当連結会計年度では、当社の研究開発部門である開発本部基礎研究所を中心に「おいしさ、安全・安心、健康、環境負荷低減、細胞工学」の5つの分野において、食肉加工あるいは食肉生産に関する先端的な基礎研究から、それらを活用した商品開発、一部の生産技術開発に至るまで、精力的な研究開発活動を行いながら、得られた研究成果(独自技術等)の社内への導入を積極的に行っております。また、研究開発体制の構築や研究開発のレベルアップ及び効率化のため、大学等の各種研究機関との共同研究を通じて連携の強化を行い、研究を推進していきます。
(1) おいしさに関する研究
おいしさに関する研究では、 客観的かつ具体的な評価ができるよう「おいしさを見える化(数値化)」する分析技術の開発を行いました。
官能評価のデータ蓄積、風味解析のための電子味覚システムの導入、食感解析のための新規測定手法の構築等を行いました。これらの「おいしさの見える化」により、自他社商品の特徴をより明確化することが可能となったため、 科学的解析に基づいたおいしさの数値化と情報提供、独自技術を利用した商品開発、品質改善、販促活動のサポート等に繋がっております。
(2) 安全・安心に関する研究
安全・安心に関する研究では、食物アレルゲンを対象とした検査キットの項目拡充、異種タンパク質分析手法の開発、「おいしさと安全・安心」を両立させる自社基準の設定を行いました。
① 食物アレルゲン検査項目の拡充として、大豆及びくるみの簡易検査キットの開発を行い、グループ会社である㈱つくば食品評価センターで販売を開始いたしました。また、推奨品目であるアーモンドの簡易ELISA(定量法)と海外での需要が高く表示の対象となっているマスタードの簡易検査キットも開発を進め、2022年度内の完成を目指しております。一方で、AOAC認証(海外の精度認証)も2022年度での取得を予定しており、国内初のAOAC認証済みイムノクロマトキットとして精度や信頼性を国内外に広めていきます。
② 異種タンパク質分析手法は、代替肉の主要原料である各種豆類を始めとした異種タンパク質を見分けるため、抗原・抗体反応や遺伝子解析技術を利用した分析手法の開発を開始しております。
③ 自社製品の安全・安心を担保するための研究では「おいしさと安全・安心」を両立させながら製品品質を向上・維持させるため、生産工場の製造環境・ラインの改善、工程管理基準の見直しを進めております。品質保証本部、生産本部と連携しながら当社茨城工場ソーセージラインの衛生改善を実施いたしました。今回の取り組みを当社各工場に水平展開することにより、弊社の衛生レベル向上に繋げていきます。
(3) 健康に関する研究
健康に関する研究では、健康で豊かな生活を創造するために、健康機能を持つ食肉製品の開発を目的とし、既存の健康成分を活用した新商品の開発と食肉中から新規の健康成分を探索し、活用するための基礎研究を行っております。
① 健康成分を活用した新商品開発では、厚生労働省の報告書等の調査から、食塩摂取量の削減に向けた減塩と若年女性の痩せへの取り組みが求められていることが明らかとなったため、減塩商品に使用可能な新規技術や現代の女性に不足している栄養成分を捉える食肉製品の開発を進めております。
② 食肉中の健康機能性成分の探索は外部研究機関との共同研究により進めており、機能性の解明及び成分を付与した商品開発を検討しております。
(4) 環境負荷低減に関する研究
環境負荷低減に関する研究では、これまでに実施してきた「環境浄化微生物」の研究に加え、当社においても養豚や食品製造時に発する環境負荷を考慮し、環境に対する積極的な取り組みが責務となると考えられます。そこで、以下の4課題を選定し、取り組みを開始いたしました。いずれの課題も大学等との共同研究を実施し、基礎的な研究から社内実装を行うための応用研究を行う予定としております。
① 水資源の浄化
養豚場や食品工場から排出される放流水に含まれるリンの回収技術を確立し、当社事業場からの排水を浄化し、リン資源の安定的な確保を目指した検討を進めております。
ディオプサイトと呼ばれる鉱物を用いた新たなリン回収技術について、基礎的な試験を実施し特性等を把握しました。
② 食品ロスの削減
有機性廃棄物(動植物性残さや家畜の糞尿等)の資源化の一環として「消化液の植物の病気抑制効果」と、当社の「使用済みスモークチップの多孔性」に着目し、これらを混合した新たな土壌改良材の開発に取り組み、混合物の農作物に対する土壌改良効果について検証を実施しました。
③ カーボンニュートラル
ラン藻の光合成によりCO2(炭酸ガス)を増殖したラン藻菌体や産生される有機酸を豚の健康に寄与する飼料として活用可能か検討を行っております。
ラン藻およびラン藻を培養するための装置の確認、ラン藻の安定した培養方法の確立を進めております。
④ 廃プラスチックの削減
当社工場から排出される食肉のタンパクや脂肪などの汚れが付着した廃プラスチックでも油化として資源化する技術に関する情報収集を行い、技術を所有する企業と秘密保持契約を締結いたしました。2022年度は、当社工場から排出される各種廃プラスチックについて、油化試験を開始いたします。
(5) 細胞工学に関する研究
将来的な世界人口増加による食肉供給不足や環境保全の問題から代替肉が注目され、植物由来代替肉や細胞農業による培養肉の開発に国内外のスタートアップが数多く参入しております。当社においても培養肉のメーカー、技術、市場性などを分析するため、調査研究を開始いたしました。
社内外の関連部門との連携を強化し、研究活動の中から得られた情報を全社に向けて発信し、研究開発部門、他事業部門が一体となった具体的施策の推進・利益の最大化・企業価値向上に貢献することを目標に活動を実施してまいりました。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
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