当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中で、全般的に持ち直しの傾向が続きました。一方、年度終盤のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、国際金融資本市場で不安定な動きがみられるほか、原油などの資源価格も大幅に上昇するなど、先行きに不透明感がみられる状況となっております。
建設業界におきましては、政府建設投資は堅調に推移しており、民間建設投資も持ち直しの動きがみられます。但し、民間工事の受注環境が厳しくなっていることや建設資材の価格高騰等の影響もあり、注視が必要な状況が続いております。
このような状況の中、当社グループの連結業績は以下のとおりとなりました。
建設事業受注高は、国内土木工事が減少しましたが、国内建築工事及び海外工事が増加したことにより、 前期比20,536百万円増加 ( 6.6%増 )の 333,974百万円 となりました。
売上高は、 前期比12,487百万円減少 ( 3.7%減 )の 323,754百万円 となりました。営業利益は、国内外の土木工事及び不動産事業等における売上総利益の増加により、 前期比2,589百万円増加 ( 12.4%増 )の 23,540百万円 となりました。経常利益は、 前期比1,935百万円増加 ( 9.0%増 )の 23,497百万円 となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益や固定資産売却益を特別利益に計上しましたが、完成工事補償引当金繰入額や減損損失を特別損失に計上したこと等により、 前期比2,063百万円減少 ( 12.0%減 )の 15,103百万円 となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等の適用により、当連結会計年度の完成工事高及び完成工事原価がそれぞれ24百万円増加しております。また、利益剰余金の当期首残高へ与える影響はありません。
報告セグメント等の業績は以下のとおりであります。(セグメントの業績は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載しております。)
なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)1 報告セグメントの概要 (3)報告セグメントの変更等に関する事項」に記載のとおり、当連結会計年度の期首に全社費用の配賦方法を見直しております。以下の前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後の配賦方法に組み替えた数値と比較して記載しております。
イ 土木事業
当セグメントの売上高は、前期比4.3%減の121,973百万円となり、セグメント利益は、完成工事総利益率が向上したことにより、前期比44.2%増の12,356百万円となりました。
当社単体の土木工事の受注高は、国内民間工事及び海外工事が増加しましたが、国内官公庁工事が減少したことにより、 前期比2,675百万円減少(1.8%減)の144,614百万円となりました。
ロ 建築事業
当セグメントの売上高は、前期比6.4%減の184,263百万円となり、セグメント利益は、売上高が減少したこと等により、前期比32.1%減の6,404百万円となりました。
当社単体の建築工事の受注高は、国内民間工事が減少しましたが、国内官公庁工事が増加したことにより、 前期比18,491百万円増加(11.2%増)の183,478百万円となりました。
ハ 開発・不動産事業等
当セグメントは、主にグループ保有不動産の販売及び賃貸収入により構成されております。当セグメントの売上高は、主に販売事業の売上が増加したことにより、前期比44.8%増の17,740百万円となり、セグメント利益は、売上高の増加に伴い、前期比61.7%増の4,779百万円となりました。
当社グループの財政状態は以下のとおりであります。
当連結会計年度末の資産は、受取手形・完成工事未収入金等や投資有価証券が減少しましたが、有形固定資産が増加したことから、 前連結会計年度末と比較して5,173百万円増加(1.1%増)の477,613百万円となりました。
負債は、社債や預り金が増加したことから、 前連結会計年度末と比較して54,994百万円増加(20.8%増)の319,897百万円となりました。
純資産は、自己株式の公開買付けの実施により自己株式が増加したことから、 前連結会計年度末と比較して49,821百万円減少(24.0%減)の157,715百万円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して11.9ポイント減少し、31.7%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して3,547百万円増加(8.1%増)の47,121百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が22,696百万円となり、法人税の支払等により資金が減少しましたが、売上債権の減少や預り金の増加等により資金が増加し、41,243百万円の収入超過(前連結会計年度は4,907百万円の収入超過)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等により資金が減少し、 22,532百万円の支出超過(前連結会計年度は5,302百万円の収入超過)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行等により資金が増加しましたが、自己株式の公開買付けの実施による自己株式の取得や配当金の支払により資金が減少し、 16,074百万円の支出超過(前連結会計年度は12,653百万円の支出超過)となりました。
③ 生産、受注及び販売の状況
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業及び不動産事業等では、生産実績を定義することが困難であり、建設事業においては、請負形態をとっているため販売実績という定義は実態に即しておりません。
また、当社グループにおいては、建設事業以外では受注生産形態をとっておりません。
よって、受注及び販売の状況については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」における各セグメントの種類に関連付けて記載しております。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
建設事業における受注工事高及び完成工事高の状況
イ 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額に変更があったものについては、当期受注工事高にその増減額を含めて表示しております。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。
2 次期繰越工事高の施工高は、支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は、(当期完成工事高+次期繰越工事施工高-前期繰越工事施工高)に一致します。
4 収益認識会計基準等を第85期の期首から適用したことによる影響額を反映するため、第85期の期首繰越工事高は第84期の次期繰越工事高から145百万円を控除しております。
5 当期受注工事高のうち海外工事の割合は、第84期 0.7%、第85期 12.9%であります。
6 受注工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第84期 請負金額100億円以上の主なもの
第85期 請負金額100億円以上の主なもの
ロ 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は特命と競争に大別され、その比率は次のとおりであります。
(注) 百分比は請負金額比であります。
ハ 完成工事高
(注) 1 海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第84期 請負金額100億円以上の主なもの
第85期 請負金額100億円以上の主なもの
3 完成工事高に対する割合が100分の10以上の相手先は、次のとおりであります。
ニ 手持工事高
(2022年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。
請負金額100億円以上の主なもの
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2023」に基づく当連結会計年度業績計画の達成状況及び前期比較の分析は次のとおりであります。
建設事業受注高は、前期比205億円増加(6.6%増)、期首計画比275億円減少(7.6%減)の3,339億円となりました。国内土木工事は高速道路のリニューアル工事や耐震補強工事を中心に受注しましたが、前期に大型のトンネル工事の受注があったため、前期実績を下回りました。国内建築工事は物流施設や教育施設、事務所・庁舎、工場等を中心に受注したことにより前期実績を上回りました。海外工事はシンガポールにおいて大型の地下鉄工事を受注したことにより前期実績を大幅に上回りました。以上の要因により上記の結果となりました。
売上高は、減収となり、前期比124億円減少(3.7%減)、期首計画比132億円減少(3.9%減)の3,237億円となりました。開発・不動産事業等が販売用不動産の売却により前期比46億円増加(31.3%増)となったものの、国内土木工事が前期比70億円減少(6.1%減)となり、国内建築工事も上半期の受注が低調だったため期中入手工事分の売上が伸びず、前期比155億円減少(8.3%減)となったことが減収の主な要因であります。
営業利益は、前期比25億円増加(12.4%増)、期首計画比25億円増加(12.1%増)の235億円となり、営業利益率は前期の6.2%から7.3%に改善しました。営業利益の増加につきましては、土木工事の売上総利益率が前期比3.9ポイント増加の16.3%となったことや、販売用不動産の売却により開発・不動産事業等の売上総利益が前期比23億円増加の69億円となったことが主な要因であります(売上総利益はいずれも当社単体の数値であります。)。
ロ 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度末の財政状態の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前期末比51億円増加(1.1%増)の4,776億円となりました。工事代金の回収が進み受取手形・完成工事未収入金等の売上債権が196億円減少しましたが、現預金が33億円増加したことや、開発・不動産事業等に係る設備投資により有形固定資産が204億円増加したこと等が主な増加の要因であります。
負債は、前期末比549億円増加(20.8%増)の3,198億円となり、このうち有利子負債残高は前期末比450億円増加(39.1%増)の1,600億円(D/Eレシオ1.1倍)となりました。これは、当連結会計年度において実施した自己株式の公開買付けによる自己株式(543億円)の取得と開発・不動産事業を中心とした設備投資(311億円)に係る資金調達が主な要因であります。次期につきましては、開発・不動産事業を中心に451億円の設備投資を行う計画としております。この設備投資が計画どおり進んだ場合には、期末の有利子負債は1,830億円(D/Eレシオ1.2倍程度)となる見込みであります。
純資産は、前期末比498億円減少(24%減)の1,577億円となりました。また、自己資本比率は31.7%となり、前期から11.9ポイント減少しました。これは、当連結会計年度において自己株式の公開買付けにより自己株式(543億円)を取得したことや、配当(106億円)を実施したことが主な要因であります。
ハ セグメント情報に記載された区分ごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、セグメント情報に記載された区分ごとに資産及び負債を配分していないため、セグメント別の財政状態の分析・検討は記載しておりません。
セグメント情報に記載された区分ごとの経営成績等の状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。また「中期経営計画2023」に基づく当事業年度業績計画の達成状況は次のとおりであります。なお、当社グループの受注高、売上高及び売上総利益(完成工事総利益・不動産事業等総利益)は、その大半を当社単体で占めていることから、以下の分析・検討は、いずれも当社単体の数値を記載しております。
(土木事業)
受注高は、期首計画比で28億円減少(2.0%減)の1,446億円となりました。これは、シンガポールにおいて大型の地下鉄工事を受注したものの、国内官公庁の新規工事の受注が少なかったことが主な要因であります。工事種別でみると鉄道などが前期比で増加し、道路などが前期比で減少となりました。
売上高は、概ね計画どおりの進捗となり、期首計画比で11億円減少(0.9%減)の1,208億円となりました。
完成工事総利益は、期首計画比で19億円増加(11.1%増)の196億円となりました。これは国内の大型工事が順調に進捗したことや、一部の国内工事において設計変更を獲得したこと等によるものです。この結果、完成工事総利益率についても期首計画比1.8ポイント増加の16.3%となりました。
(建築事業)
受注高は、期首計画比で165億円減少(8.3%減)の1,834億円となりました。これは、国内民間工事において受注環境が悪化し、複数の大型工事を失注したこと等が主な要因であります。工事種別でみると事務所・庁舎や教育施設などが前期比で増加し、住宅や物流施設などが前期比で減少となりました。
売上高は、期首計画比91億円減少(4.9%減)の1,788億円となりました。これは国内工事において、上半期の受注が低調であったため期中入手工事分の売上が伸びなかったこと等が主な要因であります。
完成工事総利益は、期首計画比で9億円減少(5.6%減)の164億円となりました。これは、上記売上高の減少に伴うものであります。なお、完成工事総利益率は概ね期首計画どおりの9.2%となりました。
(開発・不動産事業等)
売上高は、期首計画比で25億円増加(16.3%増)の180億円となりました。これは、当事業年度において販売用不動産を売却したこと等が主な要因であります。不動産事業等総利益は、期首計画比で12億円増加(21.6%増)の69億円となりました。これは、上記販売用不動産の売却に伴うものであります。
なお、当連結会計年度において、賃貸事業用の土地・建物の取得及び自社開発物件の建設等に連結で298億円を投資しました。賃貸事業用の土地・建物のうち主なものは、「第3 設備の状況 2 主要な設備の状況」に記載のとおりであります。
ニ 経営成績等に重要な影響を与える要因の分析
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える主な要因は、景気動向に伴う建設市場の動向、資材価格の変動及び建設技能労働者確保の状況であります。
国内経済の今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの普及や各種政策の効果等により持ち直しの動きが続くことが期待されますが、ウクライナ情勢等による不透明感がみられる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約等による下振れリスクもあり、不確実性の高い状況が続くものと予想されます。国内建設市場の今後の見通しにつきましては、政府建設投資・民間建設投資ともに当連結会計年度と同水準で推移するものと予想されますが、ウクライナ情勢による原油や資材の価格高騰の影響も懸念され、注視が必要な状況が続くものと予想されます。
これらの要因に対処しつつ、持続的な成長を遂げるため、当社グループは、2018年度に策定した「西松-Vision2027」及び2021年度に策定した「中期経営計画2023」に掲げる各種施策に取り組んでおります。
ホ 目標とする経営指標の達成状況
当社グループは、2021年度を初年度とする「中期経営計画2023」において、「連結売上高4,000億円」「連結営業利益320億円」「ROE12%以上」「自己資本比率40%程度」「D/Eレシオ0.8倍」を目標とする経営指標として掲げ、この達成に向けて各種施策に取り組んでおります。
計画初年度である当連結会計年度の達成状況は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資金需要は、主として、土木事業及び建築事業に係る材料費、労務費、外注費、経費及び営業費用としての一般管理費等の運転資金と、開発・不動産事業等に係る固定資産の購入、改修費用等の設備投資資金であります。
当社グループは「中期経営計画2023」において、3年間で710億円の成長投資を予定しておりますが、バランスシートマネジメントにより、自己資本比率及びD/Eレシオを経営指標として掲げ、財務健全性を確保してまいります。
これらの資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による調達で対応していくこととしております。
手許の運転資金については、子会社も含めたグループ全体としての余剰資金の管理に努め、資本効率の向上を図っております。また、機動的な資金調達を目的として主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結しており、流動性リスクに備えております。
キャッシュ・フローの状況の概要は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。次期につきましては、引き続き工事の立替資金の回収を図り、営業活動によるキャッシュ・フローの改善に努めてまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び判断が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積り及び判断については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
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