当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績、キャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの変更を行っており、以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分にて組み替えた数値で比較分析をしております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」を参照下さい。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものです。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表を作成するに当たり、必要な見積りを行っており、それらは資産、負債、収益及び費用の計上金額に影響を与えております。これらの見積りは、その性質上判断及び入手し得る情報に基づいて行いますので、実際の結果がそれらの見積りと相違する場合があります。特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
なお、当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」に記載しております。
(繰延税金資産)
繰延税金資産は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収可能見込額を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ、課税所得が減少した場合、繰延税金資産が取り崩され、税金費用を計上する可能性があります。
(有形・無形固定資産の減損処理)
減損の兆候のある資産又は資産グループについて、回収可能価額に基づき減損の判定を行っております。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のいずれか高い方により測定しております。回収可能価額は、事業計画や市場環境の変化により、その見積り金額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、追加の減損処理が必要になる可能性があります。
(退職給付費用及び退職給付債務)
当社グループは、退職給付費用及び退職給付債務について、割引率等、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 経営成績の状況の分析
当連結会計年度は、景況感の改善が緩やかに進む一方で、新型コロナウイルスの変異株の出現による行動制限に加え、サプライチェーンの混乱、原材料価格の高騰、インフレの進行や金利上昇など、世界経済の先行きが不透明な状況が続きました。当社の主原料であるパームや大豆につきましては、経済活動再開や米国クリーンエネルギー政策の影響に伴う需要の拡大期待に加え、生産地での労働者不足やサプライチェーンの混乱などの影響により、原材料価格が高値水準で推移いたしました。
当社におきましては、各エリアにおいて原材料価格の上昇に応じた適正価格での販売や、拡販施策の実施、コスト削減により、収益の向上に取り組みました。日本や東南アジア、中国では、需要の変化をとらえた製品展開と提案を進めました。米州では、労働人員不足やサプライチェーン混乱の影響はありましたが、生産の安定策の推進や積極的な拡販を進めました。成長投資につきましては、米国の植物性油脂事業の新工場稼働や、Blommer Chocolate Companyでの生産性の改善、欧州の大豆加工素材事業の新工場への投資、また、北米での植物油脂の取り扱い拡大を目指し伊藤忠商事株式会社と合弁会社の設立合意を行うなど、積極的な成長投資を継続して行いました。
当連結会計年度は、前連結会計年度までの中期経営計画「Towards a Further Leap 2020」(2017-2020)で未達となった施策の実施に加え、次期中期経営計画に向けた経営基盤の強化に取り組む重要な年度であるとの考えのもと、収益力の向上と執行能力を高める組織作りを行いました。また、サステナビリティの取り組みの深化等、グループ一丸となって短中長期的な企業価値向上に取り組みました。
以上の結果、当連結会計年度における連結経営成績は、売上高は4,338億31百万円、営業利益は150億8百万円、経常利益は143億60百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は115億4百万円となりました。
なお、対前期比で親会社株主に帰属する当期純利益が増加している主な要因は、シンガポールにおける固定資産売却益及びブラジルにおける還付税金の特別利益によるものです。
(単位:百万円)
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売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主に帰属 する当期純利益 |
2022年3月期 |
433,831 |
15,008 |
14,360 |
11,504 |
2021年3月期 |
364,779 |
17,911 |
17,565 |
11,014 |
前期比 増減 (前期比 増減率) |
+69,051 (+18.9%) |
△2,903 (△16.2%) |
△3,204 (△18.2%) |
+489 (+4.4%) |
セグメントの経営成績を示すと、次のとおりです。
(単位:百万円)
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売上高 |
前期比 増減 |
前期比 (%) |
営業利益 |
前期比 増減 |
前期比 (%) |
植物性油脂 |
134,976 |
+36,563 |
+37.2% |
7,401 |
△470 |
△6.0% |
業務用チョコレート |
185,540 |
+23,094 |
+14.2% |
7,548 |
△59 |
△0.8% |
乳化・発酵素材 |
79,146 |
+8,547 |
+12.1% |
1,617 |
△1,085 |
△40.2% |
大豆加工素材 |
34,167 |
+845 |
+2.5% |
2,149 |
△1,334 |
△38.3% |
連結消去・グループ管理費用 |
- |
- |
- |
△3,708 |
+47 |
- |
合 計 |
433,831 |
+69,051 |
+18.9% |
15,008 |
△2,903 |
△16.2% |
(植物性油脂事業)
売上高は、主原料であるパームの価格上昇に伴う販売価格の上昇に加え、需要の回復による販売数量の伸長により、大幅な増収となりました。営業利益は、東南アジアや欧州におけるチョコレート用油脂などの販売数量が伸長しましたが、原材料価格の高騰による採算性の低下に加え、北米における新工場の稼働開始に伴う減価償却費等の費用増加などにより減益となりました。
(業務用チョコレート事業)
売上高は、原材料価格の上昇に伴う販売価格の上昇に加え、経済活動再開や積極的な販売促進に伴う販売数量の増加により、大幅な増収となりました。営業利益は、日本やブラジルにおいて販売数量の増加による増益要因はあったものの、前連結会計年度に計上したBlommer Chocolate Companyでの先物評価益の剥落を主因に、減益となりました。
(乳化・発酵素材事業)
売上高は、原材料価格の上昇に伴う販売価格の上昇に加え、販売数量の回復により増収となりました。営業利益は、日本での販売数量の回復を主因とした増益要因はあったものの、東南アジアや中国での原材料価格の上昇による採算性の低下により、減益となりました。
(大豆加工素材事業)
売上高は、原材料価格の上昇に伴う販売価格の上昇に加え、粒状大豆たん白の販売伸長などにより、増収となりました。営業利益は、原材料価格の上昇に伴う採算性の低下に加え、千葉工場や欧州における新工場建設等に伴う費用の増加により、減益となりました。
② 財政状態の状況の分析
当連結会計年度は、中国の連結子会社を譲渡しノンコア事業の整理を行ってまいりましたが、運転資本の増加や成長投資を目的とした設備投資、急激な円安基調による為替換算影響などがあり、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ581億6百万円増加し、4,166億17百万円となりました。
当社グループは、依然として新型コロナウイルス感染症による事業活動や業績への影響を見極めることが必要であり、アフターコロナを見据えた設備投資・事業投資と財務健全性の向上とのバランスが重要だと考えております。投資については、総枠管理のみならず事業部門ごとに優先項目を選定することに加え、事業ポートフォリオの見直しを随時実施しております。引き続き、資本コストを重視した成長投資を継続しながらも、キャッシュ・フローの創出と資金効率の最大化を図り、中長期的にネットD/Eレシオ0.5倍以下を目指します。
(単位:百万円)
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
増減 |
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流動資産 |
160,736 |
201,334 |
+40,597 |
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有形固定資産 |
129,435 |
140,628 |
+11,192 |
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無形固定資産 |
52,712 |
55,697 |
+2,984 |
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その他資産 |
15,626 |
18,958 |
+3,331 |
資産 |
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358,511 |
416,617 |
+58,106 |
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有利子負債 |
131,309 |
148,769 |
+17,459 |
|
その他負債 |
64,311 |
78,352 |
+14,041 |
負債 |
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195,621 |
227,122 |
+31,501 |
純資産 |
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162,890 |
189,495 |
+26,605 |
(資産)
当連結会計年度末の資産は、原材料価格の上昇に加え、需要の回復に伴う販売数量の伸長による運転資本の増加により流動資産が増加しております。有形固定資産は、米国や欧州における新工場建設、日本や米国における既存設備の更新や合理化投資により増加しております。以上の結果、前連結会計年度末に比べ581億6百万円増加し、4,166億17百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、原材料価格の上昇や需要回復に伴う運転資本の増加、米国や欧州における新工場建設をはじめとする設備投資の実施に伴う有利子負債の増加により、前連結会計年度末に比べ315億1百万円増加し、2,271億22百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産額は、円安基調に伴う為替換算調整勘定の変動や繰延ヘッジ損益の増加、利益剰余金の積み上げにより、前連結会計年度末に比べ266億5百万円増加し、1,894億95百万円となりました。この結果、1株当たり純資産額は前連結会計年度末に比べ306円46銭増加し、2,168円13銭となりました。自己資本比率は前連結会計年度末比0.1ポイント増加し、44.7%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末におけるキャッシュ・フローの状況は、成長投資を目的とした設備投資を厳選して行い、設備投資に伴う支出は抑制いたしましたが、運転資本の増加により、営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に減少いたしました。
当社グループは、財務規律を維持・向上するためには、有利子負債の削減と着実な利益成長、CCCの改善等により、フリー・キャッシュ・フローを毎年100億円以上創出する必要があると認識しております。引き続き、資本コストを重視した成長投資を継続しながらも、キャッシュ・フローの創出と資金効率の最大化を図り設備投資の抑制、ノンコア事業の売却及び政策保有株式の更なる削減等を行ってまいります。
(単位:百万円)
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
増減 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
38,205 |
3,537 |
△34,668 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△17,395 |
△18,807 |
△1,411 |
フリー・キャッシュ・フロー |
20,809 |
△15,269 |
△36,079 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△19,931 |
9,387 |
+29,318 |
現金及び現金同等物 |
20,452 |
15,915 |
△4,536 |
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、35億37百万円の収入となりました。前連結会計年度に比べ、原材料価格の上昇に加え、需要の回復に伴う販売数量の伸長による運転資本の増加を主要因として、前連結会計年度に比べ、346億68百万円収入が減少しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、米国における植物性油脂事業の工場新設や欧州における欧米市場向けの大豆加工素材事業の工場新設への設備投資等により、188億7百万円の支出となりました。前連結会計年度に比べ、設備投資に伴う支出は減少したものの、前連結会計年度に発生した国内子会社・海外子会社の株式譲渡に伴う貸付金の回収及び譲渡収入が剥落したことにより、14億11百万円支出が増加しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いや借入金の返済等により、199億31百万円の支出となりましたが、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによる支出があったものの、運転資本の増加や設備投資の実施に伴う追加借入により、93億87百万円の収入となりました。
(3)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは円滑な事業活動に必要十分な流動性の確保と財務規律の維持及び財務健全性の向上を基本方針としております。
当社グループの主な資金需要は、生産活動及び販売活動に必要な運転資金、事業拡大のための設備投資、グループ基盤強化のための事業投資等です。資金の源泉は、営業活動によるキャッシュ・フローと金融機関からの借入や社債の発行等による資金調達です。
短期運転資金は自己資本及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金や長期運転資金は金融機関からの長期借入のほか、社債発行による資金調達を行っております。また、新型コロナウイルス感染症や自然災害等の不測の事態に備え、手許流動性を補完すべく、金融機関とコミットメントラインを締結しております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は1,487億69百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は159億15百万円となっております。
(4)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当社グループの生産品目は広範囲、多種多様であり、かつ、製品のグループ内使用(製品を他のグループ会社の原材料として使用)が数多くあるため、セグメント別(連結ベース)に生産実績を、金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産の実績については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ①経営成績の状況の分析」における各セグメントの業績に関連付けて示しております。
②受注実績
当社グループは需要予測に基づく見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
③販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ①経営成績の状況の分析」に記載のとおりです。
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