当連結会計年度末の資産合計は、現金預金が減少したものの受取手形・完成工事未収入金等の増加などにより、前連結会計年度末に比べ151億円増加し、4,674億円となった。負債合計は、コマーシャル・ペーパーの増加などにより、前連結会計年度末に比べ137億円増加し、3,076億円となった。純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ14億円増加し、1,598億円となった。
①事業全体の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、ポストコロナに向けて景気回復の兆しもあったが、新型コロナウイルス感染症感染拡大の長期化や世界的な資源や原材料の高騰と供給・サプライチェーンの制約の影響に、年度末にはウクライナ情勢が加わり、先行き不透明な状況が続いた。
建設市場は、国内では防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策等により高水準の公共投資が続くとともに、民間投資も旺盛な物流関連や再開発に加え、ポストコロナに向けた設備投資の動きがみられた。また海外においても、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも建設投資は堅調に推移した。しかしながら、国内外において建設資機材の高騰や供給制約、労務費の上昇が顕著になっており、事業環境は厳しさを増している。
このような事業環境の下、当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高 4,582億円 (前連結会計年度比 2.7%減 )、営業利益 159億円 (同 47.7%減 )、経常利益 157億円 (同 48.7%減 )、親会社株主に帰属する当期純利益 108億円 (同 48.8%減 )となった。売上高の減少は、国内では前期に東京オリンピック・パラリンピック関連の大型土木工事が完成したこと、海外ではODA関連の大型港湾工事が完成または概成したことが主な原因である。利益面では、シンガポールの大型土木工事において、一つは現場条件の不一致と新型コロナウイルス感染症拡大の長期化の影響により工事原価が増大する見込みとなったこと、もう一つは完成工事の設計変更協議が難航していることにより、合わせて約90億円の工事損失見込みを計上した。また、国内土木の完成工事高の減少による完成工事総利益の減少が影響した。その結果、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも大幅な減益となった。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況(セグメント利益は連結損益計算書の営業利益ベース)
(国内土木事業)
国内土木事業においては、受注高は前年に大型港湾工事の受注があった影響と官庁陸上工事の減少により前期に比べ188億円減少し、1,794億円(前連結会計年度比9.5%減)となった。売上高は1,769億円(同11.1%減)となり、売上高の減少に伴い完成工事総利益も減少したことにより、セグメント利益は175億円(同23.6%減)となった。
(国内建築事業)
国内建築事業においては、受注高は177億円減少し、1,622億円(前連結会計年度比9.9%減)となった。売上高は1,534億円(同6.2%増)となり、セグメント利益は36億円(同9.9%減)となった。
(海外建設事業)
海外建設事業においては、受注高は大型工事の受注が1件にとどまり、前期に比べ949億円減少し、560億円(前連結会計年度比62.9%減)となった。売上高は1,203億円(同1.4%減)となり、セグメント損失は60億円(前連結会計年度は29億円のセグメント利益)となった。
(その他)
国内開発事業、造船事業、環境関連事業等を主な内容とするその他の売上高は76億円(前連結会計年度比33.2%増)となり、セグメント利益は8億円(同16.5%増)となった。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 2事業等のリスク」に記載のとおりである。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
当連結会計年度における売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
(注) 1 その他の受注実績については、当社グループ各社における受注の定義が異なり、また、金額も
僅少であるため、建設事業のみ記載している。
2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。
3 受注実績、売上実績については、セグメント間の取引を相殺消去して記載している。
4 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は次のとおりである。
なお、参考のため提出会社単独の事業の状況は次のとおりである。
提出会社における受注高、売上高の状況
イ.受注高、売上高及び繰越高
(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注高にその増減額を含む。
したがって当期売上高にもかかる増減額が含まれる。
2 前期繰越高の上段( )内表示額は前期における次期繰越高を表わし、下段表示額は、当該事業年度の外国為替相場が変動したため海外繰越高を修正したものである。
3 当期受注高のうち海外工事の割合は、第71期27.9%、第72期12.8%でそのうち請負金額100億円以上の主なものは次のとおりである。
ロ.受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
ハ.完成工事高
(注)1 海外完成工事高の地域別割合は、次のとおりである。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
第71期 請負金額20億円以上の主なもの
第72期 請負金額20億円以上の主なもの
3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
ニ.次期繰越工事高(2022年3月31日現在)
(注) 次期繰越工事高のうち請負金額50億円以上の主なものは、次のとおりである。
(3)キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ156億円(△26.4%)減少し、436億円となった。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益が161億円となる一方、売上債権の増加などにより、77億円の支出超過(前連結会計年度は307億円の収入超過)となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
持分法適用関連会社株式の取得及び有形固定資産の取得による支出などにより、118億円の支出超過(前連結会計年度は128億円の支出超過)となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
コマーシャル・ペーパーの発行による収入などにより、14億円の収入超過(前連結会計年度は31億円の支出超過)となった。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループの資金の源泉は、主として国内及び海外建設事業に係る営業活動からのキャッシュ・フローと金融機関からの借入及び社債の発行等による収入からなる。
資金調達を行う際は、期間や国内外の市場金利動向等、または自己資本比率、D/Eレシオ(ネット)や自己資本利益率(ROE)といった財務指標への影響度等を総合的に勘案しながら、最適な調達を実施することとしている。
なお、コミットメントライン契約については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載のとおりである。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。この連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債並びに収益・費用の数値に影響を与える見積り及び判断が一定の会計基準の範囲内で行われており、これらの見積り等については、継続して評価し、事象の変化等により必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性を伴うため、実際の結果はこれらとは異なる場合がある。
連結財務諸表を作成するに当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりである。
①重要な収益及び費用の計上基準
主要な事業である建設事業においては、顧客との工事請負契約に基づき、目的物の完成及び顧客に引渡す義務を負っている。
当該履行義務は、主として工事の進捗に伴い支配を顧客に移転することになるため、一定の期間にわたり充足されると判断しており、履行義務の充足に係る進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益を認識している。一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する方法による完成工事高、工事収益総額、工事原価総額等を、信頼性をもって見積る必要があるが、これらの見積りは、気象条件、海象条件、施工条件、資機材価格等様々な仮定に基づいている。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する完成工事高、完成工事原価等に重要な影響を与える可能性がある。
②退職給付に係る会計処理
当社グループの退職給付債務、退職給付費用及び年金資産は、数理計算上の仮定と見積りに基づいて計算されている。これらの数理計算上の仮定には、退職給付債務の割引率、予想昇給率、死亡率、退職率、期待運用収益率等の様々な計算基礎がある。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債、退職給付費用等の金額に重要な影響を与える可能性がある。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務、退職給付費用及び年金資産の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)」に記載している。
③新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積り
新型コロナウイルス感染症再拡大の影響により、景気は当面不透明な状況が続くものと予想される。
このような状況の中、当社グループにおいては、国内の手持ち工事は中断することなく進捗し、海外においては前連結会計年度にシンガポールとアフリカの工事で一時中断の影響があったものの、現在は全工事が稼働している。
新型コロナウイルス感染症の影響については、今後の広がり方や収束時期等について統一的な見解はないため、予測困難である。当社グループにおいては、三密回避等の感染症対策を徹底するとともに、ICTを活用した生産性向上を通じて安定的な事業継続が可能であるとの前提のもと、会計上の見積りを行っている。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動への影響については不確定要素が多く、上記の仮定に状況変化が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性がある。
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