事業 |
5,717,946 |
86.1 |
1,575,969 |
79.3 |
セグメント間取引消去 |
△91,228 |
- |
△36,415 |
- |
合計 |
17,939,158 |
66.8 |
6,508,532 |
49.1 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.売上実績
当連結会計年度の売上実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
売上実績(千円) |
前年同期比(%) |
エンジニアリング事業 |
18,854,304 |
125.4 |
パイプ・素材事業 |
6,130,642 |
94.3 |
セグメント間取引消去 |
△376,433 |
- |
合計 |
24,608,512 |
117.1 |
(注)1.売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりであります。
前連結会計年度
三井金属鉱業株式会社 3,632,497千円 17.3%
八戸製錬株式会社 2,114,856千円 10.1%
当連結会計年度
八戸製錬株式会社 4,740,045千円 19.3%
三井金属鉱業株式会社 3,953,735千円 16.1%
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。
その作成にあたっての重要な方針・見積りは、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとお
りですが、そのうち見積りの重要度が高いものは以下のとおりであります。
1) 完成工事高及び完成工事原価の計上基準
完成工事高及び完成工事原価の計上基準は、当事業年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事については工事進行基準を、その他の工事については工事完成基準を適用しておりますが、工事進行基準においては、工事原価総額の見積りが完成工事高の計上額に影響を与えます。工事原価総額の見積りは実行予算によって行いますが、実行予算作成時には作成時点で入手可能な情報に基づいた施工条件によって工事原価総額を見積り、受注・着工後完成に至るまで随時工事原価総額の検討・見直しを行っております。また、完成工事高計上においては原価比例法を採用しており、実際の工事の進捗率と累計発生原価率との乖離が疑われる場合には、その要因を調査・検討することで計上額の妥当性を検証しております。更に、企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」に基づき、既契約総額を超える完成工事高は計上しておりません。このように、工事進行基準に基づく完成工事高計上の基礎となる工事原価総額の見積りは適時かつ適切に行っておりますが、将来の損益は見積り金額と異なる場合があります。
2) 工事損失引当金
手持工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積ることができる工事について、将来の損失に備えるため、その損失見込み額を計上しております。損失見込み額の算定に際しては現在入手可能な情報に基づいた施工条件によって工事原価総額を適時かつ適切に見積っておりますが、将来の損益は見積り金額と異なる場合があります。なお、当連結会計年度末において工事損失引当金は計上しておりません。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(当社グループの当連結会計年度の経営成績等)
2020年初頭より始まった新型コロナウイルスの世界的拡散は、その後も第2波、第3波が襲来するなど、収束の見込みが立っておらず、当社の経営環境に大きな影響を与えることが避けられない情勢にあります。そのような経営環境の中、当連結会計年度においては、銅・亜鉛などのベースメタルは需要拡大の期待が出てきたものの、新型コロナウイルスの再拡大で横ばい傾向となり、当社が関連する非鉄金属製造設備関連においての顧客の設備投資意欲は再開手探りの状態に転じております。
この影響に伴い、当連結会計年度における受注高は、17,939百万円と前年同期比33.2%の減少となりました。
一方、売上高につきましては、前期より繰り越された非鉄金属関連の大型工事案件が完成となったこと、及び進行基準による売上が計上されたことなどから、24,608百万円と前年同期比17.1%増となりました。
損益面につきましては、売上高の増加に伴い、営業利益は前期より819百万円増加の975百万円(前年同期比 522.1%増)となり、経常利益は前期より805百万円増加の1,066百万円(前年同期比 307.8%増)と増益になりました。
法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、前期より559百万円増加の729百万円(前年同期比327.9%増)となりました。
この結果、売上高営業利益率は、前年同期比3.3ポイント増の 4.0% 、総資産経常利益率は、前年同期比4.2ポイント増の 5.5% 、自己資本当期純利益率は、前年同期比4.1ポイント増の 5.3% となりました。
当社グループは、連結売上高営業利益率5%以上を目標とする経営指標に掲げておりますが、外注費や資材価格の高止まりの影響もあって、当連結会計年度は、目標を1%下回る結果となりました。
なお、当社グループの次期繰越受注高につきましては、6,508百万円と前年同期比50.9%の減少となりましたが、翌連結会計年度は、契約を進めている案件を中心に、期首から受注高を増加させていくよう営業活動を強化していきます。
(当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因)
三井金属グループからの受注高は、前連結会計年度より5,222百万円減少の9,464百万円(前年同期比 35.6%減)となり、同受注高が連結受注高に占める比率は、前年同期比1.9ポイント減の52.8%となりました。
このうち、三井金属鉱業㈱からの受注高は、前連結会計年度より3,933百万円減少の2,011百万円(前年同期比 66.2%減)となりました。
三井金属グループへの売上高は、前連結会計年度より980百万円増加の12,920百万円(前年同期比 8.2%増)となり、同売上高が連結売上高に占める比率は、52.5%となりました。
このうち、三井金属鉱業㈱への売上高は、前連結会計年度より321百万円増加の3,953百万円(前年同期比 8.8%増)となりました。
三井金属グループは、当社にとって主要な顧客でありますが、三井金属グループ以外の企業からの受注高を増やすことも重要な方針としております。
(当社グループの財務状況と資本効率)
新型コロナウイルスの世界的拡散による景気の大幅な後退とその長期化の可能性により、売上低下による業績悪化等が懸念され、短期的な資金繰りの不安が叫ばれつつある昨今、当社におきましては、かねてより健全な財務基盤を維持・安定させることを重要視しております。
当社の当連結会計年度を含む過去3連結会計年度の自己資本比率は、それぞれ67.4%、69.1%、73.9%、また同様に過去3連結会計年度の流動比率は、それぞれ324%、348%、436%であります。有利子負債比率においても、いずれの連結会計年度も0%であり、安定性と流動性という点においては強固な財務基盤を維持しております。
今後もこの財務基盤を安定的に維持することで、顧客からの信頼維持に努めてまいります。
また、自己資本利益率(ROE)については、一般的に8%以上を維持していくことが目安とされる考え方がある中、過去3連結会計年度のROEは、それぞれ11.2%、1.2%、5.3%となりました。当社におきましては、健全な経営のためには経営資本効率が重要であることを認識しており、ROEの向上に向けて努力してまいります。
(当社グループの資本の財源及び資金の流動性)
当社グループでは、短期運転資金は内部資金及び金融機関からの短期借入、また、設備投資につきましても内部資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。
なお、翌連結会計年度においては、有価証券報告書提出日現在で確定している重要な資本的支出の予定はありません。資本的支出の内容は、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(エンジニアリング事業)
エンジニアリング事業は、海外向けのカソード自動剥取機等の大型工事案件が売上に計上されたことなどにより、当連結会計年度の売上高は前年同期比 25.4%増 の 18,854百万円 となり、経常利益は前年同期比 178.5%増 の 1,116百万円 となりました。
セグメント資産は7,137百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,862百万円減少しました。
当連結会計年度におきましては、カソード自動剥取機やガソリンエンジン用触媒プラント設備工事の追加工事などの受注がありましたが、新型コロナウイルスの再拡大の中、国内外の企業において設備投資が先送りされる傾向にあったこと、また、営業活動が抑制されたことなどにより、新規顧客や新規分野での受注は、非常に限定的なものとなりました。
翌連結会計年度は、脱炭素化やSDGsなど環境問題を推進することが奨励され、また、DXや5Gなどデジタル化が産業の中心となってくる国内外の事業環境において、これまで、小水力発電設備の建設などの一貫したEPC(Engineering,Procurement and Construction:設計/調達/建設)業務にて経験を積んできた再生可能エネルギー分野や、生産性を向上させるためのロボット無人化・省力化機械設備分野などで、新たな事業分野のすそ野を広げるべく、更なる新規受注獲得に取り組みます。
同時に、外注費や資材代が高止まりする中、引き続き徹底したコスト削減の努力も重ねていく所存です。
(パイプ・素材事業)
パイプ・素材事業は、パイプ部門・素材部門とも競合他社との価格競争が厳しくなっている環境において、売上高は前年同期比 5.7%減 の 6,130百万円 となりましたが、経常利益は、軍事施設関連などの大型工事案件をはじめとするパイプ工事案件の利益率が改善したことにより、前年同期比 19.2%増 の 679百万円 となりました。
セグメント資産は5,393百万円となり、前連結会計年度末に比べ184百万円減少しました。
当連結会計年度におきましては、上下水道関連設備や橋梁添架分野をはじめとした従来のパイプ配管設備分野に加え、鉄道関連設備分野や電力関連設備分野での用途を拡大し、陸上養殖関連分野など今後広く展開が期待される分野への事業展開に注力致しました。
これらの新規分野への事業展開をもとに、翌連結会計年度は、売上・利益目標の達成とともに、新規用途・新規顧客の開拓、新製品の開発、品質管理の強化を推進致します。
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