(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が全国的に進んでいますが、変異株による感染拡大が繰り返し起き、未だ多くの感染者が報告されるなど、厳しい状況で推移しました。また、ウクライナ情勢による資源価格の上昇や金融資本市場の変動などを注視する必要があり、先行きは不透明な状況が続いております。
建設市場におきましては、公共建設投資は高水準で推移しており、民間設備投資については、持ち直しの動きがみられますが、資材価格及びエネルギー価格の上昇による影響が懸念されております。
このような事業環境の中で当社グループは、2020年5月8日に公表しました中期経営計画2020(2020年度~2022年度)において、「Next Challenge StageⅡ」をテーマにこの3年間の事業戦略を「働き方改革の実現を軸に働き手の確保と生産性の向上を図る」と共に、「顧客信頼を確保し、市場の期待に応え事業拡大を図る」、同時に「長期的な建設市場の変化を見据え、維持補修分野における技術力・営業力を強化し、優位性のある技術開発でシェアの拡大を目指す」とし、事業戦略を実現するための課題として、人的資源の確保と育成、生産性の向上、法面補修技術や環境負荷低減技術の開発、海外事業の強化など新しい分野への挑戦に取り組んでおります。
その結果、当連結会計年度の業績は以下のとおりとなりました。
a.受注高、売上高
受注高は、国内の基礎工事を主体に順調に推移し、海外事業においても地盤改良工事の受注が計上されたことにより71,625百万円(前連結会計年度比5.6%増)となりました。
売上高は、当社が関わる災害復旧工事が一段落し、前年度と比較して大型工事が減少したこと、上期の当期売り上げに寄与する工事の受注不足および一部工事の着工遅れにより施工高が伸び悩んだことにより、前々連結会計年度から0.9%増加しましたが、前連結会計年度からは2.8%減少し66,076百万円となりました。
b.売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価は53,941百万円(前連結会計年度比2.1%減)、原価率は81.6%(同 0.6%悪化)となり、販売費及び一般管理費は、7,611百万円(同 1.6%増)となりました。
c.営業利益
売上高が前年同期比で減少したことに加え、工事利益率が悪化したことにより、営業利益は4,523百万円(前連結会計年度比15.6%減)となりました。
d.営業外損益、特別損益
当連結会計年度の営業外収益は139百万円(前連結会計年度比30.0%増)となり、営業外費用は35百万円(同21.9%減)となりました。
特別利益は投資有価証券売却益の計上により372百万円(前連結会計年度は15百万円)となり、特別損失は固定資産除売却損の計上により11百万円(前連結会計年度は217百万円)となりました。
e.親会社株主に帰属する当期純利益
上記の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、3,329百万円(前連結会計年度比4.9%減)となりました。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大による当連結会計年度における業績への影響は、工事の中断もなく軽微でありました。
過去5年間の売上高と原価率、販売費及び一般管理費と売上高販売費及び一般管理費比率の推移は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
|
第71期 |
第72期 |
第73期 |
第74期 |
第75期 |
|
2018年3月期 |
2019年3月期 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
売上高 |
62,943 |
63,264 |
65,516 |
67,955 |
66,076 |
原価率 |
83.2% |
82.9% |
81.2% |
81.1% |
81.6% |
販売費及び一般管理費 |
6,491 |
6,848 |
7,392 |
7,495 |
7,611 |
売上高販売費及び一般管理費比率 |
10.3% |
10.8% |
11.3% |
11.0% |
11.5% |
②財政状態の状況
当連結会計年度末における流動資産の残高は42,526百万円で、前連結会計年度末に比べ244百万円増加しております。これは主に、現金預金が3,001百万円、未収入金が284百万円増加した一方、受取手形・完成工事未収入金等及び契約資産が1,732百万円、電子記録債権が357百万円、未成工事支出金が1,057百万円減少したことによるものであります。固定資産の残高は9,185百万円で、前連結会計年度末に比べ503百万円減少しております。これは主に、機械、運搬具及び工具器具備品が181百万円、建設仮勘定が86百万円増加し、投資有価証券が557百万円、その他(保険積立金)が151百万円、繰延税金資産が124百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における流動負債の残高は16,790百万円で、前連結会計年度末に比べ2,141百万円減少しております。これは主に、支払手形・工事未払金等が582百万円増加した一方、短期借入金が278百万円、未成工事受入金が1,438百万円、未払法人税等が718百万円、賞与引当金が351百万円減少したことによるものであります。固定負債の残高は4,311百万円で前連結会計年度末に比べ71百万円増加しております。これは主に、退職給付に係る負債が46百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における純資産の残高は30,610百万円で、前連結会計年度末に比べ1,810百万円増加しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を3,329百万円計上したこと、1,501百万円の配当を実施したことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況は、営業活動により獲得した資金は4,750百万円(前連結会計年度は1,426百万円の獲得)、投資活動により使用した資金は23百万円(同705百万円の使用)、財務活動により使用した資金は1,785百万円(同1,784百万円の使用)となった結果、現金及び現金同等物は3,001百万円増加し、当連結会計年度末残高は20,723百万円となっております。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、4,750百万円となっております。
これは主に、税金等調整前当期純利益4,986百万円を計上し、減価償却費の計上507百万円、退職給付に係る負債の増加97百万円、売上債権の減少2,686百万円、未成工事支出金の減少227百万円、未払消費税等の増加94百万円により資金が増加しましたが、賞与引当金の減少351百万円、未成工事受入金の減少1,085百万円、法人税等の支払2,450百万円により資金が減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、23百万円となっております。
これは主に、投資有価証券の売却収入645百万円、その他の収入(保険積立金の解約等)173百万円により資金が増加しましたが、有形固定資産の取得による支出627百万円、無形固定資産の取得による支出273百万円により資金が減少したものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、1,785百万円となっております。
これは主に、長期借入金の返済による支出278百万円、配当金の支払い1,501百万円により資金が減少したものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
セグメントの名称 |
前連結会計年度(百万円) (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度(百万円) (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
建設事業 |
67,608 |
71,327 |
その他の事業 |
237 |
298 |
合計 |
67,845 |
71,625 |
b.販売実績
セグメントの名称 |
前連結会計年度(百万円) (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度(百万円) (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
建設事業 |
67,718 |
65,758 |
その他の事業 |
237 |
317 |
合計 |
67,955 |
66,076 |
(注)1 当連結企業集団では生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載しておりません。
2 セグメント間の取引については相殺消去しております。なお、参考までに提出会社個別の事業の状況を記載すると次のとおりであります。
① 受注工事高、完成工事高、繰越工事高及び施工高
期別 |
工事別 |
前期繰越工事高 (百万円) |
当期受注工事高 (百万円) |
計 (百万円) |
当期完成工事高 (百万円) |
次期繰越工事高 (百万円) |
当期施工高 (百万円) |
||
手持工事高 |
うち施工高 |
||||||||
第74期 自 2020年4月1日 至 2021年3月31日
|
土木 |
39,462 |
65,575 |
105,037 |
66,520 |
38,517 |
2.8% |
1,083 |
66,000 |
計 |
39,462 |
65,575 |
105,037 |
66,520 |
38,517 |
2.8% |
1,083 |
66,000 |
|
第75期 自 2021年4月1日 至 2022年3月31日
|
土木 |
37,624 |
68,889 |
106,513 |
63,931 |
42,581 |
2.2% |
935 |
63,783 |
計 |
37,624 |
68,889 |
106,513 |
63,931 |
42,581 |
2.2% |
935 |
63,783 |
(注)1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高の施工高は支出金により手持工事高の施工高を推定したものであります。
3 当期施工高は(当期完成工事高+次期繰越工事高(うち施工高)-前期繰越工事高(うち施工高))に一致しております。
② 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されております。
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
第74期 自 2020年4月1日 至 2021年3月31日 |
土木工事 |
89.0 |
11.0 |
100.0 |
第75期 自 2021年4月1日 至 2022年3月31日 |
土木工事 |
89.2 |
10.8 |
100.0 |
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
期別 |
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
計(百万円) |
第74期 自 2020年4月1日 至 2021年3月31日
|
土木工事 |
52,330 |
14,190 |
66,520 |
計 |
52,330 |
14,190 |
66,520 |
|
第75期 自 2021年4月1日 至 2022年3月31日
|
土木工事 |
53,917 |
10,014 |
63,931 |
計 |
53,917 |
10,014 |
63,931 |
(注)1 当社が総合建設業者を通じて受注した官公庁発注工事は官公庁欄に計上しております。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第74期 請負金額5億円以上の主なもの
(注文者) (工事名)
本州四国連絡高速道路㈱ 与島高架橋他耐震補強工事
清水建設㈱ 平成30年度中間貯蔵(大熊4工区)土壌貯蔵施設等工事
清水建設㈱ 平成29年度中間貯蔵(大熊2工区)土壌貯蔵施設等工事
関東地方整備局 R1八ッ場ダム下流管理用通路工事
㈱鴻池組 北陸新幹線第2福井トンネル(南)他工事
㈱大林組 H28川俣ダム周辺部補強工事
㈱フジタ 新名神高速道路原萩谷トンネル西工事
西日本高速道路㈱ 高松自動車道勅使高架橋橋梁剥落対策工事
㈱佐藤組 鶴岡市ごみ焼却施設整備・運営事業
㈱大林組 中央新幹線名古屋駅新設
大成建設㈱ 椛川ダム本体建設工事
鹿島建設㈱ KK7号原子炉格納容器フィルタベント設備に伴う液状化対策工事
双葉鉄道工業㈱ 東海道新幹線維持補修工事
第75期 請負金額5億円以上の主なもの
(注文者) (工事名)
奥村組土木興業㈱ 中国横断自動車道 時重トンネル他1トンネル工事
前田建設工業㈱ 奄美(30)新駐屯地(瀬戸内地区)敷地造成工事(その1)
大成建設㈱ 浦安某所地盤改良工事
中日本高速道路㈱ 北陸自動車道 今庄トンネル背面空洞注入工事
中日本高速道路㈱ 中央自動車道 多治見管内橋梁下部工補修工事(2019年度)
㈱フジタ 新名神高速道路 原萩谷トンネル西工事
東日本高速道路㈱ 道央自動車道 米里高架橋下部工補修工事
西日本高速道路㈱ 令和2年度九州自動車道 久留米高速道路事務所管内のり面防災
対策工事
西日本高速道路㈱ 舞鶴若狭自動車道(特定更新等)春日IC~大飯高浜IC間盛土
補強工事
西日本高速道路㈱ 阪和自動車道(特定更新等)阪奈高速道路事務所管内のり面補強
工事
三井住友建設㈱ 新名神高速道路 淀川橋工事
西松建設㈱ 横浜湘南道路トンネル工事
本州四国連絡高速道路㈱ 令和元年度西瀬戸自動車道(特定更新等)尾道管内盛土のり面補
強工事
㈱大林組 東海第二発電所 常設代替高圧電源装置置場設置工事
3 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
④ 手持工事高(2022年3月31日現在)
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
計(百万円) |
土木工事 |
34,399 |
9,076 |
43,475 |
(注)1 当社が総合建設業者を通じて受注した官公庁発注工事は官公庁欄に計上しております。
2 手持工事のうち、請負金額5億円以上の主なもの
(注文者) |
(工事名) |
(完成予定) |
㈱安藤・間 |
高原トンネル上部斜面対策工事 |
2023年2月 |
大成建設㈱ |
玉来ダム本体建設工事 |
2022年6月 |
㈱大林組 |
安威川ダム建設工事 |
2022年6月 |
ケミカルグラウト㈱ |
成瀬ダム堤体打設工事 第一期 |
2022年12月 |
PT NITTOC CONSTRUCTION INDONESIA |
石炭火力発電所の建設に伴う地盤改良工事 |
2022年6月 |
本州四国連絡高速道路㈱ |
八幡高架橋他4橋耐震補強工事 |
2022年5月 |
東日本高速道路㈱ |
道央自動車道 旭川管内橋梁補修工事 |
2024年3月 |
㈱フジタ |
北海道新幹線、野田追トンネル(北)他 |
2022年8月 |
㈱大林組 |
新丸山ダム本体建設第1期工事 |
2025年3月 |
大成建設㈱ |
南摩ダム本体建設工事 |
2024年5月 |
㈱熊谷組 |
銀座線浅草駅折返し線延伸に伴う土木工事 |
2022年6月 |
㈱フジタ |
島根原子力発電所3号機北側・東側防波壁基礎 部耐震 |
2022年5月 |
東日本高速道路㈱ |
北陸自動車道 R3新潟管内橋梁補修工事 |
2023年2月 |
大成建設㈱ |
なにわ筋線梅田地区T新設工事 |
2025年3月 |
㈱鴻池組 |
某処理施設造成工事 |
2025年12月 |
中日本高速道路㈱ |
東海北陸自動車道 飛騨清見IC~白川郷IC 間土石流対策工事 |
2022年12月 |
㈱熊谷組 |
(仮称)川又発電所導水路修繕工事 |
2024年3月 |
新進建設㈱ |
県道川之江大豊線道路災害復旧工事 |
2022年6月 |
前田建設工業㈱ |
南房総PDC建設工事 |
2022年6月 |
西松建設㈱ |
浜松市 新清掃工場新設工事 |
2022年4月 |
㈱安藤・間 |
中央新幹線第一首都圏トンネル新設(小野路工区) |
2025年12月 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要の主なものは、工事施工に伴う材料費、外注費等の支払であり、その資金は営業活動からのキャッシュ・フローにより調達しております。施工ボリュームは季節的な変動があり、一時的に営業キャッシュ・フローを上回る資金需要があった場合に備え、金融機関と借入枠2,200百万円のコミットメントライン契約を結んでおります。なお、2022年3月31日現在における貸出コミットメント契約に係る借入未実行残高は2,200百万円、現金預金勘定残高は20,723百万円であり、通常の事業活動を継続するための資金調達は十分であると考えております。
⑤経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
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