1.経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
(1)財政状態
当連結会計年度における財政状態は、資産合計については、前連結会計年度末と比べ435百万円増加し、15,716百万円(2.9%増)となりました。負債合計については、前連結会計年度末と比べ394百万円減少し、9,173百万円(4.1%減)となりました。純資産合計については、前連結会計年度末と比べ830百万円増加し、6,543百万円(14.5%増)となりました。
(2)経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高は過去最高となる11,555百万円(前期比12.4%増)となりました。営業利益及び経常利益については、新型コロナウイルス感染症の流行の兆しを見せた2020年3月期の利益水準を回復し、営業利益は1,085百万円(前期比139.5%増)、経常利益は外貨預金等に為替差益100百万円等が発生したため1,183百万円(前期比101.1%増)となりました。
当社グループは日本発のグローバルCROとして日亜米欧など18か国に拠点を展開しており、当連結会計年度の経営環境は、新型コロナウイルス感染症の状況やワクチン接種の進捗状況によって地域間で差異が生じました。しかし、米国は当第2四半期から、欧州は当第3四半期から、日本・アジア地域は当第4四半期から業績が正常化するとの期初における想定どおり、日本事業の復調に加え、米国、欧州事業の業績がコロナ前の正常な成長軌道に回復したことにより、当社グループの業績は、2021年10月以降、過半の月で月次の連結売上高が10億円を超えるなど好調に推移しました。また、営業利益及び経常利益については、受注の増加による稼働率向上により、IT投資等の追加費用が発生したものの、グループ全体で対前期比増益となりました。
グローバル共同治験や複数国での海外案件について、日本のみならず欧州、米国、アジア発のグローバル案件の獲得が増えつつあり、グループ全体の収益向上に寄与し始めています。当社グループが目指してきた日本・アジア、欧州、米国3極でのグローバル・コラボレーション及びグローバル・ワンストップサービスの提供によるグローバル・シナジーが次の段階に進み始めたものと考えております。
次に、各地域の状況は下記のとおりです。
米国においては、7月以降デルタ株の感染が急速に拡大したものの、ワクチン接種が進んだことや重症化率/死亡率の低いオミクロン株への置換が進んだことなどから経済活動は改善しました。これに伴い、当社の米国事業においては、既存・新規の受注案件を順調に消化し、売上高、営業利益が過去最高を記録しました。この結果、前期比で大幅な増収・営業増益となりました。また、直近では米国発の大型の米欧試験の受注を獲得するなど、米国市場の新薬開発は旺盛であり、営業部門の強化も含め引き続き米国市場の深耕に注力し、持続的な成長を図ってまいります。
欧州地域においては、当社の主要拠点国であるドイツ、フランス、スペイン等で米国同様に経済活動の改善傾向が続き、既存の受注案件を順調に消化し、さらに、複数の新規案件の売上貢献などにより当期の売上高、営業利益は過去最高を記録しました。この結果、前期と比較して業績は大きく回復し、増収・営業増益となりました。特に欧州事業では前期からの営業部門強化が大きな成果を出しており、日亜米欧で実施される大型グローバル案件等を含む複数案件の受注を獲得し、当期及び来期以降の売上に貢献する受注残高が大きく増加しています。以上のように、欧州事業につきましては、イギリスなどを中心に先行的な人材投資等のコスト増加要因はありますが、新型コロナウイルス流行前の成長・拡大路線に戻りつつあります。
日本・アジア地域においては、日本では、上半期の受注活動の成果が売上に貢献したことに加え、ワクチン接種が進んだことやデルタ株が収束し重症化率/死亡率の低いオミクロン株への置換が進み経済活動が改善し受注案件の消化が進んだことや、原価の発生を抑制した結果、売上高は前期を僅かに下回ったものの、営業利益は大幅な増益となりました。
韓国では、ワクチン接種が進んだことから、治験環境が改善し、既存の受注案件を順調に消化したことや、当期獲得した複数案件が売上に貢献したことで、売上高、営業利益が過去最高を記録し、前期比で増収・営業増益となりました。
中国では、ワクチン接種が進み、治験環境が引き続き改善したことから受注案件を順調に消化し、前期比で売上高は増収となりましたが、先行的な人材投資等により営業利益は減益となりました。
台湾では、新型コロナウイルス感染拡大により新規案件の獲得が進まなかったこと等の影響により、前期比で減収・営業赤字となりました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高、営業利益及び経常利益ともに前期比で大幅な増収増益となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、Linical Accelovance America, Inc.(以下、LAA社)の前身であるAccelovance, Inc.が買収以前に受託していた案件に関する仲裁に関連する弁護士報酬や和解金の支払、サイバー攻撃に関連した対策費等が発生する一方、LAA社の売主との間で合併契約上の補償条項等に起因する紛争等に関し和解契約を締結し、エスクローから和解金を受け取ったことから790百万円(前期比46.4%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等の適用により、売上高は226百万円増加し、営業利益及び経常利益はそれぞれ16百万円増加しております。
上記の米国での紛争については、2021年11月12日に公表しました「(開示事項の経過報告)当社海外子会社に対する仲裁の申立に関するお知らせ」にてお知らせしましたとおり、当社の連結子会社であるLAA社とTopical Remedy, LLC等と和解契約を締結したことにより今後これに関連する費用の発生はなくなります。
また、2021年11月4日に公表しました「Accelovance, Inc. (現Linical Accelovance America, Inc.)の売主との和解に関するお知らせ」に記載のとおり、当社の連結子会社であるLinical USA, Inc. (以下「LUI社」)が、2018年4月に買収しましたAccelovance, Inc. (現Linical Accelovance America, Inc.)の売主との間で、合併契約上の補償条項等に起因する紛争等に関し、2021年11月3日、売主がLUI社に対して1,445,000ドルをエスクローから支払う旨の条項を含む和解契約を締結しました。本件和解によってLUI社が受け取った1,445,000ドルについては、当期において特別利益に計上しております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① CRO事業
当社グループのCRO事業につきましては、売上高は10,615百万円(前期比13.8%増)、営業利益は2,538百万円(前期比43.8%増)と増収増益となりました。
② 育薬事業
当社グループの育薬事業につきましては、売上高は939百万円(前期比1.0%減)、営業利益は276百万円(前期比11.6%増)と減収増益となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より901百万円増加し、5,985百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、1,631百万円(前連結会計年度は23百万円の獲得)となりました。これは、税金等調整前当期純利益1,031百万円、減価償却費168百万円及びのれん償却費271百万円の計上に加え、売上債権及び契約資産の減少額126百万円及び立替金の減少額225百万円があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果獲得した資金は、20百万円(前連結会計年度は169百万円の獲得)となりました。これは、主に投資有価証券の取得による支出50百万円及び有形固定資産の取得による支出45百万円があったものの、差入保証金の回収による収入100百万円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、951百万円(前連結会計年度は329百万円の使用)となりました。これは、主に長期借入金の返済による支出539百万円、配当金の支払額316百万円及びリース債務の返済による支出84百万円があったこと等によるものであります。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当社グループの業務には生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。
② 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
CRO事業 |
14,137,769 |
+56.5 |
21,978,802 |
+19.1 |
育薬事業 |
735,533 |
+35.1 |
535,954 |
△27.6 |
合計 |
14,873,302 |
+55.3 |
22,514,756 |
+17.3 |
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
CRO事業 (千円) |
10,615,431 |
+13.8 |
育薬事業 (千円) |
939,656 |
△1.0 |
合計(千円) |
11,555,088 |
+12.4 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりで
あります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
エーザイ株式会社 |
1,488,231 |
14.5 |
1,593,305 |
13.8 |
中外製薬株式会社 |
1,521,281 |
14.8 |
1,477,359 |
12.8 |
2.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2022年6月24日)において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、引当金の計上等見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。但し、将来に関する事項には不確実性があるため、実際の結果はこれら見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2)当連結会計年度の財政状態の分析
① 資産の部
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ435百万円増加し、15,716百万円(2.9%増)となりました。これは、主に現金及び預金の増加によるものであります。
② 負債の部
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末と比べ394百万円減少し、9,173百万円(4.1%減)となりました。これは、主に長期借入金の減少によるものであります。
③ 純資産の部
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末と比べ830百万円増加し、6,543百万円(14.5%増)となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加によるものであります。
(3)当連結会計年度の経営成績の分析
① 売上高
当社グループの当連結会計年度の売上高は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ1,275百万円増加し、11,555百万円(前期比12.4%増)となりました。
② 売上原価
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べ431百万円増加し、7,943百万円(前期比5.7%増)となりました。
③ 販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ211百万円増加し、2,525百万円(前期比9.1%増)となりました。
④ 営業利益
当連結会計年度の営業利益は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ632百万円増加し、1,085百万円(前期比139.5%増)となりました。
⑤ 経常利益
当連結会計年度の経常利益は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ594百万円増加し、1,183百万円(前期比101.1%増)となりました。
⑥ 税金等調整前当期純利益
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ673百万円増加し、1,031百万円(前期比187.7%増)となりました。
⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ250百万円増加し、790百万円(前期比46.4%増)となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については「1[経営成績等の状況の概要] (3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
② 財務政策及び資金の流動性についての分析
当社は、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元のバランスの最適化を図ることを重要施策と位置づけ、株主の皆様からお預かりした資本に対して如何に報いるかという視点に立ち、業績を勘案した配当施策を行い、安定的に利益還元に努めてまいります。
内部留保金につきましては、将来の事業発展に必要不可欠な成長投資として活用し、中長期的な成長による企業価値向上を通じて株主の皆様の期待にお応えしてまいります。
当社グループの資金需要のうち主なものは、従業員給付費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、将来の事業発展に必要不可欠な成長投資としてのM&Aによる企業買収等のための資金であります。
当社は、事業活動のために適正な流動性の維持及び効率的な資金の確保を基本方針としており、主に営業活動から得た資金を財源とし、必要に応じて短期または長期の借入による資金調達を実施することとしております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は4,192百万円、現金及び現金同等物の残高は5,985百万円となっております。また、当社の資金の流動性については、十分な余剰資金に加え、国内金融機関との間で合計2,500百万円の当座借越枠を設定し、当社グループの資金の流動性を補完しております。
(5)経営成績等に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(6)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元バランスの最適化を図ることを重要施策と位置付け、安定的な利益還元の源泉となる1株当たり当期純利益を目標とする経営指標にしております。
当連結会計年度の1株当たり当期純利益は35.00円(前年同期比46.4%増)となりました。これは、「1[経営成績等の状況の概要] (2)経営成績」に記載の要因により、親会社株主に帰属する当期純利益が前年同期と比して増加したことによるものです。
1株当たり当期純利益の2022年3月期までの実績値及び2023年3月期の計画値は、次のとおりであります。
経営指標 |
2019年 3月期実績 |
2020年 3月期実績 |
2021年 3月期実績 |
2022年 3月期実績 |
2023年 3月期計画 |
1株当たり当期純利益(円) |
25.09 |
21.38 |
23.91 |
35.00 |
38.56 |
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