当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、製造事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は
(建築事業、土木事業及びインフラ運営事業)
当社グループは、いわゆるゼネコンから「総合インフラサービス企業」に変革するため、また、多様化・高度化する社会のニーズに対応するため、生産性や品質の向上など、社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。特に最新のICTやIoT、AI、自動化技術を駆使した革新的な生産性向上技術、環境・エネルギー関連技術、脱炭素社会に向けた木材資源活用技術、都市インフラ施設の維持管理・高度化技術、ICT社会への対応技術などを、注力して取り組むべき重要な技術分野として設定しています。
これらの多様な技術開発をより効果的に実施するため、従来の組織間の隔たりを無くして多次元的な管理を行うマトリックス組織により技術開発を実施しています。
また、近い将来、建設業は大きな変革を迎えると考えられ、技術開発においても激しい変化に対応できる多様性と迅速性が求められており、大学や公的研究機関・異業種企業との技術協力や共同開発などのオープンイノベーションを積極的に推進しています。
当連結会計年度における研究開発費は
① 「木鋼組子」を開発、渋谷道玄坂 13 階建て オフィスに初適用
当社は、都市部での木造ニーズを見据え、木と鉄骨を組合せたハイブリッド耐震システム「木鋼組子※1」を株式会社ホルツストラと共同で開発、特許を出願、東急不動産株式会社の「(仮称)道玄坂一丁目計画」に初適用し、2022年度の完成を目指しています。なお本計画は、2020年7月30日に国土交通省が発表した「令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)※2」に採択されています。
2019年に創業100周年を迎えた当社は、次の100年に向けて総合建設業から総合インフラサービス企業への大きな変革を目指しており、その中で森林もまた重要な社会インフラの一つと捉え森林・林業とのかかわりを木材資源総合活用事業として推進しています。「伐って、使って、植えて、育てる」という森林の持続的な循環において様々なパートナーと共に価値を創り、社会に実装する活動を行っており、これらの取組はSDGsの目標達成にも貢献します。
※1 「木鋼組子」(読み:モッコウクミコ):前田建設工業株式会社が商標出願中です。 出願番号:商願2020-09240
※2 令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型):再生産可能な循環資源である木材を大量に使用する大規模な木
造建築物などの先導的な整備事例について、木造建築物などに係る技術の進展に資するとともに普及啓発を図ることを目的に
する国土交通省の事業です。先導的な設計・施工技術が導入される大規模な建築物の木造化を実現する事業計画の提案を公募
し、支援対象として適切と思われる提案が採択されます。
② 「鋼製支保工建込みロボット」で第22回国土技術開発賞、国土交通大臣表彰、優秀賞を受賞
当社と古河ロックドリル株式会社、マック株式会社との共同で開発した「鋼製支保工建込みロボット」が、第22回国土技術開発賞、国土交通大臣表彰、優秀賞を受賞しました。
当技術は、自動追尾型トータルステーションなどで構成する「支保工位置ナビゲーションシステム」、支保工位置の微調整が可能な「高性能エレクター」、ボルトナットの締付を必要としない「自動建込用鋼製支保工」により、測量や支保工の位置合わせなど、従来は人が切羽で行っていた作業を機械化し、運転席からの操作のみで高精度な支保工の建て込みを実現します。危険個所のトンネル切羽直下に人が立ち入ることなく、オペレーター1人で支保工の建て込みが可能となるため,生産性(省人化・施工スピード向上)と安全性が格段に向上します。
国土技術開発賞は、技術開発者に対する研究開発意欲の高揚並びに建設技術水準の向上を図ることを目的として、建設産業に係わる優れた新技術を表彰するものです。
今後当社は、社会課題である安全性・生産性向上を目的に、トンネル自動施工技術の開発に取り組み続けます。
③ 振動ローラの加速度応答を利用した現場締固め管理システム(「αシステム」の適用性拡大)
当社は、株式会社大林組と共同で開発したICT土工現場締固め管理システム「αシステム」の適用性拡大を図るために、国立研究開発法人土木研究所や株式会社高速道路総合技術研究所など発注者側研究機関との共同研究を進めてきました。国土交通省が推進するi-constructionでは盛土転圧用重機に搭載したICT機器を駆使し盛土施工の効率化と生産性向上を目指していますが、これらの共同研究は転圧回数や撒き出し厚といった施工仕様に限定した現状の管理手法から一歩前進し、盛土の締固め品質(土の密度や剛性、含水状態など)を包括したICT品質管理システムの具現化を目指すものです。昨年度は国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)実証事業にも採択されるなど、今後、新システムの本格的な構築と現場実証を進めていく予定です。
④愛知アクセラレートフィールド
2018年8月より開始した愛知アクセラレートフィールド※は3年目の活動に入り、コンセッション事業の運営・維持管理における様々なニーズを募集テーマとして、運営している有料道路を新技術実証実験フィールドとして提供し、数多くの実証実験を実施しています。これまでに実証してきた様々な技術が、いよいよ社会実装できる段階を迎えつつあり、各種の点検技術や構造物モニタリング技術、逆走防止対策技術など、実証実験の成果をプロジェクトレポートとしてHP上に公開し、広く社会のために役立ててもらうべく、活動を続けています。
また、それらの成果を、活動報告展示会として当社が運営管理する愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)にて2020年11月に実施しました。これまでの成果を広く知っていただくとともに、開催にあたっては、当社がオープンイノベーションで共創している新型コロナウィルス対策技術を持つ先進ベンチャー企業各社の技術を活かして新型コロナの感染拡大防止に努めています。
※ 詳細は愛知アクセラレートフィールドのホームページをご確認ください。(https://www.acceleratefield.com/)
⑤新型コロナウイルス対応
2019年に始動した「ICI総合センター」ではオープンイノベーションの一環として新型コロナウイルス対策のアイデアを募集する「ICI INNOVATION AWARDS」を、2020年5月と10月の2回にわたり開催しました。
5月は「ICIオープンイノベーションLIVE」として、新型コロナウイルス関連のアイデアを広く一般に募集し、「VSコロナ部門」および「With and Afterコロナ部門」2部門についてそれぞれ5社のファイナリストによる最終審査会を開催しました。
10月は「それでもリアルなコミュニケーションにこだわる!」として、Withコロナ時代に各種研修施設・大学・学校、屋内外作業現場などで安全・安心に効果的なリアルコミュニケーションを実現するためのアイデアを広く一般に募集し、「技術・サービス部門」および「アート部門」の2部門についてそれぞれ3社のファイナリストによる最終審査会を開催しました。
両アワードとも完全オンラインイベントとして一般公開されました。アワードで受賞した先進ベンチャー企業とは本イベントを通じてブラッシュアップされた内容の社会実装を目指し共創に取り組んでいきます。
更にオンラインイベントの延長として、ネットやバーチャル空間だけでオープンイノベーションを推進できるWebサイト上のICI=「ICIイノベーションLIVE」を開設しました。
⑥ICIラボの「エクスチェンジ棟」が省エネ大賞省エネ事業部門で資源エネルギー庁長官賞(業務分野)を受賞
ICIラボの「エクスチェンジ棟」が、一般財団法人省エネルギーセンター主催の2020年度(令和2年度)省エネ大賞省エネ事例部門において、資源エネルギー庁長官賞(業務分野)を受賞しました。
「エクスチェンジ棟」は、当社の研究開発と人材開発の拠点として建設された「ICI総合センター」の管理中枢機能を受け持つ施設で、「ZEB(Net Zero Energy Building)と知的生産性向上を実現する次世代型オフィス」をコンセプトに計画されました。豊富な井水や太陽光などの自然エネルギーを最大限に活用するとともに、様々な省エネ・環境技術により2019年度実績で『 ZEB 』を達成したことが評価され、この度の受賞となりました。
政府目標として掲げられた2050年度のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を見据えた、建物のZEB化推進のため、より高度な省エネ・環境技術の開発・社会実装に取り組みます。
(舗装事業)
連結子会社である前田道路(株)においては、二酸化炭素等の温室効果ガスの放出による地球環境問題や道路交通騒音・振動等の沿道環境問題への対応、道路インフラの効率的な保全、デジタル技術の活用等、社会及び国民の幅広いニーズに応えるべく、「人と環境に配慮した技術」、「維持修繕の効率化に貢献する技術」及び「生産性の向上に寄与する技術」を重点テーマにあげて研究開発に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発費は
(製造事業)
連結子会社である(株)前田製作所においては、産業・鉄鋼機械等関連事業において環境負荷の低減、安全制御機能の付加、国内及び海外の市場ニーズに即したクレーンの研究開発に重点的に取り組みました。
当連結会計年度における研究開発費は
お知らせ