当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」という。)のワクチン接種の進展に伴い世界経済は回復傾向にあったものの、度重なる変異株の発生により回復状況は国や地域で差異がありました。また、SDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定等の世界的な潮流を受け、世界の脱炭素化に向けた大きな流れが不可避となっております。当連結会計年度終盤にはウクライナ情勢を受け資源価格の上昇が加速するなど、資機材価格や輸送費などに影響を及ぼし始めております。
先行き不透明な事業環境が続いているものの、当社グループの総合エンジニアリング事業の海外マーケットにおいては、当該マーケットを構成するエネルギーソリューションズ分野(石油精製、石油化学・化学、ガス処理、LNG、クリーンエネルギー、非鉄製錬等)及びファシリティインフラストラクチャーソリューションズ分野(発電、受入基地、医薬、医療、水処理、鉄道等)ともに、当連結会計年度後半からエネルギー需要の回復が進み、さらにエネルギー安全保障の観点から、より環境負荷が少ない天然ガス(液化天然ガス(LNG)を含む)の重要性が高まり、産油・産ガス諸国において設備投資計画を再開する動きが出始めました。このほかアジア地域を中心に脱炭素化の動きを背景とした再生可能エネルギー発電や産業インフラ関連の投資が進展するなど、徐々に明るい兆しが見え始めました。また、同事業の国内マーケットにおいては、既存製油所の改修・保全のほか、ライフサイエンスやヘルスケア、ケミカル分野を中心としたインフラ分野への設備投資が継続的に行われました。
機能材製造事業では、触媒・ファインケミカル分野においては、世界経済が回復傾向にあり、また燃料需要の増加とともに国内外製油所の稼働率が回復傾向にあったことなどにより、顧客の製品需要も回復に向かいました。ファインセラミックス分野では、世界的な半導体関連市場の活況を背景に、顧客の製品需要は全般的に増加しました。
なお、当社グループは、激変する外部環境を注視し、適宜情報収集及びリスク対応を実施するとともに、COVID-19の感染拡大の防止に努め、当社グループ社員をはじめとする関係者の安全に配慮して事業を遂行しました。
以上のような経営環境のもと、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、イクシスLNGプロジェクトに関する特別損失(575億円)を計上したこともあり、以下のとおりとなりました。なお、当連結会計年度より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。これに伴い、当連結会計年度の売上高は1,452百万円減少し、営業利益及び経常利益はそれ ぞれ96百万円増加しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載の通りであります。
経営成績
受注高
この結果、当連結会計年度末の受注残高は、為替変動による修正及び契約金額の修正・変更を加え、1兆2,159億円となりました。
なお、当連結会計年度の連結財政状態の概況は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は5,333億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ150億15百万円の減少となりました。これは主に現金預金が198億77百万円増加したものの、未収入金が326億73百万円減少、貸倒引当金が33億86百万円増加したことによるものであります。固定資産は1,609億30百万円となり、前連結会計年度末に比べ67億60百万円の増加となりました。これは主に有形固定資産が28億79百万円、無形固定資産が28億9百万円、投資その他の資産が10億72百万円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は6,942億74百万円となり、前連結会計年度末に比べ82億54百万円の減少となりました。
当連結会計年度末における流動負債は2,538億36百万円となり、前連結会計年度末に比べ567億81百万円の増加となりました。これは主に工事損失引当金が32億5百万円減少したものの、支払手形・工事未払金等が214億80百万円、1年内償還予定の社債が300億円、契約負債が前連結会計年度末の未成工事受入金と比較して90億49百万円増加したことによるものであります。固定負債は527億75百万円となり、前連結会計年度末に比べ350億82百万円の減少となりました。これは主に社債が300億円、長期借入金が52億87百万円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は3,066億12百万円となり、前連結会計年度末に比べ216億99百万円の増加となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は3,876億62百万円となり、前連結会計年度末に比べ299億53百万円の減少となりました。これは主に為替換算調整勘定が38億20百万円増加したものの、親会社株主に帰属する当期純損失を355億51百万円計上したことなどによるものであります。
この結果、自己資本比率は55.8%(前連結会計年度末は59.4%)となりました。
当連結会計年度の連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較し新規連結に伴う増加2億91百万円を含め、197億27百万円増加し、2,880億9百万円となりました。また、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失が272億60百万円になりましたが、未収入金の減少などにより、結果として193億11百万円の増加(前連結会計年度は124億67百万円の増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより76億95百万円の減少(前連結会計年度は135億20百万円の減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより1億48百万円の減少(前連結会計年度は1億96百万円の増加)となりました。
(注)金額は販売価格によっております。
(注)売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、以下のとおりであります。
(単位:百万円)
(注)1.当連結会計年度より集計区分及び受注残高の集計方法を変更しております。
2.総合エンジニアリング事業の「当連結会計年度末受注残高」は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用したこと等による調整額△27,519百万円、当連結会計年度において連結の範囲を変更したことによる「前連結会計年度末受注残高」における調整額△72百万円、当連結会計年度における為替換算による修正及び契約金額の修正・変更等による調整額63,531百万円を含んでいます。
3.その他の事業の「当連結会計年度末受注残高」は、当連結会計年度における為替換算による修正及び契約金額の修正・変更等による調整額△118百万円を含んでいます。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
「(1)経営成績等の状況の概要 ① 当連結会計年度の概況」に記載のとおり、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高4,284億1百万円(前期比1.3%減)、営業利益206億88百万円(前期比9.6%減)、経常利益300億28百万円(前期比17.7%増)、親会社株主に帰属する当期純損失355億51百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益51億41百万円)となりました。
売上高は、国内において複数の長期大型案件が工事序盤であったことから前連結会計年度と比較して減少しました。営業利益は、総合エンジニアリング事業の既存案件での採算改善があったものの、貸倒引当金の繰入により販売費及び一般管理費が増加したことにより、前連結会計年度と比較して減少しました。経常利益は、円安による為替差益、また受取配当金及び持分法投資利益が増加したことにより、前連結会計年度と比較して増加しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失としてイクシス関連損失を計上した結果、純損失となりました。
当連結会計年度のセグメント別の経営成績等の状況に関する分析・検討内容は以下のとおりです。
総合エンジニアリング事業
総合エンジニアリング事業では、北米での大型LNGプラント建設プロジェクトや中東での製油所近代化プロジェクト等が着実に進捗し、また多くの工事終盤案件が無事完工いたしました。しかしながら、国内において、長期大型案件が工事序盤であったこともあり売上高は前連結会計年度と比較して減少しました。セグメント利益は、貸倒引当金の繰り入れによる販売費及び一般管理費の増加により、前連結会計年度と比較して減少しました。
機能材製造事業
触媒分野においては、COVID-19のワクチン接種の進展に伴って回復基調にある世界経済の中で、燃料需要も徐々に回復するなどし、FCC触媒をはじめとする触媒の需要は回復しております。ファインケミカル分野においては、電磁鋼板及び自動車排ガス浄化触媒装置のサポート材向けのシリカゾル、化粧品材、オプト材の需要が回復しています。ファインセラミックス分野においては、半導体関連市場の需要拡大を背景に関連製品の需要が増加しました。また、電気自動車やハイブリッド車向け高熱伝導窒化ケイ素基板は、2020年に完成した新量産工場から出荷したサンプル品が顧客の認定評価に合格し、順次生産を拡大しております。この結果、機能材製造事業は前連結会計年度と比較して増収増益となりました。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、純損失を計上したものの、その主な要因である特別損失が当連結会計年度の出金を伴わないものであったため、営業活動によるキャッシュ・フローは193億11百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に固定資産の取得により76億95百万円のマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払や長期借入れによる収入があったこと等により1億48百万円のマイナスとなりました。この結果、現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度末から増加し2,880億9百万円となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりです。
(資金需要)
総合エンジニアリング事業は、キャッシュ・フローや採算の変動が大きく、プロジェクトの安定的な遂行のために十分な運転資金を必要としています。機能材製造事業では、主として製造設備の拡張・更新のための設備投資を効率的かつ継続的に行っています。また、中期経営計画「BSP2025」において計画している戦略投資を進めてまいります。
(資金調達)
当社グループは、資金需要に対して、営業活動によるキャッシュ・フローから得た資金及び手元資金に加え、状況に応じて有利子負債などによる調達資金を充当しています。有利子負債は、金融市場の環境等を鑑み、社債発行や金融機関からの借入など最適な手段によることとしております。なお、当社は株式会社日本格付研究所から信用格付を取得しており、報告書提出時点において長期発行体格付がA+、コマーシャルペーパーがJ-1となっております。
(財務戦略)
当社グループは、顧客からの信頼獲得及び長期にわたる大型プロジェクトの円滑な遂行の観点から、短期的な市場動向に左右されない強固な財務基盤を維持するとともに、戦略投資に対する機動的な資金調達余力を確保するため、自己資本比率については50%以上を安定的に維持することを目標としています。また、市場混乱時にも事業を継続するために十分な流動性を常時確保する方針としており、手元資金に加え取引金融機関とのコミットメントライン契約未使用枠300億円を有しています。手元資金については、効率的な運用・配分を実現するため、グループ内のキャッシュ・マネジメントの最適化に取組んでいます。当社は、戦略投資に機動的に対応しつつ強固な財務基盤を維持するとともに株主還元を着実に実施し、企業価値・株主価値の向上に努めてまいります。
(株主還元)
当社は、株主の皆様への利益還元を経営の重要課題として位置付けております。具体的な株主還元方針の内容については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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