文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) シミズグループの中長期的な経営方針
当社は、1887年に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の教えである道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を「社是」とし、この考え方を基に、「真摯な姿勢と絶えざる革新志向により、社会の期待を超える価値を創造し、持続可能な未来づくりに貢献する」ことを「経営理念」として定めています。
2019年5月、当社は、2030年を見据えたシミズグループの長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」と、当面5年間の基本方針と重点戦略を取りまとめた「中期経営計画〈2019‐2023〉」を策定しました。
「SHIMZ VISION 2030」
■目指す姿『スマート イノベーション カンパニー』
建設事業の枠を超えた不断の自己変革と挑戦、多様なパートナーとの共創を通じて、時代を先取りする価値を創造(スマート イノベーション)し、人々が豊かさと幸福を実感できる、持続可能な未来社会の実現に貢献します。
■シミズグループが社会に提供する価値
イノベーションを通じた価値の提供により、SDGsの達成に貢献します。
①安全・安心でレジリエント※1な社会の実現
地震や巨大台風、豪雨などの自然災害リスクが高まる中、生活と事業を災害から守ることが求められています。強靭な建物・インフラの構築を通じて、安全・安心でレジリエントな社会の実現に貢献していきます。
・強靭な社会インフラの構築
・建物・インフラの長寿命化
・防災・減災技術の普及
・ecoBCP※2の普及
※1 レジリエント:強くしなやかで復元力がある
※2 ecoBCP:平常時の節電・省エネ(eco)対策と非常時の事業継続(BCP)
対策を両立する施設・まちづくり
②健康・快適に暮らせるインクルーシブ※な社会の実現
高齢化や人口減少、都市化などの急速な社会変化が進む中、誰もが安心して快適に暮らせる社会が求められています。人に優しい施設やまちづくりを通じて、健康・快適に暮らせるインクルーシブな社会の実現に貢献していきます。
・ICTを活用したまちづくり
・ユニバーサルデザインの普及
・well-beingの提供
・人類の活躍フィールドの拡大(海洋、宇宙へ)
※ インクルーシブ:すべての人が社会の一員として参加できる
③地球環境に配慮したサステナブル※な社会の実現
地球温暖化や森林破壊、海洋汚染などが深刻化する中、次世代に豊かな地球を残すことが求められています。環境負荷低減を目指す企業活動を通じて、地球環境に配慮したサステナブルな社会の実現に貢献していきます。
・再生可能エネルギーの普及
・省エネ・創エネ、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化の推進
・事業活動におけるCO2排出量削減
・自然環境と生物多様性の保全
※ サステナブル:地球環境を保全しつつ持続的発展が可能な
■ビジョンの達成に向けて
3つのイノベーションの融合により、新たな価値を創造するスマート イノベーション カンパニーを目指します。
①事業構造のイノベーション
ビジネスモデルの多様化とグローバル展開の加速、及び、グループ経営力の向上
②技術のイノベーション
建設事業の一層の強化に向けた生産技術の革新と未来社会のメガトレンドに応える先端技術の開発
③人財のイノベーション
多様な人財が活躍できる“働き方改革”の推進と社外人財との“共創”による「知」の集積
■目指す収益構造
スマート イノベーション カンパニーへの進化により、2030年度に連結経常利益2,000億円以上を目指します。
連結売上利益の構成は、事業別では、建設65%、非建設35%、地域別では、国内75%、海外25%を想定しています。
「中期経営計画〈2019‐2023〉」
■中期経営計画の位置付け
企業価値の持続的成長を目指し、外部環境の変化に機敏に対応しつつ、利益水準を維持するとともに、2019年度から2023年度までの5年間を新たな収益基盤の確立に向けた先行投資期間として位置付けています。
■基本方針
建設事業の深耕・進化と、非建設事業の収益基盤確立及び成長を支える経営基盤の強化を図り、グローバル展開の加速とESG経営の推進により、シミズグループの企業価値向上を実現し、SDGsの達成に貢献します。
■経営数値目標(連結ベース)
建設事業での安定的な収益基盤を維持しつつ、非建設事業の着実な収益力向上により中長期的に収益構造を強化し、グループの持続的成長を実現します。
非建設事業の成長に資する投資を着実に実施しつつ、財務体質の健全性を維持します。
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(単位:億円) |
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中期経営計画〈2019‐2023〉 |
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2023年度 目標 |
財務KPI |
総売上高 |
18,800 |
ROE 10%以上 自己資本比率 40%以上 負債資本倍率 0.7倍以下 (D/Eレシオ) 配当性向 30%程度 |
建設事業 |
15,500 |
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非建設事業 |
3,300 |
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売上利益 |
2,350 |
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建設事業 |
1,850 |
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非建設事業 |
500 |
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経常利益 |
1,400 |
■資本政策
①政策保有株式の縮減
・政策保有株式の縮減を段階的に進め、資本の有効活用を図ります。
・売却代金の一部を原資として自己株式を取得し、成長戦略の実現に向けた機動的な資本政策を実施します。
②株主還元の拡充
・長期的発展の礎となる財務体質の強化と安定配当を基本方針とし、1株当たり配当金の下限を年間20円としたうえで、成長により稼得した利益を連結配当性向30%を目安に還元します。
■投資計画
長期ビジョン達成に向けた新たな収益基盤確立のため、5年間で7,500億円の投資を実施します。
項目 |
投資額(5ヶ年) |
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生産性向上・研究開発投資 |
1,000億円 |
・建設生産システムの進化(ロボット等) ・研究開発拠点の拡充 ・デジタル関連投資 他 |
不動産開発事業 |
5,000億円 |
・国内開発事業・賃貸資産の拡充 ・海外事業の拡大(ASEAN・北米等)他 新規投資額 5,000億円 売却による回収 ▲1,000億円 NET投資額 4,000億円 |
インフラ・再生可能エネルギー 新規事業(フロンティア事業他) |
1,300億円 |
・インフラ運営・BSP事業 ・再生可能エネルギー関連事業 ・宇宙・海洋・自然共生事業 ・次世代ベンチャー投資 他 |
人財関連 |
200億円 |
・高度プロフェッショナル人財 ・グローバル化・制度改革 他 |
5ヶ年投資額 合計 |
7,500億円 |
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■非財務KPI
建設事業における労働生産性を向上させるとともに、ESGの観点から企業価値の向上を図り、SDGsの達成に貢献します。
主要KPI |
2023年度目標 |
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生産性向上 |
建設事業における生産性(2016年度比) 向上率 |
20%以上 |
環境(E) |
建設事業におけるCO2排出量(2017年度比)削減率※1 |
10%以上 |
社会(S) |
働きがい指標※2 |
4.0以上 |
ガバナンス(G) |
重大な法令違反件数 |
0件 |
※1 当社エコロジー・ミッション2030‐2050活動に対応する目標
※2 当社従業員に対する「働きがい意識調査」による指標(5段階評価の平均)
■ESG経営の推進
シミズグループは、ESG経営を推進し、事業活動を通じて社会的責任を果たすことで、ステークホルダーからの信頼を高めるとともに、中長期的な企業価値向上と持続的な成長を実現します。
具体的な取組み
シミズのマテリアリティ
当社は、社会や環境の持続可能性(サステナビリティ)を強く意識した事業活動を推進しています。このたび最近の社会動向の変化も踏まえて、当社として取り組むべき重要課題を「マテリアリティ」として改めて整理しました。マテリアリティの特定にあたっては、SDGsをはじめとする様々な社会課題や、当社の社是や経営理念、長期ビジョン等を勘案し、「社会への影響度」と「自社にとっての影響度」の2つの側面から重要度を検討しました。
マテリアリティ毎に進捗状況を管理する指標も定めており、今後、取組みを着実に進め、持続可能な未来づくりに貢献していきます。
「マテリアリティ」の詳細については下記URLよりご参照ください。
https://www.shimz.co.jp/company/csr/materiality/
TCFD※提言に基づく情報開示
当社は、気候変動を重要な経営課題の1つと捉え、気候変動が当社事業に及ぼす「リスク」と「機会」及びその影響時期を分析し、その結果を経営戦略に活かしています。気候変動に対して必要な当社の対応は、長期ビジョンと中期経営計画で策定した事業戦略の方向性と整合していることを確認しました。またその結果を、コーポレートサイトやコーポレートレポートにおいて開示しています。
「TCFD提言に基づく情報開示」の詳細については下記URLよりご参照ください。
https://www.shimz.co.jp/company/csr/environment/tcfd/
※ TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース):
2015年に金融安定理事会により設置されたイニシアチブ
サステナブル・リノベーションによる「ZEB※」を実現
2050年のカーボンニュートラル達成には、新築だけでなく改修工事による建物のZEB化が重要です。改修によるZEB化は技術的難易度が高い中、当社は国立研究開発法人産業技術総合研究所つくば西事業所内のゼロエミッション国際共同研究センター改修・更新工事において「西-4A棟」のZEB化を達成しました。
この技術を活かして、今後もカーボンニュートラルの達成に貢献する取組みを進めていきます。
※ ZEB(Net Zero Energy Building):
エネルギー消費量を極力小さくするとともに、エネルギーを自給し、建物のエネルギー消費量の収支を正味ゼロとする建物
建築物の木質化で新しい価値を創造
地球温暖化への対応が喫緊の課題となっている中、CO2削減やSDGsの目標達成という観点から、「木材」に大きな注目が集まっています。
当社は、高い耐震性、耐火性を満たすとともに、意匠性、施工性、経済性に優れた建築を実現する「シミズハイウッド※」シリーズを開発し、建築に木を取り入れることで、環境と人にやさしい木質建築を目指しています。
※ 「シミズハイウッド」は日本における当社の登録商標です。
アフリカ・ジブチ共和国の小中学校建設プロジェクトを受注
ジブチ共和国は、アフリカ大陸北東部に位置する国で、就学率の向上を目的に教育施設の拡充に取り組んでいます。本プロジェクトでは、日本国政府の無償資金協力により、基礎教育へのアクセス拡大と学習環境の改善を目的に、9年間の一貫した義務教育を提供する小中併設校を建設。アフリカの持続的な発展に寄与していきます。
(2) 対処すべき課題
■労働環境改善に向けた取組み
2024年4月からの建設業に対する時間外労働の上限規制の適用に向け、法令順守のもとで、適正かつ生産性の高い事業運営を可能とする体制を構築することが急務となっています。当社は本年4月に社長を委員長とする「労働環境改善委員会」を設置し、従業員が心身共に健康で、働きがいを感じることのできる職場の実現に向け、過重労働の防止や従業員のメンタルヘルスのサポート体制の拡充を推進するとともに、各部門における労働環境改善に向けた推進責任者を選任し、全社一体の取組みを展開しています。
■コンプライアンスの徹底に向けた取組み
当社グループの役員・従業員が、社是である「論語と算盤」の精神に則って具体的な行動ができるよう、倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底に資する諸施策を継続して推進しています。
①経営トップが率先して倫理意識の涵養とコンプライアンスの徹底を図る
a. 経営幹部向け企業倫理研修(当社役員が受講後に、当社従業員及び子会社の役職員にイントラネットで公開)
・安岡定子氏「論語を実践に活かす」、渋沢資料館 井上潤氏「論語と算盤の実践」
b. コンプライアンスeラーニング研修(「独占禁止法の順守」を含む)
②工事の入札に係る行動規準の周知徹底(当社及び建設事業系子会社を中心に推進)
・役員・従業員に対して研修・ヒアリングを実施し行動規準を周知徹底するとともに、個別案件について必要に応じ外部弁護士などによるヒアリング等を実施
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