課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営の基本方針

 当社グループは、グループの使命・存在意義である経営理念として、下記のとおり掲げております。

  ①我々は、エプコグループで働く情熱ある社員とその家族の幸福を追求します。

  ②エプコグループの存在目的は、社会問題を解決し、国民生活に貢献することです。

  ③エプコグループは、世界の人々の住まい、暮らしを支えるインフラ企業を目指します。

 

  [行動規範]お客様からパートナーと認められる思考と行動をする。

  [提供価値]社会問題を解決するサービス・技術を提供する。

  [企業像] 人々の暮らしを支える強固な社会インフラ企業を目指す。

  [経営目標]エプコのサービスを世界の人々の住まいや暮らしにインサイドさせる。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、2025年に向けた新たな中期経営計画(2021年~2025年度)を2021年2月12日に発表しました。当該計画における基本方針及びセグメント別の事業方針は下記のとおりです。

 

<中期経営計画(2021年~2025年度)の基本方針>

デジタル技術を活用して設計から工事、アフターメンテナンスまでの情報をクラウドで一元管理できるプラットフォームを提供することで、住宅ライフサイクル全体の最適化とSDGsへの取り組みを実現する。

 

[SDGsへの取り組み]

  当社が取り組む3つの事業(D-TECH/H-M/E-Saving事業)を通じてSDGsを実現

   ①プレファブ化による産業廃棄物の削減

   ②メンテナンスによる持続可能な住まいづくり

   ③電化住宅による脱炭素社会づくり

 

<セグメント別の事業方針>

 

D-TECH事業

BIMクラウドにより設計データの3次元化し建築工事のプレファブ領域拡大と設計情報の共有で建築工事を合理化し、少子高齢化時代の建築現場を支援する。

H-M事業

CRMクラウドにより居住者と修理関係者の情報共有を図りメンテ業務を効率化すると共に、修理データのAI解析と家歴化で住宅資産の維持管理容易性を向上させる。

E-Saving事業

省エネ機器と電気料金をセットにした省エネ機器のサブスクモデルを提供することで、電化住宅の普及に貢献し脱炭素社会の実現と自然災害に強い住まいを提供する。

 

 

 

(3) 目標とする経営指標

  中期経営計画(2021年~2025年度)における定量目標は下記のとおりです。

 

建築DXで既存モデルを高付加価値化し、高成長・高収益化を目指す。

 

連結業績

 

2020年度実績

(2020.1~2020.12)

 

2025年度目標

(2025.1~2025.12)

 

年平均成長率

売上高

 

43.8億円

100億円

 

+17.9%

経常利益率

 

10.6%

20.0%

 

 

ROE

 

11.8%

20.0%

 

 

 

 

<セグメント別売上高目標>

 

 

 

2020年度実績

(2020.1~2020.12)

 

2025年度目標

(2025.1~2025.12)

 

年平均成長率

D-TECH事業

 

22.2億円

43億円

 

+14.1%

H-M事業

 

12.2億円

38億円

 

+25.3%

E-Saving事業

 

5.2億円

19億円

 

+29.1%

 

 

<セグメント別営業利益率・持分法投資損益目標>

 

 

 

2020年度実績

(2020.1~2020.12)

 

2025年度目標

(2025.1~2025.12)

D-TECH事業

 

20.8%

26.0%

H-M事業

 

26.7%

27.0%

E-Saving事業

 

2.6%

6.0%

持分法投資損益

(TEPCOホームテック(株))

 

-0.1億円

2.0億円

 

 

 

(4) 会社の経営環境及び対処すべき課題

1.当社グループを取り巻く外部環境

 2021年は新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、全国に緊急事態宣言が発出されたことにより、我が国経済も観光業や飲食業を中心に大きく落ち込みました。

 一方で、当社グループの主力市場である日本の新築住宅市場においては、テレワーク需要の高まり等により、2021年(暦年)の新設住宅着工戸数が85万戸、前年比プラス5.0%となり回復基調が鮮明となっております。

 

 また、新型コロナウイルス感染症の影響は、半導体や物資の供給遅延、建築資材の高騰を誘発しており、新築住宅やリフォームの着工遅延、建築価格の上昇が顕著になっていることから、建築需要の減少につながることが懸念されております。

 加えて、我が国が抱える固有の課題である少子高齢化は、我が国の産業全体に影響を及ぼしており、住宅産業においては現場施工者の高齢化が加速すると共に、若年者の業界参入が進まないことから慢性的な人手不足となり、技能伝承や後継者育成といった根本的な課題を抱えております。

 

 更に、我が国でも地球温暖化による自然災害が多発しており、地球温暖化防止に貢献する脱炭素社会の実現に向けた取り組みも更に加速しなければなりません。

 電力やガスを扱うエネルギー業界においては、2016年4月の電力小売り自由化以降、新規参入企業との価格競争が激化しており、また、直近では世界的なインフレが加速する中、エネルギー燃料の価格高騰と相まって、厳しい経営環境が続いております。

 

 このような事業環境において電力ガス会社は、温室効果ガスの削減につながる脱炭素事業へとビジネスモデルを転換し始めており、太陽光発電システムや蓄電池といった電化設備に販路を広げ、自社の事業構造を変革し、時代の潮流に適したエネルギー会社への変貌を成し遂げようとしております。

 

 一方で、当社グループが設計拠点を置く中国国内においては、ゼロコロナ政策により経済面での影響はあるものの、中央政府による政策投資により底堅い成長をしております。

 不動産市場においては、投機につながる不動産投資の規制は年々強化されており、住宅においては実需が顕著になってきております。そのため住宅供給者であるデベロッパーも長期にわたる住宅品質の維持や機能的な建築商材を備えた住宅開発に力を注いでおり、日本式住宅建築システムの普及も近いと感じております。

 

 当社グループではこれらの課題に対応すべく、デジタル技術を活用した「建築DX×脱炭素」を経営戦略の基軸とし、新築・メンテナンス・リフォームの住宅3分野で相乗効果が発揮できるポートフォリオ経営を遂行することで、持続的な事業成長を目指してまいります。

 

2.D-TECH事業の業況と対策

 新築住宅の設備設計サービスが主体であるD-TECH事業を取り巻く経営環境としては、住宅産業が抱える構造的課題である少子高齢化等の影響により、中長期的には新設住宅着工戸数の下降トレンドは不可避であることが予想され、D-TECH事業においてはコスト競争力の強化と新たな付加価値サービスの創出につながる事業運営が求められております。

 

 このような事業環境の変化に対応するため、当社グループの主力設計拠点である吉林CADセンターにおいては、設計業務の自動化を継続的に進めており、設計業務の受付作業から自動納品までの一連のシステム開発に取り組み、設計業務のコスト削減につながる業務効率化が進捗しております。

 

 また、住宅産業は少子高齢化に対処するために抜本的な事業構造の変革に着手し、業務効率化と経営合理化を図る必要があります。当社グループが取り組むデジタル技術を活用したBIMクラウドサービスは、これらを解決する手段の1つです。BIMとは「ビルディング・インフォメーション・モデリング」の略称であり、設計データを3次元化し、そこに様々な属性情報を加えることで建築ライフサイクル全般を効率化することが可能になります。

 

 加えて、東京証券取引所のプライム市場へ上場する企業は、2022年4月よりTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示が求められることになります。

 TCFD提言では、企業に対して自社の気候関連リスク・機会を評価し、経営戦略及びリスク管理に反映させ、その財務上の影響を把握・開示することが要請されています。プライム市場上場企業は、当該情報開示に対応する中で、温室効果ガスの排出量を算出し、脱炭素社会の実現に向けて温室効果ガスの削減計画を立案し、計画を実行することが求められております。

 

 特に住宅産業はすそ野が広く、営業・設計・資材調達・現場施工・入居後の維持管理と、各スコープにおいて温暖化ガスの排出量を数字で把握し、削減計画を示す必要があります。これは既存の建築設計システムでは算出しづらいことから、BIMクラウドサービスを活用することで、TCFD開示に必要なデータを住宅関連企業へ提供するサービスを検討してまいります。

 

 このように、当社グループはデジタル技術を活用した「建築DX×脱炭素」によって住宅産業に関わるサプライチェーン全体の効率化と脱炭素化へつなげることで、建築TECH企業への変貌を遂げてまいります。

 

3.H-M事業の業況と対策

 当社グループが手掛けるH-M事業は、住宅のアフターメンテナンス全般に関わるハウスマネジメントサービスであり、既存住宅を対象としていることから積み上げ式のストック型ビジネスであることから、新型コロナウイルス感染症による業績影響は限定的でありました。一方で、住宅のアフターメンテナンスサービスは沖縄のコールセンターで対応しているため、テレワークによる感染防止対策や感染者が少ない地域で業務運営ができないという事業継続における課題が明らかになりました。

 

 これらの課題を解決するために、当社グループではデジタル技術を活用したCRMクラウドサービスと事業拠点の分散化に着手しております。CRMとは「カスタマー・リレーションシップマネジメント」の略称であり、電話によるメンテナンスサービスからアプリを活用したデジタルサービスに変革することで、居住後の様々な顧客ニーズに対応することが可能です。

 

 新築住宅の減少が鮮明になる中、当社グループの主要顧客である大手ハウスメーカーも既存顧客との関係性を活かしたリフォーム需要の創出に活路を見出そうとしております。

 そのためには居住者の修理データを「家歴」としてクラウド上で管理し、アプリを通じて居住者と住宅会社がコミュニケーションを図ることで、メンテナンスからリフォームへの好循環を図るサービスを提供してまいります。

 

 また、事業継続の観点から、2022年4月よりメンテナンスサービスの事業拠点を石川県の金沢市にも開設する予定であり、事業所を複数拠点化することで業務運営の安定化に努めてまいります。

 

4.E-Saving事業の業況と対策

 E-Saving事業は、東京電力エナジーパートナー社と当社との合弁で設立したTEPCOホームテック株式会社の電化事業が中心であり、再生可能エネルギーである太陽光発電システムや蓄電池などの電化設備工事が主力となります。

 

 脱炭素社会の実現に向けた取り組みは我が国のみならず世界的な潮流となっており、TEPCOホームテックが手掛ける電化事業に対する社会的な関心は高まっており、大手不動産会社や大手分譲住宅会社からの受託拡大が見込まれております。また、東京電力エナジーパートナー社としても、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速する中で、家庭部門においては電化設備と電気料金をパッケージにした新たな電化サービスの提供を開始しており、こちらもTEPCOホームテックの受託拡大に追い風となることから、当社グループとしてもTEPCOホームテックの電化事業を積極的に推進していく所存でおります。

 

 また、当社グループの戦略的施工会社であるENE's社におきましても、TEPCOホームテックを介した電化設備工事の受注拡大に努めてまいります。

 

5.海外事業の概況と対策

 当社グループでは、香港市場に上場している中国最大の住設管材メーカーであるCHINA LESSO GROUPと合弁で広東聯塑艾博科住宅設備設計服務有限公司を2011年に設立しております。CHINA LESSO GROUPは、配管材料では中国最大のシェアを誇り、またシステムキッチンなどの住設機器の製造や販売ネットワークを中国全土に有していることが強みであります。

 一方、当社グループが日本で展開する設備配管のプレファブ化ノウハウは、CHINA LESSO GROUP製品の販売増加にもつながることから、両グループの間で合弁会社を設立するに至りました。

 

 現時点においては、コロナウイルス感染症のため日中間での人の往来が制限され、十分な事業活動を果たすことができておりません。しかしながら当社グループの深圳BIMセンターが手掛けるBIMクラウドサービスによる設備配管のプレファブ化は、中国のマンションデベロッパーに対しても訴求力があるサービスと考えておりますので、CHINA LESSO GROUPとの合弁会社を中心に中国での事業展開を進めてまいります。

 

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