(1) 経営成績
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
当連結会計年度は、一昨年から続くコロナ禍の影響を受け、企業活動への制約を強いられた一年だった。当社グループにおいても、一部の大型案件において工事着手や進捗の遅れが発生した。
このような経営環境のもと当社グループは、中期経営計画(2020年度~2024年度:5カ年計画)の2年目である2021年度を1年目である2020年度の総括を踏まえたうえで「環境変化への対応とリカバリーの実現」と位置付け、「国内設備工事業の受注基盤の強化・拡充」、「利益向上施策の深化」、「人財育成の強化」、「DXの推進」、「ガバナンスの強化」、「重要災害の撲滅」を重点項目に掲げ、全社を挙げた取り組みを推進してきた。
このような事業運営の結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなった。
〔連結業績〕
工事受注高は、重点項目として再開発に伴う大型案件やコロナ禍の影響で発注が延期された案件の受注に向け、営業・技術部門が一体となった営業活動を展開した結果、前連結会計年度と比べ50,315百万円増加(15.5%増)し、375,474百万円となった。
売上高は、工程の初期段階にある施工案件が比較的多いことに加え、資材不足の影響を受けた調達の遅れにより、工事の進捗が伸びにくい状況であったことや、大型太陽光工事の着工遅れなどにより、前連結会計年度と比べ12,891百万円減少(3.4%減)し、364,440百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)については、売上高は減少したものの、これまで実施してきた利益率改善対策を再徹底するとともに、本社の技術管理部が、デジタル技術を活用しながら現場と一体となった施工管理と利益アップを目指した結果、前連結会計年度と比べ42百万円増加(0.1%増)し、30,528百万円となった。
売上高は、ソフト開発事業や再生可能エネルギー発電事業が減少したことなどから、前連結会計年度と比べ2,447百万円減少(16.8%減)し、12,123百万円となった。
また、セグメント利益(営業利益)については、ビジネスホテル等の施設運営事業の収支改善や材料及び機器の販売事業の利益率向上により、前連結会計年度と比べ130百万円増加(5.5%増)し、2,501百万円となった。
なお、「収益認識に関する会計基準」等の適用により、売上高は2,372万円減少している。
流動資産は、受取手形・完成工事未収入金等や材料貯蔵品の増加などにより、前連結会計年度末と比べ4,405百万円増加し、216,979百万円となった。
固定資産は、退職給付に係る資産の増加などにより、前連結会計年度末と比べ7,458百万円増加し、161,416百万円となった。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末と比べ11,863百万円増加し、378,396百万円となった。
流動負債は、電子記録債務や未成工事受入金の減少などにより、前連結会計年度末と比べ1,915百万円減少し、123,446百万円となった。
固定負債は、長期借入金の短期借入金への振替えなどにより、前連結会計年度末と比べ5,674百万円減少し、13,754百万円となった。
これらの結果、負債合計は、前連結会計年度末と比べ7,589百万円減少し、137,201百万円となった。
純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末と比べ19,453百万円増加し、241,194百万円となった。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ12,008百万円減少し、37,791百万円となった。
営業活動の結果増加した資金は、5,252百万円(前連結会計年度比3,931百万円の収入額の減少)となった。
これは、主に法人税等の支払いや棚卸資産の増加を、税金等調整前当期純利益の計上が上回ったことによるものである。
投資活動の結果支出した資金は、7,536百万円(前連結会計年度比3,304百万円の支出額の増加)となった。
これは、主に投資有価証券の取得及び有形固定資産の取得によるものである。
財務活動の結果支出した資金は、10,191百万円(前連結会計年度比127百万円の支出額の増加)となった。
これは、主に配当金の支払いによるものである。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当連結会計年度における、中期経営計画に掲げた「3つの改革」と「前中期経営計画からの 継続取り組み課題」及び中期経営計画2年目を「環境変化への対応とリカバリーの実現」と位置付け取り組んだ具体的実施事項とその評価は次のとおりである。
まず、「利益向上施策の深化」は、取り組みが浸透しつつあり、一定の成果が表れるなど順調な進捗がみられる。また、OJT教育を補完するLMSの導入による人材育成やDXのプロジェクトによる生産性向上や効率化についても着実に推移している。
経営環境の変化に対しては、グリーンイノベーション事業本部やダイバーシティ推進準備室の設置、脱炭素社会の実現に向け環境経営の目標設定、改訂コーポレートガバナンスコードへの対応などの取り組みを進めた。
当連結会計年度もコロナ禍という厳しい環境下であったが、施工現場や事業所内において社員一人ひとりが徹底した感染対策を講じ、リモート会議や在宅勤務などを取り入れ、可能な限り停滞させることなく事業運営を行ってきた。
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ売上高が減少したものの、増益となった。
設備工事業の売上高の減少は、工程の初期段階にある案件が前連結会計年度に比べ比較的多かったことに加え、年度後半には、資材不足の影響を受けた調達の遅れが顕在化したため工事進捗が伸びにくかったこと、また、新型コロナウイルス感染症の拡大予防を念頭に、大型太陽光工事の現場で入場を差し控えたため着工や進捗が遅延したことなどが主な要因である。
一方で、設備工事業の利益率改善については、当連結会計年度の重点項目である「利益向上施策の深化」に向けた具体的取り組みや継続的な利益改善対策の効果が主な要因であり、設備工事業の売上高の減少に伴う減益やウィズコロナ・アフターコロナに対応するためのDX関連経費や事務所等の賃借料などの固定費の増加を、売上高総利益率の改善による増益効果でキャッチアップすることができた。
総売上実績に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上実績及びその割合は、次のとおりである。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去している。
2 当社グループでは設備工事業以外は受注生産を行っていない。
3 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していない。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。
設備工事業における受注工事高及び完成工事高の状況
〇 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)である。
工事の受注方法は、特命と競争並びに九州電力送配電㈱との委託契約によるものに大別される。
(注) 百分比は請負金額比である。
(注) 1 九州電力グループとは、九州電力㈱及び九州電力送配電㈱のことである。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。
前事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
当事業年度 請負金額 10億円以上の主なもの
3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。
〇 次期繰越工事高(2022年3月31日現在)
次期繰越工事のうち請負金額 10億円以上の主なものは、次のとおりである。
営業活動によるキャッシュ・フローについて
当連結会計年度における営業キャッシュ・フローは、5,252百万円となり、前連結会計年度に比べ、3,931百万円の収入額の減少となった。事業規模の拡大及び施工案件の大型化に伴い、運転資本は増加する傾向にあるが、日頃よりこまめな出来高請求を行うことに加え、毎月末に長期未収金の確認を行うなど貸倒れリスクの低減に努めている。また、全社で集金に取り組む集金強調期間を年2回設けるなど、キャッシュ・フロー経営の浸透を図っている。
投資活動によるキャッシュ・フローについて
当社グループは、中期経営計画の経営指標としてROICを採用し、加重平均資本コストを意識した投資を行っている。当連結会計年度における設備投資等の概要については「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に、設備の新設、除却等の計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載している。なお、設備工事業に係る通常の維持更新投資については、年間50億円程度を想定している。
また、再生可能エネルギー発電事業を行うSPCへの出資を行っている。
財務活動によるキャッシュ・フローについて
設備工事業に関する運転資金は従来300億円程度を想定している。一方で、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢など不確実性の増大に備えるため、手元流動性や与信枠の確保に努めている。加えて、再生可能エネルギーや脱炭素などESGへの取り組みをはじめとした投融資を主な使途とした社債発行登録を行っている。今後も、調達コストを勘案しながら、機動的に資金使途に応じた資金調達を遂行していく。
業容拡大やリスク対応に伴う棚卸資産や運転資金の回転率の低下に対しては、営業債権の回収率改善や事業外資産の見直しを行うことで対処し、営業活動及び投資活動のキャッシュ・フローを通じたROICの改善を図っていく。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成されている。この連結財務諸表作成に際し、当社グループ経営陣は、決算日における資産・負債の数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える様々な要因・仮定に対し、継続して可能な限り正確な見積りと適正な評価を行っている。
なお、見積り、判断及び評価は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っているが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる可能性がある。
当社グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 4 会計方針に関する事項」に記載している。個別の取引や経済事象に会計方針を適用するに当たり、現在及び将来の財政状態及び経営成績に大きな影響を与えると想定される事項は以下のとおりである。
宇久島メガソーラーについては、顧客と工事請負契約を締結しているが、当社グループは、当該契約を、財又はサービスの支配を一定期間にわたって顧客に移転するものと判断し、当連結会計年度末における見積総原価(工事原価総額)に対する発生原価の割合を、履行義務の充足に係る進捗度とし、その収益を認識している。ただし、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができなくなった場合において、発生する費用を回収することが見込まれるとき、あるいは、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、コストの上昇や予期しない工事進捗の遅れにより工事原価総額が増加した場合において、不可抗力条項や保険の付保にもかかわらずその影響を工事請負契約に十分に反映できないときは、採算性が低下するリスクがある。
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