(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用している。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、企業収益は新型コロナウイルス感染症の影響が残る中で海外経済の改善や供給制約の緩和を背景に持ち直しの動きが続いたが、ウイルス変異株による感染症流行の断続的な発生から個人消費や生産が足踏み状態となり、景気の回復は緩やかなものにとどまった。
建設業界においては、住宅建設は横ばい圏内で推移したが、企業の建設投資は事務所や店舗等が牽引するかたちで増加基調となり、公共投資も東日本大震災の復旧・復興需要の減少等により弱含みながらも関連予算の執行により高水準を保つなど、総じて事業環境は良好な状況にあった。
このような経営環境のもと、当社グループは2021年5月に策定した①建設請負事業の深化、②建設周辺事業の進化、③新たな事業領域の開拓、④経営基盤の強化を基本方針とする『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』にグループ一丸となって取り組み、持続的成長への挑戦を続けているところである。また、株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るため総額100億円規模の自己株式を取得する方針を決定するとともに、当該方針に基づき、当連結会計年度において、約40億円の自己株式の取得を実施した。
この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。
a 財政状態
・資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ84億円(2.2%)減少し、3,710億円となった。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ98億円(3.2%)減少し、3,018億円となった。JV構成員に対する債権の減少や還付見込みの消費税の回収等により未収入金が124億円、大型工事における支出先行等により現金預金が39億円減少している。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ14億円(2.1%)増加し、692億円となった。保有株式の時価下落等により投資有価証券が17億円減少している。
・負債
負債は、前連結会計年度末に比べ139億円(6.5%)減少し、2,017億円となった。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ152億円(8.0%)減少し、1,753億円となった。支払手形・工事未払金等に電子記録債務を加えた仕入債務が110億円、JV構成員に対する債務等の減少により預り金が82億円減少している。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ12億円(5.0%)増加し、263億円となった。長期借入金が12億円増加している。
・純資産
純資産は、前連結会計年度末に比べ54億円(3.3%)増加し、1,693億円となった。資本剰余金が期中に取得した自己株式の消却により40億円減少し、また、利益剰余金は、剰余金の配当により56億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益158億円の計上により102億円増加している。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.4ポイント向上し、45.6%となった。
b 経営成績
・売上高(完成工事高)
売上高は、手持工事の減少等により、前連結会計年度に比べ250億円(5.6%)減少し、4,252億円となった。
なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。
・売上総利益(完成工事総利益)
売上総利益は、売上高の減少並びに売上総利益率(完成工事総利益率)の低下により、前連結会計年度に比べ46億円(9.6%)減少し、434億円となった。
・販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、処遇改善等による人件費の増加や新型コロナウイルス感染症の影響により抑制されていた営業活動や役職員の移動が回復したこと等により、前連結会計年度に比べ7億円(3.5%)増加し、207億円となった。
・営業利益
営業利益は、売上総利益の減少並びに販売費及び一般管理費の増加等により、前連結会計年度に比べ53億円(19.0%)減少し、227億円となった。
・営業外損益
営業外収益は、受取配当金の増加や円安により主にドル建資産における為替差益が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ3億円増加し、12億円となった。
営業外費用は、シンジケートローン手数料の減少等により、前連結会計年度に比べ2億円減少し、3億円となった。
・経常利益
これにより、経常利益は、前連結会計年度に比べ46億円(16.4%)減少し、237億円となった。
・特別損益
特別利益は、補助金収入6千万円など合計1億円を計上した。
特別損失は、損害賠償金3億円のほか、感染症関連費用2億円など合計9億円を計上した。
・法人税等
法人税、住民税及び事業税72億円、将来減算一時差異の増加等により法人税等調整額2億円のマイナスを計上した。
・親会社株主に帰属する当期純利益
以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ20億円(11.6%)減少し、158億円となった。
セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。
a 土木事業
受注高は、前連結会計年度比10.7%増の1,108億円であった。
売上高は、同22.5%減の940億円、営業利益は、同68.2%減の24億円となった。
b 建築事業
受注高は、前連結会計年度比30.6%増の2,394億円であった。
売上高は、同0.8%減の2,369億円、営業利益は、同4.0%増の153億円となった。
c 子会社
売上高は、前連結会計年度比3.3%減の1,023億円、営業利益は、同10.7%減の49億円となった。
なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、82億円のプラス(前連結会計年度は65億円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、33億円のマイナス(前連結会計年度は43億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、96億円のマイナス(前連結会計年度は61億円のマイナス)となった。
為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ39億円(5.5%)減少し、674億円となった。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。
なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
期別 |
区分 |
前期繰越 工事高 (百万円) |
当期受注 工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
当期完成 工事高 (百万円) |
次期繰越 工事高 (百万円) |
第84期
(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
土木工事 |
188,487 |
100,106 |
288,593 |
121,446 |
(167,147) 167,147 |
建築工事 |
354,626 |
183,255 |
537,881 |
238,794 |
(299,087) 299,098 |
|
計 |
543,113 |
283,361 |
826,474 |
360,240 |
(466,234) 466,245 |
|
第85期
(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
土木工事 |
167,023 |
110,826 |
277,850 |
94,077 |
(183,772) 183,772 |
建築工事 |
299,098 |
239,409 |
538,507 |
236,943 |
(301,564) 301,684 |
|
計 |
466,122 |
350,236 |
816,358 |
331,021 |
(485,336) 485,457 |
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。
3 収益認識に関する会計基準等の適用により、第85期の土木工事の前期繰越工事高を当事業年度の期首において修正しており、これによる減少額は123百万円である。
b 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
第84期 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
土木工事 |
20.6 |
79.4 |
100 |
建築工事 |
45.6 |
54.4 |
100 |
|
第85期 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
土木工事 |
14.0 |
86.0 |
100 |
建築工事 |
33.0 |
67.0 |
100 |
(注) 百分比は請負金額比である。
c 完成工事高
期別 |
区分 |
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
合計 (百万円) |
第84期 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
土木工事 |
57,847 |
63,598 |
121,446 |
建築工事 |
32,389 |
206,405 |
238,794 |
|
計 |
90,237 |
270,003 |
360,240 |
|
第85期 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
土木工事 |
44,742 |
49,335 |
94,077 |
建築工事 |
20,790 |
216,152 |
236,943 |
|
計 |
65,532 |
265,488 |
331,021 |
(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。
第84期
国土交通省 |
水海川導水トンネルⅠ期工事 |
中日本高速道路株式会社 |
新東名高速道路 羽根トンネル工事 |
三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社 |
(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-2 街区) |
地方独立行政法人くまもと県北病院機構 |
地方独立行政法人くまもと県北病院機構新病院整備事業に係る設計及び施工業務 |
アパ株式会社・アパホーム株式会社 |
(仮称)アパホテル&リゾート<両国駅タワー>新築工事 |
第85期
西日本高速道路株式会社 |
中国自動車道(特定更新等)北房IC~大佐スマートIC間(上り線) |
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
北陸新幹線、坂井高架橋 |
東急不動産株式会社・株式会社 NIPPO・大成有楽不動産株式会社・JR西日本プロパティーズ株式会社 |
(仮称)江東区豊洲五丁目計画新築工事 |
住友商事株式会社・レンゴー株式会社 |
(仮称)レンゴー淀川工場跡地開発計画新築工事 |
森永製菓株式会社 |
森永製菓 高崎第3工場建設計画 |
2 第84期及び第85期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。
d 次期繰越工事高(2022年3月31日現在)
区分 |
官公庁 (百万円) |
民間 (百万円) |
合計 (百万円) |
土木工事 |
58,207 |
125,564 |
183,772 |
建築工事 |
40,987 |
260,696 |
301,684 |
計 |
99,195 |
386,261 |
485,457 |
(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。
環境省 |
平成29年度中間貯蔵(大熊3工区)土壌貯蔵施設等工事 |
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
北海道新幹線、羊蹄トンネル(有島)他 |
医療法人徳洲会 |
湘南鎌倉総合病院外傷・救命救急センター先端医療センター増築工事 |
三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社 |
(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-3 街区) |
日本電産株式会社 |
日本電産株式会社 向日町プロジェクトC棟建築工事(仮称) |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績の分析
当社グループの売上高については、期首繰越工事高の減少や一部土木工事の中断等の影響により前連結会計年度実績、期首計画値をともに下回った。
利益については、売上高の減少や追加設計変更交渉が不調に終わるケースが多かったこと等により、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度実績、期首計画値をともに下回る結果となった。
親会社株主に帰属する当期純利益の積み上げや、仕入債務の減少等による総資本の圧縮により自己資本比率は45.6%と前連結会計年度を上回る水準となったが、ROEは親会社株主に帰属する当期純利益の減少、自己資本の増加により9.5%と前連結会計年度の水準を下回った。
受注高は、企業の設備投資意欲の回復もあり、前連結会計年度、期首計画値を上回った。
新型コロナウイルス感染症の影響について、当連結会計年度における金額的影響の算定は困難であるが、感染症拡大により追加設計変更交渉が進展せず工事価格を上積みできなかったなどの事象があったものの、当連結会計年度の業績への影響は限定的であった。
b セグメントごとの経営成績の分析
・土木事業
受注高は、高速道路大規模更新関連で大型案件を複数受注したことにより前連結会計年度比10.7%増の1,108億円となった。
売上高は、東京外環道など一部大型工事の中断の他、発注者指示による工法の変更等に伴う工事遅延や工事中断が重なり、同22.5%減の940億円となった。営業利益は、売上高の減少に加え、追加設計変更交渉が不調となった案件等の影響もあり、同68.2%減の24億円となった。
・建築事業
受注高は、大型のサービス付き高齢者住宅や官庁工事の落札で医療・福祉分野が受注を伸ばし、同30.6%増の2,394億円となった。
売上高は、期首繰越工事高が前連結会計年度期首より大きく下回っていたものの、当連結会計年度に受注した工事の売上高が大きく寄与したことで、同0.8%減に留まり2,369億円となった。営業利益は、完成もしくは完成間際の好採算の大型案件が出来高を伸ばしたことなどにより、同4.0%増の153億円となった。
・子会社
売上高は、華熊営造が好調な受注を背景に売上を大きく伸ばしたものの、国内子会社は期首繰越工事高の減少等により売上が減少し、全体として同3.3%減の1,023億円となった。営業利益は、売上高の減少及び原油価格高騰等の影響による売上総利益の減少により、同10.7%減の49億円となった。
c 中期経営計画の達成状況
『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』で掲げた指標の計画値と実績値との比較及び経営戦略の達成状況は次のとおりである。
指標 |
2021年度(計画値) |
2021年度(実績値) |
差異 |
連結売上高 (百万円) |
451,000 |
425,216 |
△25,783 |
連結経常利益 (百万円) |
27,400 |
23,732 |
△3,667 |
ROE (%) |
10.9 |
9.5 |
△1.4 |
配当性向 (%) |
30.1 |
35.1 |
5.0 |
事業戦略①:建設請負事業の深化
■国内土木事業
「インフラ大更新分野」では、2021年9月に完成した「東北道十和田リニューアル工事」において、コッター床版工法による橋梁床版の取替を4橋施工し、現場打ちコンクリートが不要な「フルプレキャスト施工」にも成功した。2021年に受注した「酒匂川橋床版取替工事」では基本契約方式による13橋の床版取替が予定されており、今後も床版取替工事の需要拡大が期待される。コッター床版に関しては、関連会社との連携による周辺技術を含めたパッケージ商品化も計画しており、事業体制の構築(目地材料販売:株式会社ファテック、工法技術開発:テクノス株式会社)を検討している。また、道路を供用しながら主桁から床版を切り離す工法として開発された「切り方じょうず」は、従来工法と比較し、床版取替期間を50%短縮し、騒音が小さく泥水が発生しないため、周辺環境への影響を低減でき、コッター床版工法と並んで普及が期待される。
「防災・減災、国土強靭化分野」では、熊本地震後の防災対策工事への導入効果が高く評価された「無人化施工技術」を高めるため、継続して研究開発を進めているほか、高機能遠隔操作室と建設機械をパッケージ商品化するなど、新たなビジネスモデルの確立を目指している。2022年3月にはローカル5Gを技術研究所に導入し、その高速性と低遅延性を活かして建機と操作室間の映像伝送の高度化を進めている。また、元施工ダム数の優位性を活かすべく、「国土強靭化」「インフラ長寿命化(ダム再生)」案件受注のためのリニューアル工事に関する技術開発に注力している。
■国内建築事業
「中大規模木造建築分野」では、2021年3月、「環境と健康をともにかなえる建築」をコンセプトとして、住友林業株式会社と立ち上げた中大規模木造建築ブランド「with TREE」で、中大規模建築の木造化・木質化を推進している。また、オリジナル木材「断熱耐火λ-WOOD(ラムダ・ウッド)」はすべての主要構造部(柱/梁/床/壁)で耐火認定を取得し、純木造建築を階数制限なく建築できることになった。これらの技術を応用し、野村不動産のオフィスビルブランド「H1O外苑前」を施工中のほか、木造/S造ハイブリッド構造で当社福井本店を建て替えた。
「市街地再開発分野」では、2021年9月、三田駅前Cブロック地区再開発の事業協力者に決定した。
事業戦略②:建設周辺事業の進化
■再生可能エネルギー事業
「住友林業株式会社との協業を含む木質バイオマス発電事業」では、福島県飯舘村において木質バイオマス事業を計画しており、2024年の稼働開始を目指して準備を進めている。
「風力・太陽光発電事業」では、当社で最初の売電事業となる静岡県浜松市での太陽光発電事業、2021年2月に参入したベトナムの太陽光発電事業「CatHiep メガソーラー事業」がそれぞれ順調に稼働して当社の収益に貢献しているほか、国内外のセカンダリー案件への事業参画、事業承継についても積極的に検討している。
■不動産開発事業
「都市再生・まちづくり事業」では、飯田橋駅東口再開発事業について、東京都は2020年9月「飯田橋駅周辺基盤再整備構想」を策定、新宿区も2022年1月に都市計画を決定した。2022年度は「(仮称)飯田橋駅前地区基盤整備ビジョン」や具体的な整備方針の策定が予定されるなど、再開発計画は徐々に形になりつつあり、当社も一地権者として積極的に参画していく。
住友林業株式会社との協業にて、2020年1月に事業参画したインドネシア・ジャカルタの高層コンドミニアム及び商業複合施設開発事業は、コロナ禍の影響を受けて施設計画を変更しながらも検討が進む一方、2022年2月、住友林業株式会社と同社100%子会社の米クレセント社が運用を開始した米国不動産私募ファンドに参画した。成長著しい米国の都市圏でLEED等の環境認証を取得するESG配慮型の賃貸集合住宅4件(総戸数約1,000戸、資産規模約700億円、運用期間5年)を開発する。住友林業株式会社との協業を本ファンドへの投資を通じてさらに発展させ、海外事業での中長期的な収益拡大を目指す。
また、将来は再開発区域となることが見込まれる国内の優良な収益物件を購入したほか、台湾で不動産開発を担当する現地法人(華熊建設)が現地デベロッパーとの連携による老朽化住宅の建替えの提案活動等を行っている。
■インフラ運営事業
「PPP・コンセッション事業」では、2021年10月、「福井市新学校給食センター整備運営事業」、「周南地区衛生施設組合新斎場整備運営事業」をそれぞれ当社が所属する企業グループが落札した。引き続き、国内では当社が得意とする給食センターや庁舎、体育館などのPFI事業に参画することを目指していく。
また、香港の「MOM事業」(有料道路の管理・運営・保守事業)については、受託済みの案件(イースタン・ハーバー・クロッシング、テーツケントンネル)も併せた管理効率を考慮した受注活動を継続し、利益を確保していく。
■技術商品販売事業
「バイオマス燃料開発・販売事業」では、清本鐵工株式会社とともに、高品質なバイオマス燃料「ブラックバークペレット」を共同開発した。廃棄物であるバーク材(木の皮)を原料として、林業の活性化、石炭火力発電の混焼材としてカーボンニュートラルへの貢献を目指す。バーク材調達は住友林業フォレストサービス株式会社が担い、国産地域材を原料とする環境にやさしい地産地消のエネルギー循環システムとして、2022年度、愛媛県に生産設備の建設を開始する。
事業戦略③:新たな事業領域の開拓
2021年12月、新事業を創出するためのプロジェクトを始動し、初弾として行った全社員対象の新事業に関するアイデア募集では100件を超える応募があった。今後、受領したアイデアを参考に検討を進め、建設請負事業のほか既存事業に続く収益源となり、目指す社会の実現に貢献する新事業の創出を目指していく。
経営基盤の強化
■デジタル化
基幹システムの刷新により業務プロセスの効率化・自動化を進め、また、社員のITリテラシー向上、DX人財の確保を通じてビジネスの変革を目指して、2021年度よりDX推進の専任部署として「DX推進部」を設置した。2021年度は導入済みシステムの定着化に加え、新基幹システムの開発、作業所業務の効率化のための各種ツール導入を進める一方、社員に対して動画・メルマガ配信による教育を行った。今後も、2021年9月に策定された「DX方針」に基づいて活動していく。
■技術開発
低炭素コンクリートに代表される低炭素技術、中大規模木造建築に代表される木化・緑化技術、エネルギー関連技術など、脱炭素・環境型社会に資する研究開発、AI、ロボティクス技術に代表されるデジタル社会に対応する技術開発、さらに建設高度化に資する技術開発を、技術開発における3本の柱として開発を進め、技術開発による先進性、優位性を追求していく。
ロボティクス分野では、2021年9月、建設会社16社による「建設施工ロボット・loT分野における技術連携に関するコンソーシアム」に参加、業界を挙げて技術革新にも取り組んでいく。
d 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「2 事業等のリスク」に記載のとおりである。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益229億円の計上や未収入金の回収等により、82億円のプラス(前連結会計年度は65億円のプラス)となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、設備の取得更新等により、33億円のマイナス(前連結会計年度は43億円のマイナス)となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いや自己株式の取得等により、96億円のマイナス(前連結会計年度は61億円のマイナス)となった。
為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ39億円(5.5%)減少し、674億円となった。
b 資本の財源及び資金の流動性
・資本政策の基本方針
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は674億円保有しており、自己資本比率も45.6%と一定水準を保っていることから、現状では新型コロナウイルス感染症の影響を考慮しても財務健全性に懸念はない。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は172.1%、固定長期適合率は35.4%と高い安全性を保っている。
・資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。大型工事における支出先行及び人員数の増加により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。また、中期経営計画に掲げている4つの基本方針に基づき、競争力強化と収益源多様化による安定収益確保のために、400億円規模の投資を計画している。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は121億円となっている。
・株主還元
現中期経営計画において、連結配当性向30%目途を財務目標に掲げている。しかし、さらなる株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るために2021年11月11日開催の取締役会において、現中期経営計画期間(2021~2023年度)に総額100億円規模の自己株式を取得する方針を決定した。当該方針に基づき、2021年度において、約40億円の自己株式の取得を実施し、2022年3月29日開催の取締役会決議に基づき取得した自己株式1,394,000株の消却を実施した。
・資金調達
当社グループは、金融機関からの借入を主な資金調達の手段としている。資金調達のより一層の安定化並びに効率化を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、そのうち長期のターム・ローンの当連結会計年度末の契約総額は70億円、コミットメントラインの当連結会計年度末の契約総額は300億円(借入実行残高0円)である。
安定的な資金調達手段を確保できており、新型コロナウイルス感染症の影響を含めた突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。
当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、一定の期間にわたり収益を認識する方法(いわゆる旧工事進行基準)による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。
なお、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症が会計上の見積りに及ぼす重要な影響はないとしているが、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化した場合、工事中断や資機材の納入遅れに伴う工程遅延や対策コストの増大などにより、一定の期間にわたり収益を認識する方法による収益認識に影響を及ぼす可能性がある。
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