文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものです。
(1)不二製油グループのリスクマネジメント体制について
不二製油グループは、日本・米州・欧州・東南アジア・中国の各エリアにおいて、植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の4つのセグメントで事業展開していることから、当社グループのバリューチェーンには社会課題・経済環境変化などの影響を受け、様々なリスクが潜在しています。それらのリスクに対して、当社グループは経営会議を全社リスクマネジメント機関と位置付け、経営陣の認識リスク(戦略上のリスク、財務リスク)、ESGマテリアリティマップ、オペレーショナルリスクなど、グループを取り巻く環境を踏まえた情報ソースから、経営への影響度、発生可能性、顕在化時期などの総合的な判断により、全社重要リスクを選定し、その対応策の立案、実施、進捗確認、評価・改善などリスクを管理する全社リスクマネジメント体制を構築しています。
(サステナビリティ委員会とESGマテリアリティ)
グループ全体でのサステナビリティ推進及びその監督の観点から、不二製油グループ本社取締役会の諮問機関として「サステナビリティ委員会」を設置しています。中長期及びマルチステークホルダーの視点で「ESGマテリアリティ」を特定ならびに全社・事業横断的取組の方向性と目標・KPIを決定し、テーマの進捗をモニタリングしています。「ESGマテリアリティ」は「不二製油グループが社会に与える影響度」と「社会課題が不二製油グループに与える影響度」の2つの観点から社会課題の重要度を分析し、優先度の高いものを特定しています。
(全社重要リスク分科会と全社重要リスク)
中長期的なグループの方向性に沿った事業戦略の遂行にあたり、当社グループに重大な影響を及ぼすと認識するリスク項目を全社重要リスクとして特定し、リスク低減を推進しています。全社重要リスクは、2022年度よりサステナビリティ委員会の下部組織として設置した全社重要リスク分科会にて、メンバーの多様な視点により、リスク案の検討や対応策の適切性評価・確認等を行い、更なる企業価値棄損リスクの低減を目指しています。
(オペレーショナルリスク)
当社は各グループ会社内にリスクマネジメント委員会を設置しており、「リスクアセスメント⇒リスク対応⇒自己チェック⇒レベルアップ(次年度計画立案)」のPDCAを回し、不二製油グループ本社、地域統括会社、各グループ会社間で連携を取りながらオペレーショナルリスクを特定し対応しています。リスクアセスメントでは、自社のリスクを可能な限り洗い出し、リスクマップ(縦軸:自社への損失・影響度、横軸:発生可能性)により評価の上、自社にとって損失・影響度が大きいリスクを「重要リスク」として特定しています。すべての「重要リスク」に対して対応方法を決定し、リスク低減を図っています。
(2)不二製油グループの重要なリスク(2022年度版)
(ESGマテリアリティ)
・2022年度 ESGマテリアリティマップ
※1:人権の尊重、森林や生物多様性の保全と再生も重要な観点として包含されています。
※2:ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
※3:ガバナンス・リスク・コンプライアンス
GRCにはコーポレートガバナンスと内部統制の観点が含まれますが、サステナビリティ委員会においては内部統制に関わる項目をモニタリングしていきます。コーポレートガバナンスは取締役会にてモニタリングしていきます。
・2022年度 ESGマテリアリティ
※1:ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
※2:公正な機会提供や評価とインクルーシブなマネジメントによる多様な人材の活用
※3:ガバナンス・リスク・コンプライアンス
※4:コーポレートガバナンスは取締役会にてモニタリング
(全社重要リスク)
①リスクの特定
グループ各社でリスクマップを作成し各社におけるオペレーショナルリスクを特定すると同時に、経営会議にて戦略上のリスク/財務リスクを決定しております。また、ESGマテリアリティのうち「社会課題が不二製油グループに与える影響度」が大きいと認識している項目と合わせリスクを網羅的に把握した上で、特に重要なリスクを取締役会において決定しております。
②リスクの対応とモニタリング
経営会議を全社リスクマネジメント機関と位置付け、上記で決定された重要なリスクについて、各リスクの担当役員を決定し、対応策を定めています。また、担当役員による対応策の進捗報告、及び全社重要リスクの見直し・選定を実施します。これらはリスク管理を管掌するESG担当役員により管理され、定期的に取締役会へ報告を行います。取締役会はモニタリング機関として経営会議からの報告内容について確認・指示を行います。また、グループ全体への影響拡大が懸念されるリスクやエマージングリスクへの対応方針を中心に協議を行い、対応指針を経営会議に示します。
全社重要リスクの特定と対応
経営会議(全社リスクマネジメント機関)
③2021年度のモニタリング結果
2021年度に決定された12項目の重要リスクは、各管掌役員のもと対応策を進め、個別の進捗や課題状況を適宜取締役会にも報告しながらリスク低減を図りました。また、各リスクの担当役員から2021年度の対応進捗状況及びその対応等について取締役会に報告し、顕在化したリスクの発生原因、対応策につきその妥当性、適時性等を確認する予定としております。
そのうえで当社グループにおいて管理すべき重要なリスクとして以下の12項目を選定し、各リスクについては担当役員を定めて対応計画を策定しております。また、対応状況は取締役会に報告し、モニタリングを実施する体制を構築しております。
(TCFD)
当社グループは、2019年5月にTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)へ賛同を表明しています。TCFDの提言に基づき、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目について、積極的に情報開示を推進していきます。
TCFDの提言に基づく4項目についての情報開示
1.ガバナンス
・ESG担当役員の管掌のもと、全社リスクマネジメント体制において気候変動リスク・機会を管理。
・TCFDの提言に基づくシナリオ分析を実施し、経営会議、取締役会において報告・承認(年1回以上)。
2.戦略
①国内グループ会社、主要な海外グループ会社を対象に、TCFDが提言する気候変動シナリオ分析、気候変動リスク・機会の選定、財務インパクトの定性・定量評価を実施。(参照:「気候変動リスク・機会および財務インパクトの影響度評価」)
自社および社会や地球にとってプラスのインパクトをもたらす、省エネ活動や再エネ活用など、「環境ビジョン2030」に基づく継続的なCO2排出削減対策を推進。
②森林の農地転用や家畜肥育に伴う気候変動への悪影響の懸念を背景に、Plant-Based Food(植物性食品)の市場拡大が見込まれる。当社グループは2030年ビジョン『植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します』のもと、サステナブル調達推進による環境保全への配慮、当社グループが強みを持つ植物性食品素材の提供によって、脱炭素社会における社会課題の解決に取り組む。
3.リスク管理
・経営会議において全社重要リスク対応策の立案、実施、評価・改善などを行う全社リスクマネジメント体制を構築。
・気候変動リスクも全社重要リスクの一つと位置付け、全社リスクマネジメント体制で管理。対応内容は取締役会に報告(年1回以上)。
4.指標と目標
・環境ビジョン2030」目標:スコープ1、 2で2030年にCO2の排出量を総量で40%削減(*1)
・環境ビジョン2030」目標達成に向け、生産現場における省エネ活動やエネルギー使用量の少ない新設備の導入、再生可能エネルギーの使用などへ積極的に取り組む。また、スコープ3データの精度向上を図り、排出量が多いカテゴリ1の削減方法の検討、SBT認定を取得した目標を達成するためのグループ内への説明・周知活動を実施。
・2022年度より不二製油(株)にてインターナルカーボンプライシング(*2)をトライアル導入し、投資計画の策定・省エネ推進へのインセンティブ・投資意思決定の指針等に活用予定。
(*1)2030年CO2排出量削減目標:
「スコープ1、2:40%削減、スコープ3(カテゴリ1):18%削減」(基準年:2016年)
・スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
・スコープ2:他社から供給された電気、熱 ・蒸気の使用に伴う間接排出
・スコープ3:事業者の活動に関する他社の排出(カテゴリ1~15)
・カテゴリ1:原材料
注:詳細はサステビリティレポートをご参照ください。
(https://www.fujioilholdings.com/sustainability/environment/management/)
(*2)インターナルカーボンプライシング:
企業が独自に炭素価格を設定し、企業の低炭素投資・対策を推進する仕組み
気候変動リスク・機会及び財務インパクトの影響度評価
*1影響度
大:「利益への影響額が100億円以上となる可能性がある」
中:「利益への影響額が20億円以上~100億円未満となる可能性がある」
小:「利益への影響額が20億円未満となる可能性がある」
上記、大・中・小の影響度は、当社グループにおける現在のポートフォリオ、財務状況、業績等に基づき、ある条件下の試算により予測される2050年頃の財務インパクトについて言及したものです。財務インパクトの評価はこの影響度を基準として行っておりますが、変動する場合があります。
*2「 環境規制対応コストの増加リスク」における財務インパクト「炭素税導入によるコストの増加」の影響度は、2030年頃を想定したものであり、「IEA」、「IPCC」等による各国炭素税見込額と当社グループのCO2排出見込量より算出。
*3「 One Health」:生態系の健康、そして動物の健康を守ることが、人の健康を守ることでもあるという事実を認識し、人、動物、生態系、3つの健康を1つと考え、守っていこうという概念。
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