業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。なお、連結財務諸表の作成にあたっては、主として期末日現在などの判断に基づき金額を見積った項目があります。

特に以下の項目に関する見積額は、実際の結果と異なる可能性があります。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

① 貸倒引当金

貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しておりますが、今後の個別の業況などによっては、追加引当もしくは取崩しが必要となる可能性があります。

② 退職給付費用および債務

退職給付費用および退職給付債務は、割引率など数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。

③ 投資有価証券の減損

投資有価証券については、その価値の下落が一時的ではなく回復可能性が無いと認められる場合に減損処理を実施しておりますが、今後の市況や投資先の業況などにより、さらに減損処理が必要となる可能性や価格が回復する可能性があります。

④ 棚卸資産の評価

棚卸資産については、「棚卸資産の評価に関する会計基準」に基づき処理を行っております。評価を行うに当たっては、正味売却価額に基づき収益性の低下を検討しております。また、一定期間を超えて在庫として滞留する棚卸資産についても、簿価を切り下げております。今後の市況や需要動向によっては、追加の評価減が必要となる可能性があります。

 

なお、新型コロナウイルス感染症が当社グループに与える影響につきましては、事業によってその影響や程度が異なるものの、全体としては限定的であるとの仮定のもとに、会計上の見積りを行っております。

 

(2) 経営成績

当期は、世界各国において変異株をはじめとする新型コロナウイルス感染症の再拡大や、ウクライナ情勢等を要因とする多様化した地政学リスクによるさまざま問題が生じ、この影響は今後も続くことが予想されます。国内においても、感染対策に万全を期し、経済社会活動が正常化に向かう中で、景気が持ち直していくことが期待されていますが、今後も、感染症および世界情勢の動向を注視する必要があります。

そのような中、森永乳業グループは生活必需品である食品を製造する企業としての使命を果たせるよう、従業員の安全と健康に引き続き最大限の配慮をし、出来る限り商品の供給を継続すべく取り組んでまいりました。そして、感染症拡大以前と比べた大きな需要の変化として、前年よりは幾分持ち直したものの、外食産業、ホテル、観光業、お土産等向け業務用乳製品は依然として需要減少となった一方、健康に貢献する機能性素材やヨーグルト、アイスクリームをはじめとする家庭内需要は堅調に推移しました。また、海外では、世界的な健康ニーズの高まりを背景に機能性素材への需要が拡大するなど、社会や生活者意識、ビジネスの環境は大きく変化しました。

 一方で、世界的な需要の高まりや円安の進行などによる、原材料・エネルギー価格および物流コストの上昇があり、特に当下期にかけてその影響を大きく受けましたが、一部の商品の価格改定や、利益率の高い事業や商品の拡大によるプロダクトミックスの改善、グループ全体でのコストの見直しなどに努めました。

 

<「中期経営計画 2019-21」の概要>

2019年4月より「森永乳業グループ10年ビジョン」のもと、2022年3月期までの3年間を確固たる事業基盤づくりの期間と位置付け、

・「4本の事業※1の柱横断取り組み強化による持続的成長」

・「経営理念実現に向けたESGを重視した経営の実践」

・「企業活動の根幹を支える経営基盤の更なる強化」

の3つを基本方針に定め、売上高6,300億円、営業利益300億円を数値目標とする中期経営計画を策定し、取り組みを進めました。(上記数値目標は計画策定時。2022年3月期の業績予想は売上高5,000億円、営業利益300億円)

※1 ①BtoC事業、②ウェルネス事業、③BtoB事業、④海外事業の4事業

 

<当期の主な取り組み事項>

当期は3年間の「中期経営計画 2019-21」の最終年であり、さらなる企業体質ならびに事業の強化に努めてまいりました。なお、2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日、以下「収益認識会計基準」)等を適用したため、前年比較につきましては2022年3月期実績と2021年3月期を収益認識会計基準を適用した数値にあわせたものとの比較で算出しております。

・新型コロナウイルス感染症の影響への対応。

-業務用・オフィス需要の回復、家庭内・健康需要の市場変化に対応した販売活動。

-前期に抑制されたオペレーションコストの反動増、原材料・エネルギー価格上昇によるコスト増への対応。

-原材料調達、物流、財務など事業を支える機能の確立。

・お客さまのニーズに応える商品の提供とその価値訴求に努め、高付加価値商品の拡大、健康に貢献する機能性素材の積極的な販売促進活動、海外事業の拡大。

・サステナブルな社会づくりに貢献するため、CO2排出量、用水使用量・排水量、プラスチック使用量、食品ロス削減取り組みへの注力。

・生産効率の改善等によるオペレーションコストの削減。

・経営基盤の更なる強化に向け、グループ全体の生産拠点再編推進(2021年3月東京工場生産中止)。

・資産効率の改善(近畿工場跡地売却、港南ビル(東京都港区)売却:2022年3月期に特別利益計上、東京工場跡地売却:2024年3月期に特別利益計上予定)。

・次期中期経営計画発表に向けた、ステークホルダーとの対話の強化。

 

これらの結果、当社グループの連結売上高は、BtoC事業では高付加価値商品や健康に貢献する商品の拡大により、ヨーグルト、アイスクリームなどが増収となりました。また、海外事業の伸長、前期は大きな減少となりましたBtoB事業における業務用乳製品の反動増もあり、全体では増収となりました。

連結の利益面では、世界的な需要の高まりや円安の進行などによる、原材料・エネルギー価格の上昇の影響がありました。これに対し、一部の商品の価格改定や、利益率の高い事業や商品の拡大によるプロダクトミックスの改善、グループ全体でのコストの見直しなどをより一層推進しました。海外事業の伸長、BtoB事業の反動増などもあり、利益面では前年を上回りました。

なお、公益財団法人ひかり協会に対する負担金として、当期は15億円を支出いたしました。

 

連結売上高

503,354百万円

(前年比

3.0%増)

連結営業利益

29,792百万円

(前年比

3.2%増)

連結経常利益

31,127百万円

(前年比

3.4%増)

親会社株主に帰属する当期純利益

33,782百万円

(前年比

80.2%増)

 

   (その他重要経営指標)

売上高営業利益率                     5.9%

ROE(自己資本利益率)               16.7%

海外売上高比率                       8.7%

 

セグメント別の状況は、次のとおりです。

                                      (単位:百万円)

 

売上高

前年比

営業利益

前年比

食品事業

478,940

-

38,262

-

その他の事業

30,048

-

2,782

-

消去または全社

△5,634

 

△11,252

 

合計

503,354

-

29,792

-

 

※ 2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用しており、上表の各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前年比較は記載しておりません。

食品事業:市乳、乳製品、アイスクリーム、飲料など

その他の事業:飼料、プラント設備の設計施工など

 

  (参考)「中期経営計画 2019-21」における事業分野別(4本の事業の柱)業績概況

    BtoC事業:ヨーグルト、アイスクリームなどが堅調に推移しました。特に、健康ニーズの高まりを受け「トリプルヨーグルト」「ビヒダス ヨーグルト 便通改善」などの機能性ヨーグルトが伸長し、プロダクトミックス改善にも大きく貢献いたしました。一方、ビバレッジの落ち込みや、前期の家庭内需要の増加に対する反動減が見られたチーズの減収などが響き、事業全体では減収となりました。

利益面では、ヨーグルトやアイスクリームなどでの高付加価値商品の拡大によるプロダクトミックスの改善に加え、販売活動のコントロールなどを進め、利益創出を図りました。しかしながら、特に下期に原材料・エネルギー価格の上昇の大きな影響を受け、一部の商品の価格改定も進めましたが、事業全体では減益となりました。

BtoC事業 売上高

260,066百万円

(前年比

0.8%減)

BtoC事業 営業利益

14,617百万円

(前年差

1,510百万円減)

 

 

    ウェルネス事業:クリニコ社の販売、健康栄養補助食品としての大人向け粉ミルク「ミルク生活」、健康食品などが拡大し増収となりました。

利益面では、原材料・エネルギー価格の上昇の影響はありましたが、増収効果に加え、販売活動のコントロールなど、経費の抑制を進めたこともあり増益となりました。

ウェルネス事業 売上高

44,218百万円

(前年比

2.7%増)

ウェルネス事業 営業利益

3,780百万円

(前年差

323百万円増)

 

 

    BtoB事業:構成比の高い業務用乳製品は前期の大幅減の反動から大きく増収となりました。一方、健康ニーズの高まりから、当社の保有する機能性素材への高い関心も継続しています。

利益面では、原材料・エネルギー価格の上昇の影響はありましたが、売上利益の大幅な増加などにより増益となりました。

BtoB事業 売上高

82,149百万円

(前年比

10.7%増)

BtoB事業 営業利益

3,400百万円

(前年差

786百万円増)

 

 

    海外事業:育児用ミルクなどの輸出が前期の大幅増の反動から減収となりましたが、乳原料を製造販売するミライ社は増収となりました。加えて、2021年3月にベトナム・Elovi(エロヴィ)社を新たに連結子会社としたことなどから増収となりました。

利益面では、増収効果に加え、利益率の高い機能性素材が拡大したことでプロダクトミックスの改善が進み増益となりました。

海外事業 売上高

43,862百万円

(前年比

19.2%増)

海外事業 営業利益

7,237百万円

(前年差

1,731百万円増)

 

 

 

生産、受注及び販売の状況は次のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

食品事業

397,234

+1.2

その他の事業

3,445

△43.5

合計

400,680

+0.5

 

(注) 金額は販売価格によっております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前年同期比
(%)

受注残高
(百万円)

前年同期比
(%)

食品事業

その他の事業

9,717

△11.1

3,213

△3.3

合計

9,717

△11.1

3,213

△3.3

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

食品事業

478,940

△14.4

その他の事業

30,048

△11.4

セグメント間の内部売上高または振替高

△5,634

合計

503,354

△13.7

 

 

(3)財政状態

当連結会計年度末の資産の部は、「有形固定資産」が減少した一方、「現金及び預金」や「受取手形、売掛金及び契約資産」が増加したことなどにより、合計では前連結会計年度末に比べ、51億4千2百万円増4,587億8千8百万円となりました。

負債の部は、「未払法人税等」が増加した一方、「コマーシャル・ペーパー」が減少したことなどにより、合計では前連結会計年度末に比べ、3億8千万円減2,507億6千2百万円となりました。

純資産の部は、「自己株式」が増加した一方、「利益剰余金」の増加などにより、合計では前連結会計年度末に比べ、55億2千2百万円増2,080億2千6百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の43.9%から44.9%に、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の4,028.36円から4,554.84円になりました。

 

 

(4)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ17億2千4百万円増402億6千8百万円の収入となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益482億9千6百万円がキャッシュ・フローの収入となり、法人税等の支払額87億4千5百万円がキャッシュ・フローの支出となったことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ336億7千6百万円支出減83億7千1百万円の収入となりました。主な要因は、固定資産の取得により188億7千8百万円の支出があった一方、固定資産の売却により309億2千6百万円の収入があったことによります。

これらを合計したフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ354億円増の486億3千9百万円となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ418億9千4百万円支出増445億2千2百万円の支出となりました。主な要因は、自己株式の取得により247億8千3百万円、コマーシャルペーパーの返済により100億円の支出があったことによります

これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ43億4千7百万円増234億8千6百万円となりました。

 

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりです。

 

 

2018年
3月期

2019年
3月期

2020年
3月期

2021年
3月期

2022年
3月期

自己資本比率(%)

38.0

38.7

41.6

43.9

44.9

時価ベースの自己資本比率(%)

51.6

43.0

47.4

63.5

51.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(倍)

4.0

6.4

3.8

3.0

2.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

30.1

24.5

38.0

54.6

53.4

 

自己資本比率:(純資産-新株予約権-非支配株主持分)/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数により算出しております。

※ 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

※ 2022年3月期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2021年3月期に係る数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映しております。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下の財務政策のとおりです。

当社グループは、資金調達に際しては、内部資金を基本としながら、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーの発行、社債の発行などの外部からの資金も利用しております。外部からの資金調達につきましては、安定的かつ低利を前提としながら、将来の金融情勢の変化等も勘案してバランスのとれた調達を実施しております。なお、当社(提出会社)は機動的な資金調達および当社グループ全体の資金効率アップのため、金融機関10行と総額 300億円 のコミットメントライン契約を締結しております。調達した資金につきましては、経常設備投資および成長投資への支出と、財務安定性を維持(有利子負債コントロール)することにより基盤確保した上で、株主還元へ振り分けております。

 

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