(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による影響が長引くなか、個人消費の回復は遅く、さらに原材料価格の高騰に加え年度末に向け急激な円安が進むなど、先行きの不透明感が増しております。海外においては、地域差はあるものの新型コロナウイルス感染症による行動制限は緩和され経済活動の回復が期待される一方、米中貿易摩擦の長期化、ロシアによるウクライナ侵攻に起因する世界的なサプライチェーンの混乱、資源価格の高騰など経済の先行きを見通すことは困難な状況が続いております。
このような経済状況のなか、当社グループは、2020年5月に公表した長期経営構想「TaKaRa Group Challenge for the 100th」の実行計画の第1ステップとしての「宝グループ中期経営計画2022」に取り組んでまいりました。新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、環境変化に柔軟に対応しつつ強化すべき領域へ経営資源の配分と投下を行い、収益力を高める多様な「価値」を生み出し続ける事業構造とグローバルなコーポレート機能の再構築に注力してまいりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、収益認識に関する会計基準等の影響を吸収し、売上高は300,918百万円(前期比8.1%増)と増収となりました。また、売上総利益113,541百万円(同1.8%減)、営業利益43,354百万円(同100.8%増)、経常利益43,230百万円(同97.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益20,769百万円(同96.4%増)と、同会計基準等の影響を受けない営業利益以下は大幅な増益となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
〔宝酒造〕
国内の人口減少や高齢化の影響などからアルコール総消費数量の減少傾向が続くなか、コロナ禍によって変化した消費スタイルが定着しつつあります。また、資源価格の高騰に加え円安の進行により、原材料価格の上昇に歯止めがかからない状況となっております。
このような状況のもと、宝酒造は、新型コロナウイルス感染症の感染予防、拡大防止に留意しつつ、食品メーカーとして安全・安心な商品の安定的な供給を最優先に取り組むとともに、SDGsを意識した商品など消費者ニーズを捉えた高付加価値商品の育成と、徹底的なコスト削減に取り組んでまいりました。しかしながら、昨年5月にはチューハイ製品の大規模な自主回収が発生したことを踏まえ、改めて品質管理の徹底を行っております。
当セグメントのカテゴリー別の売上状況などは次のとおりであります。
なお、カテゴリー別の売上にかかる記述は収益認識に関する会計基準等適用前の金額をもとに記載しております。また、当セグメント業績に記載の金額は同会計基準等適用後のものであり、営業利益を除き前期比較は記載しておりません。
焼酎では、本格焼酎が料飲店の営業自粛の影響を受け減少するなどしたため、焼酎全体では若干の減収となりました。清酒では、海外市場の回復に伴い輸出向けが増加したものの、料飲店の営業自粛の影響もあり、清酒全体では減収となりました。ソフトアルコール飲料では、“タカラ「焼酎ハイボール」”が引き続き増加基調を維持したものの、製品自主回収の影響を受け高付加価値レモンサワーが減少したため、ソフトアルコール飲料全体では若干の減収となりました。調味料では、本みりん、料理清酒などが増加したため、調味料全体では増収となりました。原料用アルコール等では減収となりました。
以上の結果、宝酒造の売上高は、収益認識に関する会計基準等の影響△29,000百万円を含め119,710百万円となりました。売上原価は90,898百万円となり、売上総利益は28,811百万円となりました。販売費及び一般管理費は、同基準等の影響△29,000百万円を含め24,676百万円となりましたので、営業利益は4,135百万円(前期比15.2%減)と減益となりました。
〔宝酒造インターナショナルグループ〕
宝酒造インターナショナルグループは、日本からの酒類の輸出や海外各地で酒類の製造・販売を行う海外酒類事業と海外の日本食レストランや小売店に日本食材などを販売する海外日本食材卸事業を展開しております。前期減収の要因となった新型コロナウイルス感染症による影響は、ワクチンの普及などに伴い、地域差はあるものの徐々に緩和しております。
当セグメントの売上状況などは次のとおりであります。
海外酒類事業
ウイスキーはプレミアムバーボン“Blanton's”が引き続き好調に推移し、スコッチウイスキー“Tomatin”も売上を伸ばしました。清酒など和酒の売上もコロナ禍の影響を大きく受けた前期から回復し、日本からの輸出も増加したため、海外酒類事業の売上高は14,063百万円(前期比39.2%増)となりました。
海外日本食材卸事業
コロナ禍にあって、小売店向けの販売強化やネット販売の拡大などに努めたことに加え、主要都市でのレストラン営業再開に伴い売上は急回復し、海外日本食材卸事業の売上高は89,728百万円(前期比48.5%増)となりました。
以上の結果、セグメント内取引消去後の宝酒造インターナショナルグループの売上高は102,186百万円(前期比46.8%増)と円安の効果も含め大幅な増収となりました。売上原価は70,045百万円(同43.0%増)となり、売上総利益は32,140百万円(同56.0%増)となりました。販売費及び一般管理費は、売上の増加に伴い人件費や物流費の増加はありましたが23,667百万円(同21.0%増)にとどまったため、営業利益は8,472百万円(同712.1%増)と大幅な増益となりました。
〔タカラバイオグループ〕
タカラバイオグループは、試薬・機器事業とCDMO事業を通じ、バイオ創薬基盤技術開発を進め、新モダリティを継続的に創出する創薬企業を目指した取り組みを推進いたしました。また、新型コロナウイルスのPCR検査関連製品の安定的な供給や、ワクチンを含む再生医療等製品の製造体制整備等に積極的に取り組みました。
バイオテクノロジー関連分野の研究開発活動がますます広がりを見せるなか、タカラバイオグループは、こうした研究開発活動を支援する製品・商品やサービスを中心に展開するバイオ産業支援事業をコアビジネスと位置づけております。また、遺伝子医療事業では、生物学の進展やテクノロジーの進歩により、医薬の分野では、低分子や抗体などに加え、新たに、遺伝子や細胞などを新しいモダリティ(治療手段)として開発する動きが急速に広がっています。
このような状況のなか、タカラバイオグループは、遺伝子治療などの再生医療等製品やワクチンの開発に必要なバイオ創薬基盤技術開発、新規臨床プロジェクトの創出、開発プロジェクトの製薬企業への導出などを通じたプロジェクト価値の最大化に向けて取り組んでおります。
タカラバイオグループの売上高は、機器および遺伝子医療が前期比で減少したものの、試薬および受託が前期比で増加いたしました。特に、試薬は、一般研究用試薬がコロナ禍から回復し売上高が過去最高となり、新型コロナウイルスのPCR検査関連試薬も大幅に伸長いたしました。
以上の結果、タカラバイオグループの売上高は、67,699百万円(前期比46.9%増)と増収となり、原価率も改善したことから、売上原価は18,488百万円(同30.1%増)となりましたので、売上総利益は49,211百万円(同54.4%増)となりました。販売費及び一般管理費は、人件費および研究開発費等が増加し20,309百万円(同13.3%増)となり、営業利益は28,902百万円(同107.1%増)と増益となりました。
〔その他〕
その他のセグメントは、不動産賃貸事業、物流事業、ワイン輸入販売などであります。当セグメントの売上高は30,719百万円(前期比5.1%増)となりました。売上原価は26,626百万円(同4.2%増)となり、売上総利益は4,093百万円(同11.2%増)となりました。販売費及び一般管理費は1,870百万円(同0.3%減)となり、営業利益は2,222百万円(同23.2%増)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は232,323百万円となり、前連結会計年度末に比べ49,215百万円増加いたしました。これは主に商品及び製品が22,056百万円、現金及び預金が14,207百万円、受取手形及び売掛金が7,781百万円それぞれ増加したことによるものであります。
固定資産は130,114百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,304百万円増加いたしました。これは主にTakara Bio USA, Inc.の新事業所建物の内装工事及びタカラバイオ株式会社の製造設備取得により有形固定資産が5,006百万円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は362,438百万円となり、前連結会計年度末に比べ55,519百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は79,151百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,882百万円増加いたしました。これは主に1年内償還予定の社債が10,000百万円、流動負債のその他が7,687百万円それぞれ増加したことによるものであります。
固定負債は58,730百万円となり、前連結会計年度末に比べ383百万円減少いたしました。
この結果、負債合計は137,882百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,499百万円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は224,555百万円となり、前連結会計年度末に比べ33,020百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が14,749百万円、非支配株主持分が9,484百万円、為替換算調整勘定が7,171百万円それぞれ増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は49.8%(前連結会計年度末は51.1%)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益40,961百万円、減価償却費8,425百万円、売上債権の増加7,109百万円、棚卸資産の増加21,235百万円、仕入債務の増加3,920百万円、法人税等の支払額10,253百万円などで16,376百万円の収入と前期に比べ10,724百万円の収入減少となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入による支出15,513百万円、定期預金の払戻による収入14,758百万円、有形及び無形固定資産の取得による支出14,762百万円、補助金の受取額3,960百万円などにより10,399百万円の支出と前期に比べ3,660百万円の支出増加となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入9,927百万円、配当金の支払額4,147百万円などにより4,133百万円の収入(前期は1,506百万円の支出)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物に係る換算差額を含めた当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より12,869百万円増加し、75,729百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)の生産実績をセグメントごとおよび品種別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期増減率(%) |
|
|
品種 |
||
宝酒造 |
|
|
|
|
焼酎 |
38,951 |
△19.0 |
|
清酒 |
12,683 |
△26.6 |
|
ソフトアルコール飲料 |
39,670 |
△16.7 |
|
その他酒類 |
4,310 |
2.6 |
|
本みりん |
9,096 |
△32.0 |
|
その他調味料 |
8,651 |
△18.0 |
|
計 |
113,364 |
△19.7 |
宝酒造インターナショナルグループ |
9,677 |
75.3 |
|
タカラバイオグループ |
|
|
|
|
試薬 |
22,123 |
29.1 |
|
機器 |
57 |
△72.9 |
|
受託 |
11,952 |
44.8 |
|
遺伝子医療 |
148 |
△44.7 |
|
計 |
34,281 |
32.5 |
報告セグメント計 |
157,322 |
△8.8 |
|
その他 |
1,554 |
△4.0 |
|
合計 |
158,876 |
△8.8 |
(注)1.金額は酒税込みの販売価格によっております。
2.宝酒造の原料用アルコール等は、大部分が酒類等の原料として使用されていること、また、販売実績に対応する生産実績を正確に把握することが困難であることから記載を省略しております。
3.当連結会計年度の期首よりタカラバイオグループの品種名称を「研究用試薬」、「理化学機器」、「受託サービス」から「試薬」、「機器」、「受託」にそれぞれ変更しております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期増減率(%) |
宝酒造 |
637 |
△3.3 |
宝酒造インターナショナルグループ |
70,930 |
63.4 |
タカラバイオグループ |
20,300 |
274.6 |
報告セグメント計 |
91,868 |
85.6 |
その他 |
9,835 |
2.0 |
合計 |
101,703 |
72.0 |
(注)1.金額は仕入価格によっております。
2.当連結会計年度において、タカラバイオグループの仕入実績に著しい変動がありました。これは、抗原検査キットの輸入等により増加したものであります。
c.受注実績
タカラバイオグループにおいて受託を行っていることから、一部受注生産を行っておりますが、ほとんどの場合において、生産に要する期間が短く、受注残高が僅少であることから記載を省略しております。
d.販売実績
(a) 品種別販売実績
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)の販売実績をセグメントごとおよび品種別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期増減率(%) |
|
|
品種 |
||
宝酒造 |
|
|
|
|
焼酎 |
37,935 |
△22.0 |
|
清酒 |
12,803 |
△27.7 |
|
ソフトアルコール飲料 |
37,677 |
△20.1 |
|
その他酒類 |
5,467 |
△1.9 |
|
本みりん |
9,097 |
△31.9 |
|
その他調味料 |
8,560 |
△18.0 |
|
原料用アルコール等 |
8,168 |
△15.5 |
|
計 |
119,710 |
△21.5 |
宝酒造インターナショナルグループ |
|
|
|
|
海外酒類 |
14,063 |
39.2 |
|
海外日本食材卸 |
89,728 |
48.5 |
|
その他 |
62 |
8.9 |
|
グループ内連結消去 |
△1,668 |
- |
|
計 |
102,186 |
46.8 |
タカラバイオグループ |
|
|
|
|
試薬 |
54,605 |
55.2 |
|
機器 |
1,518 |
△12.1 |
|
受託 |
11,426 |
28.4 |
|
遺伝子医療 |
148 |
△44.5 |
|
計 |
67,699 |
46.9 |
報告セグメント計 |
289,596 |
8.0 |
|
その他 |
30,719 |
5.1 |
|
セグメント計 |
320,315 |
7.7 |
|
事業セグメントに配分していない収益およびセグメント間取引消去 |
△19,396 |
- |
|
合計 |
300,918 |
8.1 |
(注)1.販売金額には酒税を含んでおります。
2.当連結会計年度の期首よりタカラバイオグループの品種名称を「研究用試薬」、「理化学機器」、「受託サービス」から「試薬」、「機器」、「受託」にそれぞれ変更しております。
3.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、上表の金額については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。なお、前期増減率は前連結会計年度の当該会計基準等を適用する前の金額で除しております。
(b) 相手先別販売実績
主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
国分グループ本社株式会社 |
35,067 |
12.6 |
- |
- |
(注)1.販売金額には酒税を含んでおります。
2.当連結会計年度の国分グループ本社株式会社については、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用したことなどにより、当該割合が100分の10未満となったため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積もりに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」、「同(重要な会計上の見積り)」および「同(追加情報)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、地域ごとの新型コロナウイルス感染症の影響の変化により、セグメントごとに大きな変動がありました。セグメント別経営成績については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。
宝酒造では、収益認識に関する会計基準等の適用により売上高は大きく減少いたしましたが、販売費及び一般管理費も同額減少したため、営業利益以下への影響はありません。同会計基準等の適用による影響を除いた売上高は、外食需要は一部回復するもコロナ禍継続の中では限定的であり、製品自主回収の影響もあって若干の減収となりました。ウィズコロナの営業活動のなかで高付加価値商品の育成、販売促進費の抑制による利益率の向上に努めましたが、原材料価格の上昇もあり、営業利益は減益となりました。
前連結会計年度にコロナ禍の影響を最も受けた宝酒造インターナショナルグループでは、ウイスキーの好調に加え海外主要都市でのレストラン営業再開や、コロナ禍で取り組んできた販売チャネルの拡大などにより和酒及び日本食材の売上が急回復し、セグメントとして過去最高の売上高となりました。売上高の伸長に比し販売費及び一般管理費の増加を抑制できたため営業利益も大幅な増益となりました。
タカラバイオグループでは、新型コロナウイルスのPCR検査関連製品が引き続き大幅に増加し、一般研究用試薬もコロナ禍から回復し売上高は過去最高となったため、セグメント売上高は前連結会計年度に引き続き大幅増収となりました。原価率の改善もあり、人件費や研究開発費が増加したものの営業利益は大幅な増益となりました。
以上の報告セグメントにその他のセグメントを加えた当社グループの売上高は収益認識に関する会計基準等の影響を吸収し300,918百万円(前期比8.1%増)となりました。売上総利益は113,541百万円(同1.8%減)となりましたが、同会計基準等の影響を受けない営業利益は43,354百万円(同100.8%増)、経常利益も43,230百万円(同97.1%増)の増益となりました。特別損益では、タカラバイオグループで国庫補助金4,470百万円と同額の固定資産圧縮損を計上しており、宝酒造で製品自主回収関連損失1,190百万円を計上いたしましたが、税金等調整前当期純利益は40,961百万円(同99.0%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は20,769百万円(同96.4%増)となりました。
以上の結果、ROEは12.3%、海外売上高比率は45.0%となり、前連結会計年度よりそれぞれ5.4ポイント、10.9ポイント向上いたしました。
イ.経営成績に重要な影響を与える要因
宝酒造では、高齢化・人口減少や若年層の飲酒離れの影響などからアルコールの総消費数量は減少傾向が続いており、国内酒類業界はメーカー間の競争が激化し、厳しい経営環境にあります。加えて世界的な資源価格の高騰や直近の円安の影響による原材料価格、製造コストの上昇をいかに市場に受け入れられる形で価格転嫁するかが問われています。またサステナビリティ経営の観点から、環境問題、過剰飲酒問題への対応は喫緊の課題であるとともに、コスト面での影響も懸念されます。
宝酒造インターナショナルグループでは、海外での和酒・日本食の潜在需要は根強く、コロナ禍の収束に伴い、今後も安定した市場拡大が見込まれます。一方で競合各社との競争のさらなる激化も見込まれ、拠点の拡大、グループシナジーの強化、競争力のある商品の開発、経営基盤の整備などが求められます。
タカラバイオグループでは、長期的な市場の拡大が予想されておりますが、同グループが積極的に取り組んでいる遺伝子治療等の再生医療等製品の分野では、多様なモダリティの開発、実用化が進み、バイオベンチャーや製薬企業等、企業規模は関係なく、世界的に競争が激化しております。このような環境下、人財の確保、研究開発費の供給、知的財産権の保護など経営成績に影響を与える多くの要因が存在します。
なお、当社グループの経営成績に影響を与える要因に関しては「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」もご参照ください。
ロ.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、営業活動から得られるキャッシュ・フローを、各事業セグメントの成長分野へ積極的に投資するとともに、自己株式の取得や配当を通じた適切な株主還元を行い、一方で、多様な資金調達手段を確保し金融負債を利用することにより、適切な資本、負債のバランスを維持し、財務の安全性と資本の効率性の両立を図ります。
当連結会計年度の自己資本比率は49.8%と目標とする水準を維持しております。また、当社グループの手元流動性は十分に確保されており、各セグメントの事業活動、予定している投資活動に支障はありません。さらにコミットメントラインなどのバックアップラインも適切に設定されております。
なお、上場企業であるタカラバイオ株式会社は、タカラバイオグループの資金の調達、流動性の確保を独自に行っており、宝酒造、宝酒造インターナショナルグループは宝ホールディングス株式会社と緊密な連携を行い、効率的な資金調達、資金管理を行っております。
a キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、宝酒造インターナショナルグループやタカラバイオグループの好調に牽引されて税金等調整前当期純利益が増加したため、棚卸資産の増加はありましたが16,376百万円の収入となりました。また、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出などにより10,399百万円の支出となりましたが、財務活動によるキャッシュ・フローが4,133百万円の収入となりましたので、現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比べ12,869百万円増加しております。社債償還のための社債の前倒し発行による9,927百万円の収入を考慮しても現時点でキャッシュ・フローの状況に特段の問題はないと認識しております。
b 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源は、営業活動から得られるキャッシュ・フローのほか、主として社債および金融機関からの借入金であります。当社では安定的な資金調達のため20,000百万円の普通社債の発行登録を行うとともに、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)および株式会社日本格付研究所(JCR)から長期債格付A(シングルAフラット)を取得しております。当連結会計年度は、2022年4月の社債償還資金に充当するため、2021年11月に無担保社債10,000百万円の発行を行いました。
また、短期資金の調達のため、当社は同じく株式会社格付投資情報センター(R&I)および株式会社日本格付研究所(JCR)から10,000百万円の発行枠を設定しているCP(コマーシャル・ペーパー)の格付(a-1、J-1)をそれぞれ取得しておりますが、当連結会計年度中は発行しておりません。
さらに、機動的な資金調達および流動性の補完を目的として、継続して融資枠10,000百万円のコミットメントラインを設定しておりますが、当連結会計年度中は借入を行っておりません。
当社グループは強化すべき領域へ積極的な経営資源の配分と投下を行うことを方針としており、当連結会計年度は、タカラバイオグループではワクチン生産体制等緊急整備事業や米国子会社の新事業所用建物内装工事への設備投資を、宝酒造インターナショナルグループでは海外日本食材卸事業に係る製品倉庫等への設備投資を実施いたしました。当連結会計年度の有形及び無形固定資産の取得による支出は14,762百万円となり、減価償却費を大きく上回る水準となっております。
当社は、当社の信用力を生かして外部資金を一括して調達し、タカラバイオグループを除く主要な連結子会社に必要資金を貸し付けるとともに、一部の国内連結子会社とはCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入するなど、各社の余剰資金を当社へ集中し一元管理することにより、資金効率の向上と金融費用の極小化を図っております。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ12,869百万円増加の75,729百万円となり、現時点で十分な手元流動性を維持しております。
ハ.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営戦略、経営環境、優先的に対処すべき事業上・財務上の課題および経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。
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