文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、「信を万事の本と為す」と「時代への適合」を社是とし、「健康で豊かな生活づくりに貢献する」ことを企業理念として、事業を進め業容の拡大を図ってまいりました。また、グループ各社は「健康」を常に念頭においた製品やサービスの提供に努め、「信頼」を築き上げる決意をこめて「健康と信頼をお届けする」をコーポレートスローガンとしております。
これらの基本的な理念を踏まえて、当社グループは長期的な企業価値の極大化を経営の基本方針とし、コア事業と成長事業へ重点的に資源配分を行いつつ、グループ経営を展開しております。
また、内部統制システムへの取組み、コンプライアンスの徹底、食品安全、環境保全、社会貢献活動等の社会的責任を果たしつつ自己革新を進め、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、株主、顧客、取引先、社員、社会等の各ステークホルダーから積極的に支持され続けるグループであるべく努力を重ねております。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、長期ビジョン「NNI“Compass for the Future”新しいステージに向けて ~ 総合力の発揮とモデルチェンジ」で掲げる目指す姿“未来に向かって、「健康」を支え「食のインフラ」を担うグローバル展開企業”の実現に向けて、ニュー・ニッシン・イノベーション活動を推進しております。当社グループの「総合力」を発揮する仕組みを構築するとともに「顧客志向」を改めて徹底し、「既存事業のモデルチェンジ」と「グループの事業ポートフォリオ強化」を柱とした成長戦略の推進、及びそれを支える経営機能の一層の強化等を図ってまいります。
また、「当社創業以来の価値観」を共有して下さる株主の皆様に長期的スタンスで安定的に利益還元を行ってまいります。連結ベースでの配当性向の基準を40%以上とし、自己株式取得等はキャッシュ・フローや戦略的な投資資金需要を勘案した上で機動的に行ってまいりたいと考えております。
当社グループは、長期ビジョン実現のために策定したこれらの戦略を遂行し、利益成長と資本政策の両面から更なる1株当たり当期純利益(EPS)の成長を図るとともに資本の効率性と財務の安定性のバランスを取りながら、資本コストを上回る自己資本利益率(ROE)の確保・向上に努めてまいります。
また、企業価値を高める規律としてのガバナンス(G)の強化、事業の持続可能性に関わる環境(E)・社会(S)への貢献を事業戦略と深く関連させたサステナビリティ経営を推進していくことで、「企業理念の実現」と「企業価値の極大化」をより強く結び付け、あらゆるステークホルダーの皆様から積極的に支持され続ける企業グループとして発展を目指してまいります。
なお、現在、2022年を開始年度とする新たな中期経営計画の検討を進めておりますが、本年6月に就任した新社長のもと、十分に議論した上で策定する予定であります。
(3) 経営環境及び対処すべき課題等
国内外の食品業界では、依然として新型コロナウイルス感染症が拡大と収束を繰り返す中、生活様式や消費者マインドが変化し、需要にも影響を与えているものの、経済活動は徐々に平常化に向かっております。一方、世界的な食糧インフレが進行する中、ウクライナ情勢に起因して穀物・資源価格が急騰し、為替相場も円安が加速する等、事業環境にも大きく影響が及んでおります。また、国内では、国際貿易協定の発効等により自由化に向けた潮流が加速していくことが予想されます。
そのような中、当社グループでは、小麦粉をはじめとする「食」の安定供給を引き続き確保し、各事業におきまして安全・安心な製品をお届けするという使命を果たしてまいります。また、各事業では、食糧インフレ等による原材料コスト等の大幅な増加への対応を最優先課題として取り組んでまいります。併せて、事業競争力(「売る力」「稼ぐ力」)の強化に向け、デジタルトランスフォーメーションを推進し、業務のデジタル化や事業モデルの変革等に取り組むとともに、国内・海外を含めた事業会社間の連携を強化し、グループとしての「総合力」をさらに発揮して、長期ビジョンの実現を目指してまいります。社会課題や技術革新がもたらす環境変化に向き合い、持続的な成長を実現するとともに、自らが創出する付加価値を通じて社会に貢献する循環を作り上げることで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。なお、増加するサイバー攻撃や不正アクセス等のシステム関連のリスクに対しては、セキュリティ機能や危機管理体制を強化することで、グループ全体のセキュリティレベルの向上を図っております。
① 国内事業戦略
製粉事業では、お客様のニーズを的確に捉えた製品の開発や価値営業の推進によりお客様との関係を一層強化し、引き続き安全・安心な製品の安定供給に努めてまいります。なお、本年6月に、日清製粉株式会社が熊本製粉株式会社の発行済株式の85%を、関係当局の承認が得られることを条件として取得することを決定いたしました。シナジー効果によるコスト競争力と市場への適応力の増進を図り、事業競争力を一層高めてまいります。また、2025年5月頃稼働予定で岡山県倉敷市水島地区に新工場を建設し、併せて岡山工場・坂出工場を閉鎖することを昨年10月に決定いたしました。本施策により、コスト競争力を強化するとともに、地震等の万一の被害に備えてBCP(事業継続計画)対応を強化し、主要食糧である小麦粉の安定供給を図ってまいります。
加工食品事業では、生活者のニーズに対応すべく、「簡単・便利」「本格」「健康」を軸とした製品の付加価値化に加え、SDGs、Z世代にも対応した新製品の投入や積極的な販売促進施策等によるブランドロイヤリティの向上、及び成長分野である冷凍食品事業の一層の拡大を図るなど、事業ポートフォリオの最適化に取り組んでまいります。また、本年1月から日清フーズ株式会社の商号を株式会社日清製粉ウェルナに変更いたしました。ブランド戦略投資により露出度を高め、認知度の定着、拡大を図るとともに、国内外への新たなブランド戦略によりグローバル展開企業を目指してまいります。
中食・惣菜事業では、当社グループの研究開発力を活かした美味しさの追求とこれまで培ってきた技術力による高い生産効率の実現を両立する高度に事業化されたビジネスモデルへの転換を図ってまいります。また、中食・惣菜事業の全体最適を考えた機動的な戦略判断を行うとともにマネジメントの一層の強化を図るため、本年7月に中食・惣菜事業を統括する中間持株会社を設立することを、本年4月に決定いたしました。今後は中間持株会社が中心となり、傘下子会社の経営資源の有効活用や各社の経営管理・戦略立案への関与・支援を行うとともに、リスク管理・ガバナンスの強化等、競争力ある事業体制を構築してまいります。
酵母・バイオ、健康食品、エンジニアリング、メッシュクロス等の各事業では、製品開発・技術開発を進め、各業界において存在感のある事業群として成長を図ってまいります。
その他、国内での人手不足問題にもロボットやAIの活用、自動化等の新技術による業務プロセス改善等により適切に対応してまいります。
② 海外事業戦略
製粉事業では、当社グループの強みである製粉技術、提案力を活かした拡販に取り組み、現地市場での更なる成長を図るとともに、戦略投資を積極的に推進し、海外事業の基盤拡大に取り組んでまいります。
加工食品事業では、アジア市場で成長が見込まれる業務用プレミックス事業をさらに拡大してまいります。また、生産面ではグローバルな最適生産体制をベースにコスト競争力を強化するとともに、当社グループが長年培ってきた製造技術や高度な品質管理ノウハウを活かし、パスタ、パスタソース、冷凍食品等の更なる事業拡大に取り組んでまいります。
酵母・バイオ事業では、製パン用イーストの需要が高まっているインド市場に参入すべく、本年夏頃からの本格稼働を目指してOriental Yeast India Pvt. Ltd.がイースト工場の立ち上げを進めており、高品質な製品を現地市場に供給することで、事業の拡大を目指してまいります。
その他、製粉、食品、ベーカリー関連ビジネスを中心に、新たな領域での事業拡大を自社独自に又はM&A、アライアンスによりスピード感を持って推進してまいります。
③ 研究開発戦略、コスト戦略
当社グループは、お客様の視点に立った新製品開発と新しい領域の基礎・基盤技術の創出に取り組んでおります。新製品開発につきましては、新規性、独自性があり、お客様にとって付加価値の高い新製品を継続的に開発してまいります。研究面におきましては、研究成果の実用化、事業化推進のため、重点研究領域を明確にするとともに、事業戦略に即した研究テーマを設定するなど効率化、スピード化を図ってまいります。さらに、自動化技術の活用による更なる効率化も検討し、人手不足問題等にも対応してまいります。
また、今後も大きな変動が想定される原料及び燃料相場への対応として、調達・生産コストの低減を進めるとともに、変動するコストに適切に対応できる事業基盤を構築してまいります。
④ 麦政策等の制度変更に向けた取組み
TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、日EU・EPA、並びに日米貿易協定の発効により、米国産・カナダ産・豪州産小麦のマークアップ(政府が輸入する際に徴収している差益)の引き下げが順次実施されております。一方で、日英包括的経済連携協定やRCEP(地域的な包括的経済連携)協定が発効し、また、TPP11協定に英国、中国等が加入申請するなど国際貿易協定は広がりを見せており、小麦関連製品の国境措置が低下し、関係国からの輸入製品との競争激化が想定されます。自由化に向けた潮流が加速していく中、情勢の変化を適切に見極めながら、引き続きグローバル競争で勝ち抜くべく国内外での強固な企業体質を構築してまいります。
⑤ 企業の社会的責任への取組み
当社グループは、従前より、持続可能な社会の実現に貢献し、社会にとって真に必要な企業グループであり続けるべく、「日清製粉グループの企業行動規範及び社員行動指針」並びに「日清製粉グループCSRの考え方」を実践することで、企業の社会的責任(CSR)を果たしてきております。また、取締役会のもとに社会委員会を設置し、グループのCSRの取組みを推進しております。
ガバナンスの強化につきましては、監査等委員会設置会社として、健全で実効性のあるコーポレート・ガバナンス体制を構築、維持するとともに、コンプライアンスにつきましては、関連法規や社会規範及び社内規程・ルールを遵守し、公正かつ自由な競争の中で事業の発展を図っております。内部統制においても、金融商品取引法により求められる範囲を超え、当社グループ全体に広く内部統制システムの整備を行い、専任組織によるモニタリングにより、その維持、改善に努めております。
また、安全で健康的な食の提供、持続可能な原材料の調達推進、気候変動及び水問題への対応、食品廃棄物・容器包装廃棄物への対応、働きがいのある労働環境の確保等を内容とする「CSR重要課題(マテリアリティ)」を2019年に特定し、経営の最重要課題の一つと位置付けてグループ全社で取り組んでおります。さらに、取組みの重要性が増している人権課題への対応につきましては、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて制定した「日清製粉グループ人権方針」の実践として、サプライチェーンを含む主要事業の人権デュー・ディリジェンスを進めております。
<安全で健康的な食の提供、持続可能な原材料の調達推進>
安全・安心な製品をお届けするために、消費者の視点からの品質保証を第一とした品質保証体制を構築しており、国際的なマネジメントシステムの認証を取得・維持することで製品安全体制の継続的な改善、強化に取り組んでおります。また、CR(Consumer Relations)室が、消費者の皆様の声や消費者行政関連の情報を積極的に収集し、対応の充実を図っております。さらには、小麦粉をはじめとする「食」の安定供給を確保するために、BCPによる災害や感染症等への備えの拡充にも努めており、新型コロナウイルス感染症への対応においても早期にBCPを発動し、感染対策を徹底し、事業活動の維持を図っております。
<気候変動及び水問題への対応、食品廃棄物・容器包装廃棄物への対応>
昨年8月に従来の環境目標を見直し、新たな中長期目標を設定するとともに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同、及びTCFDコンソーシアムへの参加を表明いたしました。また、環境課題への取組みとして、工場での省エネ設備の導入、生産効率の改善や再生可能エネルギーの導入、他社との共同配送等による環境負荷の低減などを進めております。さらには、製品開発においても、調理段階まで想定したエネルギー低減や化石燃料由来のプラスチックの削減・減量化、バイオマス素材の活用、リサイクル性の向上等、環境に配慮した製品の開発を行っております。
■環境課題中長期目標
1)CO₂排出量削減
2050年目標 |
・グループの自社拠点でCO₂排出量実質ゼロを目指す |
・サプライチェーンにおけるCO₂排出量の削減に取り組む |
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2030年度目標 |
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・グループの自社拠点でCO₂排出量50%削減を目指す(2013年度比) |
2)食品廃棄物削減
2030年度目標 |
・原料調達からお客様納品までの食品廃棄物の50%以上削減を目指す(2016年度比) ・サプライチェーン各段階の取引先と共に食品廃棄物削減に取り組む |
3)容器包装廃棄物削減
2030年度目標 |
・化石燃料由来のプラスチック使用量の25%以上削減を目指す(2019年度比) ・環境に配慮した設計などプラスチック資源の循環を促進する ・容器包装へのバイオマスプラスチック、再生プラスチック、再生紙、 FSC認証紙等の持続可能な包装資材の使用を推進する |
4)水使用量削減
2040年度目標 |
・工場の水使用量原単位30%削減を目指す(2021年度比) |
<働きがいのある労働環境の確保>
社員一人ひとりが能力を発揮し、成長を実感できる人材育成を目指し、次世代経営人材育成のための「事業経営者育成プログラム」、専門性の高い技術者育成のための「キャリア・ディベロップメント・プログラム」、社員が各階層で必要なスキルやマインド、能力を高めていくための「階層別研修」等の各種研修プログラムを実施しております。また、従業員の労働災害の未然防止対策強化を図るとともに、「健康」で「活き活き」と働くことを実現するために、メンタルヘルスケアや健康増進にも力を入れ、社長をトップとして、健康経営を推進しております。2021年度には経済産業省が創設した認定制度である「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定を2年連続で取得いたしました。その他、柔軟な働き方を可能とする制度改正など、多様な働き方の実現に向けた取組みも進めております。
社会貢献活動につきましては、継続的に震災被災地の復興支援、「製粉ミュージアム」による地域観光資源や教育資産としての地域貢献等を行っております。
当社グループは、このような企業の社会的責任への取組みを、今後も継続してまいります。
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