(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績等の状況の概要
(ⅰ)経営成績
当連結会計年度の業績は、売上収益は1兆2,689億円(前年同期比7.7%増)、連結営業利益は1,186億円(前年同期比23.3%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、3,977億円計上しましたが、この主な内容は、広告宣伝及び販売促進費が1,393億円、従業員給付費用が1,354億円等であり、その結果、営業利益は1,186億円(前年同期比23.3%増)となりました。
金融収益は5億円となりました。また、金融費用は20億円となりました。この主な要因は、支払利息を19億円計上したこと等によるものです。
これらの結果、税引前利益は1,171億円(前年同期比24.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は687億円(前年同期比31.5%増)となりました。また、1株当たり当期利益は222円25銭となりました。
また、報告セグメント別の業績につきましては、以下のとおりです。
なお、当社は、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、報告セグメントを変更しました。前年同期とは、前連結会計年度の数値を、変更後の報告セグメントの区分に組み替えた数値で比較しています。
[日本事業]
売上収益は6,296億円(前年同期比0.5%減)、セグメント利益は409億円(前年同期比10.7%増)となりました。
[アジアパシフィック事業]
売上収益は2,959億円(前年同期比11.7%増)、セグメント利益は397億円(前年同期比15.7%増)となりました。
[欧州事業]
売上収益は2,349億円(前年同期比23.6%増)、セグメント利益は357億円(前年同期比31.2%増)となりました。
[米州事業]
売上収益は1,085億円(前年同期比20.3%増)、セグメント利益は133億円(前年同期比46.5%増)となりました。
(ⅱ)財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、売上債権及びその他の債権の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,027億円増加して1兆6,769億円となりました。
負債は、仕入債務及びその他の債務の増加等により、前連結会計年度末に比べ183億円増加して7,330億円となりました。
資本合計は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ844億円増加して9,440億円となりました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は51.3%となり、1株当たり親会社所有者帰属持分は2,785円09銭となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ92億円増加し、1,767億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益1,171億円、減価償却費及び償却費694億円等に対し、売上債権及びその他の債権の増加366億円等により、資金の収入は前連結会計年度に比べ242億円増加し、1,582億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出561億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ43億円減少し、569億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの減少296億円、長期借入金の返済による支出278億円、配当金の支払383億円等により、資金の支出は前連結会計年度に比べ494億円増加し、961億円の支出となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(ⅰ)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
日本 |
562,012 |
107.3 |
アジアパシフィック |
281,348 |
114.8 |
欧州 |
182,612 |
122.0 |
米州 |
89,213 |
117.0 |
合計 |
1,115,187 |
112.1 |
(注)1.金額は、最終販売価格によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.生産実績には外注分を含んでいます。
(ⅱ)受注実績
当社グループは、原則として見込み生産を主体としているため、記載を省略しています。
(ⅲ)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
日本 |
629,640 |
99.5 |
アジアパシフィック |
295,948 |
111.7 |
欧州 |
234,862 |
123.6 |
米州 |
108,466 |
120.3 |
合計 |
1,268,917 |
107.7 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3.主な相手先別の記載については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。
連結財務諸表を作成するに当たり、重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しています。重要な見積り及び判断については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。また、過去の実績や取引状況を勘案し、合理的と判断される前提に基づき見積りを行っている部分があり、これらの見積りについては不確実性が存在するため、実際の結果と異なる場合があります。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)による影響は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断(追加情報)」に記載しています。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(ⅰ)経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、中期経営戦略及び中期経営計画を「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中期経営戦略及び(3)中期経営計画」に記載のとおり策定しています。その実現に向けて、当社グループが実施した活動は以下のとおりです。
当社グループは、お客様の嗜好・ニーズを捉えた上質でユニークな商品を提案し、お客様の生活に豊かさをお届けするという考えのもと、ブランド強化や新規需要の創造に注力したほか、品質の向上に取り組みました。また、将来の持続的な成長に向け、各エリアにおける事業基盤の強化にも注力しました。
2021年は、引き続き、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の影響を受ける中、日本で「クラフトボス」のリニューアルを実施するなど、全セグメントにおいてコアブランドへの集中活動及びイノベーションを展開し、成長戦略を推進したことにより、主要国において市場シェアを拡大しました。連結売上収益は1兆2,689億円(前年同期比7.7%増)となりました。
連結営業利益は1,186億円(前年同期比23.3%増)となり、グループ全体で前連結会計年度に比べ224億円の増益となりました。
税引前利益は、連結営業利益の増加により、前連結会計年度に比べ229億円増加して1,171億円(前年同期比24.3%増)となりました。
法人所得税費用は、前連結会計年度においてオランダで2021年以降の法人税率を21.7%から25.0%に引き上げる法案が上院で可決されたことにより、オランジーナ・シュウェップス・グループで計上する商標権に係る繰延税金負債の積み増しが35億円発生した一方、当連結会計年度においてイギリスで2023年以降の法人税率を19.0%から25.0%に引き上げる法案が上院で可決されたことにより、ルコゼードライビーナサントリー・グループで計上する商標権に係る繰延税金負債の積み増しが38億円発生しました。税引前利益の増加に伴う法人所得税費用の増加も影響し、当連結会計年度においては前連結会計年度に比べ42億円増加して340億円となりました。この結果、当期利益は830億円(前年同期比29.1%増)となりました。
非支配持分に帰属する当期利益は、Pepsi Bottling Ventures LLCにおいて業績が伸長した影響により23億円増加し、親会社の所有者に帰属する当期利益は、687億円(前年同期比31.5%増)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
[日本事業]
緊急事態宣言の断続的な発令及び延長により人の動きが制限されたことや、8月中旬以降の天候不順の影響により、清涼飲料市場は前期微増(当社推定)にとどまりましたが、当社の販売数量は、水・コーヒー・無糖茶カテゴリーを中心にコアブランド強化に取り組み、新商品発売やマーケティング活動が貢献した結果、前期を上回り、市場シェアを拡大しました。
「サントリー天然水」は、ブランド全体の販売数量が前期比増となり、過去最高の販売数量となりました。「サントリー天然水 スパークリング」シリーズは、6月に新発売した「THE STRONG」が好調を維持し、大きく伸長しました。「BOSS」は、ブランド全体の販売数量が前期を上回りました。3月にリニューアルした「クラフトボス」“コーヒーシリーズ”、“紅茶シリーズ”がともに伸長したことに加え、8月に新発売した「抹茶ラテ」が大きく販売数量の増加に寄与しました。無糖茶カテゴリーでは、「伊右衛門」は、ブランド全体の販売数量が前期を上回り、過去最高の販売数量となりました。2月新発売の「伊右衛門 濃い味」や、4月に新発売した「伊右衛門 京都ブレンド」が好調を維持し、販売数量の増加に寄与しました。
収益面では、チャネルミックスの変化が引き続きマイナスに影響したことに加え、第3四半期連結会計期間以降に原材料価格高騰の影響を受けましたが、小容量(500ml PET等)サイズの伸長により商品構成は改善し、加えて、自販機事業の構造改革、コスト削減活動、販促広告費の効率化への継続的な取組みが大きく寄与しました。
これらの結果、日本事業の売上収益は6,296億円(前年同期比0.5%減)、セグメント利益は409億円(前年同期比10.7%増)となりました。
[アジアパシフィック事業]
アジアでは、特に第3四半期連結会計期間以降においてベトナムにおけるロックダウンやタイにおける制限強化の影響を受けましたが、清涼飲料事業は、コアブランドへの集中活動が貢献し、ベトナム及びタイの清涼飲料市場でシェアを拡大しました。ブランド別には、ベトナムでは、特にエナジードリンク「Sting」、茶飲料「TEA+」が伸長し、タイでは低糖製品を含め「Pepsi」が好調に推移しました。健康食品事業は、マーケティング活動強化に注力した結果、「BRAND'S Essence of Chicken」の販売数量が前期を上回って推移しました。
オセアニアでは、引き続き力強い回復基調を維持しました。主力ブランドであるエナジードリンク「V」が、マーケティング活動強化により大きく伸長したことにより、エナジーカテゴリーを牽引し、市場シェアを拡大しました。
収益面では、売上の増加及び商品構成の改善に加え、コスト削減活動が寄与しました。
これらの結果、アジアパシフィック事業の売上収益は2,959億円(前年同期比11.7%増)、セグメント利益は397億円(前年同期比15.7%増)となりました。
[欧州事業]
欧州では、第3四半期連結会計期間に欧州北部における天候不順の影響を受けましたが、引き続き回復基調を維持しました。
フランスでは、好調な家庭用市場に加え、第2四半期連結会計期間以降に制限緩和や夜間外出規制の撤廃によって業務用市場も回復し、主力ブランド「Orangina」、「Oasis」及び「Schweppes」の販売数量が前期を上回り、シェアを拡大しました。英国では、市場の回復が継続し、当社販売数量も前期を大きく上回りました。主力ブランド「Lucozade」及び「Ribena」の販売数量が前期を大きく上回ったことに加え、「Lucozade Sport」が、スポーツイベントや屋外アクティビティ再開に伴い力強く伸長しました。スペインでは、家庭用市場が堅調であることに加え、制限緩和を受けて業務用市場も着実に回復していることが寄与し、主力ブランド「Schweppes」の販売数量が前期を大きく上回りました。
収益面では、売上増加及び販促広告費の効率化に加え、コスト削減活動が寄与しました。
これらの結果、欧州事業の売上収益は2,349億円(前年同期比23.6%増)、セグメント利益は357億円(前年同期比31.2%増)となりました。
[米州事業]
米州では、主力炭酸ブランドの更なる販売強化に取り組むとともに、水やコーヒー飲料等、伸長している非炭酸カテゴリーにも注力した結果、市場シェアを維持し、売上は前期を大きく上回りました。
収益面では、売上増加に加えてコスト削減活動が寄与しました。
これらの結果、米州事業の売上収益は1,085億円(前年同期比20.3%増)、セグメント利益は133億円(前年同期比46.5%増)となりました。
セグメント利益合計は1,186億円(前年同期比23.3%増)であり、連結損益計算書の営業利益と一致しています。
2022年は、主要国における需要回復を着実に捉え、コアブランドイノベーションを更に推進することにより、各報告セグメントにおいて、売上成長を目指します。原材料価格の高騰による影響には、売上収益の最大化やコストマネジメントの徹底により対処していきます。
また、各セグメントにおいては以下の取組みに注力します。
日本では、「自販機ビジネスのモデル革新」「コアブランドの成長加速」「サプライチェーン構造改革」を事業戦略の重点領域とし、売上と利益を成長させていきます。
アジアパシフィックでは、清涼飲料事業と健康食品事業においてコアブランドイノベーションを継続することで、二桁以上の成長を計画しています。
欧州では、コアブランドイノベーション加速による売上成長を目指すとともに、営業やサプライチェーンマネジメントの強化等の構造改革に取り組んでいきます。
米州では、炭酸・エナジーカテゴリーの更なる拡大に向けて取り組むとともに、価格政策やサプライチェーンの取組みも強化していきます。
経営陣一体となって、以上の取組みを、強力に迅速に進めていきます。
(ⅱ)財政状態の分析
当社グループは日本のみならずアジアパシフィック、欧州、米州の各地に活動拠点を有しています。各拠点の機能通貨で算定された資産・負債は連結財務諸表の表示通貨である日本円に換算するため、当社グループの資産・負債残高は各種通貨の日本円に対する為替変動に大きく影響されます。各通貨の期首及び期末の為替レートについては「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 (3)外貨換算」をご参照ください。当連結会計年度は主要な通貨が期末にかけて円安に推移したことが要因となり、資産・負債がそれぞれ増加しています。
のれん及び無形資産は当社グループの資産総額の約40.9%を占める重要な構成要素であり、過去に実施した企業買収等の結果、取得したブランドや統合により得られるシナジーを評価して計上したものです。このうち、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については定期的な償却は行わず、年に一度実施する減損テストを実施しています。減損テストの回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか大きい金額として算定しています。これらの回収可能価額は、経営者が承認した事業計画及び事業計画期間後の長期成長率に基づいたキャッシュ・フローの見積額を、当該資金生成単位及び資金生成単位グループの税引前加重平均資本コスト(WACC)により現在価値に割り引いて算定しています。その結果、当社グループは当連結会計年度において減損損失は計上していません。ブランドごとに販売する地域の景気や天候、ブランドコンディションには違いがあり、翌連結会計年度以降、個別には減損損失が発生する場合がありますが、現時点において、当社グループがこれまでに実施したM&Aとその後の統合プロセスはいずれも全体としては順調に推移していると評価しています。当社グループは、今後ものれん及び無形資産の適正な評価に取り組む方針です。
また、負債は、買掛金の増加や社債の発行等により増加しています。借入金が毎期着実に減少しており、ネットD/Eレシオは0.04となりました。
(ⅲ)キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ92億円増加し、1,767億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の増加229億円等により、資金の収入が前連結会計年度に比べ242億円増加し、1,582億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出が64億円減少したこと等に対し、事業譲受による支出22億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ43億円減少し、569億円の支出となりました。フリーキャッシュフローは1,013億円の収入となり、前連結会計年度から285億円増加しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度は短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの増加による収入302億円でしたが、当連結会計年度は短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの減少による支出296億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ494億円増加し、961億円の資金の支出となりました。
(資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループにおける資金需要のうち、主なものは設備投資、事業投資、有利子負債の返済及び運転資金等です。当社グループは資金の流動性確保のため、市場環境や長短のバランスを勘案して、銀行借入やリース等による間接調達のほか、社債やコマーシャル・ペーパーの発行等の直接調達を行い、資金調達手段の多様化を図っています。
また、事業活動等により創出したキャッシュ・フローに加えて、金融機関より随時利用可能な信用枠を確保しており、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の拡大による業績、キャッシュ・フロー悪化リスク等、緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱に備えています。
なお、今後予定されている設備投資に係る資金需要の主なものは、「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画」をご覧ください。
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