(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大により国内外の経済が大きく影響を受け、景気及び先行きは非常に厳しい状況が続く結果となりました。4月に入り政府による3度目の緊急事態宣言が発令され、さらに7月には4度目の宣言に至り、経済活動の停滞は著しく、大変厳しい状況となりました。国内における感染拡大は収束の兆しを見せているものの、ヨーロッパ諸国および韓国では第六波による再拡大も報告されており、楽観視できない先行きの不透明感が極めて強い状況となっております。
こうしたマクロ経済動向のなかではありますが、当社グループは中期経営計画(2019年10月期~2022年10月期)における「収益力の大幅向上」に向けて引き続き業態のトランスフォームを推進する方針を掲げております。当連結会計年度においても中期経営計画を羅針盤に事業を推進してまいりました。
当社グループは産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を使命とする一企業集団として、あらゆるサービスのデジタル化が進む時代に備え、引き続き、自らのビジネスモデルを変革し続けております。併せて、前連結会計年度に実施したライツ・オファリングによる調達資金を成長原資として、ダイナミックにケイパビリティの拡充を図ることを狙い、M&A及び資本業務提携と積極的な事業投資を進めております。
このような中、Eラーニング事業は他社のLMSからのリプレース案件が数件内定し、他方、営業手法の変更によるターゲット層の母集団の形成など新たな取り組みにも着手をしております。また、9月には株式会社FLOCが運営する「ブロックチェーン大学校」のブロックチェーン技術者育成カリキュラムを全て取得し、当社にて販売を開始しました。これにより当社の高度先端分野、とりわけブロックチェーン領域のEラーニングコンテンツは、国内随一の規模に至りました。アカデミー事業は、前連結会計年度から始まり2期目となりましたが、新型コロナウイルスの影響による業績不振からV字回復を成し遂げ、システムエンジニアリングの稼働率は目標としている96%を上回る結果となり、受託開発においては主にブロックチェーン技術を活用したシステムの開発実現などの成果に至りました。その結果、のれん償却額を含めたセグメント利益は通期で黒字を達成、安定的な収益体質へ回帰することができました。インキュベーション事業は、提携企業との協力のもとNFTマーケットプレイスの開発を引き続き継続し、先進技術を用いた新たなサービスアプリケーションの提供に向けて活動しております。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高1,621百万円(前年比237百万円のマイナス)、EBITDA△39百万円(前年は125百万円)、営業損失134百万円(前年は営業利益34百万円)、経常損失114百万円(前年は経常利益40百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失362百万円(前年は親会社株主に帰属する当期純利益154百万円)となりました。
① 経営成績及び財政状態の状況
(ⅰ)経営成績の状況
セグメント別の概況は以下のとおりであります。
当社のセグメント別の製品・サービス分類は次のとおりです。
クシムの法人向け学習管理システムである「iStudy LMS」及び「SLAP」は、新型コロナウイルスの影響により景況感の不安から、導入延期が続いたことにより売上が減少いたしました。
しかし新型コロナウイルスの蔓延が落ち着いたことにより、eラーニングを改めて導入検討する企業が増加しております。案件獲得に向けて丁寧な取り組みをした結果、受注には至りませんでしたが、内定を頂いている企業が複数ございます。
今後さらにオンプレミスの大型案件のリプレースニーズ及びリファラル営業手法による中小企業のニーズを積極的に取り込んでまいります。
eラーニングコンテンツは、IT基礎教育、コンプライアンス、IT資格系のコンテンツについては堅調な売上を上げております。2021年夏以降に販売を開始したブロックチェーンや、秘密計算などの先端技術系コンテンツについては、金融系のLMS既存顧客をはじめとする大手企業からのお問合せが多くあり、今後導入を加速させてまいります。
コンテンツ制作サービスについては、オーダーメイドeラーニングコンテンツの制作案件は堅調に推移しております。今後もお客様の多様なニーズにお応えするべく、引き続き対応してまいります。
イーフロンティアは、同社が保有するメールマガジン会員30万人に向けて、「iStudy LMS」及び「SLAP」を販売展開しております。同社はコンシューマ向け製品を中心にeコマース販売のみならず、法人販売、店頭販売も全国的に展開しており、近年ではこの販売網を活用し、ソフトウェアのみならず、パソコン周辺機器の販売にも注力を行っております。この7月では、新たにソフトウェア3製品の販売を開始しております。iPhoneで間違って消してしまったデータ等を復旧するソフトウェア「EaseUS i復元」、パソコンの画面表示を録画する「EaseUS画面録画」、古いハードドライブを新しいハードドライブにクローンし、データをそのまま使用することができるソフトウェア「EaseUSディスクコピー」の取扱いを始めております。それぞれ必要な場面ではとても快適に対応ができるソリューションソフトウェアとなっておりますので、お客様に使用場面などのご説明を含めて販売展開を進めております。また、同社は3DCGを製作するソフトウェア「Shade3D」を過去に開発しており、その際に並行して3DCGデータも数多く制作して保有しておりました。今回、保有する3DCG素材データの一部について売却を行っております。
以上の結果、売上高907百万円(前年比30百万円のマイナス)、EBITDA116百万円(前年比114百万円のマイナス)、セグメント利益88百万円(前年比116百万円のマイナス)となりました。
[アカデミー事業]
アカデミー事業は、引き続きニーズの高いオープン系を中心としたIT技術者の育成により、顧客システム開発の支援、エンジニア派遣事業を拡充し、また、グループシナジーを活かした高度IT人材の育成も強化してまいりました。その結果、通期において毎月黒字を達成し年間黒字となりました。
クシムソフトにおけるSES事業は、目標稼働率96%を掲げて年間活動した中で、結果として平均96.44%となり目標を上回りました。業界全体として新型コロナウイルスの影響によるプロジェクト凍結等が続く中でも、グループシナジーを活かし新しいマーケット開拓を続けた結果、上位スキル案件へのエンジニア参画が実現し、同時にエンジニアの市場価値の底上げに繋がる好循環が続きました。さらなる好循環として、市場価値の上がったエンジニアによって次案件へのリードタイムの短縮化も加速し部門黒字となりました。
受託開発も同様にグループシナジーを活かした案件獲得の中でも先端分野(AIやブロックチェーンを活用したシステム)に対する画面等の開発実現と、昨年度より取り組みを強化してきた会計パッケージのカスタマイズ案件の開発が遅滞なく納品完了しました。さらに過去の受託開発にて納めたシステムのバージョンアップ対応や新規受託開発案件の獲得等、順調に案件レコードが積み重なった結果、部門黒字となりました。受託開発においては、今後も拡大傾向は続きます。
ケア・ダイナミクスでは、介護事業者向けASPサービスを中心に、介護業界にIT技術を導入することで成長をしてきました。ASPサービスの「Care Online」は、介護現場における初の国保請求等の業務負荷軽減が出来るサービスであるため、2006年にサービスを開始以来、多くのユーザーにご利用いただいております。また、保守運営(一次受け)をクシムソフト島根事業所開発センターに移管したことで、一部外注していたメンテナンス業務を自社内で完結できるようになるなど、さらなる経営効率の改善を図りました。今後は「Care Online」のLIFE(※)対応、新たなブラウザ対応(Chrome、Edge、Safari)、他システムとの連携ならびにオプション機能開発など、システム開発に注力し、さらなる機能向上を図ってまいります。
以上の結果、売上高667百万円(前年比23百万円のマイナス)、EBITDA65百万円(前年比51百万円のプラス)、セグメント利益6百万円(前年はセグメント損失47百万円)となりました。
なお、クシムソフト及びケア・ダイナミクスの株式取得に伴うのれん償却額55百万円は当セグメント利益に含めております。
※ 科学的介護情報システム(Long-term care Information system For Evidence)の略称。2021年度(令和3年度)介護報酬改定において、エビデンスに基づく科学的に裏付けられた介護の実現のため、LIFEが本格稼働されました。
[インキュベーション事業]
インキュベーション事業においては、高い技術を有する法人との提携関係を継続しております。先端IT領域のラーニングコンテンツ制作や講師となる人材を要する有望なスタートアップのStake Technologies株式会社との業務提携、同領域にてユニークな事業モデルの構築にチャレンジしているチューリンガム株式会社との資本業務提携に加え、電子署名プラットフォームSecurityHub(経産省補助事業に採用)、ブロックチェーンプラットフォームBBc-1などを開発し社会貢献にも取り組む株式会社ゼタントとの業務提携における事業推進を引き続き進めております。
第4四半期連結会計期間においては、2022年2月頃のローンチを計画しているNFTマーケットプレイスの開発に引き続き着手をしております。アート・サブカルチャー・IP(知的財産)などを含む日本の文化をNFT(※)化し、ユーザー間で売買できるフロントエンドアプリケーションの開発を目指します。本アプリケーションはユーザーによるNFTの売買プラットフォーム機能に加え、ユーザー間の投げ銭機能も実装の上で納品する予定です。
インキュベーション事業は、これまで株主様向け議決権行使プラットフォーム、暗号資産のレンディングサービスアプリケーション、暗号資産を対象にしたAPI連携による自動トレーディングシステムなどの開発実績があります。引き続き、提携企業各社の先進性やノウハウを活用し、先端技術を応用するシステム開発請負の獲得をすることで確かな実績につなげていく所存です。暗号資産投融資事業につきましては、行使価額修正条項付株式会社クシム第9回新株予約権の行使による調達資金を充当し、2021年11月より本格的な運用を開始しております。コロナ禍の影響につきましては、マクロ経済全体の減退による影響を受ける可能性があり、今後も事業への影響を注視し、早期の対策を講じてまいります。かつ、案件の採算性を見極め、利益率の高いプロジェクトに経営資源の投下を図っていく次第です。
以上の結果、売上高83百万円(前年比176百万円のマイナス)、EBITDA17百万円(前年比44百万円のマイナス)、セグメント利益10百万円(前年比46百万円のマイナス)となりました。
なお、クシムインサイトの株式取得に伴うのれん償却額6百万円は当セグメント利益に含めております。
※ Non-Fungible Tokenの略語。代替の可能性のないブロックチェーン上のトークンです。
(ⅱ)財政状態の状況
(資産の部)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ1,413百万円増加し、3,794百万円となりました。
流動資産の残高は、前連結会計年度末に比べ1,022百万円増加し、1,962百万円となりました。これは主に、現金及び預金が1,140百万円増加し、売掛金が211百万円減少したことによるものであります。
固定資産の残高は、前連結会計年度末に比べ390百万円増加し、1,832百万円となりました。これは主に、投資有価証券が529百万円増加し、敷金及び保証金が43百万円、のれんが61百万円減少したことによるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ105百万円減少し、728百万円となりました。
流動負債の残高は、前連結会計年度末に比べ137百万円減少し、283百万円となりました。これは主に、買掛金が90百万円減少したことによるものであります。
固定負債の残高は、前連結会計年度末に比べ32百万円増加し、444百万円となりました。これは主に、繰延税金負債が113百万円増加し、長期借入金が63百万円減少したことによるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ1,518百万円増加し、3,066百万円となりました。これは主に、資本金が839百万円、資本剰余金が839百万円増加したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ1,140百万円増加し、1,692百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは49百万円のマイナス(前連結会計年度は109百万円のプラス)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益△351百万円、投資有価証券評価損184百万円、売上債権の減少額211百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは380百万円のマイナス(前連結会計年度は561百万円のマイナス)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出370百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは1,569百万円のプラス(前連結会計年度は66百万円のマイナス)となりました。これは主に、株式の発行による収入1,637百万円、長期借入金の返済による支出47百万円によるものであります。
該当事項はありません。
当連結会計年度における仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2 仕入実績の金額は、製品仕入高、商品仕入高、製品ロイヤリティー仕入高の金額を合計しております。
該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、会計上の見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的な見積り金額を判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、異なる可能性があります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。
売上高は、1,621百万円となりました(前連結会計年度に比べ237百万円のマイナス)。その主な要因については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
売上原価は、1,242百万円となりました(前連結会計年度に比べ81百万円のマイナス)。主な費用及び金額は、外注費・業務委託費761百万円、賃金190百万円、賃借料39百万円等であります。販売費及び一般管理費は、513百万円となりました(前連結会計年度に比べ13百万円のプラス)。主な費用及び金額は、給料手当及び賞与99百万円、役員報酬45百万円、支払報酬73百万円、のれん償却費61百万円等であります。これらの結果、営業損失は134百万円(前連結会計年度は営業利益34百万円)となりました。
営業外収益は、32百万円となりました(前連結会計年度に比べ24百万円のプラス)。主な収益及び金額は、助成金収入23百万円、受取利息5百万円によるものであります。営業外費用は、12百万円となりました(前連結会計年度に比べ9百万円のプラス)。主な費用及び金額は、投資事業組合運用損9百万円、支払利息2百万円によるものであります。特別利益は、0百万円となりました(前連結会計年度に比べ134百万円のマイナス)。主な収益及び金額は、固定資産売却益0百万円であります。特別損失は237百万円となりました(前連結会計年度に比べ218百万円のプラス)。主な費用及び金額は、投資有価証券評価損184百万円、事業撤退損41百万円であります。これらにより、親会社株主に帰属する当期純損失は、362百万円となりました(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益154百万円)。
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
当社グループは、2022年より自らブロックチェーン技術や暗号技術を用いた革新的なサービスを提供する企業グループに変革してまいりますので、「ブロックチェーンサービス事業」を新たな中核事業として位置付け、以下の重点施策を遂行し、社会課題の解決と事業成長の両立を目指してまいります。
○ブロックチェーン領域に特化したHR(教育・キャリア形成)サービスへのシフト
優秀なエンジニアの次なるキャリア形成を支援
クリプト分野への転職や教育コンテンツの提供、投資教育を支援するメディア運営に注力
○ブロックチェーン領域のR&Dからシステム開発まで一気通貫した体制を構築
ブロックチェーン領域のテーマに対する基礎研究
グローバルで先進的なプロダクトやプロジェクトを積極的に扱う
○暗号資産およびクリプト関連企業への投融資
シナジーが見込める法人およびプロジェクトへの出資や純投資、暗号資産の投融資にて総資産を拡大
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。
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