業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当連結会計年度(2021年7月1日から2022年6月30日まで)におけるわが国経済は、感染対策に万全を期し、経済社会活動の正常化が進むなかで、各種政策の効果もあって、景気は持ち直しの動きを示しました。ただし、ウクライナ情勢の長期化や中国における経済活動の抑制の影響などが懸念されるなかでの原材料価格の上昇や供給面での制約に加え、金融資本市場の変動等による下振れリスクや感染症による影響に十分注意する必要があります。
 当社グループを取り巻く経営環境は、コンサルティング事業では国内市場は引き続き国土強靭化を中心に高水準の政府予算が確保され、デジタル改革の加速化やマネジメント事業へのニーズが高まりました。海外市場は新型コロナウイルス感染症拡大による事業進捗への影響および渡航制限のリスクはあるものの、日本政府「インフラシステム海外展開戦略2025」でも高い受注目標が掲げられる等、堅調な需要が維持されました。都市空間事業では、国内および欧米等では都市構造の再構築、開発途上国では都市基盤整備を含む都市開発事業のニーズが旺盛です。エネルギー事業では、国内では2050年カーボンニュートラルの実現に向けて新たな事業機会と競争が生まれ、また世界全体で再生可能エネルギー開発やエネルギー利用の効率化へのニーズが高まっています。
 なお、当社グループは、新型コロナウイルス感染症に対して従業員とその家族を含む関係者各位の生命と健康を守るとともに、事業進捗の遅れ等による顧客への影響を最小限に抑えるため、積極的防衛態勢をもって感染症予防のための措置を講じました。また、ワークライフバランスの実現および生産性の向上を図るべく、テレワークをはじめとする働き方改革を進めています。
 このような状況の下で、当社グループは、「NKG(日本工営グループ) グローバル戦略2030」の第1ステップとなる2021年7月から2024年6月までをグループ強靭化に取り組む変革期と位置づけ、中期経営計画「Building Resilience 2024」を策定のうえ3つの強靭化策を実行しています。当該強靭化策の詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)今後の見通しおよび重点課題」をご参照ください。
  以上の結果、当社グループの当連結会計年度の業績は、受注高は前期比1.6%減131,166百万円となりましたが、コンサルティング事業の海外部門をはじめ案件が順調に進捗し、渡航費等のコストが抑制傾向で推移したこと、主要連結子会社においても収益体質改善が順調に進捗したこと、また円安による影響等により、売上収益は前期比10.9%増130,674百万円、営業利益は前期比27.2%増9,065百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比45.2%増6,579百万円となりました。

 

当社グループのセグメント別の業績は次のとおりです。 なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更したことに伴い、前連結会計年度についても変更後の報告セグメント区分に組み替えて比較を行っています。当該報告セグメントの変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.セグメント情報 (2)報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。

 

[コンサルティング事業]

コンサルティング事業では、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進による生産性の向上、収益管理・品質管理・リスク管理・安全管理の徹底を図るとともに、防災・減災技術の高度化と世界展開、交通運輸関連事業の拡大、脱炭素に貢献するサービスの推進、マネジメント分野の本格展開に取り組みました。

以上の結果、受注高は前期に引き続き好調であり前期比0.7%増98,491百万円海外部門における大型案件の始動および順調な稼働進捗等により売上収益は前期比10.5%増88,510百万円、当社連結子会社PT.CIKAENGAN TIRTA ENERGIによる減損損失の計上があった前期に対して今期は売上収益の増加等により営業利益は前期比46.6%増8,982百万円となりました。

 

 

[都市空間事業]

都市空間事業では、市街地開発やスマートシティ事業の推進とともに、英国市場の変化への対応、カナダ市場での事業拡大、グループ内協業によるアジア市場での事業拡大に取り組みました。
 以上の結果、受注高は英国における一部事業の見直しや公共投資抑制による事業の減少により前期比15.1%減18,207百万円となりました。売上収益は前期受注が好調で多くの案件が稼働したことと併せて、円安による影響により前期比11.4%増22,580百万円となりました。営業利益はコンサルティング事業部門への監督支援業務移管やBDP HOLDINGS LIMITEDとそのグループ会社ののれんに対する減損損失計上等により前期比29.9%減1,588百万円となりました。

 

[エネルギー事業]

エネルギー事業では、主力である電力機器の生産体制の強化と新製品開発とともに、再生可能エネルギーなどの発電事業においては新規案件形成、エネルギーマネジメント事業においては欧州を中心とした蓄電池事業および日本でのアグリゲーション事業(分散型エネルギー源集約を通じた電力市場取引等による売電事業や電力系統安定化事業等)の基盤形成に取り組みました。
 以上の結果、受注高は変電関連工事等の受注が好調であったため前期比2.5%増14,343百万円、売上収益は大型案件の順調な稼働進捗により前期比13.1%増18,799百万円、営業利益は工事損失引当金の計上等があった前期に比べて、工事損失引当金の取崩しや変動費の削減により前期比58.5%増1,290百万円となりました。

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末における資産合計は、173,926百万円となり、前連結会計年度末と比較して17,788百万円の増加となりました。これは、営業債権及びその他の債権5,852百万円および前渡金等の増加によるその他の流動資産4,390百万円の増加等があったことが主な要因です。
 負債合計は、91,956百万円となり、前連結会計年度末と比較して8,113百万円の増加となりました。これは、借入金5,404百万円の増加等があったことが主な要因です。
 資本合計は、81,969百万円となり、前連結会計年度末と比較して9,674百万円の増加となりました。これは、利益剰余金4,917百万円の増加等があったことが主な要因です。
 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は44.9%となり前連結会計年度末と比較して0.4ポイント低下しました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、17,971百万円となり、前期末に比べて133百万円増加しました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況と、前期に対するキャッシュ・フローの増減は、次のとおりです。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益10,800百万円に減価償却費等の非資金項目や営業活動に係わる債権・債務の加減を行った結果、4,820百万円の収入となり、前期に比べ7,252百万円の減少となりました。これは主に営業債権及びその他の債権の増加、未払消費税等の減少等の要因によるものです。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産やその他の金融資産の取得等を行った結果、6,949百万円の支出となり、前期に比べ4,199百万円の減少となりました。これは、主に有形固定資産及び投資不動産の取得による支出が増加したこと等によるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の借入れや返済等を行った結果、1,892百万円の収入となり、前期に比べ9,821百万円の増加となりました。これは、主に借入れによる収入が増加したことによるものです。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2018年

6月期

2019年

6月期

2020年

6月期

2021年

6月期

2022年

6月期

親会社所有者帰属持分比率(%)

51.2

52.2

43.6

45.3

44.9

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%)

37.5

32.4

29.0

29.7

28.2

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

-

6.3

7.0

2.2

6.7

インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)

-

11.7

10.9

27.8

11.8

 

親会社所有者帰属持分比率:親会社所有者帰属持分/資産合計
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注)1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。

   2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。

   3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しています。

   4.有利子負債は連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。

   5.2018年6月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率とインタレスト・カバレッジ・レシオはマイナスとなるため、「-」で表示しています。

   6.上記指標のうち、2020年6月期からはIFRSにより作成した連結財務諸表に基づいています。

 

④生産、受注及び販売の実績

a. 受注実績

セグメントの名称

当連結会計年度(百万円)

前年同期比(%)

当期受注高

 

 

 コンサルティング事業

98,491

0.7

 都市空間事業

18,207

△15.1

  エネルギー事業

14,343

2.5

 その他

123

43.6

当期受注高合計

131,166

△1.6

為替・その他調整

 

 

 コンサルティング事業

6,764

626.2

 都市空間事業

1,755

△37.3

 エネルギー事業

△2

294.8

 その他

為替・その他調整合計

8,518

128.3

受注残高

 

 

 コンサルティング事業

149,748

8.4

 都市空間事業

21,755

△5.7

 エネルギー事業

23,004

0.0

 その他

△100.0

受注残高合計

194,508

5.6

 

(注) 1.上記の金額は外部顧客に対するもので、セグメント間の内部取引および振替高は含まれていません。

2.為替・その他調整には為替差額および受注残高の補正による調整額等が含まれています。

3.「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.セグメント情報 (2)報告セグメントの変更等に関する事項」に記載のとおり、当連結会計年度より報告セグメントの変更を行っています。なお、前年同期比は変更後の報告セグメントの区分に基づき計算したものを記載しています。

 

b. 売上収益実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度(百万円)

前年同期比(%)

コンサルティング事業

88,510

10.5

都市空間事業

22,580

11.4

エネルギー事業

18,799

13.1

その他

783

△9.5

合計

130,674

10.9

 

(注) 1.当連結企業集団では生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していません。

2.セグメント間の取引については相殺消去しています。

3.主な相手先別の売上収益実績および総売上収益実績に対する割合は、次のとおりです。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

国土交通省

22,561

19.1

23,574

18.0

(独)国際協力機構

6,206

5.3

10,576

8.1

東京電力パワーグリッド(株)

4,187

3.6

4,665

3.6

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態に関する認識および分析・検討内容については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況、②財政状態の状況」をご覧ください。経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について、当社グループは中期経営計画Building Resilience 2024の初年度にあたる当連結会計年度の経営成績目標を売上収益1,310億円、営業利益77億円、ROE(親会社所有者帰属持分利益率)6.9%としていました。
 当連結会計年度の当社グループの経営成績は、事業は概ね堅調に進捗し、受注高は計画比100.9%の131,166百万円、売上収益は計画比99.8%の130,674百万円となりました。コンサルティング事業の海外部門をはじめ順調な案件の進捗、主要連結子会社の利益改善、円安による影響等により、営業利益は計画比117.7%の9,065百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は計画比140.0%の6,579百万円となり、これに伴いROEは8.8%となりました。なお、業績動向を踏まえて、2022年5月13日に上方修正した通期業績予想値を公表していますが、当該予想値と実績は大きく変わらない結果となりました。
 セグメント別の経営成績は、コンサルティング事業は堅調に推移し、売上収益は計画比99.5%となり、営業利益は一般管理費の抑制等により計画比116.7%となりました。都市空間事業では、順調な案件の進捗および円安による影響により、売上収益は計画比107.5%、営業利益は計画比105.9%となりました。エネルギー事業は、売上収益は大型案件の進捗の遅れにより計画比94.0%、営業利益は海外事業における一般管理費の増加等により計画比75.9%となりました。
 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、コンサルティング事業におきましては、国内の官公庁・地方公共団体からの受注およびわが国ODA(政府開発援助)予算に基づく案件の受注の割合(依存度)が高く、国内事業では公共投資の動向、海外事業ではODA予算の動向に影響を受ける傾向があります。また、エネルギー事業におきましては、東京電力パワーグリッド(株)からの受注の割合(依存度)が高く、同社の電力設備投資等の動向に影響を受ける傾向があります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。

 当社グループの資本の財源および資金の流動性については、事業活動を遂行するための適切な資金確保および健全な財務体質を維持することを目指し、安定的な資金調達手段の確保に努めています。必要な運転資金、設備投資および投融資の財源は、主として営業キャッシュ・フローと金融機関からの借入によります。2022年6月30日現在、長期借入金残高は24,936百万円です。また、資金の流動性については、事業規模に応じた適正な手元資金の水準を維持するとともに金融上のリスクに対応するため主要取引銀行と当座貸越およびコミットメントライン契約を締結することにより手元流動性を確保しており、金融機関との間で総額41,500百万円の契約を締結しています。本契約に基づく当連結会計年度末の短期借入金残高は7,500百万円です。
 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。

なお、当社グループの連結財務諸表の作成に用いた重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」および「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。

 

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