研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社グループにおきましては、4つのマテリアリティ(重要課題)を掲げて、研究開発を推進しております。

●4つのマテリアリティ(重要課題)

 Blue・Green(ブルー・グリーン)‐地球温暖化対策・低炭素社会の構築、自然環境保全・再生・創出

 Life-cycle(ライフサイクル) ‐維持・長寿命化、3Rの実践

 Digital・Smart(デシタル・スマート)‐品質・安全・生産性の向上、ウエルネスの向上

 Resilience(レジリエンス) ‐防災・減災、強靱化、安心・安全の提供

当連結会計年度における研究開発費は1,224百万円であります。また、主な研究開発成果は次のとおりであります。

 

(国内土木事業・国内建築事業及び海外事業)

(1)鋼板接着併用型タフリード PJ 工法の開発

桟橋杭頭部付近の鋼管杭は、海水作用や地震・船舶接岸による荷重作用等の影響により劣化や損傷を生じやすく、この部位で鋼管杭が著しく腐食した場合には桟橋の安全性に大きく影響するため、桟橋の供用停止や大掛かりな対策工事が必要となります。

当社は、このような桟橋の供用を停止することなく補修する技術として、2015年に国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所、國枝稔 岐阜大学教授及び岩波光保 東京工業大学教授と共同でタフリードPJ工法を開発しました。このタフリードPJ工法は、既存の鉄筋コンクリートを用いた補修技術を改良したもので、適用範囲として、既設鋼管杭の残存耐力を期待できること(鋼管杭の残存肉厚6mm以上)を前提とした工法でした。そのため、既設鋼管杭の残存耐力を期待できないような著しい腐食やあなが生じている条件では、適用することができませんでした。

そこで、タフリード PJ 工法では適用できなかった条件に対しても確実な補修効果が得られる工法として、既存の鋼板を用いた鋼管杭の補修技術を改良した「鋼板接着併用型タフリード PJ 工法」を開発しました。

本工法は、杭頭部付近の鋼管杭に著しい腐食が生じている場合に、既存の鋼板を用いた補修では補強鋼板上部の定着が確保できない(溶接長が確保できない)課題を、タフリード(高強度・高靭性・高耐久性を併せ持つ繊維補強モルタル)を用いることで解決した工法です。

既存の鋼板を用いた鋼管杭の補修技術を改良し、杭頭部へのタフリードによる巻立てと補強鋼板の上端を杭頭プレート下面にすみ肉溶接を行うことにより、杭(補強鋼板)と上部工を接合します。タフリード巻立てと補強鋼板はシアキー(ずれ止め)により、タフリード巻立てと上部工はアンカーボルトにより、それぞれ定着させて一体化します。なお、タフリード巻立て部より下方の補強鋼板に対しては、既存技術と同様に、防食工を適用します。

過酷な環境下に曝される桟橋のリニューアル工事に本工法を幅広く活用していただけるよう、また、潜水士等の熟練作業員の減少を見据えつつ、更なる施工性の向上を推進していきます。

 

(2)無線式ガット船施工支援システムの機能拡充

海上土木の護岸基礎工事や埋立工事等において使用する作業船(ガット船)は、バケット付きクレーンを装備しており、順次移動しながら船倉に積込まれた土砂等をバケットで掴んで海中に放出する作業を繰り返して所定の位置へ土砂等を投入していきます。

当社は、このクレーンのブーム先端に設置したマグネット着脱式 GNSS アンテナの情報から投入位置( XY 座標)および投入履歴を表示することでオペレータの投入支援を行う無線式ガット船施工支援システムを 2009 年に開発し、工事で活用してきました。しかしながら、本システムは、オペレータや職員が土砂等を投入したことを目視判断して、その都度手動でシステムを操作することで投入位置履歴を記録するため、手間がかかることやヒューマンエラーによる記録漏れが発生する等の課題もありました。

そこで、本システムに AI 画像認識技術を組み込み、カメラで撮影した映像内のバケット開閉を AI が識別して投入判別するとともに GNSS から取得した投入位置を自動記録する機能を付加しました。これにより、投入判別や投入履歴記録が自動化できたため、オペレータや職員の負担軽減と記録漏れの防止ができ、業務の効率化を実現しました。

 

(3)冷蔵倉庫を稼働しながらの耐震補強工法「THJ耐震補強工法」の開発

旧耐震基準に基づいて建てられた F 級(フリーザー級)冷蔵倉庫は、現在も多くが稼働していますが、それらの多くは耐震改修促進法における耐震性能の判断基準となる構造耐震指標( Is 値) 0.6 を下回っているため、地震による倒壊または崩壊のおそれがあり、早急な対応が望まれます。

しかしながら、冷蔵倉庫を建て替えるには、倉庫内の荷物を他の倉庫へ一時的に移動する必要があり、仮保管できる倉庫も限られるため、事業に多大な影響を及ぼします。また、冷蔵倉庫の耐震改修工事を実施する場合にも、冷凍機を一旦停止し、倉庫内を常温に戻してから施工する必要があるため、建て替えの場合と同様に一時的に荷物を移動する必要があります。これらの対応は事業上、非常に困難であるため、耐震改修が進まないといった現状があります。

そこで当社は、稼働中の冷蔵倉庫内において常温環境下での施工と同等の耐震性能を確保できる耐震補強工法「THJ(Toa Heating Joint)耐震補強工法」を開発しました。

本工法は、鉄筋コンクリート( RC )造および鉄骨鉄筋コンクリート( SRC )造の冷蔵倉庫を対象とし、最上階が鉄骨( S )造の場合にも対応できます。適用可能な温度帯は、 F1 級( -30℃ -20℃ )冷蔵倉庫の中で最も需要が高い -25℃ 以上の冷凍温度帯となります。 RC 造および SRC 造の部位には柱梁構面内に鉄骨枠付きブレースを増設し、 S 造の部位には既存鉄骨ブレースを交換・増設します。

一般に鉄骨枠付きブレースを増設する場合、鉄骨枠付きブレースはグラウトを介して既存躯体に間接接合します。本工法では、間接接合部( Joint )の型枠に面状発熱体及び断熱材を設置し、鉄骨枠のウェブにも断熱材を設置した上で採暖しながら( Heating )グラウトを打込むことで、「 -25℃ 冷凍」環境下でも常温環境下でのグラウト打込みと同等の品質確保が可能になりました。

本工法により、旧耐震基準の冷蔵倉庫の建物寿命を延命できることになるため、スクラップアンドビルドによる環境負荷を削減することで持続可能な社会の実現に貢献します。

 

(その他)

研究開発活動は特段行っておりません。

 

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