研究開発活動

5【研究開発活動】

当社は、高度化・多様化するお客さまのニーズに応え、サステナブルな社会の実現に貢献するための研究開発を推進しております。また、継続的な成長を目指し、総合設備工事業の枠にとらわれない事業創出に向けた研究開発にも取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発の主な成果は以下のとおりです。子会社においては、研究開発活動は行われておりません。なお、研究開発費は1,076百万円でした。

 

(研究開発の内容)

(1)カーボンニュートラル社会の実現に貢献する研究

当社はCSV事業戦略のひとつとして、カーボンニュートラル社会を実現するZEB※1の普及に取り組んでいます。

これまでに、自社ビルでZEB技術を検証するために「エネフィス九州」、「エネフィス四国」を建設し、運用実態の評価を通じてZEB技術の有効性を研究してきました。2021年度は、これらの実績と数多くのZEB施工実績から得られたノウハウをもとに、寒冷地での完全ZEBを実現した「エネフィス北海道」を建設しました。

さらに、ZEBでありながらレジリエンス※2とWellness※3にも配慮した新たな自社ビルとして「新北陸支店」の建設にも着手しています。新北陸支店は、街並みに調和しつつ環境性能と働きやすさの両立を目指した次世代オフィスであり、金沢市SDGs未来都市計画にも合致する建物です。

ZEBやWellnessの具体的な実現手段として培った研究開発には、①自然の光と室内環境をシームレスに繋ぐ輝度制御システム、②執務者の知的生産活動を高めるバイオフィリックデザイン※4、③個々人の感じ方を全体空調にフィードバックするクリマチェア連動制御などがあります。

今後は、更にサステナブルな社会の実現に向けた技術開発も進めてまいります。また、これまでのカーボンニュートラル建築の設計・施工・評価に対する取り組みを、今後のZEB設計・施工に活用するだけでなく社内外へ広く発表することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

 

※1 ZEB:net Zero Energy Buildingの略。建物で消費するエネルギーを再生可能エネルギーでまかなう建物。
正味の消費エネルギーがゼロとなる建物を『 ZEB 』(完全なZEB)と呼ぶ。

※2 レジリエンス:変化への適応性や事業回復性能に優れること。

※3 WELLNESS:建物利用者の健康性、快適性。

※4 バイオフィリックデザイン:建築環境における自然とのつながりの向上を図った空間デザインの手法。

 

(2)AI※5/IoT技術を活用したスマートビル制御システムの開発

建築設備をIoT化し、自動制御装置をソフトウェア化してクラウドに実装するスマートビル制御システム「リモビス®」を開発し、商用サービスの受注を開始しました。

リモビスの機能向上に向けた研究開発として、リモビスで得られる建物運用に関するビッグデータを利用したデジタルツイン※6の構築を進めています。現実世界の建築設備の制御を高精度かつ高速に最適化するために、クラウド上でAIを活用してリモビスで制御します。AIの開発については、専門知識を有する大学と共同研究を実施することで開発のスピードアップと精度向上を図っています。

2021年度は、構築中のデジタルツインに関するベンチマークテストを実施し、その効果検証を進めています。さらに、オフィスにおける環境や執務者の行動をIoTで見える化し、ABW※7に移行しつつある働き方における快適空間の創造にも取り組んでいます。

 

※5 AI:Artificial Intelligenceの略。

これまで人間にしかできなかった知的行為を機械に代行させるためのアルゴリズム(人工知能)。

※6 デジタルツイン:フィジカル(現実)空間にあるシステムの情報を、IoTなどを活用してサイバー(仮想)空間に送り、サイ

バー空間にフィジカル空間と同じシステムを再現すること。

※7 ABW:Activity Based Working の略。「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方のこと。

 

(3)DXによる現場の施工効率化に関する研究

労働人口の減少に伴い人手不足となっている建設業の状況を打破するため、ICTなどの先端技術を活用した施工効率化の研究開発を推進しています。これまでに、全方位(360度)カメラを用いた現場状況の3次元記録手法を開発し、本開発技術を「Construction Visualizer 4D(略称ConVis4D)」と名付けました。

この技術は、高価な撮影装置を必要とせず、技術者の熟練度を必要としないことから普及が見込まれており、①現場の進捗状況の記録にかかる労務負荷削減、②遠方支援者との情報共有の促進、③顧客に伝わり易いリアリティのある改修提案、などに活用されており、特許庁での活用に対し国土交通省よりi-Construction大賞の優秀賞を受賞しました。

2021年度は、ConVis4Dが広く施工現場で活用されることを目的に、汎用性を高めるための撮影方法について研究を推進しました。また、多くの社内説明会や現場での撮影指導を積み重ねたことにより、改修工事を主体に普及が進んでいます。

今後は、専門知識を有する大学の協力を得ながら、更なる3Dモデル化精度の向上を目指すとともに、DX技術を有する別の大学の協力も得ながら、この3DモデルデータをBIMソフトで図面化する技術として発展させ、全社的なDX(ICT技術の活用)による施工効率化を推進してまいります。

 

(4)再生医療分野向け独自技術開発

再生医療は、これまで治療が困難であった病気や怪我に対する新しい医療として注目されております。しかし、再生医療等製品の製造には品質管理や環境整備には多大なコストがかかるため、治療費が高額になり普及を阻害する要因となっています。再生医療が普及するためには、有効性と安全性を確保したうえでコストを低減する必要があります。当社は、CSV事業創出の一環としてこの課題の解決に取り組んでいます。

これまでに、設備設計で培った気流制御技術を生かし、低コストで使いやすい細胞製造施設や装置に関する研究を行っており、局所的にクリーン環境を構築できる「エアバリアブース®」や細胞調製に必要なクリーン環境をコンパクトにまとめた「オールインワンCPユニット®」を開発しました。そして、当分野の著名な研究者との共同研究を推進し、さらに新たに設立した子会社と連携することで臨床用の製品を製造する施設の中で課題の解決と検証を進めています。

 

(5)超臨界二酸化炭素※8を用いた産業用ケミカルエアフィルタの再生に関する実用化開発

SDGsの達成に貢献する廃棄物削減の取り組みとして、超臨界二酸化炭素を洗浄溶媒とする産業用ケミカルエアフィルタのリユース事業(フィルタ再生事業)に取り組んでいます。フィルタ再生事業は、実用化してから着実に再生数を増やしており、多くの顧客の廃棄物削減に貢献しています。

現在は更なる社会貢献を目指し、海外への事業展開も進めています。海外への事業展開、並びに昨今の半導体の情勢を鑑みると、相当数の処理量増加が見込まれるため、フィルタの再生効率向上は喫緊の課題となってきます。

当社は、これまで専門知識を有する大学や研究機関とともに再生効率を上げる共同研究を実施し、実際のプラントでその効果を検証してまいりました。今後は更なる効率化に関する研究開発を続けるとともに、当技術の他分野への応用などを検討していく予定です。

 

※8 超臨界二酸化炭素:加圧・加熱により、超臨界状態になった二酸化炭素。液体と気体の両方の性質を持つ超臨界二酸化炭素は

   産業用ケミカルフィルタの洗浄に効果的。

 

 

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