1.経営成績等の状況の概要
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下「Non-GAAP指標」といいます。)及びIFRSに基づく指標(以下「IFRS指標」といいます。)の双方によって、連結経営成績を開示いたします。
Non-GAAPに基づく営業利益(以下「Non-GAAP営業利益」といいます。)は、IFRSに基づく営業利益(以下「IFRS営業利益」といいます。)から、当社グループが定める非経常的な項目を控除したものです。経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で、有益な情報を提供できると判断しております。なお、非経常的な項目とは、一定のルールに基づき将来見通し作成の観点から除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。
①当 連結会計年度 の 財政状態及び経営成績
2020年12月期の連結業績(2020年1月1日~2020年12月31日)
Non-GAAPベースの連結経営成績 |
(%表示は、対前期増減率 ) |
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売上収益 |
営業利益 |
税引前利益 |
当期利益 |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 |
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百万円 |
% |
百万円 |
% |
百万円 |
% |
百万円 |
% |
百万円 |
% |
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2020年12月期 |
21,763 |
△7.5 |
2,698 |
△20.9 |
2,661 |
△21.7 |
1,881 |
△21.6 |
1,728 |
△26.1 |
|
2019年12月期 |
23,524 |
△11.9 |
3,410 |
△11.5 |
3,399 |
△12.1 |
2,400 |
△15.9 |
2,340 |
△16.9 |
|
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基本的 1株当たり 当期利益 |
希薄化後 1株当たり 当期利益 |
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円 銭 |
円 銭 |
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2020年12月期 |
40.28 |
38.20 |
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2019年12月期 |
60.60 |
54.85 |
当連結会計年度における世界のM&A市場は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴う実体経済減速の影響を受け、案件完了ベース(金額)において5%減少いたしまし た(リフィニティブ調べ)。このような市場環境の中、当社グループの売上収益も前連結会計年度比7.5%の減少となりましたが、 当連結会計年度の経営成績は、売上収益21,763百万円、営業利益2,698百万円と当初の通期業績予想を大幅に上回る結果となりました。
売上収益については、通期では減少したものの下半期については前連結会計年度を 上回る水準となっております。とりわけ、 テクノロジー・デジタル関連分野のM&A案件では、対面での交渉を必要とせず進行する案件が一般的になりつつあり、当社グループもテクノロジー・デジタル関連分野を中心に売上収益が改善いたしました。また、 当社グループでは、 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴う経営環境への影響が懸念される中、テレワーク体制を整え、クライアントとのコミュニケーションを円滑に行うためのビデオ会議ツールを導入するなど各種施策を実行しており、下半期以降は、こうした各種施策が当社グループの売上収益回復に寄与したものと考えております。
地域別では、欧州地域、米国地域の売上収益は、 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を背景にした業務のデジタル化の進展を 受けて、 下半期以降 テクノロジー・デジタル関連分野のM&A案件が急増したことから 大幅に改善し、通期においてもそれぞれ前連結会計年度を上回る 結果となりました 。
一方、 日本地域の売上収益は、アセットマネジメント事業において、国内PE投資に関連するLBOファイナンスの増加による管理報酬増に伴い大幅に増加したものの、 アドバイザリー事業のコア領域である日本企業によるクロスボーダー買収案件に遅延が生じたことなどから、 前連結会計年度 を下回る結果となりました 。
なお、 日本企業によるクロスボーダー買収案件は、足下で再開する案件が増加する一方で売却案件の受注も増加しており、日本地域においても徐々に回復の兆しが見られております。
コスト面では 、 前連結会計年度比 で各種費用が減少したことから 売上 収益 減少の影響は一部相殺 されております。また、 上半期 に損失を計上した営業損益については、 当連結会計年度において 前期比20 . 9 %の減少となったものの、 下半期以降、欧米を中心に大幅に業績が回復し、 2,698百万円の営業 利益 を計上いたしました 。
当連結会計年度における当社グループの経営成績は、上記のとおり回復基調にあり、受注に関しても新規受注が引き続き増加傾向にあります。とりわけ、欧州地域にて前連結会計年度比で大幅に増加しているほか、日本地域においても、東京ドームの三井不動産による公開買付案件など大型案件が2021年上半期にクローズする見込みであることに加え、その他上場企業を対象にしたいわゆる支配権争奪型のM&A案件についても大型案件を既に獲得しており、来期以降、当社グループの売上収益に寄与する見通しです。また、受注残についても、グローバル全体で前年同期を上回る高水準を維持しております 。
当社グループでは、 来期 における新型コロナウイルス感染症の収束については引き続き保守的な見方を継続しており、ワクチン接種の拡大が当初の期待ほど順調に進まず実体経済への影響が継続する可能性もあると考えております。一方で、欧米において 対面での交渉を必要とせず進行可能なテクノロジー・デジタル関連案件の受注が増加していることや、それ以外の分野の案件についても世界的な経済見通しの改善に伴い増加していることなどから、来期以降も当社グループの売上収益については回復基調が継続するものと見ております。
このよう な 経営環境の中にあって、当社グループでは、来期に向けた成長戦略の一環として引き続き下記3分野に注力する方針です。
第一に、テクノロジー分野の案件開拓・成約に注力いたします。テクノロジー分野は経験、知見、実績全てにおいて、当社グループが最も強みを擁する分野であるばかりでなく、 新型コロナウイルス感染症が案件の成約、進行に及ぼす影響も少ない分野であると考えております。当社グループでは、 北欧(スカンディナビア)、ベネルクス、英国及びその他の欧州地域で事業を展開する独立系M&Aアドバイザリーファームであるステラ社 (現GCA Altium Nordics Limited)の全事業の買収を2020年4月6日付で完了しておりますが、ステラ社は、特に環境テクノロジー及びメディア・セクターに強みを有しており、テクノロジー等の成長セクターに注力する欧米地域との戦略的親和性を有しております。また、当社のグローバルネットワークとの地理的な補完関係も有することから、当分野に注力するに当たって、当社グループとのシナジーが大いに期待できるものと考えております。
第二に、事業承継分野の 案件開拓・成約に注力いたします。 当社グループでは、日々変動する経営環境の中、中小企業の経営者の方々もその変化に柔軟に対応されるために今後 M&Aによる事業承継を選択される機会が増加 し 、その際に当社グループが培ってきた知見、経験をもって貢献できるものと考えております。今後も 事業承継案件が中心となる英国3拠点、チューリッヒ、ミュンヘン、ミラノ、パリ及びGCAサクセション株式会社を中心に当分野の成長に人材を投入する方針です。
第三に、当社グループが有する地域毎の特性を活かした様々なアドバイザリーサービスに注力いたします。当社グループはこれまで、米国Savvianとの統合、欧州Altiumグループとの統合及びステラ社買収を通じて成長して参りましたが、各地域では M&A アドバイザリーサービス事業以外にも得意とするサービスラインを有しております。今後もそういった各地域の特性を活かしたサービスの強化に努め、主軸である M&A アドバイザリーサービス事業を補完していきたいと考えております。
具体的には、欧州におけるデットアドバイザリーサービス事業、米国におけるプライベートキャピタル事業(スタートアップ企業支援のためのファンドレイジング)、日本における戦略コンサルティング事業、日本のベンチャー企業向けのファンドレイジング事業に注力する方針です。中でも、欧州におけるデットアドバイザリーサービス事業は新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、足下で案件が増加傾向にあります。当連結会計年度の 売上 収益にも寄与していることから、今後も更なる強化に取り組みたいと考えております。
当社グループでは、世界的潮流に倣い、M&A市場においてもESG(環境、社会、ガバナンス)の視点が重要であり、M&Aに関する助言業務を通じ地球環境の改善や社会問題の解決、ガバナンス強化に貢献していくべきであると考えております。具体的には、温暖化対策としての再生可能エネルギーの利用や大気汚染・土壌汚染などの地球環境問題の改善につながる テクノロジー分野のM&A、社会問題化している中小企業の事業承継問題の解決につながる事業承継型のM&A、新型コロナウイルス治療薬を含む革新的な医薬品開発や医薬品アクセスの向上につながるヘルスケア分野のM&A など、ESGの観点からM&Aが社会に貢献できる分野は多岐に亘ると当社グループでは考えております。こうしたM&A案件の成約に貢献することで、ESGの観点からも社会的価値を創出する会社となることを目指す方針です。
なお、当連結会計年度において、案件を業界別にみた場合、広義のテクノロジー業界の完了案件(金額)はグループ全体の8割程度を占めております。また、案件を性質別にみた場合、事業承継関連分野の完了案件(金額)はグループ全体の3割程度を占めております。
以上により、当連結会計年度の業績は、Non-GAAPベースで売上収益21,763百万円(前連結会計年度比7.5%減)、営業利益2,698百万円(同20.9%減)、税引前利益2,661百万円(同21.7%減)、当期利益1,881百万円(同21.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,728百万円(同26.1%減)となりました。
また、当連結会計年度末における資産合計は37,324百万円(前連結会計年度末比646百万円増)、負債合計は14,940百万円(同301百万円増)、資本合計は22,384百万円(同345百万円増)となりました。
②Non-GAAP指標からIFRS指標への調整
当連結会計年度において、Non-GAAP指標にて調整される非経常的な項目には、 ステラ社 との経営統合により発生した株式報酬費用等 937 百万円を含めております。Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整は以下の表のとおりであります。また、Non-GAAP売上収益からは、 M&A 案件に直接関連する外注費138百万円を控除しております。
(単位:百万円)
|
2020年12月期 |
2019年12月期 |
前期比 |
増減率(%) |
Non-GAAP営業利益 |
2,698 |
3,410 |
△712 |
△20.9 |
非経常的な項目 |
△937 |
△26 |
△910 |
- |
IFRS 営業利益 |
1,760 |
3,383 |
△1,622 |
△48.0 |
また、当社グループはアセットマネジメント事業においてメザニンファンドを運営しております。 当連結会計年度 末におけるファンド投資残高は以下のとおりです。
( メザニンファンド投資残高)
|
営業投資有価証券 |
営業貸付金 |
合計 |
|||
当期末 |
件 |
百万円 |
件 |
百万円 |
件 |
百万円 |
ファンドによる投資(件数・金額) |
3 |
9,308 |
6 |
31,711 |
8 |
41,019 |
注)営業投資有価証券及び営業貸付金双方の投資を実施している投資先が1件存在する為、投資先合計件数は8件となります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は16,773百万円(前連結会計年度末は14,645百万円)となりました。各キャッシュ・フローは次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得た資金は2,434百万円(前連結会計年度は2,253百万円の収入)となりました。これは、税引前利益1,796百万円を計上したこと及び、営業債権及びその他の債権の減少額が643百万円、その他の流動負債の減少額が1,024百万円あったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果得た資金は186百万円(前連結会計年度は220百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が91百万円及び子会社株式の取得による収入が260百万円あったことによるものです。なお、今後予定する重要な資本的支出はありません。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は434百万円(前連結会計年度は2,949百万円の支出)となりました。配当金の支払額が1,453百万円、長期借入れによる収入が2,381百万円、長期借入金の返済による支出が457百万円及びリース負債の返済による支出が933百万円あったことによるものであります。
(3)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) |
前年同期比(%) |
アドバイザリー事業(百万円) |
20,708 |
90.3 |
アセットマネジメント事業(百万円) |
1,193 |
151.7 |
合計(百万円) |
21,901 |
92.3 |
(注)1.金額はセグメント間の内部相殺前の数値によっております。
2.総販売実績に対する割合が10%を超える販売先はございません。
3.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討結果は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)財政状態の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度末における資産合計は37,324百万円となり、前連結会計年度末比646百万円の増加となりました。その主な要因は、現金及び現金同等物の増加額2,128百万円、営業債権及びその他の債権の減少額640百万円及び有形固定資産の減少額722百万円によるものであります。なお、報告セグメント別の内訳は、アドバイザリー事業35,804百万円、アセットマネジメント事業1,525百万円(セグメント間調整△6百万円)であり、90%超がアドバイザリー事業に属するものであります。
当連結会計年度末における負債合計は14,940百万円(同301百万円増)となりました。その主な要因は借入金の増加額1,927百万円及び未払賞与等を含むその他の流動負債の減少額1,113百万円によるものであります。
当連結会計年度末における資本合計は22,384百万円(同345百万円増)となりました。その主な要因は、当期利益の計上1,016百万円、新株予約権の行使等の株式報酬取引による増加810百万円及び配当金1,454百万円によるものであります。
(2)経営成績の状況に関する分析・検討内容
① 売上収益
当社グループでは、主な成長性及び収益性の指標として、売上収益を経営指標としております。
アドバイザリー事業におきましては、米国及び欧州については、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を背景に世界的に業務のデジタル化が進んだことを受けて、下半期以降、テクノロジー・デジタル関連分野のM&A案件が急増したことから売上収益が大幅に改善し、前連結会計年度比でも増加いたしました。一方、日本の売上収益については、アドバイザリー事業のコア領域である日本企業によるクロスボーダー買収案件に遅延が生じたことなどから、前連結会計年度比で減少する結果となりました。
この結果、アドバイザリー事業の売上収益は20,708百万円(前連結会計年度比9.7%減)となりました。売上収益を所在地別に見ると、日本においては4,831百万円(同38.9%減)、米国においては7,235百万円(同11.8%増)、欧州においては8,545百万円(同0.4%増)、その他地域においては95百万円(同145.3%増)となりました。また、売上収益から売上原価・販売費及び一般管理費を控除したセグメント利益は1,026百万円(同67.8%減)となりました。
アセットマネジメント事業におきましては、国内PE投資に関連するLBOファイナンスの増加による投資残高増加により、MCo株式会社が運営するファンドにおける管理報酬等が増加した結果、売上収益は1,193百万円(前連結会計年度比51.7%増)、セグメント利益は582百万円(同153.0%増)となりました。
上記の結果、当連結会計年度の売上収益は21,901百万円(同7.7%減)となりました。
② 営業利益
売上原価及び販売費及び一般管理費は、主に売上原価における賞与及び旅費交通費の減少及び販売費及び一般管理費における支払手数料等の増加により、それぞれ16,859百万円(前連結会計年度比230百万円減)、3,432百万円(同226百万円増)となりました。上記にその他の営業収益225百万円及びその他の営業費用73百万円を計上した結果、営業利益は1,760百万円(同48.0%減)となりました。
③ 当期利益
金融収益は受取利息及び金融商品評価益の計上により140百万円(前連結会計年度比59百万円増)、金融費用は支払利息の計上により104百万円(同13百万円増)となりました。これに法人所得税費用780百万円を計上した結果、当期利益は1,016百万円(同57.2%減)となりました。
④ 親会社の所有者に帰属する当期利益
非支配持分に帰属する当期利益152百万円を計上した結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は864百万円(前連結会計年度比62.7%減)、基本的1株当たり当期利益は20円14銭となりました。
(3)重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」に記載しております。
(4) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
資金の流動性の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態 経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社グループの資金使途は主として人材への投資であり、重要な資本的支出はありません。また、必要資金は自己資金のほか必要により借入により調達しており、十分な手元流動性を確保しております。
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