業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態および経営成績の状況

当連結会計年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、依然として制約された経済活動を余儀なくされてきました。緊急事態宣言が断続的に発出され、個人消費や設備投資は一進一退となり、景気の回復は前年度に比べて鈍化しました。ワクチン接種や病床使用率の低下、生活様式の変化により、以前のような大きな混乱には至らないものの、ロシア・ウクライナ情勢により、原油等の燃料や穀物・材木等が高騰しており、感染症拡大前の景気まで回復するには今しばらく時間を要するものと思われます。

当社グループが属する建設業においては、防災・減災対策や老朽化対策などインフラ整備等の公共建設投資は底堅い状況ですが、民間の設備投資等では、熾烈な価格競争になっております。加えて、深刻な建設産業就労人口の減少という産業としての大きな課題を抱えており、ワークライフバランスの推進やICTの活用などの対応を進めております。

このような経済状況下において、当社は「中期経営計画2019(2019年度~2021年度)」の基本方針に基づき、収益基盤の強化と事業領域の拡大を目指してまいりました。土木事業においては、成長分野である大規模更新・修繕工事を新設橋梁工事と並ぶ主力事業として積算精度の向上や施工技術の改善を進め、建築事業においては、PC技術を核とした元請、設計施工案件の拡大、あるいは効率的なエリア展開を進めることで、受注の強化や収益力の向上に取り組んでまいりました。

また、収益源の多様化に向けた不動産事業への展開強化や、IoT、ICTの活用により働き方改革を進め、業務効率の向上に努めてまいりました。

この結果、当連結会計年度の業績は、売上高は1,096億39百万円(前年同期比6.5%減)、営業利益66億18百万円(同21.2%減)、経常利益66億47百万円(同21.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益45億39百万円(同18.8%減)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の連結損益計算書は、売上高が9億72百万円、売上原価が9億90百万円それぞれ減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ17百万円増加しております。また、当連結会計年度の連結株主資本等変動計算書の利益剰余金の当期首残高は25百万円増加しております。

1株当たり情報に与える影響は当該箇所に記載しております。

なお、個別の業績は、   売 上 高 986億28百万円  営業利益    56億40百万円

経常利益  59億71百万円   当期純利益 41億28百万円 であります。

セグメント業績は、以下のとおりであります。

土木事業は、売上高は686億44百万円(前年同期比8.4%減)、セグメント利益は113億12百万円(前年同期比11.7%減)となりました。繰越高が前期に比べ増加し、新設橋梁での設計変更獲得及び大規模更新・メンテナンス工事が進捗したものの、当期受注案件の進捗が伸びず売上高、利益ともに減少しました。大規模更新・メンテナンス工事について、大手総合建設会社による参入により受注環境は競争が激しくなってきており、その様な環境での受注確保が課題のひとつであると認識しています。技術提案点、積算精度の向上とともに、全国を視野に市場のある地域への入札参加により受注確保に取組んでまいります。また、新設橋梁に比べ大規模更新・メンテナンス工事は工期が長期化する傾向があることから、要員の確保も今後の課題のひとつであると認識しており、課題克服のため更なる工事部門間の積極的なローテーション施策を実施してまいります。技術者の大規模更新・メンテナンス工事経験率向上と共に、工事単位や支店単位だけではなく、全社的に情報共有を実施しております。PSMAX開発案件が実装され、「上げ越し管理システム」により新設橋梁の張出架設時の計測時間短縮と品質管理向上、「PCa床版自動設計製図システム」により図面作成や数量計算にかかる作業量を約40%低減でき、設計業務の生産性向上に寄与する見込みです。

建築事業は、売上高は405億42百万円(前年同期比1.5%減)、セグメント利益は37億15百万円(前年同期比7.1%減)となりました。繰越高が前期に比べ増加しましたが、受注高が減少したことが主な要因と判断しております。当期は官庁案件入札への注力、新規顧客への取り組みを行うも受注減となり、売上高・利益ともに前期を下回る結果となりました。新型コロナウイルス感染症の影響は続いており、当社グループが新規顧客獲得を目指していた市場において設備投資の延期や見直しが多く見受けられております。また、大型案件の受注強化の施策を実施しましたが、当社がターゲットとする案件規模に大手総合建設会社が参入し、競争が益々激しくなってきております。今後も、受注環境はかなり不透明な状況になると想定していますが、PC工事による建築構造物の付加価値提案による受注活動により、建築元請工事に代表される当社の強みを更に強化し、他社との差別化や事業領域の拡大を図り安定した受注・収益を確保できるよう取り組んでまいります。

製造事業は、売上高は80億95百万円(前年同期比3.5%減)、セグメント利益は5億9百万円(前年同期比3.9%増)となりました。現在、工場設備改修により生産体制強化が進んでおり、今後も安定した生産量の確保とコスト低減による価格競争力向上に取り組んでまいります。

その他兼業事業は、売上高は6億71百万円(前年同期比83.4%減)、セグメント利益は3億23百万円(前年同期比21.0%増)となりました。

なお、セグメントの業績は、報告セグメントの売上高、セグメント利益を記載しております。

収益認識会計基準等の適用による外部顧客への売上高、セグメント利益影響額は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

 

当連結会計年度末の総資産は、931億円となり、前連結会計年度末に比べ23億22百万円減少となりました。

流動資産は707億46百万円となり、前連結会計年度末に比べ29億57百万円減少しております。主な要因としまして契約資産が326億83百万円、完成工事未収入金が185億3百万円増加しましたが、受取手形・完成工事未収入金等が532億37百万円減少したことによるものであります。

固定資産は223億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億34百万円増加しております。主な要因としまして機械、運搬具及び工具器具備品が4億19百万円増加したことによるものであります。

負債合計は475億67百万円となり、前連結会計年度末に比べ56億38百万円減少しております。

流動負債合計は373億69百万円となり、前連結会計年度末に比べ60億8百万円減少しております。主な要因としまして、契約負債が21億33百万円増加しましたが、未成工事受入金が35億19百万円、未払法人税等が17億96百万円減少したことによるものであります。

固定負債合計は101億97百万円となり前連結会計年度末に比べ3億69百万円増加しております。主な要因といたしまして、退職給付に係る負債が1億33百万円増加したことによるものであります。

純資産の部は、主に親会社株主に帰属する当期純利益45億39百万円の計上により455億33百万円となりました。

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益66億40百万円、売上債権及び契約資産の増減3億53百万円等の増加要因、仕入債務の増減△6億62百万円、契約負債の増減△13億85百万円、有形固定資産の取得12億85百万円、法人税等の支払35億96百万円、短期借入金の純減少6億21百万円、配当金の支払12億34百万円等の減少要因により、前連結会計年度末に比べ5億9百万円減少し、当連結会計年度末には99億47百万円となりました。

当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は25億99百万円(前年同期は36億84百万円の使用)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益の計上及び法人税等の支払によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロ-)

投資活動の結果、使用した資金は11億50百万円(前年同期比70.5%増)となりました。これは主に賃貸用建物のリニューアル及び工場施設の更新等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロ-)

財務活動の結果、使用した資金は19億70百万円(前年同期比196.6%増)となりました。これは主に配当金の支払によるものであります。

③生産、受注及び販売の実績

(1)受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2021年4月1日
 至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

土木事業

(百万円)

77,799

△3.0%

建築事業

(百万円)

32,859

△25.1%

製造事業

(百万円)

1,374

△10.1%

その他兼業事業

(百万円)

554

△27.9%

合計

(百万円)

112,588

△10.9%

 

(2)売上実績

当連結会計年度の売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度
(自 2021年4月1日
 至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

土木事業

(百万円)

67,550

△8.6%

建築事業

(百万円)

40,160

△2.1%

製造事業

(百万円)

1,374

△10.1%

その他兼業事業

(百万円)

554

△27.9%

合計

(百万円)

109,639

△6.5%

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.当社グループ(当社及び連結子会社)では、生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。

3.売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。

前連結会計年度

外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%を占める相手先がないため、記載を省略しております。

 

当連結会計年度

西日本高速道路株式会社

14,800百万円

13.5%

中日本高速道路株式会社

11,132百万円

10.2%

 

 

なお、参考のため当社単独の事業の状況は次のとおりであります。

 

①受注高、売上高、繰越高及び施工高

 期別

種類別

前 期繰越高

(百万円)

当 期受注高

(百万円)

(百万円)

当 期売上高

(百万円)

次期繰越高

当 期施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高

(百万円)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前事業年度

 (自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

 

土木工事

80,497

70,047

150,545

62,855

87,690

4.9

4,315

64,195

建築工事

39,063

43,584

82,647

40,535

42,112

3.0

1,273

40,570

工事計

119,561

113,631

233,193

103,390

129,802

4.3

5,588

104,766

製品

2,833

664

3,497

2,278

1,218

50.1

610

1,033

不動産事業

16

250

267

250

16

250

兼業計

2,849

914

3,764

2,529

1,235

49.4

610

1,284

合計

122,411

114,546

236,957

105,919

131,038

4.7

6,198

106,050

当事業年度

 (自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

 

土木工事

87,690

68,765

156,456

57,490

98,965

3.7

3,688

56,863

建築工事

42,112

30,832

72,944

39,743

33,201

1.7

559

39,029

工事計

129,802

99,598

229,400

97,234

132,166

3.2

4,247

95,893

製品

1,218

2,494

3,712

1,126

2,586

7.7

199

715

不動産事業

16

268

284

268

16

268

兼業計

1,235

2,762

3,997

1,394

2,603

7.6

199

983

合計

131,038

102,360

233,398

98,628

134,769

3.3

4,446

96,876

(注)1.前期以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更あるものについては、当期受注高にその増減を含んでおります。

2.次期繰越高の施工高は手持高のうち工事及び製品の支出金より推定したものであります。

3.当期施工高は、(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。
なお、不動産事業の当期施工高は当期売上高と一致しております。

 

②受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

 (自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

土木工事

9.2

90.8

100.0

建築工事

25.3

74.7

100.0

当事業年度

 (自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

土木工事

4.7

95.3

100.0

建築工事

24.1

75.9

100.0

③完成工事高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

前事業年度

 (自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

土木工事

28,028

34,826

62,855

建築工事

1,913

38,621

40,535

29,942

73,448

103,390

当事業年度

 (自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

土木工事

19,458

38,032

57,490

建築工事

2,617

37,125

39,743

22,075

75,158

97,234

(注)1.完成工事高のうち主なものは、次のとおりであります。

前事業年度請負金額10億円以上の主なもの

西日本高速道路株式会社

阪和自動車道 みなべ高架橋他2橋(PC上部工)工事

中日本高速道路株式会社

新東名高速道路 杉名沢第二高架橋他1橋(PC上部工)工事

東日本高速道路株式会社

常磐自動車道 仁井田川橋(PC上部工)工事

九州三菱自動車販売株式会社

九州三菱自動車販売本社ビル新築工事

泉陽興業株式会社

YRP横浜ロープウェイ建設工事

 

当事業年度請負金額10億円以上の主なもの

中日本高速道路株式会社

北陸自動車道(特定更新等)魚津~黒部間構造物更新工事(平成29年度)

西日本高速道路株式会社

中国自動車道(特定更新等)常国橋他2橋床版取替工事

株式会社フォーライフ企画

湘南医療大学 薬学部校舎新築工事

株式会社ツルハ

(仮称)ツルハ旭川中央ビル新築工事

西日本高速道路株式会社

岡山自動車道 川関橋(下部工)工事

2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。

前事業年度

外部顧客への売上高のうち、損益計算書の売上高の10%を占める相手先がないため、記載を省略しております。

当事業年度

西日本高速道路株式会社

14,807百万円

15.0%

中日本高速道路株式会社

11,125百万円

11.3%

 

④手持工事高

(2022年3月31日現在)

 

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

土木工事

10,427

88,537

98,965

建築工事

4,307

28,893

33,201

14,735

117,431

132,166

(注)手持工事のうち請負金額10億円以上の主なもの

中日本高速道路株式会社

東名高速道路(特定更新等) 大井川橋他1橋床版取替工事

2027年12月完成予定

中日本高速道路株式会社

東海環状自動車道 上保高架橋(PC上部工)工事

2024年11月完成予定

西日本高速道路株式会社

令和3年度 沖縄自動車道(特定更新等) 許田高架橋北他1橋床版取替工事(その1)

2024年1月完成予定

東京ガス不動産株式会社

中原賃貸住宅新築工事

2022年12月完成予定

京都郡みやこ町

豊津地区小学校新校舎建築工事

2023年9月完成予定

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、および連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り、仮定を使用する必要があります。当社グループの重要な会計方針のうち、見積りおよび仮定の重要度が高いものは以下であります。

a.工事契約に係る収益認識

b.工事損失引当金

c.固定資産の減損

d.退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債

e.繰延税金資産の回収可能性

なお、詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

a.経営成績等

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度に比べ75億80百万円(6.5%減)減少し、1,096億39百万円となりました。

土木事業は、前期繰越工事の増加、大型案件での設計変更獲得、大規模更新・メンテナンス工事が進捗したものの、当期受注案件の進捗が伸びず売上高は前連結会計年度と比べ63億66百万円減少し、675億50百万円となりました。建築事業は、繰越高が前期に比べ増加しましたが、受注高が減少したことから売上高は前連結会計年度と比べ8億44百万円減少し、401億60百万円となりました。製造事業は、前連結会計年度と比べ1億54百万円減少し、13億74百万円となりました。その他兼業事業につきましては、収益認識会計基準等の適用により前連結会計年度に比べ2億14百万円減少し、5億54百万円となりました。

売上原価は、前連結会計年度に比べ57億13百万円(5.7%減)減少し、938億73百万円となりました。売上原価については、省力化、合理化により原価低減に努めたものの、売上高の減少が上回ったため、売上原価率が増加しました。売上総利益率は、売上原価率の増加により前連結会計年度の15.0%から0.6ポイント下降し14.4%となっております。

販売費及び一般管理費は研究開発費の増加がありましたが、徹底した経費節減を実行したことにより、前連結会計年度に比べ88百万円(1.0%減)減少し、91億48百万円となりました。

営業外収益は、前連結会計年度に比べ受取配当金が51百万円増加しましたが、保険金が82百万円減少したことにより2百万円減少の2億58百万円となりました。

営業外費用は、前連結会計年度に比べ主に支払手数料が11百万円増加しましたが、持分法による投資損失が18百万円、支払保証料が14百万円それぞれ減少したことにより、5百万円減少の2億28百万円となりました。

特別利益は、ゴルフ会員権償還益50百万円、固定資産売却益44百万円等の計上により1億1百万円となりました。

特別損失は、固定資産除売却損89百万円等の計上により1億8百万円となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、主に売上高、売上総利益率の減少に伴う売上総利益の減少等により、前連結会計年度に比べ10億52百万円(18.8%減)減少、45億39百万円となりました。

 

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループでは、2019年5月に「中期経営計画2019(2019年度~2021年度)」を策定し、その実現に向けて各種施策に取り組んでまいりました。計画期間の殆どがウィズコロナとなる厳しい外部環境の下、収益力の強化は図れた一方で、成長分野であるPC建築や海外を含めた事業規模の拡大については、やや停滞したような結果となりました。

当社を取り巻く事業環境としては、コロナ禍で中断されていた民間設備投資の再開への期待感がありましたが、再開と同時に熾烈な受注競争が始まり、当年度後半には高騰する資材価格の影響が深刻なコスト高の懸念材料となっております。一方、土木事業では国土強靭化対策やインフラ設備の老朽化に伴う維持修繕工事が最盛期を迎えており、公共工事の発注量は引き続き高水準で推移していくことが期待されます。新設から維持修繕への質的変化で大きな転換期を迎えている中、労働人口の減少や多様な働き方といった社会情勢への対応或いは地球環境に対する企業の取り組みの強化は今後益々強く求められるものと予想されます。

斯かる事業環境を鑑み、当社グループでは長期的な経営ビジョンを見直し、その実現に向けた「中期経営計画2022」を策定しました。環境や社会の変化を経営の重要課題に掲げ、当社グループとして持続可能な社会の実現に貢献できるよう事業活動に取組んでまいります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、従来から工事売上等の営業活動により多くのキャッシュ・フローを得ており、現在及び将来にわたって必要な営業活動及び債務の返済などに備えるために、自己資金のほか金融機関からの借入により資金調達を図っております。当社は、国内金融機関からの借入れについて相対での借入枠を十分確保しており、かつ合計173億円を借入極度額とするコミットメントラインを設定し、長期・短期のバランスを考慮して安定的に資金調達しております。なお、国内グループ会社の資金については当社にて一元管理しており、必要に応じて当社より資金を融通しております。また、海外事業で必要な資金については当社の判断によりグループ会社に直接投資を行っている他、グループ会社の金融機関からの借入れについて当社が債務保証を行っております。

これら営業活動及び財務活動により調達した資金については、事業運営上必要な流動性を確保することに努め、機動的かつ効率的に使用することで金融負債の極小化を図っております。今後の投資についてはICT関連投資、老朽化した工場設備への計画的な更新、機械化施工に向けた設備投資、人財確保を見据えた福利厚生設備の更新等を進める方針でありますが、これら投資資金については自己資金及び金融機関からの借入れにより調達する予定であり、不要な有利子負債の圧縮のため、投資計画の妥当性を考慮して資金の使用時期と金額を判断しております。

今後とも入出金の厳格な管理により「営業活動によるキャッシュ・フロー」の獲得を実現し、財務体質の向上に努めていく所存であります。

 

 

d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、「中期経営計画2019(2019年度~2021年度)」において収益力・資本効率向上について指標を定めております。各指標の達成状況は下グラフに記載した計画対比のとおりです。

 

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中期経営計画2年目より新型コロナウイルス感染症の影響を受け、特に受注面において厳しい事業環境となりました。土木事業では、高速道路各社の大規模更新事業や北陸新幹線工事などのプロジェクトの進行により、当初の2年間は受注高・売上高とも計画値を順調に達成することができました。しかしながら、民間企業が中心な建築事業は、コロナ禍による設備投資の延期や中断などで受注競争が激化し、苦戦することとなりました。最終年度においては、土木の上積みがあったものの、全体としては、受注高・売上高ともに目標未達という結果となりました。

一方、利益面につきましては、土木事業で大きく計画値を上回り、中計目標値を達成しました。営業利益についても、コロナ禍による出張費や交際費など販管費の減少もあり、全年度で計画値を上回る結果となりました。各部門についての分析・検討は以下のとおりです。

土木事業については、新型コロナ感染症の影響もほとんどなく、受注高・売上高は高速道路会社の大規模案件の設計変更を獲得し目標を上回りました。利益についても、設計変更の獲得による利益改善、大規模更新やメンテナンス工事の生産性向上による原価低減により計画値を上回りました。

建築事業については、官庁案件入札への注力、新規顧客への取り組みを強化しましたが、成約に至った件数は少なかったことから受注高及び売上高への大きな貢献とはなりませんでした。予定していた案件の失注等もあり、受注高は中期経営計画の目標数値に対し未達となりました。売上高・利益についても原価低減に注力しましたが、受注高減少による影響額をカバーすることができず、中期経営計画の売上高・利益目標についても未達となりました。

 

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ROE・ROA・D/Eレシオについて、各年度の利益の積み上げにより、数値目標を上振れする結果となりました。配当については、計画値より増配しており、配当性向は2022.3期で30.8%、3カ年平均で27.1%となりました。

設備・不動産投資では、PC技術を応用した新工法・新技術の開発、工場設備および情報関連設備の更新、工事用機械の取得、ストック案件への投資を実施しましたが、不動産投資が期ずれした結果、3ヵ年で70億円の計画値に対し、40億円となりました。

セグメントごとの経営成績および財政状態の状況に関する認識および分析・検討内容は(1)経営成績等の状況の概要、①財政状態および経営成績の状況に記載のとおりであります。

 

 

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