文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、2020年5月に発表した「中期経営計画2024」を見直し、2024年度までの3ヵ年を対象とする「中期経営計画2024ローリングプラン」を策定しました。
当社グループでは、2020年度から2024年の5ヵ年を「新たな収益基盤構築のための『変革フェーズ』」と位置付け、建設事業の競争力強化、成長投資を通じた事業ポートフォリオ改革に取り組んでまいりました。
一方で、コロナ禍の長期化、物価の高騰、建設投資の停滞等を背景に、計画の前提条件の変化が急速に進んでおります。加えて、2021年7月に発表した「未来ビジョンCX150」の実現に向けた戦略を明らかにし、グループを挙げて取り組んでいくことが重要となっております。
このような認識のもと、業績目標について一部見直すとともに、その達成に向けた戦略を強化し、更なる変革を進めることによって持続的成長を実現してまいります。
1.ローリングプランの基本方針
・未来ビジョンCX150の実現を通じて、全てのステークホルダーに対して真に認められる価値を提供する。
・新TODAビル(2024年竣工予定)、浮体式洋上風力発電事業(2024年運転開始予定)等の成長投資を推進し、事業ポートフォリオを強化する。
未来ビジョンCX150
2021年の創業140周年を機に、さらにその先、2031年の150周年に目指す姿として「未来ビジョンCX150(Corporate Transformation toward TODA Group 150th)」を策定。
事業展開領域:4つの領域において顧客価値を提供し、協創社会の実現に貢献
2.2024年度 グループ業績目標
ローリングプランのポイント
(1) 連結売上高・営業利益等
※ 労働生産性=付加価値額(営業利益+総額人件費)÷社員数(期中平均、派遣社員等を含む)
(2) 事業別売上高・利益
・建築事業について減額修正となるものの、土木・戦略事業における収益成長を通じて業績目標の達成を
計画する。
※ 連結売上高・営業利益には連結消去を含む
※[ ]は利益率
(3) 株主還元
・直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による株主還元を目指し、DOE2.5%以上、ただし総還元性向40%以上を方針とする。
※ DOE(自己資本配当率)=配当総額÷自己資本
※ 総還元性向=総株主還元額(配当総額+自社株式取得総額)÷親会社株主に帰属する当期純利益
3.基本戦略
ローリングプランのポイント
(1) 付加価値の向上
① Smart Innovationの推進
・機械化施工、新技術・ICT利活用を通じて、安全性・生産性の向上を図る。
・デジタルトランスフォーメーション(BIM/CIM、i-Construction等)による、
新たなビジネスモデルを創造する。
② 体験価値(顧客エクスペリエンス)の向上
・顧客が建設物を利用するまでの「体験」をデザインし、新たな顧客価値を創出する。
・バリューユニットを基軸とした技術・ソリューション開発(社内・外連携、オープンイノベーション等)を推進する。
※ バリューユニット:各事業展開領域において提供するべき顧客価値(体験価値)の区分
③ 重点管理事業
・重点管理事業として「新TODAビル」「海外事業」「再エネ事業」を特定し、トップマネジメントの積極的関与のもと中長期的成長を目指す。
(2) 投資計画と資本アロケーション(適正配分)
・ROE8%を中長期的に確保するため、成長・無形資産投資を通じた事業ポートフォリオの強化とともに、事業別ROIC(投下資本利益率)を採用し資本効率の向上を図る。
・投資原資として、営業利益の確保(3ヵ年累計800億円以上)をベースに、保有資産の売却(670億円)、政策保有株式の売却(100億円以上/年、時価ベース)、有利子負債の活用(D/Eレシオ0.8倍以下)を推進する。
※ 無形資産投資は一般管理費計上分と資産計上分の合計
(3) ESG経営の強化
・環境・エネルギー事業、脱炭素化への取り組み等を通じ、環境先進企業としてのブランドを確立する。
・社員一人ひとりが成長を実感できる“働き甲斐改革”を推進する。
・リスクマネジメント(環境、労働安全衛生、投資、コンプライアンス等)を強化する。
・取締役会構成の見直し等を通じて監督と執行を分離し、各機能の強化を図る。
※ スコープ1:軽油等の使用により直接排出されるCO2排出量
スコープ2:購入した電気・熱の使用により発電所で間接的に排出されるCO2排出量
スコープ3:スコープ1・2以外の間接排出量
カテゴリ1:建設資材製造時の排出量、カテゴリ11:施工した建物運用期間中の排出量
※ 原単位 スコープ1+2:売上高1億円当たりの排出量
カテゴリ1:取引金額1億円当たり排出量、カテゴリ11:竣工延床面積1㎡当たり排出量
※ 全度数率=全労働災害件数÷延労働時間(100万時間)
度数率=休業4日以上の労働災害件数÷延労働時間(100万時間)
※ 時間当たり労働生産性=付加価値額(営業利益+総額人件費)÷社員数÷平均総実労働時間
(ブランド価値資産向上への取組み)
当社では、社会的に有用かつ当社グループのブランド力強化に不可欠となる資産をブランド価値資産と定義し、更に無形資産とESG価値に分類した上で、それらの向上に向けた投資を行いました。当事業年度のブランド価値資産に対する投資額は、ソフトウェアやデータベース等の情報化資産や、気候変動や生物多様性等の環境分野を中心に、合わせて13,238百万円(前事業年度8,353百万円)となりました。今後も積極的な投資を通じて、ブランド価値資産の向上に努めてまいります。
※ 投資額は各項目における一般管理費と投資(資産計上額)の合計値
(人財育成と人財開発)
当社は「人財の価値創造」に向けて、重要な業務の担い手になり得る経営人財を継続的に輩出するべく、自己発働型人財の育成に注力しております。自己発働型人財表彰によりモチベーションを高め、さらにはポテンシャル人財50名を選出してキャリアコーチによる伴走型コーチングを実施して、次世代経営人財の育成に取り組んでおります。
また、社員一人ひとりの自律的なキャリア構築を促すべく、外部のキャリアコンサルタントとの1対1での面談により気づきを与えた上で、eラーニングによるリスキリングの場を用意して社員各々がカリキュラムを選択しながら自由に学習できるようにします。2021年度は50歳代の希望者220名が面談し、2022年度からは30歳、40歳、50歳、55歳の社員全員約500名を対象に実施いたします。
※自己発働型人財:自社の目指す姿を理解し達成意欲を持って主体的に行動できる人財
※ポテンシャル人財:より重要なミッションを担える潜在能力を持った人財
(ダイバーシティ&インクルージョン)
当社は、グローバルで持続的成長を図るための経営戦略の一つとして、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しております。
2014年にダイバーシティ推進室を発足後、「女性活躍」を中心に「キャリア形成」「管理職の意識・行動」「就業環境」のカテゴリーに分け、取り組みを強化してまいりました。
「就業環境」においては、2018年度より全社でフレックスタイム制を一斉に導入しております。また、本社ビルの建替えに合わせ、本社機能を分散、サテライト化し、ノウハウを全社に展開しています。環境から働き方を変えることで、多様な人財の能力が発揮できる仕組みをつくっています。
・男性育児休業取得率100%(2020,2021年度)
・PRIDE指標2021シルバー(LGBTQに関する取組指標)、同性パートナーシップ制度の導入
・えるぼし認定2(女性活躍推進法)
(グローバリゼーション活動)
当社は、多角的に事業展開し、国内・海外の区別なく仕事ができる「グローバル企業」を目指しております。グローバルな事業展開の為、従来の取組み方にとらわれず、業務の対象・内容・やり方の見直しを進めております。語学力・コミュニケーション力に優れ、文化的・歴史的背景による価値観や特性の違いを乗り越えて、先見性を持って複数の国にまたがるビジネスを推進できる「グローバル人財」を育成・採用しております。
・海外職員の日本研修制度
2020年 1期生4名(タイ・ミャンマー・西アフリカ)、2021年 2期生2名(タイ・ベトナム)、2022年 3期生6名(タイ・ベトナム・ミャンマー)
・英語の第二公用語化、社内文書の英語化活動
コーポレートレポート、(安全)建設標準集、入札書類 等30件ほど対応
・日本人社員への英語研修、語学研修生制度
英語研修として2020年4月からオンライン学習を開始、希望社員に原則無償で提供、400名前後が受講
(健康経営の推進)
当社の最大の財産は「人」であります。社員が心身ともに健康でなければ、新しい価値の創出や会社の持続的成長はありません。
当社グループは、「健康経営の推進」を重要施策として掲げ、経営トップによる「健康経営宣言」を制定しております。また健康課題達成に向けた重要指標(KPI)として「総実労働時間の削減」「有所見者割合の改善」「喫煙者比率の改善」などを設定し、健康経営推進ワーキングを中心に各種取組みを実施しております。
・健康経営優良法人ホワイト500 4年連続認定
・有所見者への保健指導の実施、「保健だより」の定期発行
・新型コロナウイルスワクチン職域接種の実施(21日間、4,938人接種)
・健康講話の実施(管理職を中心に5回、227人参加)、健康経営推進ワーキング4回開催
※健康経営推進ワーキング:本社健康管理課、各支店総務(管理)グループ課長及び職員組合代表者を
メンバーとし、健康経営実現に向ける各種施策を推進
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の経済情勢については持ち直していくことが予想されますが、新型コロナウイルス感染症の動向に加え、ウクライナ情勢に起因する地政学的リスクにより、依然として不透明な状況が続くことが見込まれます。建設業界においては、官公庁工事が底堅く推移し、民間工事は持ち直しの傾向となっているものの、建設資材価格の高騰等の影響について注視していく必要があります。
当社グループをとりまく環境として、今後、建設投資の大きな増加は見込めない中、気候変動、資源不足、人口構造の変化など経営環境の変化は激しさを増しています。そのような状況において技術力をもって建設業を極めること、また、新たな領域に挑戦し中長期的な事業基盤を構築することが持続的成長には不可欠であるという認識のもと、上記の「中期経営計画2024ローリングプラン」を推進し、企業戦力と価値の向上、事業活動の活性化を図ってまいります。
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