事業等のリスク

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、本項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、特段の断りがない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) リスクマネジメントに関する体制

当社は、リスクマネジメントに関する基本方針や管理体制の概要を定める「リスクマネジメント規程」に基づき、代表取締役社長を最高責任者とするリスクマネジメント体制を採用しております。代表取締役社長は、当社グループにおけるリスクマネジメントに関する課題及び対応策を協議する機関として「リスクマネジメント委員会」を設置し、同委員会は各種リスクの識別、評価、重点リスクの特定及び対応方針の検討などに務めております。各事業部門及び各部署は、同委員会の方針を踏まえ、自らの事業領域及び職掌に関するリスクの統制活動を実施しており、これらの結果は同委員会を通じて取締役会に報告されます。取締役会では、同委員会で検討した当社グループの経営活動に大きな影響を及ぼす可能性のある重要なリスクについて対応方法の検討を行っております。また、重大なリスクの顕在化を認識した際には、想定される影響度に応じた対策機関を組成し、迅速かつ適切な対応に務めております。

なお、以下に記載するリスクの全てを上記の枠組みで管理しているわけではなく、日常的な事業活動から生じる商品市況リスクへの対処は各事業部門、財務リスクへの対処は経理財務部及び関係する各事業部門が実施しております。

(2) 事業遂行上のリスク

① 商品市況リスク

当社グループは食肉及び食肉関連加工品を中心に取り扱っており、販売用食肉はもとより、ハム・ソーセージ、加工食品等の原材料にも食肉が使用されているため、畜産物の相場変動によるリスクがあります。さらに、これらの食肉を供給する国内及び海外の生産飼育事業においては、商品市況はもちろん、飼料価格や原油価格の変動にも影響を受けることとなります。また、当社グループが取り扱う水産物や乳製品についても、商品市況や原材料の価格変動リスク等があります。上記に加えて、家畜の疾病(BSE、鳥インフルエンザ、口蹄疫、豚流行性下痢、豚熱、アフリカ豚熱等)の発生やセーフガード(緊急輸入制限措置)が発動された場合等には、畜産市場全体並びに当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

これらの価格変動リスクは、需給動向や景気の変動など、当社グループにとって制御不能な要因が大きく、正負両面において常時顕在化していきます。想定を超える負の影響を可能な限り軽減するため、商品及び原材料調達ルートの分散化、高付加価値商品の開発やブランド化、お客様視点のマーケティング戦略の確立等に努めており、商品需要の変動を見越した安定的な原材料の確保、生産飼育事業における防疫体制の強化、食肉の適正在庫水準の維持等にも取り組んでおりますが、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。

② 安全性のリスク

当社グループは、食肉及び食肉関連加工品を始め、乳製品及び水産製品など幅広い食品を取り扱っており、異物混入や不適切な表示に起因する商品の品質や安全性の毀損、また、食品衛生法等関連法令への未対応等による回収費用や損害賠償、事業活動の制約などが生じ、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

こうしたリスクを可能な限り予防及び軽減することを目的とし、当社グループでは品質方針として「法令の遵守」、「品質保証ネットワーク」、「客観的評価」、「履歴管理」及び「お客様とのつながり」の5つを掲げ、「OPEN品質」~開かれた食づくり~を推進しております。当社グループ全ての事業を有機的に連携させることで、農場から食卓まで、お客様視点に基づいた品質保証ネットワークを構築し、お客様に安全な商品をお届けしております。また、食品安全に関する第三者認証(FSSC22000、SQF、BRC、JFS等)の取得や徹底したアレルゲン管理、原材料のトレーサビリティーシステムやフードディフェンス体制を構築するとともに、従業員に対し、関連した教育を継続的に実施することで安全性の確保に努めております。万が一当社グループが提供する商品等に問題が生じた場合は、速やかな情報開示と拡大防止策の徹底を行い、お客様の安全を第一に考えた対応を行うとともに、レピュテーションリスクの軽減を図ります。

しかしながら、これらの取組みを超えた事象や、食の安全を脅かすような社会全般にわたる問題が発生した場合など、当該リスクが顕在化する可能性の程度、時期及び影響度を予見することは困難であり、完全に回避できる保証はありません。

③ 自然災害や突発的事故及び社会的な制度等のリスク

当社グループは本邦を含む世界各国において事業活動を行っております。これらの事業活動地域においては、次の事象の発生リスクがあります。これらの事象が発生した場合には、事業活動の停止や物流網の分断などにより、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。当社グループでは、自然災害や突発的事故に備え、事業継続計画(BCP)、防災マニュアル及び従業員安否確認システムの整備などの対策を講じておりますが、被害を完全に排除できる保証はありません。

・地震、気候変動による洪水等の大規模な自然災害の発生及びそれらに起因する道路・港湾・鉄道等の社会的な基盤の損壊、ガス・水道・電気等の供給不能又は供給逼迫

・突発的な事故の発生等予期しない原因による、大気、水質、土壌等の環境汚染

・インフルエンザ等の感染性疾病の流行等による社会的混乱

・予期しない法律又は諸規制の設定又は改廃

・予期しない不利な経済的又は政治的要因の発生

・戦争、紛争、テロ等の発生による社会的又は経済的混乱

(提出日現在における新型コロナウイルス感染症への対応及び今後の影響について)

当社グループは各事業活動地域における法令及び要請を遵守・尊重し、従業員の安全確保に努めながら食品企業としての社会的責任を果たすべく事業を遂行しております。ワクチン接種の浸透などにより、社会・経済活動は徐々に正常化に向かいつつありますが、変異株の発生や伝播など予断を許さない状況にあると認識しております。

内食及びストック需要の拡大など、引き続き消費・生活スタイルの変化への対応を強化してまいりますが、感染拡大による社会的・経済的混乱の進行や長期化が起こった場合、売上高の減少や取引先の信用不安などにより、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(3) 財務リスク

① 為替リスク

当社グループが行う外貨建取引から生ずる費用・収益及び外貨建債権・債務の円換算額は、為替相場の変動の影響を受ける場合があり、正負両面において常時顕在化していきます。為替相場の変動により外貨建取引から発生する将来のキャッシュ・フローが変動するリスクを軽減するため、先物外国為替契約などのデリバティブを用いたヘッジ取引を利用しておりますが、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。また、当該リスクを軽減するためのヘッジ取引についても、想定した範囲を超えて為替相場が変動した場合には、機会損失等の別のリスクが発生する可能性があります。

なお、当社グループはこれらの外貨建取引に係るリスクヘッジを行うための「為替リスク管理規程」を定め、為替相場を継続的に監視し、為替相場の変動リスクを定期的に評価しております。先物外国為替契約など、デリバティブを用いた全てのヘッジ取引は、当該「為替リスク管理規程」、取引権限及び取引限度額を定めた社内規程に基づいて行われております。

また、外貨建で作成されている海外連結子会社の財務諸表を円貨に換算する際の換算差額によって、連結財務諸表の親会社の所有者に帰属する持分が在外営業活動体の換算差額を通じて変動するリスクがあり、その他の包括利益を通じて当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

② 金利リスク

当社グループは、必要資金の大部分を外部からの借入金等の有利子負債により調達しております。2022年3月末時点での有利子負債額約2,114億円の大部分は固定金利であり、金利上昇による直接的な影響については当面軽微であると判断されますが、将来的な金利上昇局面においては資金調達における利息負担の増加により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

③ 株価リスク

当社グループは取引関係の維持及び強化を目的として市場性のある資本性金融資産を保有しており、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に指定しております。これらは市場価格の変動に基づく株価の下落リスクがあり、2022年3月末時点の帳簿価額は約221億円で、全体として含み益の状態となっておりますが、今後の株価動向によっては、その他の包括利益を通じて当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。また、株式市場の低迷によって当社グループの制度資産の価値に毀損が生じた場合には、退職給付費用の増加や追加的な制度資産の積み増しが必要となる可能性があります。

④ 非流動資産の減損損失リスク

当社グループが保有する非流動資産の価値が収益性の低下や経済情勢等の変化により下落した場合には、必要な減損処理を実施することになります。2022年3月末時点における有形固定資産、使用権資産、無形資産及びのれん及びその他の非流動資産に含まれる投資不動産の帳簿価額の合計は約4,091億円で、減損処理を実施した金額はその他の費用及び持分法による投資損失に計上され、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(4) その他のリスク

① 情報漏洩リスク

当社グループは「個人情報管理規程」、「日本ハムグループ内部者取引管理規程」を設け、当社グループ役職員に対して、保有する個人情報や当社グループの重要情報の保護・管理を義務付け、コンプライアンス研修や階層別従業員教育等を通じ、厳正な情報管理に努めております。併せて情報システム上のセキュリティ対策や災害対策等も講じております。

しかしながら、想定の範囲を超えるような自然災害、長期に渡る停電、ハードウエア・ソフトウエアの重大な欠陥、コンピュータウイルスの感染や不正アクセス等による情報の漏洩・改ざん・消失、長期にわたる情報システムの停止あるいは混乱等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

② コンプライアンスのリスク

当社グループは、透明性のある誠実な企業グループを目指し、コンプライアンス意識の徹底と定着に継続的に取り組んでおります。この取組みにおいては、当社の代表取締役社長が指名した役員をコンプライアンス委員会委員長として当社グループ全体を統括し、当社コンプライアンス部が当社グループ全役職員のコンプライアンス意識を高める施策を継続的に行っております。また、内部通報窓口を整備し、リスクを認識した場合には迅速に対応する体制を整えております。

しかしながら、役職員個人による法令違反を含むコンプライアンス上の問題が発生した場合には、法令による処罰等や社会的制裁を受けることによりグループブランドの失墜を招き、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

③ 環境問題のリスク

当社グループは、「5つのマテリアリティ」の一つとして「持続可能な地球環境への貢献」を掲げ、取組みを進めております。サステナビリティの取組みについて総合的に検討し、取締役会に対し報告または提言する機関として、当社の代表取締役社長が指名する役員及び社外有識者からなる「サステナビリティ委員会」を設置し、持続可能な社会の実現に向けて、環境と調和の取れた企業活動を推進しております。

生産飼育事業や食品製造を営む当社グループにとって、とりわけ、気候変動リスク、水リスク及び廃棄物は重要なリスクと認識しており、CO2排出量、用水使用量及び廃棄物等については、中長期の目標を設定して環境負荷の低減に努めております。

2020年6月、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、TCFDコンソーシアムに加入しました。気候変動が事業に与える影響を分析し、リスク及び機会の抽出、シナリオ分析等を行い、対応策を検討し、2021年10月のTCFD中間開示(サステナビリティ説明会)を経て、2022年5月に当社ウェブサイトにおいて「TCFDフレームワークに基づく情報開示」を公表しております。また、環境に関する外部認証(ISO14001)の取得や、当社専門部署による環境内部監査を実施しております。

しかしながら、干ばつや豪雨などの異常気象による生産飼育事業の不安定化、水質悪化や渇水による生産・製造活動の停滞、事故・過失等による環境汚染やそれに対する原状復帰、損害賠償責任の発生、あるいは関係法令の改正による環境投資が大幅に増加した場合等においては、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

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