(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス変異株の拡大等を背景に、個人消費をはじめ景気回復に鈍さが見受けられた後、ワクチン接種の普及が進んだこともあり、各種規制緩和等が行われ、景気対策や海外経済の回復等により景気は持ち直しの動きが見られました。しかしながら、2022年に入り、円安、ウクライナ情勢緊迫化の影響により資源価格が高騰する等、先行きが不透明な状況となりました。
海外に関しても、総じて回復基調が続いており、米国は、インフレ傾向が強まり、その政策対応が注目されております。一方欧州は、ウクライナ情勢の影響により先行きが不透明な状況となりました。
当社グループの主力マーケットである食品業界におきましては、外食産業で全国的に時短要請が解除され、緩やかな回復傾向にありますが、特に夜間の客足がさほど伸びず、回復は低調にとどまっているもようです。
当社グループの業績に影響を与える為替相場におきましては、期初1ドルあたり110円台で始まり、緩やかなドル高円安基調で推移し、2022年に入ってドルが次第に切り上がり、3月には日米金利差の拡大によりさらにドル高円安傾向が強まり、期末では120円台となりました。
コーヒー業界におきましては、コーヒー相場は期初は1ポンドあたり121.60セントからスタートし、6月末にかけて160セント台に上昇後、7月後半にブラジルの主要生産地で発生した降霜により来年度の大幅な減産が懸念されたことにより207セント台まで急上昇いたしました。8月初めには一時172セント台まで戻したものの、降霜と干天による減産懸念、国際物流の停滞による消費国在庫の減少等が材料視され、10月初めに再び200セント台を超えた後、投機筋の積極的な買いも入り2月には259セントを記録しました。その後リスクオフの売りが進み211セントまで下落し、3月末は226セントとなりました。
このような状況のなか、当社グループは、新型コロナウイルスを契機とした食の構造変化への適応を図るよう、家庭用商品、中食向け弁当・惣菜等に力点を置いて営業を展開するとともに、コーヒー相場・円安や海上運賃の高騰に対するお客様のご理解の浸透を進めております。また、世界的なコンテナ不足と海上輸送の停滞は現在も続いており欠品を回避するよう、事前情報の入手に努め、一層きめ細かな在庫管理と物流管理を行っております。さらに、ITの推進・強化の効果をリモートワークや会議・商談の効率化はもとよりRPA(Robotic Process Automation)等にも広げ、様々なアクションを進めております。当事業年度は2019年度からスタートさせました中期経営計画「i(アイ)プロジェクト」の最終年度となりますが、当初掲げた数値目標の達成と定性目標の仕上げだけでなく、次期中期経営計画との繋がりも意識し、GHG(温室効果ガス)を削減しながらの企業成長や、社会的課題の解決のビジネス化等についても検討しております。
その結果、特に後半において販売価格が原価上昇をカバーしきれず、当連結会計年度における売上高は46,729百万円(前年同期比15.3%増加)、売上総利益は6,637百万円(前年同期比5.5%増加)、営業利益は695百万円(前年同期比23.6%減少)、経常利益は793百万円(前年同期比5.3%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は532百万円(前年同期比13.4%増加)となりました。
なお、上記の前年同期比のベースとなる2021年3月期の数字には、決算期のズレを踏まえた企業結合上、同期第1四半期に対応する期間に関し、東京アライドコーヒーロースターズ株式会社の業績が含まれておりません(第1四半期に対応する期間の同社の売上高は1,413百万円でした)。
各部門別の状況は次のとおりであります。
コーヒー・飲料部門
コーヒー生豆は、輸出が好調だったこと、自家焙煎店卸等の家庭用ルートが好調だったことにより販売量が増加いたしました。加えて、コーヒー相場が高騰した影響により売上高が増加いたしました。
紅茶等の飲料原料は、飲料メーカー向けの販売が好調だったことにより前期比を大きく上回り、販売量が増加いたしました。
その結果、コーヒー飲料原料の売上高は前年同期比31.2%増加いたしました。
2) コーヒー飲料製品
レギュラーコーヒーは、コーヒーバッグや原料用バルク商品の販売量が増加いたしました。また、通信販売ルートが好調だったことも販売量の増加を支えました。さらに、コーヒー相場の高騰により販売価格を見直したことで売上高が増加いたしました。
加えて、上述の東京アライドコーヒーロースターズ株式会社の3か月分の売上高1,413百万円の計上が、前年同期比の主な増加要因となりました。
その結果、コーヒー飲料製品の売上高は前年同期比22.8%増加いたしました。
これらの理由により、コーヒー・飲料部門の売上高は 19,729百万円 と前年同期比 26.4% の増加となり、売上総利益は 2,917百万円 と前年同期比 4.6% の増加となりました。
食品部門
1)加工食品
新型コロナウイルス感染拡大による外食業界の落込みのカバーとして、メディカル給食、量販惣菜、製パン向けの深耕に注力いたしました。
ドライ商品は、量販店向けトマト缶詰が好調に推移したことに加え、給食向けフルーツ缶詰の販売が増加したことにより、売上高は前年同期比4.9%増加いたしました。
フローズン商品は、量販惣菜とベーカリー業態への販売推進により水産調理品の販売が増加したことに加え、世界的なジャガイモの供給不足に伴い、新商品として中国産フライドポテトの販売を開始したことにより、売上高は前年同期比4.7%増加いたしました。
メーカー商品はドライ・フローズンともに、昨年著しく減少した外食向けの販売が回復に向かい、売上高は前年同期比2.3%増加いたしました。
その結果、加工食品全体の売上高は前年同期比3.6%増加いたしました。
2)水産
水産では、大手回転寿司チェーンでのフェアメニューの獲得に注力したことにより、昨年著しく減少した外食向けエビ商品の販売が増加いたしました。
その結果、水産の売上高は前年同期比4.6%増加いたしました。
3)調理冷食
調理冷食は、唐揚げの市場規模拡大に伴い、関連する商品への取り組みに注力したことに加え、外食市場の回復もあり、鶏肉加工品の販売が大きく増加いたしました。
その結果、調理冷食の売上高は前年同期比4.3%増加いたしました。
4)農産
生鮮野菜は、海外産玉葱が食品メーカー向けの販売シェア拡大と夏場の天候不順による需要増加から売上高が大きく増加いたしました。
農産加工品は、既存得意先の販売シェア拡大により唐辛子の販売が増加したことに加え、水煮山菜類の新規開拓に注力したことにより販売が増加いたしました。
その結果、農産の売上高は前年同期比14.3%増加いたしました。
これらの理由により食品部門の売上高は 22,357百万円 と前年同期比 6.7% の増加となりましたが、売上総利益は産地価格上昇、コンテナ不足、原油高、円安等に伴うフレイト等の費用高騰により、 2,813百万円 と前年同期比 3.3% の減少となりました。
海外事業部門
新型コロナウイルス感染拡大により飲食店向けの業務用食材を主に手掛ける得意先向けの輸出が減少いたしましたが、アジア及び欧州の主要顧客向けの輸出において、巣ごもり需要に支えられ家庭用商品の輸出が増加いたしました。また、インドネシアのグループ会社にてコーヒーの商品開発を行い、中国をはじめとしたアジア向けに輸出を開始いたしました。さらに、中国国内でのコーヒー生豆の販売増加により業績が伸張している中国現地法人が収益を押し上げました。
その結果、海外事業部門の売上高は 4,642百万円 と前年同期比 17.8% の増加となり、売上総利益は 906百万円 と前年同期比 53.7% の増加となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ563百万円減少し、4,154百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は731百万円(前連結会計年度は2,259百万円の収入)となりました。その主な内容は、棚卸資産の増加2,321百万円に対し、仕入債務の増加1,397百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は661百万円(前連結会計年度に比べ使用した資金は395百万円増加)となりました。その主な内容は、有形固定資産の取得による支出540百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は798百万円(前連結会計年度は882百万円の使用)となりました。その主な内容は、借入金及び社債の収支による収入1,079百万円です。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は単一セグメントに該当するため、部門別に生産、受注及び販売の状況を記載しております。
当社グループのうち連結子会社において飲料製品(レギュラーコーヒー・インスタントコーヒー)の生産を行っておりますが、グループ事業全体における重要性が低いため、生産実績及び受注状況については記載しておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高46,729百万円(前年同期比15.3%増加)、売上総利益6,637百万円(前年同期比5.5%増加)、営業利益695百万円(前年同期比23.6%減少)、経常利益793百万円(前年同期比5.3%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益532百万円(前年同期比13.4%増加)となりました。年度初めは、新型コロナウイルス変異株の拡大等を背景に緊急事態宣言、まん延防止措置が発出され、食品業界の特に外食産業におきましては、様々な営業制限を余儀なくされ厳しい経営環境が続いておりました。その後ワクチン接種の普及が進んだこともあり、各種規制緩和等が行われ、これに伴い外食産業向けの販売が回復に向かいました。当社グループは新型コロナウイルスを契機とした食の構造変化への適応を図るよう、家庭用商品、中食向け弁当・惣菜等に力点を置いて営業を展開するとともに、一層きめ細かな在庫管理と物流管理を行ってまいりました。しかしながら、コーヒー相場の高騰や海上コンテナ不足による海上運賃の高騰、及び急激な円安の影響により修正した業績予想値と実績値に差異が生じる結果となりました。
当事業年度は2019年度からスタートさせました中期経営計画「i(アイ)プロジェクト」の最終年度となりますが、当初掲げた数値目標の達成と定性目標の仕上げだけでなく、次期中期経営計画との繋がりも意識し、GHG(温室効果ガス)を削減しながらの企業成長や、社会的課題の解決のビジネス化等についても検討してまいりました。依然として新型コロナウイルスは企業の経済活動並びに人々の社会活動に影響を及ぼし続けておりますが、当社グループは、そうした環境の変化を機会ととらえ、迅速かつ的確に対応するとともに新たな時代に求められるビジネス構造を見据え、事業の持続的成長を目指してまいります。
(単位:百万円)
連結会計年度の財政状態に関しては、売上債権・仕入債務が期末近くの取引活発により概ね並行する形で増えており(売上債権は1,001百万円増加、仕入債務は1,397百万円増加)、加えて、コーヒー相場の高騰及びコンテナ不足による商品の欠品防止に備えたため、棚卸資産が増加(2,321百万円増加)、それに伴い借入金も増加(1,135百万円増加)しております。当連結会計年度末の現預金の残高は月商の1.09ヶ月と当社グループとしては特に問題ない水準ですが(前連結会計年度末は1.43ヶ月)、先行き不透明な状況のなか、不測の事態に備えるとともに、引き続き財務の健全化を意識し取り組んでまいります。
部門別の経営成績の状況は次のとおりであります。
コーヒー・飲料部門 ・・・ 売上高: 19,729百万円 (前年同期比26.4%増加)
売上総利益: 2,917百万円 (前年同期比4.6%増加)
食品部門 ・・・ 売上高: 22,357百万円 (前年同期比6.7%増加)
売上総利益: 2,813百万円 (前年同期比3.3%減少)
海外事業部門 ・・・ 売上高: 4,642百万円 (前年同期比17.8%増加)
売上総利益: 906百万円 (前年同期比53.7%増加)
コーヒー・飲料部門は増収増益となっておりますが、自家焙煎店等の家庭用ルートへの販売が好調だったこと、コーヒー相場の高騰により販売価格を見直したこと及び連結子会社となった東京アライドコーヒーロースターズ株式会社の3か月分の売上高1,413百万円及びそれに伴う利益が前年同期比増加の主な要因であります。食品部門は増収減益となっておりますが、これは主に想定以上の急激な円安及び海上運賃等の高騰が利益率低下につながったものであります。海外事業部門は増収増益となっておりますが、輸出先国での巣ごもり需要を捉えることができたこと、加えて中国現地法人の業績好調が後押ししたものであります。今後はGHG(温室効果ガス)削減を図りながら、さらなる事業の持続的成長を目指してまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、現金及び現金同等物において期末残高は、前連結会計年度末に比べ563百万円減少し、4,154百万円となりました。また営業活動によるキャッシュ・フローは営業活動の結果使用した資金は731百万円となり、これは、主に棚卸資産の増加(2,321百万円)に対し、仕入債務の増加(1,397百万円)が大きく影響しております。当社が特に重視している運転資本関連項目の回転期間の推移は以下のとおりです。業態を勘案すれば特に問題ない水準と考えており、引き続きキャッシュ・コンバージョン・サイクルを注視しながら適切な運営を行ってまいります。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは適切な自己資本比率を維持しつつ、自らの外部調達の限界を充分にわきまえながら、円滑、安定的な資金繰り運営と手許流動性の維持を行っております。2002年の株式店頭登録以降、資本(エクイティ)による資金調達の実績はなく、調達の源泉は基本的に金融機関からの外部調達に依存しております。その推移は以下のとおりであり、安定しております。各金融機関とは親密な取引関係維持を図っておりますが、新型コロナウイルス等による金融市場動揺のリスクに備え、一部金融機関からの短期借入金の調達枠の一部をコミットメントラインに振り替え、危機対応を講じております。
(単位:百万円)
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。ただし見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果がこれらの見積りと異なる場合があります。それに関連する主な項目は以下のとおりであります。
a 貸倒引当金について
当社グループは、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒が懸念される特定の債権については個別に回収可能性を検討し、債権の回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。
b 繰延税金資産について
繰延税金資産は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を検討し計上しております。
c 保有資産の減損リスクについて
当社グループは、投資案件に関し、金額・内容の妥当性や損益・資金収支の見通し等を慎重に検討の上、金額に応じ取締役会等で決定し、適切に進めております。
d 投資有価証券について
当社グループは、保有株式に関し定期的に資本コストに見合っているか等を精査し、保有の適否を見直すこととしております。
e 賞与引当金について
当社グループは、従業員に対する賞与支給に充てるため、業績を鑑み、支給見込額を見積り計上しております。
f 棚卸資産の評価について
当社グループは、棚卸資産を主として移動平均法による原価法(貸借対照表価額については収益性の低下に基づく簿価切り下げの方法)で評価しておりますが、収益性の低下による簿価の切り下げは、一定の仮定及び販売可能性の判断に基づいております。
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