課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

当社は2019年度に、2027年に向けた新たなキリングループ長期経営構想である「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)を策定しました。また、KV2027の実現に向けた長期非財務目標として、社会と価値を共創し持続的に成長するための指針「キリングループCSVパーパス」(略称:CSVパーパス)を策定しました。

 

長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」

キリングループは、グループ経営理念及びグループ共通の価値観である“One KIRIN”Values のもと、食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となることを目指します。

 


 

食から医にわたる領域における価値創造に向けては、既存事業領域である「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループならではの強みを活かした「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げました。「ヘルスサイエンス領域」では、キリングループ創業以来の基幹技術である発酵&バイオテクノロジーに磨きをかけ、これまで培ってきた組織能力や資産を活用し、キリングループの次世代の成長の柱となる事業を育成していきます。また、社会課題の解決をグループの成長機会と捉え、イノベーションを実現する組織能力をより強化し、持続的な成長を可能にする事業ポートフォリオを構築していきます。

 


 

持続的成長のための経営諸課題「グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM」

キリングループは、社会とともに、持続的に存続・発展していく上での重要テーマを、「持続的成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM)」に整理しており、事業へのインパクトとステークホルダーへのインパクトの2つの観点から評価しています。GMMは時間の経過とともに変化していくものと捉え、中期経営計画策定(3年)ごとに再評価し、改訂しています。

2022年中期経営計画の策定に合わせ、新型コロナウイルス感染症の拡大をはじめとする環境変化やステークホルダーからの期待を踏まえて、GMMの粒度を細分化して重要性を再評価することにより、社会的要請への適合度を高めました。

 


※各象限内の重要性に差異はありません。

 

「キリングループCSVパーパス」

GMMの再評価において、「酒類メーカーとしての責任」を果たすことを前提に、「健康」「コミュニティ」「環境」の4領域を「CSVパーパス」と改めて定めました。新型コロナウイルス感染症の拡大等により、人と人とのつながりが希薄化し、コミュニティの重要性が再認識されたことを踏まえて、「地域社会・コミュニティ」を「コミュニティ」へと再定義しました。様々な形での人と人のつながりを広義に捉え、人々のウェルビーイングやソーシャルキャピタルの実現を通して、CSV経営を推進します。また、具体的なアクションプランをCSVコミットメントとして、成果指標を会社別により具体化して目標値を設定し、グループ各社の取り組みに繋げています。

 CSV重点課題

 CSVパーパス

 酒類メーカーとしての責任

全ての事業展開国で、アルコールの有害摂取根絶に向けた取り組みを着実に進展させる。(Zero Harmful Drinking)

 健康

健康な人を増やし、疾病に至る人を減らし、治療に関わる人に貢献する。

 コミュニティ

人と人のつながりを創り、「心と体」に、そして「社会」に前向きな力を創り出す。

 環境

ポジティブインパクトで持続可能な地球環境を次世代につなぐ。

 

 


 

(参考)

・持続的な成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス)

URL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/materiality/

・キリングループ CSVパーパス

URL https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/csv_purpose/

・キリングループ CSVコミットメント

URL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/csv_management/commitment/

 

 

(2)中長期的な経営戦略と目標とする経営指標

 

キリングループ2022年-2024年中期経営計画

近年、世界各地で起こる異常気象、天候不順など、社会システムを大きく揺るがす環境変化が続きましたが、特に2020年以降は、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、生活者の意識は大きく変化しました。このような環境下においても、キリングループは、新型コロナウイルスの影響を最小限に抑え、新たな社会課題に向き合ってきました。KV2027の実現に向けた最初の3カ年計画「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」(略称:2019年中計)では、食、ヘルスサイエンス、医の各ビジネス領域で、新たな成長軌道に向けた変革の基盤づくりに取り組みました。さらに、各ビジネスが健全に成長できるよう、コーポレートガバナンス体制を強化するなど、2022年度から始まる新たな中期経営計画を実行する準備を整えることができました。

 


 

 2019年中計期間中に起きた外部環境の変化を受けて、改めて当社が目指すKV2027の方向性に間違いはなく、10年後に想定していた社会が前倒しで到来していると認識しており、2027年までの長期経営構想の第2ステージとなる「キリングループ2022年-2024年中期経営計画」(略称:2022年中計)は、変革の基盤づくりを行った2019年中計から、新たな成長軌道へシフトし、KV2027実現に向けた成長ストーリーを固めていくステージとなります。食、ヘルスサイエンス、医の3領域の成長により企業価値を向上させるべく、ポートフォリオマネジメントを強化し、投資の優先順位を明確にすることで経営資源を集中していきます。

 


 

(基本方針)

2021年度までに実現した成果を基礎とし、ポストコロナを見据えた事業構造改革の実行と新たな価値創造により、成長を加速させます。

 

(重点課題)

①キャッシュ創出をリードする食領域での利益の増大

②将来の大きな柱となるヘルスサイエンス領域での規模の拡大

③グローバル・スペシャリティファーマの地位を確立する医領域でのグローバル基盤の強化

 

(重要成果指標)

2022年中計の財務指標について、平準化EPS成長による株主価値向上を目指すと共に、成長投資を優先的に実施する3ヵ年の財務指標としてROICの採用を継続します。非財務目標については、CSVを経営の根幹にすえる当社にふさわしいものとして、より直接的に経済的価値に繋がる指標に変更しました。項目としては、環境、健康、従業員にフォーカスをあて、それぞれ事業の成長に繋がる指標を設定しています。引き続き、社会課題の解決を通じて企業価値向上を目指していきます。

 

   1.財務目標※1

・ROIC※2

2024年度

10%以上

・平準化EPS※3

年平均成長率

11%以上

 

※1 財務指標の達成度評価にあたっては、在外子会社等の財務諸表項目の換算における各年度の為替変動による影響等を除く。各事業の重要成果指標には事業利益、ROAを使用。

※2 ROIC=利払前税引後利益/(有利子負債の期首期末平均+資本合計の期首期末平均)

※3 平準化EPS=平準化当期利益/期中平均株式数
           平準化当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益±税金等調整後その他の営業収益・費用等

 


 

 

   2.非財務目標


 

(財務方針)

中計3年間で創出する営業キャッシュ・フローの総額は約7,000億円を想定しています。資金使途として最も優先順位の高い配当金については、平準化EPSに対する配当性向40%以上を継続し、2,300億円を予定しています。2019年中計では、設備投資計画を3,100億円としましたが、2022年中計では基盤投資・成長投資に区分した上で、合計約4,000億円に増額しました。通常の設備投資に加え、3領域の新たな成長に向けた投資枠として区分し、ウェイトを高めることで企業価値向上に繋げます。

オーガニック成長に加え規模の拡大を目指すべく、M&A投資の機会についても探索します。特に、規模の拡大を目指すヘルスサイエンス領域においては、国内外で幅広く機会を検討していきます。なお、M&A投資を行う際の原資は、バランスシートのスリム化やポートフォリオマネジメントによるノンコア事業の売却で賄うことを基本とします。

 


M&Aを除く事業領域ごとのキャッシュ・フロー計画として、食領域では、投資額を一定水準に抑えた上で、利益成長による営業キャッシュ・フローの最大化を目指します。ヘルスサイエンス領域では、中長期的な営業キャッシュ・フロー最大化に向けた設備投資を行うとともに、2024年度のフリー・キャッシュ・フローの黒字化を目指します。医領域については、グローバル戦略品の成長により営業キャッシュ・フローが順調に拡大する計画ですが、グローバル・スペシャリティファーマとしての持続的成長に必要な生産・営業基盤をグローバルレベルで整えるべく、必要な設備投資を進めていきます。

 


 

キャッシュ・フロー計画に加え、2022年中計ではバランスシートマネジメントを重視します。2021年に導入したグローバルキャッシュマネジメントシステムを通じて、国内外のグループ会社が保有するキャッシュの一元管理による運転資金の最適化や、SCM※4の効率化によるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善などにより、中計3年間で約1,000億円規模のキャッシュを創出します。

また、事業ポートフォリオについては、取締役会での継続的な議論により、ノンコアと判断した事業の売却を検討していきます。

これら、バランスシートマネジメント、ポートフォリオマネジメントにより創出したキャッシュは、将来の成長ドライバーを獲得するためのM&A投資に優先して振り向けます。一方、自己株式の取得を中心とする追加的株主還元については、投資機会や、キャッシュイン/アウトのバランスを考慮しながら機動的に判断していきます。

 

※4 サプライ・チェーン・マネジメント(Supply Chain Management)の略。原材料の調達、工場での生産、商品の需給・物流の供給連鎖を効率よく構築し管理することを指す。

 


 

(非財務方針)

2022年中計基本方針に従い、非財務への取り組みもより強化していきます。ポストコロナを見据えた「イノベーションを実現する組織能力」の強化や、キリングループのDNAである品質本位の徹底、効率と持続可能性を両立するSCM体制の構築、価値創造を支えるガバナンスの強化により、強固な組織基盤を構築します。また、経済価値へ直接的につながるように、組織能力強化に加えてステークホルダーからの期待を踏まえ、非財務目標を再設定しました。価値創造モデルのInput~Business~Outputを強化し、より大きなOutcome創出に繋げ、CSV経営を推進します。

 

●非財務の推進体制

キリングループでは、CSV経営を積極的・自主的に推進していくため、キリンホールディングス社長を委員長とするグループCSV委員会を設置し、CSVの方針・戦略及び取り組み計画策定のための討議や、計画実行状況のモニタリングを行っています。また、グループCSV委員会で決定したCSVの方針・戦略の実効性を高めるため、キリンホールディングス各部門及び主要事業会社企画部門の実務担当者で構成されるCSV担当者会議を設置し、情報共有と意見交換を行っています。(図1参照)

更に、グループCSV委員会傘下に、グループ横断の会議体であり、CSV戦略担当役員を議長とするグループ環境会議、人事総務戦略担当役員を議長とするグループ人権会議及びグループ健康経営推進会議を設定し、サステナビリティを巡る個別課題への対応を促進しています。(図2参照)

 

 

(図1)


 

(図2)


 

 

●非財務情報の開示

キリングループは、気候変動に関わる問題をはじめとして、社会と企業に与えるリスクと機会や戦略のレジリエンスを評価し、幅広いステークホルダーへ積極的な情報開示を行っています。

[TCFDへの対応]

 キリングループは、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年に公表した提言を踏まえ、2018年にいち早くシナリオ分析とその開示を開始し、日本の食品会社として初めてTCFD提言への賛同を表明しています。2020年にはシナリオ分析の結果をインプットとして、長期戦略「キリングループ環境ビジョン2050」を策定し、緩和・適応及び事業機会に対する戦略にも反映させています。2022年中計からはグループ非財務目標、CSVコミットメントにも反映して更新し、取り組みを加速させます。

 

項目

内容

ガバナンス

キリングループは、気候変動問題を含めた環境全体の基本方針などの重要事項は取締役会で審議・決議し、SBT1.5℃目標へのアップグレード、RE100への加盟などの目標設定は、経営戦略会議で審議・決議します。GHG排出削減量を含む環境目標は非財務KPIの1つであるCSVコミットメントに設定して各事業会社の経営計画に組み込むとともに、達成状況はキリンホールディングスの取締役(社外取締役を除く)及び執行役員の業績評価に反映されます。

グループ横断的な環境問題への対応はキリンホールディングスの社長を委員長、主要事業会社の社長やキリンホールディングスの機能部門担当役員を委員とする「グループCSV委員会」でも議論し、決定事項は取締役会に上程されます。環境経営の進捗状況や環境課題に関わる事業のリスクと成長機会は、毎年取締役会に報告し、レビューします。

戦略

2015年のパリ協定締結、2018年のIPCC「1.5℃特別報告書」やシナリオ分析の結果を受けて、キリングループは長期戦略である環境ビジョンを改定してストレッチした目標を定め、経営戦略に組み込みました。緩和策としては、2050年までのバリューチェーン全体のGHG排出量ネットゼロ実現に向けてSBT1.5℃目標へアップグレードし、再生可能エネルギーの拡大や省エネルギーにより移行リスクに対応します。GHG排出量削減については損益中立※5を原則として、再生可能エネルギーは追加性※6を重視し、SBT1.5℃目標の達成に向けたロードマップを策定して取り組みを進めています。適応策としては、大麦に依存しない代替糖の活用技術や植物大量増殖技術、用水削減技術、持続可能な農園認証の取得支援などで物理的リスクに対応します。熱中症や感染症の拡大など気候変動がもたらす社会課題に対しては、ソリューションとなる商品の提供を通じて社会課題の解決に貢献します。

 

リスクと機会

リス

クと

機会

のタ

イプ

影響

を受

ける

項目

財務インパクト

対応戦略

物理

的リ

スク

農産物収量減・調達コスト

収量減による農産物調達コストインパクト(2050年)


 

・大麦に依存しない醸造技術

・植物大量増殖技術

・持続可能な農園認証取得支援


植物大量増殖技術 認証農園茶

使用商品

 

移行

リス

カーボンプライシング・エネルギー調達


 

 

中長期的な損益中立でのGHG排出量削減

機会

(製品サー

ビス・

市場)

感染

症に

晒さ

れる

人口

2030年のアジアの免疫関連市場が7,500億円程度に拡大予想

免疫を維持する商品での貢献


 

 

 

 


 


 

リスク

管理

キリングループは グループリスク・コンプライアンス委員会を設置し、四半期ごとにリスクモニタリングを行うなどして、気候変動関連のリスクも含めてリスクマネジメントを統括しています。一方で、影響度と発生確率でリスクの重要度を判断する従来型のリスク管理手法だけでは気候変動リスクの把握には十分ではない可能性も踏まえ、発生した場合に事業に極めて大きな影響を与えるリスクについては、グループCSV委員会等を通じてシナリオを設定して分析・評価することで重要リスクを抽出・検討する新しいアプローチも取り入れています。

指標と

目標

キリングループは、2050年までのバリューチェーン全体のGHG排出量ネットゼロを目標として設定しました。中期目標としては、GHG削減目標を2030年までに2019年比でScope1+2で50%削減、Scope3で30%削減に上方修正(SBT1.5℃目標認証取得)し、使用電力の再生可能エネルギーを2040年に100%(RE100加盟)として設定しました(いずれも2020年に実施)。

持続可能な農園認証の取得支援等の適応策、感染症への対策商品の供給といった事業機会への対応は、各事業会社がCSVコミットメントとして目標に落とし込み、ロードマップを定めて取り組んでいます。

 


目標

進捗状況



 

 

※5 損益中立:コスト削減効果の高い省エネ施策を早期に実施し、創出する利益の範囲内で再エネ調達を行うこと

※6  追加性:社会における気候変動の緩和を促進するために、新たな再生可能エネルギー電源を世の中に追加し供給量を増やすこと

 

(コーポレートガバナンス)

重要成果指標(財務目標・非財務目標)及び単年度連結事業利益目標の達成度を役員報酬に連動させることにより、株主・投資家との中長期的な価値共有を促進しています。

 

  [業績評価指標]

・年次賞与

連結事業利益※7、個人業績評価

・信託型株式報酬※8

平準化EPS、ROIC、非財務評価※9

 

※7 売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、事業の経常的な業績を測る利益指標です。

※8 業績評価期間の翌年に業績目標の達成に応じたポイントを付与し、原則として、業績評価期間の開始から3年が経過した後の一定の時期に付与されたポイントに相当する数の株式が交付されます。

※9 非財務評価は、CSVコミットメントの進捗及び達成状況の評価とし、4つの重点課題(「酒類メーカーとしての責任」、「健康」、「コミュニティ」、「環境」)に応じた取組みを総合的に評価したものです。

 

 

(3)会社の対処すべき課題

キリングループは、新型コロナや気候変動のような顕在化している社会課題の解決を成長機会と捉え、変革し続けることが大事だと考えています。2022年中計においてもKV2027の基本的な方向性は変えず、CSV経営を進め、既存事業の強化と新たな価値創造を図っていきます。具体的には、①「食領域」の利益増大、②「医領域」のグローバル基盤強化、③「ヘルスサイエンス領域」の規模拡大、の3領域で、成長投資・戦略投資を行い、持続的成長を目指します。

KV2027の目標達成に向けて、「イノベーションを実現する組織能力」の強化に引き続き取り組みます。また、キリングループのDNAである品質本位の徹底、効率と持続可能性を両立するSCM体制の構築、価値創造を支えるガバナンスの強化によって、強固な組織基盤を構築します。これらの取り組みを通して、2024年までの平準化EPS年平均成長率11%以上 ※1 、2024年時点でのROIC10%以上という財務目標を達成し、KV2027への新たな成長軌道を実現します。

※1 基準は2021年度

 

   ①食領域

「食領域」においては、強固なブランド体系の構築、収益力・財務基盤の強化、そして新規ビジネスの探索・拡大を実現します。

キリンビール㈱は、主力ブランドの「 一番搾り 」、健康志向に応える「 キリン一番搾り 糖質ゼロ 」、高付加価値で収益性の高い「 スプリングバレー 豊潤<496> 」への投資を強化し、強固なブランド体系を構築します。「 キリン ホームタップ 」は、クラフトビールのラインアップを強化することでサービスの魅力をさらに高め、クラフトビール市場の魅力化・活性化を目指します。RTDカテゴリーでは「在宅時間の充実」に対応する高付加価値ブランドの展開を強化します。

ライオン社はマーケティング改革とサプライチェーン最適化等を通じた収益性改善に注力します。さらに、北米・豪州におけるクラフトビール事業の成長加速に向けて、買収したクラフトビール事業の統合とシナジー創出を進めます。

メルシャン㈱は新たな輸入ワインブランドとして「 メルシャン・ワインズ 」を立ち上げます。環境への配慮等、持続可能なワインづくりに真摯に取り組むワイナリーと、日本人の味覚に合う高品質な輸入ワインを共創し、ワインが本来持つ価値を再発信し、ワイン市場の魅力化を実現します。

キリンビバレッジ㈱は、選択と集中による既存飲料事業の収益強化を実現します。同時にCSV経営を一層進め、ヘルスサイエンス領域を強化し、健康に貢献する飲料企業への変革を推進します。既存飲料事業において、「 午後の紅茶 」は、「 おいしい無糖 」の育成に注力し、微糖も含めた「摂りすぎない健康」領域の拡大で、ブランドの再成長を実現します。「 生茶 」は、再生ペット樹脂を使用した商品展開を進めるなど、「健康」と「環境」に貢献するブランドとして、社会とお客様からの共感獲得を目指します。ヘルスサイエンス領域では、3月から全国発売するヨーグルトテイストの100mlペットボトル飲料「 キリン iMUSE 朝の免疫ケア 」を加えた「プラズマ乳酸菌」配合飲料を展開拡大します。さらに、㈱ファンケルとの商品開発をさらに進めることで、お客様の健康に貢献し、新たな市場開拓を進めていきます。

コーク・ノースイースト社は、継続的に安定的な高収益を生み出せる体制を構築します。収益性の高い炭酸飲料市場での更なるシェア向上や、他の飲料カテゴリートレンドも見据えたスピード感をもった流通対応を継続します。加えて顧客ニーズの変化への対応、社内の業務効率化を促進させるDX ※2 の強化を行います。

※2 「デジタルトランスフォーメーション」の略称です。進化したデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をより良く

     変革することです。

 

②医領域

近年の製薬業界を取り巻く環境は、薬剤費抑制策の推進、後発品の使用促進等による医薬品への支出減少、新薬開発におけるコスト増加とプロセスの複雑化等、厳しい変化が起きています。一方で、新薬の優先審査制度の登場等のイノベーションを評価する制度の拡充や、科学技術の進歩により革新的な治療を可能にする新たな創薬手法の開発を後押しする動きもあります。アンメットメディカルニーズ ※3 に対する画期的な医薬品は依然として世界中で待ち望まれています。さらにはデジタル技術の進展や顧客との接点の多様化等、社会環境が大きく変化する中で、新しい医療ニーズも生まれています。このような環境下において、「 Crysvita 」、「 Poteligeo 」、「 Nourianz 」のグローバル戦略品に加え、「 KHK4083 」、「 ME-401 (一般名: zandelisib) 」、「 KW-6356 ※4 といった次世代戦略品や、「 KHK7791 (一般名: tenapanor )」 ※5 、「 RTA402 (一般名: bardoxolone methyl )」 ※6 などの国内市場向け新薬の開発も推進します。2030年に向けたビジョン、及び達成に向けた戦略を実行することで、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして更なる事業成長を実現します。

※3 いまだ満たされていない医療ニーズを指します。

※4 「 KW-6002 」(日本製品名 「 ノウリアスト 」)の次世代品のパーキンソン病向けの治療薬です。

※5 血液透析患者向けのリン吸収を阻害する治療薬です。

※6 アルポート症候群、糖尿病性腎臓病患者向けの治療薬です。

 

③ヘルスサイエンス領域

キリングループは、KV2027において、「食領域」と「医領域」に加え、「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げ、CSV経営において重要な「健康」という社会課題に取り組んできました。2020年以降、世界的規模で新型コロナの感染拡大が続く中、健康・未病への関心はより一層高まっています。当社はこれを新たな機会と捉え、2022年中計ではヘルスサイエンス領域への投資を強化し、同領域の規模拡大を図ります。またさらなる事業の成長に向けて、新たな成長機会も探索していきます。特に「免疫」領域の「プラズマ乳酸菌」の展開拡大を足掛かりに、「脳機能」、「腸内環境」領域への成長に繋げます。

中計初年度となる2022年は、「プラズマ乳酸菌」事業の拡大加速に引き続き注力します。幅広い層のお客様が日常的に「プラズマ乳酸菌」を摂取できるように商品ラインアップを拡充します。さらに習慣化しやすいヨーグルトやサプリメントの展開を強化し、「免疫ケア」習慣のさらなる定着を目指します。事業の拡大に伴い「プラズマ乳酸菌」菌体の製造設備や、キリンビバレッジ㈱湘南工場における飲料製造ラインの増強も行います。またマラヤ大学の研究拠点において、熱帯感染症に対する「プラズマ乳酸菌」の効果検証等も進めていきます。

海外市場では、協和発酵バイオ㈱によるBtoB事業を加速させます。「プラズマ乳酸菌」は米国・東南アジアを中心に、「シチコリン」 ※7 は米国での販売を強化します。独自の発酵技術で、世界初となる大量生産に成功した「ヒトミルクオリゴ糖」 ※8 は、海外での上市を目指し、2022年にタイの自社工場で生産を開始します。また「オルニチン」を中心とした「活力」領域での事業展開にも精力的に取り組みます。新規事業探索や社内ベンチャー、コーポレートベンチャーキャピタル ※9 も推進し、あらゆる接点で、お客様の「健康」に関する社会課題を解決していきます。

㈱ファンケルとは、両社の素材や技術を活用した共同研究・新商品開発に引き続き取り組みます。さらに㈱ファンケルの強みである通信販売事業の知見をキリングループ内で活用するほか、人材交流による組織能力強化等を進めることで、シナジー創出を目指します。

これらの取り組み実行度を高めるため、ヘルスサイエンス領域の戦略・事業連携を統括する「ヘルスサイエンス事業本部」を2022年春に設置します。グループ内のシナジー創出に向けたガバナンス体制の強化、戦略の浸透・実行のスピード向上につなげます。

※7 脳や神経細胞にある細胞膜を維持する働きを持つ、体内に存在する成分で、世界各国で長年にわたり脳疾患の治療薬や認知機能の向上をサポートする健康食品等に利用されている素材です。日本では現在、医薬品に分類されています。

※8 母乳に含まれるオリゴ糖の総称です。現在250種類以上が母乳中に含まれており、「免疫」、「脳機能」等に寄与する研究成果が報告されています。

※9 事業会社が自己の資金を拠出することで、ファンドを組成しスタートアップ企業に投資をすることや、スタートアップ企業に投資するための組織のことを指します。多くの事業会社は、自社の事業内容と関連性のある企業に投資し、シナジー創出や新規事業創出を目指しています。

 

なお、ミャンマー・ブルワリー社については、1年にわたり、当社主導でビール事業を通じてミャンマーの社会・経済に継続して貢献することを目指し、ミャンマー・エコノミック・ホールディングス社(MEHPCL)との合弁解消を求めてまいりました。しかしながら、MEHPCLとの協議やシンガポールでの仲裁提起などを通し、当社が望む形で直ちに合弁を解消することは困難であると判断しました。当社としては合弁解消を早期に図ることを最優先とし、当社がミャンマー事業から撤退する方針のもとに現在MEHPCLとの協議を進めています。撤退計画の策定にあたっては、現地の従業員とその家族の生活と安全を重視し、当社人権方針に基づきステークホルダーの皆様に配慮してまいります。

また、当年度に計上した減損損失反映後のミャンマー事業の資産残高は、負債及び非支配株主持分控除後で約120億円あり、当該残存資産が回収不能となった場合、2022年以降に損失として計上される可能性があります。加えて、ミャンマー事業から生じた在外営業活動体の換算差額約190億円が資本の部に計上されており、ミャンマー事業撤退が決定した場合に損失として純損益に振り替えられる予定です。

 

最後に、KV2027の達成と企業の持続的成長に向け、当社取締役会では最適な事業ポートフォリオの検討を定期的に議論しています。事業ポートフォリオ変革に、外部から高い評価を頂いているガバナンスを効かせることで、食から医にわたる領域で価値創造を加速させていきます。

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