① 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するなか、緊急事態宣言の解除やワクチン接種の進展、その他各種施策の効果により、経済活動の持ち直しの動きが見られたものの、その後、変異ウイルスによる感染再拡大の懸念やロシアのウクライナへの侵攻による経済への影響等により、景気の先行きは不透明な状況で推移いたしました。
当社の属する情報サービス産業界においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連の需要が拡大するとともに、テレワークといった働き方の変化に伴うオンラインのコミュニケーションツールの活用が浸透しております。また、当社の主な事業分野である官公庁向けシステムは、従来のオンプレミス環境からクラウド環境への移行が加速するなか、特に防災・防犯に係る行政の高度化の要請は高く、重点施策として予算が確保されております。しかしその一方で、次世代のテクノロジーと融合したサービスの創出に携わるエンジニアの確保と育成が課題となっております。
このような環境において、当社は引き続き、警察・消防・自治体防災・社会インフラ保全の課題解決を実現するシステムの導入拡大に努めました。主力の「NET119緊急通報システム」は全国普及に向け、残りの地域の消防への導入を進めるとともに、今後の成長が期待できる「Live119(映像通報システム)」・「Live-X(映像通話システム)」の積極的な提案を行いました。また、このほか、災害対策本部での情報収集を支援する「DMaCS(災害情報共有サービス)」、自治体や警察が防災・防犯情報を配信するスマートフォンアプリ等、各種システムの積極的な提案にも注力いたしました。
以上の結果、当事業年度の売上高につきましては、ライセンス売上は減少いたしましたが、自治体向けクラウドサービスにおいて既存契約の継続に加え新規契約が積み上がったことから、利用料収入及び初期構築等に係る受託開発売上が増加したことにより、1,222,077千円(前事業年度比9.2%増)となりました。
利益面では、売上高の増加に加えて売上高総利益率が1.3ポイント向上したことにより、営業利益400,595千円(前事業年度比17.9%増)、経常利益404,074千円(前事業年度比17.8%増)、当期純利益283,501千円(前事業年度比19.3%増)となりました。
なお、当社は地理及び位置情報事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しておりますが、品目別の売上構成比は、クラウド利用料が50.3%(前事業年度は46.5%)、受託開発が42.4%(前事業年度は42.3%)、ライセンス販売が6.1%(前事業年度は9.3%)、商品売上が1.2%(前事業年度は1.9%)となっており、品目別の実績は次のとおりであります。
(クラウド利用料)
クラウド利用料につきましては、「NET119緊急通報システム」、「Live119(映像通報システム)」や「DMaCS(災害情報共有サービス)」、自治体や警察が防災・防犯情報を配信するスマートフォンアプリ等の顧客獲得が順調に進み、既存契約の継続に加えて、新規顧客の獲得により契約数が積み上がったため、614,888千円(前事業年度比18.2%増)となりました。
(受託開発)
受託開発につきましては、地理情報システムの受託開発の売上及びクラウドサービスの初期構築や機能追加に係る売上がともに増加したため、売上高は518,047千円(前事業年度比9.3%増)となりました。
(ライセンス販売)
ライセンス販売につきましては、既存顧客から継続して防災関連等のシステム向けの受注がありましたが、前期に大型の受注があった影響により、売上高は75,098千円(前事業年度比28.1%減)となりました。
(商品売上)
商品売上につきましては、受託開発に伴うデジタル地図等の納品を行いましたが、小型の案件が多かったため、14,042千円(前事業年度比32.9%減)となりました。
(資産)
当事業年度末の総資産は2,368,010千円となり、前事業年度末と比較して266,263千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が246,033千円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債は229,265千円となり、前事業年度末と比較して8,926千円増加いたしました。これは主に、未払金が11,659千円、長期前受金が10,520千円増加した一方で、長期未払金が8,375千円、長期前受収益が6,760千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は2,138,745千円となり、前事業年度末と比較して257,337千円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上等により利益剰余金が245,106千円増加したことによるものであります。
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、投資活動によるキャッシュ・フローが102,668千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが38,370千円の支出となったものの、営業活動によるキャッシュ・フローが257,071千円の獲得となったため、前事業年度に比べ116,033千円増加し、当事業年度末には730,645千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果獲得した資金は、257,071千円(前事業年度比28,532千円増)となりました。これは主に、法人税等の支払額が124,017千円あったものの、税引前当期純利益が404,074千円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果支出した資金は、102,668千円(前事業年度比8,109千円減)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入が700,000千円、有価証券の償還による収入が30,000千円あった一方で、定期預金の預入による支出が830,000千円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果支出した資金は、38,370千円(前事業年度比6,512千円増)となりました。これは、主に配当金の支払によるものであります。
当社は、地理及び位置情報事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。
当事業年度の生産実績は次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当事業年度の受注状況は次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当事業年度の販売実績を品目別に示すと次のとおりであります。
(注) 前事業年度及び当事業年度の主な相手先別販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとお
りであります。
※ 1 上記の金額は、販売実績の合計額であります。
2 当事業年度の警視庁については、当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。当社経営陣は、財務諸表の作成に際して、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積り及び仮定設定を行う必要があります。経営陣は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
② 当事業年度の経営成績の分析
(売上高)
当事業年度の売上高につきましては、防災・防犯等の自治体向けのクラウドサービスにおいて既存契約の継続に加え新規契約が積み上がったことから、1,222,077千円(前事業年度比9.2%増)となりました。
なお、当事業年度における新型コロナウイルス感染症の影響は軽微であります。
各品目の実績は次のとおりであります。
a.クラウド利用料
クラウド利用料につきましては、「NET119緊急通報システム」、「Live119(映像通報システム)」や「DMaCS(災害情報共有サービス)」、自治体や警察が防災・防犯情報を配信するスマートフォンアプリ等の顧客獲得が順調に進み、既存契約の継続に加えて、新規顧客の獲得により契約数が積み上がったため、614,888千円(前事業年度比18.2%増)となりました。
b.受託開発
受託開発につきましては、地理情報システムの受託開発の売上及びクラウドサービスの初期構築や機能追加に係る売上がともに増加したため、売上高は518,047千円(前事業年度比9.3%増)となりました。
c.ライセンス販売
ライセンス販売につきましては、既存顧客から継続して防災関連等のシステム用のライセンスの受注がありましたが、前期に大型の受注があった影響により、売上高は75,098千円(前事業年度比28.1%減)となりました。
d.商品売上
商品売上につきましては、受託開発に伴うデジタル地図等の納品を行いましたが、小型の案件が多かったため、14,042千円(前事業年度比32.9%減)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は、地図等の仕入や外注費等の増加により、403,274千円(前事業年度比19,090千円増)となりました。
売上総利益は、売上高の増加により売上高総利益率が1.3ポイント向上したため、818,803千円(前事業年度比83,714千円増)となりました。
販売費及び一般管理費は、主に人件費の増加により、418,207千円(前事業年度比22,962千円増)となりました。
(営業利益)
販売費及び一般管理費が増加したものの売上総利益が増加したことにより、営業利益400,595千円(前事業年度比60,752千円増)となりました。
(営業外収益)
営業外収益は、受取利息、有価証券利息及び助成金収入等により3,478千円(前事業年度比220千円増)となりました。
(経常利益)
経常利益は404,074千円(前事業年度比60,973千円増)となりました。
(当期純利益)
当期純利益は、283,501千円(前事業年度比45,780千円増)となりました。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、市場動向による影響等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しており、これらのリスクの発生を抑え、影響を最小限に抑えるよう適切に対応する所存であります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(流動性と資金の源泉)
当社の所要資金は、主にソフトウエアの製造・販売を行うための投資及び経常の運転資金であり、これらについてはすべて自己資金により対応しております。
当社の当事業年度末の自己資本比率は90.3%であり、充分な流動性を確保しております。次事業年度においては、特記すべき設備投資計画は無く、経常の運転資金については自己資金で賄う予定であります。
(財政状態の分析)
当事業年度における財政状態の状況につきましては、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」をご参照ください。
(キャッシュ・フローの分析)
資金需要を満たすための資金は、原則として、営業活動によるキャッシュ・フローを財源としております。
なお、当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑤ 経営者の経営状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するように努めております。
当社が属する情報サービス産業においては、デジタル庁創設が後押しとなり、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む自治体や企業が増加し、需要が拡大するものと思われます。また、技術面では、AI、5G等の技術革新により既存の事業環境が激変する可能性があり、ビジネスチャンスが生じる一方で、収益構造の変化や顧客要望の多様化・高度化への対応が求められております。また、デジタル化推進の高まりを受け、IT技術者は慢性的に不足しており、人材の確保と育成が課題となっております。
このような環境下において、当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載した各課題への対応を実施することにより、さらなる売上の増大と収益力の向上を目指します。
なお、新型コロナウイルス感染症が当社の経営環境に与える影響は、現時点において軽微なものではありますが、先行きは不透明な部分もあり、継続して注視して参ります。
お知らせ