課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、別段の表示が無い限り、当該事項は提出日現在において判断したものです。

(1)経営理念

 当社グループの経営理念は、「4Sモデル」の追求です。これは「お客様を中心として、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく」という考え方です。
 当社グループは、「4Sモデル」をベースに、「JTならではの多様な価値を提供するグローバル成長企業であり続けること」を目指す企業像(ビジョン)として定めており、また、「自然・社会・人間の多様性に価値を認め、お客様に信頼される『JTならではのブランド』を生み出し、育て、高め続けていくこと」が、当社グループの使命であると考えております。
 加えて、当社グループ社員の一人ひとりが徹底すべき行動規範・価値観として「JTグループWAY」を掲げており、「お客様を第一に考え、誠実に行動すること」「あらゆる品質にこだわり、進化し続けること」「JTグループの多様な力を結集すること」という3つのステートメントによって、表現しております。
 当社グループは、「4Sモデル」を追求することを通じ、これまで持続的な利益成長を実現してきており、今後もその実現を目指してまいります。持続的な利益成長のためには、お客様に新たな価値・満足を提供し続けることが前提となることから、中長期的な視点に基づき、将来の利益成長に向けた事業投資を着実に実施していくことが肝要と考えております。

 この「4Sモデル」を追求していくことが、中長期に亘る企業価値の継続的な向上につながると考えており、株主を含む4者のステークホルダーにとって共通利益となるベストなアプローチであると確信しております。

 

(2)経営資源の配分

 当社グループの中長期の経営資源配分は、かかる経営理念に基づき、中長期に亘る持続的な利益成長につながる事業投資を最優先とする方針です。

 当社グループは、たばこ事業を利益成長の中核かつ牽引役と位置付け、たばこ事業の持続的な利益成長に向けた事業投資を最重要視します。一方、医薬事業及び加工食品事業は全社利益成長を補完すべく、事業基盤の再構築に注力することとし、そのために必要な投資を実行していきます。

 今後も、中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資(注)を最優先に実行し、同時に事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視するという経営資源配分方針に変更はありません。

(注)たばこ事業の成長投資を最重要視し、質の高いトップライン成長を通じた為替一定調整後営業利益の成長を目指す

 

(3)全社利益目標及び株主還元の方針

 当社グループは、経営理念及び資源配分方針を踏まえ、全社利益目標及び株主還元の中長期の方向性を「経営計画2022」において設定しています。

 「経営計画2022」においても、たばこ事業におけるRRPへの投資を強化することに伴い、当該期間における為替一定ベースの調整後営業利益の成長率は、年平均mid single digit成長を想定(注1)するも、その効果発現を通じ、引き続き為替一定ベースの調整後営業利益の成長率における、中長期に亘る年平均mid to high single digit成長を目指してまいります。

 株主還元方針については、「4Sモデル」に基づく経営資源配分方針で掲げる「中長期に亘る持続的な利益成長に繋がる事業投資を最優先」と「事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視」という観点から、以下のとおりとしています。

・強固な財務基盤(注2)を維持しつつ、中長期の利益成長を実現することにより株主還元の向上を目指す

・資本市場における競争力ある水準(注3)として、配当性向75%を目安(注4)とする

・自己株式の取得は、当該年度における財務状況及び中期的な資金需要等を踏まえて実施の是非を検討

(注1)将来に関する記述は、様々なリスクや不確実性に晒されており、実際の業績は、将来に関する記述における見込みと異なる場合があります。当社グループに関するリスク詳細については「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」をご参照ください。

(注2)経済危機等に備えた堅牢性、及び機動的な事業投資等への柔軟性を担保

(注3)ステークホルダーモデルを掲げ、高い事業成長を実現しているグローバルFMCG(Fast Moving Consumer Goods)企業群の還元動向をモニタリング

(注4)±5%程度の範囲内で判断

 

(4)経営環境及び全社利益目標達成に向けた基本戦略

ⅰ経営環境

 当社グループ経営を取り巻く経営環境は、国際的な政治情勢の変化や新興国通貨における減価傾向等の為替変動リスク等、不確実性を増していると認識しております。新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響は徐々に収束し、世界経済は緩やかに回復傾向にあるものの、消費者行動や企業活動の変化、変異株の出現等による世界的な経済活動の停滞リスク等により、今後の見通しは引き続き不透明な状況にあると認識しております。こうした不透明な経営環境を乗り越え、適切にグローバルビジネスを運営し、持続的な利益成長を実現するためには、「変化への対応力」が必要であると考えております。これは、不確実性に対処すべく、計画策定時において想定の範囲を拡げるとともに、それでも起こりうる想定を超える変化・出来事に対して、素早く・柔軟に対応する能力を指しており、この変化への対応における巧拙とスピード感は、引き続き企業の競争力を決定する重要なファクターになると考えております。

 加えて、デジタル・テクノロジーの進展、生活者の意識・行動の変化及びESGやサステナビリティに対する意識の高まり等、世の中の大きくかつ急速な流れを踏まえ、「変化への対応力」という受け身の対応だけではなく、たばこ事業の事業運営体制の一本化やコーポレート部門の進化を通じ、自ら変化を起こし、変革をリードする組織への進化を加速してまいります。

 当社グループは、不確実性を増す経営環境を見極め、スピード感を持って競争力を強化すべく、期間を3年間とした経営計画を1年ごとにローリングを行う方式で策定しております。

 

ⅱ基本戦略

 当社グループは目標達成に向けた基本戦略として「質の高いトップライン成長」「コスト競争力の更なる強化」「基盤強化の推進」を掲げており、それぞれ選択と集中の考え方を通じて実行していきます。
 中でも「質の高いトップライン成長」を最重要視しており、以下各事業の基本戦略の中で述べるブランドやカテゴリーといった注力分野にリソースを集中し、商品・サービスの付加価値を向上させていきます。
 「コスト競争力の更なる強化」については、事業コスト、コーポレートコストの双方においてその最適化を進め、品質の維持・向上との両立を図りながらスピーディーかつ効率的な事業運営体制を構築し、利益率の改善及びキャッシュ・フロー創出力の強化を目指していきます。加えて、事業継続能力の向上を図るとともに、コスト競争力の強化を目指していきます。
 「基盤強化の推進」にあたっては、前例にとらわれることなく、変化する環境を適切にとらえ、常に挑戦する姿勢を持ち続けることが重要です。このような観点に基づき、不断の改善に取組んでいきます。加えて70以上の国と地域での事業展開、更に100以上の国籍を持つ社員が働く当社グループ人財の多様性を活用し、コラボレーションを推進することにより、シナジーを最大化していきます。また、すべての企業活動及び成果は人財によって生み出されていることを強く認識しており、人財育成についても一層強化していきます。

 

ⅲサステナビリティ戦略

 当社グループは、持続的に成長するためには事業を通じて社会の持続的な発展に貢献していくことが必要不可欠という認識のもと、サステナビリティへの取組みを経営の中核に設定しています。当社グループは、社会とともに持続的に成長するために取組むべき重要課題をマテリアリティとして特定した上で、サステナビリティ戦略を策定しております。また、グループ全体に共通する事業継続に不可欠なサステナビリティの3つの基盤(「人権の尊重」「環境負荷の軽減と社会的責任の発揮」「良質なガバナンスと事業規範の実行」)と各事業の特性を踏まえて、優先的に取組む注力分野及びその目標を定めています。詳細については当社ウェブサイトをご参照ください。

 

「サステナビリティ」https://www.jti.co.jp/sustainability/index.html

 

(5)セグメントごとの経営環境及び基本戦略

[たばこ事業]
 たばこ事業は、当社グループ利益成長の中核かつ牽引役であり、為替一定ベースの調整後営業利益の成長率について、「中長期に亘って年平均mid to high single digit成長」を目指します。

 

ⅰ経営環境

 たばこ製品については、現在多種多様な製品形態が市場に流通しており、以前よりお客様に親しまれているカテゴリーとしては、紙巻たばこを筆頭に、Fine cut tobacco、シガー、パイプ、無煙たばこ、水たばこ、クレテック等が挙げられます。加えて、近年人気が高まっているカテゴリーとして、加熱式たばこ及びE-Vapor製品等のRRPカテゴリーがあります。加熱式たばこは、たばこ葉を使用し、たばこ葉を燃焼させずに、加熱等によって発生するたばこベイパー(たばこ葉由来の成分を含む蒸気)を愉しむ製品で、各国で伸長しています。加熱式たばこは、たばこ葉を使用していることから、原則として規制・税制上たばこ製品としての取扱いを受けます。加熱式たばこ(中でもHeated tobacco sticks(高温加熱型の加熱式たばこ))は、各社が開発に力を入れており、イノベーションを通じた更なる成長が期待されます。また、鼻や口に直接含んで味・香りを愉しむ、煙の出ない製品である無煙たばこについても、以前より市場が形成されていた欧州や米国を中心にプレゼンスが拡大してきています。E-Vapor製品は、たばこ葉を使用せず、ニコチンが含まれるリキッドを加熱して愉しむ製品で、欧米の市場を中心に一定のプレゼンスを有しています。E-Vapor製品は、たばこ葉を使用していないことから、多くの市場において規制・税制上たばこ製品としての取扱いを受けてきませんでしたが、各国の規制・税制に変化が見られています。

 世界のCombustible(注1)総需要は年間約5.4兆本(注2)、金額ベースの市場規模は約7,000億米ドル(注2)です。世界最大の市場は中国であり、世界のCombustible総需要の40%超を占めていますが、同国の専売企業である中国国家煙草総公司が製造・流通・販売をほぼ独占しています。また、インドネシア、米国、ロシア、トルコ、ドイツ、日本が中国に次ぐ市場規模(注2)となります。たばこ産業における主なグローバルプレーヤーは、中国国家煙草総公司を除けば、フィリップ・モリス・インターナショナル社、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社、JTグループ、インペリアル・ブランズ社があります。RRPにおいては、この4社に加え、E-Vapor製品を販売している米国のジュール・ラブズ社や、無煙たばこを主力製品としているスウェーデンのスウェディッシュ・マッチ社も挙げられます。

 Combustible市場(注3)は、成熟市場と新興市場とで異なる特徴を有しており、成熟市場においては、経済成長が限定的であることや、増税及び規制の強化、人口構造の変化等の様々な要因によって、Combustible総需要は減少傾向にあります。また、お客様の需要がより低い価格帯の製品へと移行する動きも複数の市場で見受けられます。一方、新興市場においては、人口の増加と経済成長に伴い、中東、アフリカを中心とした多くの国々でCombustible総需要は増加傾向にあります。加えて、所得の増加に伴い、お客様の需要はより高品質・高価格帯の製品へと移行する傾向があります。

 世界のCombustible総需要(注2)は、一部市場でコロナ禍による一時的な増加も確認されましたが、傾向としては僅かながら減少トレンドにあります。しかしながら、たばこ産業の利益創出構造は引き続き堅固であり、厳しい環境下においても、主にCombustiblesにおける製品単価の上昇により、今次経営計画の期間においても市場全体の売上規模は成長を続けると見ています。このCombustible総需要の減少と売上規模の増加傾向は、今後も継続するものと予想されます。また、お客様のニーズ等により加熱式たばこ及びE-Vapor製品等の市場構成は国々で異なるものの、RRPの主な市場は、米国、日本、英国、ロシア、イタリア、中国、韓国等が挙げられます。市場規模はCombustible市場(注3)に比べれば小さいものの年々売上が伸長しており、今後も加熱式たばこの成長が牽引し、RRP売上規模は拡大していくと見込んでいます。

 なお、2020年来の新型コロナウイルス感染拡大による影響により、たばこ業界全体として一層今後の見通しが不透明な状況にあります。これにより、お客様の購買力や消費・購買行動に与える影響は今後も一定程度残存すると認識していますが、中期的には大きな影響はないと想定しています。一方、国や地域により状況が異なっていること、経済への影響から各国の財政出動により増税の可能性等も考えられることから、今後の事業環境の変化には注視が必要と考えています。

(注1)製造受託/水たばこ/加熱式たばこ/無煙たばこ/E-Vaporを除く燃焼性のたばこ製品

(注2)2020年度データ。Fine cut tobaccoを含む

(注3)Fine cut tobaccoを含む

 

ⅱ基本戦略

<質の高いトップライン成長>

・Heated tobacco sticks及びCombustiblesへの経営資源の集中的な投入

 RRPは、お客様、社会及び当社グループの事業にとって有益であると考えており、中でもHeated tobacco sticksは、Combustiblesと同様に最重要カテゴリーと位置付け、最優先に資源配分を実施してまいります。また、より多くのお客様からの支持を獲得するために、地理的拡大、継続的な製品改善、ケイパビリティの強化を実施してまいります。

 一方でCombustiblesについても、今後当面は依然としてたばこ産業全体において最大のカテゴリーであるため、その重要性に変わりはなく、引き続き市場シェアの獲得と着実なプライシング戦略の実行等を通じて、持続的な成長を目指してまいります。

 

・ブランドエクイティ強化を通じた既存主要市場におけるシェアの維持・拡大
 たばこ事業は、「卓越したブランド力」を原動力として、過去数年間に亘って、当社グループ主要市場の多くで、その市場シェア伸長を実現してきました。

 今後も市場シェア伸長を目指すべく、当社グループは、主要ブランド、特にGFBへの継続的な投資を通じたブランドエクイティの向上に注力していきます。その一方で、当社グループが事業展開する各国・各地域のお客様の嗜好に合わせ、ローカルブランドによる補完も適切に実行し、ブランドエクイティ強化に向けた継続的な投資を行っていきます。

 具体的には、喫味品質の主たる要素である「ブレンド技術」「香料技術」「フィルターをはじめとする材料技術」、そしてそれらを「加工する技術」を更に進化させていくとともに、外観品質として重要な「パッケージ開発力」も加えた、付加価値あるたばこ創りの5つの主要素に注力していきます。

また、たばこ業界は、世界的な広告・販売促進規制等の進行によって、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の4大マスメディアの活用が著しく制限されており、お客様との適切なブランドコミュニケーションを展開する上で、店頭を中心としたコミュニケーション媒体の重要性が高まっていると認識しております。したがって、流通・プロモーション戦略上は、国・地域ごとの規制環境により販売チャネル、お客様の購買動向、競合動向が異なることを踏まえたトレードマーケティングの推進を重要テーマと考えております。

 

<コスト競争力の更なる強化>
 たばこ事業は、これまで同様に不断のコスト改善を追求し、品質の維持・向上との両立を図りながら、スピーディーかつ効率的な事業運営体制の構築を目指します。また、これまで以上に、グローバルサプライチェーンの全体最適化を志向していきます。具体的には、葉たばこのグローバル調達における垂直統合や、材料品調達における材料スペックの統一化、サプライヤー間の互換性の確保によるコスト低減を促進していくとともに、市況に応じた機動的な調達と原材料在庫の適正化による原材料費の抑制を追求していきます。また、生産性の向上を目指した製造体制の見直しと設備投資の最適化を通じた加工費の節減も継続的に実施していきます。同時に、事業継続能力を向上させるべく、代替性確保と重要機能の分散化という観点から、マルチソーシング体制の確立と、グローバルな製造拠点の相互活用による製造能力の最適配分、優先銘柄に関する製造能力のエリア分散を目指しております。

 上記施策を通じて、品質に妥協することなくコスト効率化を実現し、更なるマージン改善及び運転資本や投資最適化によるキャッシュ・フロー創出力の強化を目指していきます。

 

<基盤強化の推進>
 たばこ事業の持続的利益成長を支える基盤として、「人財育成」を重要なテーマと考えております。
 当社グループは70以上の国と地域で事業を展開しており、世界中で100以上の国籍の社員が、国籍・性別・年齢の区別なく働いております。こうした多様性を活かし、コラボレーションを推進する中で、シナジーを最大化しております。すべての企業活動・成果は人財によって生み出されるものという強い認識の下、グローバルな人財の獲得・育成について、更に進化させていきたいと考えております。

 

 たばこ事業は、上記事業戦略の着実な実行により、引き続き業界を代表するグローバルたばこメーカーとしてのプレゼンス向上を目指すとともに、当社グループにおける利益成長の中核かつ牽引役としての役割を一層強化していきます。

[医薬事業]
 医薬事業は、次世代戦略品の研究開発推進と各製品の価値最大化を通じ、当社グループへの安定的な利益貢献を目指します。

 

ⅰ経営環境

 世界の医薬品市場規模は過去5年間で年平均成長率約3.7%と成長を続け、直近2020年の市場規模は前年度比2.6%増の1兆3,054億米ドルとなっています(注)。健康意識の高まり、人口の増加、公的医療制度の充実等に伴い、先進的な医薬品の需要が高まっている一方で、高齢化や財政赤字等の背景もあり、各国政府は薬価コントロールを強めており、医療費の抑制を図っています。

 日本の医療用医薬品市場におけるジェネリック医薬品の規模は、政府による医療費抑制を目的とした普及促進に伴い拡大しています。加えて、薬価制度の抜本的改革により、2021年より毎年段階的な薬価引き下げ等が行われることになり、企業にとっては引き続き厳しい状況が予想されます。

 有望な創薬標的の発見は容易ではなく、また新薬の承認審査基準が厳格化する中で、グローバルの開発競争は厳し

さを増しています。当社は、国際的に通用するオリジナル新薬創出のための研究開発主導型事業を運営しており、日

本国内だけではなく、グローバルメガファーマやベンチャー企業等、多数の企業と競合関係にあります。

(注)Copyright © 2022 IQVIA. Created based on IQVIA World Review (Data Period, Year 2016-2020) 無断転載禁止

 

ⅱ基本戦略

<安定的な利益貢献>
 安定的な利益貢献のために、具体的には「次世代戦略品の研究開発推進と最適タイミングでの導出」「各製品の価値最大化」を重要課題とした収益基盤の更なる強化に努めます。

 

・次世代戦略品の研究開発推進と最適タイミングでの導出

医薬事業の持続的発展の観点から、次世代戦略品の研究開発推進は重要な課題です。新薬創出のハードルが年々上昇している中、世界の医療現場におけるアンメットニーズに徹底的にこだわり、世界中から創薬のタネを求めることによって研究テーマの充実を図るとともに、候補化合物ごとに柔軟かつきめ細やかな研究マネジメントを実践することによって、迅速な臨床開発フェーズへの移行を目指します。

近年、世界規模で研究開発競争が激化しており、医療現場ニーズを見据えた完成度の高い開発戦略の構築と、スピード感のある臨床試験の実施が必要不可欠です。研究開発スピードを加速し、早期に世界の患者様に当社グループが創製した新薬をお届けするために、自社での開発推進に加え、引き続き、他社(特にグローバルメガファーマ)への導出や提携等の機会も積極的に追求していきます。

 

・各製品の価値最大化

2014年以降、「リオナ錠(高リン血症治療剤)」、「シダトレンスギ花粉舌下液」、「ミティキュアダニ舌下錠」及び「シダキュアスギ花粉舌下錠」、「コレクチム軟膏(アトピー性皮膚炎治療薬)」、「エナロイ錠(腎性貧血治療薬)」を国内で発売しました。また、海外においては各ライセンスパートナー企業が、「Stribild(抗HIV薬)」及び「Genvoya(抗HIV薬)」並びに「Mekinist(メラノーマ、非小細胞肺がん治療薬)」を販売中です。これら各製品を通じた医療現場への貢献を最大化すべく、当社のグループ会社である鳥居薬品やライセンスパートナー企業と緊密に連携し、市場への着実な浸透を図っていきます。

 

なお、こうした諸活動の推進を実効あるものとするためには、医療現場におけるアンメットニーズや最新の創薬研究に精通し、それをもとに完成度の高い開発戦略や製品価値最大化戦略を構築しうる人財、世界のアカデミアや製薬企業とわたりあえるグローバル人財の育成が急務であると認識しており、それに向けた取組みに注力していきます。

[加工食品事業]

 加工食品事業は、高品質なトップライン成長による中長期に亘る利益成長を通じ、当社グループへの利益貢献を目指します。

 

ⅰ経営環境

 2020年における日本国内の冷凍食品消費量(注)は、前年度比3.6%減の約284万トンであり、輸入品を含む国内消費金額(注)は前年度比1.6%減の1兆463億円となり、やや減少したものの4年連続で1兆円を上回りました。新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛や営業時間短縮要請の影響により、外食向けを中心とする業務用の消費量が大幅に減少した一方で、自粛生活やテレワークの普及等により家庭用は過去最高の消費量を記録しました。

 日本の加工食品市場は、共働き世帯の増加等のライフスタイルの変化に伴い、調理の簡便化や時短化のニーズが高まっていること等を背景として堅調に推移していると考えています。その中でも冷凍食品は、いつでも手軽に出来たてのおいしさを再現でき、バリエーションが豊富であるため、お客様の多様なニーズを満たすことができると期待されています。

 当社のグループ会社であるテーブルマーク㈱の競合企業は、マルハニチロ、ニチレイフーズ、味の素冷凍食品、日本水産といった大手企業に加え、数多くの中小企業が挙げられますが、各種の製品カテゴリーごとにすみ分けがなされています。一方で、流通各社でのプライベートブランド製品の拡大や卸企業の業界再編等、販路の動向にも注視することが必要と考えており、また、原材料においても世界的な食料不足を背景とした価格変動等のリスクが依然として存在しています。

(注)日本冷凍食品協会(2020年データ)

 

ⅱ基本戦略

<質の高いトップライン成長>

 冷凍うどん、パックごはん、冷凍お好み焼を中心とした冷凍・常温食品、調味料及びパンを主力として事業を展開しております。お客様ニーズ把握力、アイデア創出力・具現化力の更なる強化を図ることにより、当社グループ独自の製造技術を一層活かしつつ、「お客様にとって、その価格に相応しい付加価値ある商品づくり」を目指します。また、商品戦略と連動した効果・効率的な広告宣伝及び販売促進活動の展開並びに営業力の強化を図ることによって、更なる市場シェア拡大を目指します。

 

<コスト競争力の更なる強化>
 原材料調達力の強化、物流網の効率的運用、自社グループ工場の生産性改善によるコスト低減に加えて、販売促進施策の選択と集中による営業活動経費の効率的執行、全社的な固定費削減努力を継続的に行い、コスト競争力の強化に努めます。

 

<基盤強化の推進>

・食の安全管理
 今後も引き続き、お客様に安全で高品質の商品を提供していくため、「フードセーフティ」「フードディフェンス」「フードクオリティ」「フードコミュニケーション」の4つの視点をもとに食の安全管理に万全を期した事業運営を行っていきます。

「フードセーフティ」では、既に導入済の食品安全マネジメントシステムを活用し、リスクを極小化する活動を展開します。

「フードディフェンス」では、意図的な攻撃を防ぐための仕組みとして導入済であるフードディフェンスプログラムを推進しております。

「フードクオリティ」では、食品本来の品質である「おいしさ」を追求するとともに、お問い合わせ・ご指摘情報からの継続的な改善による、商品付加価値とお客様満足度の向上を目指します。

「フードコミュニケーション」では、お客様の要望に真摯に耳を傾けるとともに、当社グループの活動の「見える化」を推進するため、積極的に情報を提供する取組みを行います。

 

・人財育成
 事業を支える人財の育成は重要なテーマであり、高いマーケティング能力や商品開発能力等様々なスキルを有する人財の育成に向け、能力開発プログラムの策定及び適切なキャリアパスの構築を図り、その実行に努めていきます。

 

 

以上のとおり、当社グループは、「4Sモデル」の追求を経営理念とし、「変化への対応力」を高めながら、大胆かつスピーディーに意識・行動を変革し、各事業の成長戦略を着実に実行することによって、持続的利益成長を実現し、中長期に亘る企業価値の継続的な向上を目指していきます。

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