文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、2020年9月期に15周年を迎えたことを契機に、当社グループのありたい姿として「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げ、サステナビリティを軸とした事業を展開し、持続的な成長を図っております。その中で、当社グループはユーグレナ等の微細藻類の大量培養技術を出発点として、食品、化粧品、飼料、燃料等の様々な分野における事業展開と研究開発を行っております。
ユーグレナは、植物と動物の両方の性質を備えたユニークな生物であり、その豊富な栄養素や独自成分であるパラミロンの機能性等を活かして、機能性食品、化粧品、飼料として活用することが可能です。また、ユーグレナは光合成により二酸化炭素を吸収して成長する特徴を有していることから、ユーグレナを低コストで大量に培養する技術を確立することで、ユーグレナに含まれる脂質成分をバイオ燃料原料として利用することも可能となります。当社グループは、これらのユーグレナの特徴を活かして、ヘルスケア分野やエネルギー・環境分野における事業を推進しております。
また当社グループは、ユーグレナの事業展開を通じて培った事業基盤と、バイオテクノロジー分野における知見を活かして、「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」という当社グループのありたい姿の実現に向けて、サステナビリティを軸に、ユーグレナ以外の素材や藻類培養以外のテクノロジーを用いた事業展開、並びに既存事業の周辺領域や新規領域への事業進出も進めてまいります。
当社は、ユーグレナを「バイオマスの5F」の「用途」分野に沿って事業化することを基本戦略としつつ、その事業化に伴い「ビジネスモデル」や「素材・技術」の多様化を進めております。「バイオマスの5F」とは、重量単価(例:1kgあたりの値段)が高い順からFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)の各分野へ展開することを指しております。ユーグレナに関しては、現在はバイオマスの5Fのうち、最も価格が高いFood(食料)を主として食品及び化粧品の「用途」で事業化しており、「ビジネスモデル」は、原料販売から、OEM供給、流通チャネルでの卸売、直販、そして海外展開へと順次拡大しております。また今後は培養技術の更なる向上・開発により原料の低コスト化を図り、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)及びFuel(燃料)等の「用途」での事業化を目指してまいります。
図 バイオマスの5F
一方、当社はユーグレナ以外の「素材・技術」についても研究開発や新規開拓を進めており、クロレラ等の微細藻類のほか、カラハリスイカや緑豆等の植物、クルマエビ等の農水産物、そして遺伝子解析サービスといった「素材・技術」を当社グループの事業ポートフォリオに順次導入しております。
以上のとおり、当社グループは、ユーグレナを「バイオマスの5F」の「用途」分野に沿って事業化するという基本戦略を軸に、「素材・技術」、「ビジネスモデル」の点で事業領域の多様化を進めることで、中長期的な企業成長と事業拡大を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループのヘルスケア事業の目標とする経営指標としては、事業の黒字維持と設定し、下記、「1.(3)中長期的な会社の経営戦略」に記載する経営戦略に則り、ヘルスケア事業の持続的な成長に向けて、現在直面している課題の解決を成長機会に転じることで、新たな中長期成長の実現を目指してまいります。
エネルギー・環境事業に関しては、2020年3月に本格稼働した実証プラントで製造した次世代バイオディーゼル燃料及びバイオジェット燃料の供給先拡大を進めており、2021年6月の当社製造バイオジェット燃料による初フライトを含む「陸・海・空」の全領域におけるバイオ燃料導入を実現しました。今後は、バイオ燃料製造・供給の商業化に向けて、国内外のパートナーと連携しながら、2025年の商業プラント完成を目指していきます。
当社グループは2022年12月期において、ヘルスケア事業における下記、「1.(3)中長期的な会社の経営戦略」に記載する経営戦略に則った各種施策の実施によって更なる成長を目指し、業績予想として過去最高の売上高である48,000百万円を見込んでおります。また、2021年9月期から新たに経営者が目標とする経営指標として調整後EBITDAを開示いたしました。調整後EBITDAは一般に公正妥当と認められた会計基準に基づく営業利益に、当社グループにとって経常的に発生する収益や非現金支出を反映させ、恒常的に事業から創出されるキャッシュ・フローを計る利益指標であります。2022年12月期の調整後EBITDAは2,100百万円を見込んでおります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、中長期的な経営戦略として、ヘルスケア事業においてはユーグレナ食品及び化粧品の持続的な売上高の成長を、エネルギー・環境事業においてはバイオ燃料製造・供給の商業化を図ってまいります。
ヘルスケア事業については、2019年より戦略的に取り組んできたブランドポートフォリオの拡充、デジタルマーケティングの強化、流通やECモール等のマルチチャネル展開の拡大等による直販及び流通チャネルの収益拡大により、キューサイ株式会社(以下「キューサイ」)等の新規連結や会計期間の変更といった特殊要因を除いた12カ月ベースの前年同期比で増収となりました。更に、2021年6月30日をみなし取得日として連結子会社化したキューサイによる第4四半期連結会計期間からの収益貢献により、増収幅を拡大しました。今後も、ブランド群の育成、デジタライゼーション、マルチチャネル展開、M&Aの推進等により、持続的な成長を目指してまいります。具体的な実施施策については下記、「1.(4)対処すべき課題」に記載しております。
エネルギー・環境事業については、需給ギャップや政策的インセンティブを背景としてバイオ燃料市場は今後飛躍的な拡大が見込まれており、この巨大な成長市場に速やかに参入し、気候変動問題の解決に貢献するべく、バイオ燃料製造・供給の商業化を着実に進めていく方針です。具体的には、2025年にバイオ燃料製造商業プラントを完成させることで商業生産体制の確立を目指すとともに、実証プラントの稼働を継続しながらバイオ燃料供給先の更なる拡大に取り組んでいきます。また、ユーグレナの大規模培養技術に関する研究開発を着実に進展させることで、燃料用だけでなく飼料用原料としてのユーグレナの利活用も目指してまいります。具体的な実施施策については下記、「1.(4)対処すべき課題」に記載しております。
(4)対処すべき課題
当社グループは、当社グループのありたい姿として「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げ、サステナビリティを軸とした事業を展開し、持続的な成長を図っております。現状の市場環境及び事業進捗において、当社グループとして認識している対処すべき課題については以下のように考えております。
(ヘルスケア事業)
2021年12月期に達成したヘルスケア事業の成長の更なる加速に向けて、当社グループが対処すべき課題は以下のとおりと認識しており、これらの課題の解決を成長機会に転じることで、新たな中長期成長の実現を目指してまいります。
①ブランド群の育成
当社グループは、微細藻類ユーグレナを活用した健康食品ブランド「からだにユーグレナ」や化粧品ブランド「one」に加えて、各グループ会社や2021年6月30日をみなし取得日として連結子会社化したキューサイが展開する商品ブランドから構成される、多様なブランドポートフォリオを有しております。競争が激しくトレンド変化も早いヘルスケア市場において、単一のブランドのみを成長させ続けることは容易ではなく、様々な年代の顧客ニーズに応えられる多様なブランド群を育成し、広告宣伝費等の投資配分を機動的に最適化することで、短期的な市場トレンドに左右されない分散型ポートフォリオの構築を目指しております。2021年12月期においては、当社グループ会社のMEJが発売した機能性コーヒー「C COFFEE」が急成長を果たすとともに、減少基調が続いていたユーグレナ食品も、ブランド再構築やマーケティング強化等の取り組みを継続した結果、再成長を達成しました。
今後もブランド群の更なる育成に向けて、既存ブランドの商品拡充や成長領域への投資強化を推進するとともに、新規ブランドの開発に取り組むことで、ポートフォリオ全体での持続的な成長を目指していきます。また、「サステナビリティ」や「ウェルエイジング」等の成長が見込まれる領域におけるポジショニングの強化を図るとともに、テクノロジーの活用やリーン開発による先進的市場の創出にも取り組んでいきます。
②デジタル化
日本におけるEC購入比率は全世代にわたって上昇しており、若年層だけでなくシニア層へのアプローチにおいてもオンライン販売の重要性が高まっていくと考えられます。また顧客とのコミュニケーションやデータ活用といった観点からも、デジタル化の推進は引き続き重要課題と言えます。当社グループにおける直販の広告宣伝手法は、2018年頃は新聞広告やテレビのインフォマーシャルといったオフライン媒体が大半でしたが、デジタルマーケティングの強化やデジタル人材の採用を進めてきた結果、EC等を通じたオンライン販売比率が着実に拡大してきました。キューサイの連結子会社化により当社グループの直販定期顧客基盤は大幅に拡充しており、マーケティング、顧客コミュニケーション等におけるデジタル化の推進や、当社グループ全体におけるデータ活用やクロスセルの強化により、顧客基盤の多様性と持続性を高めつつ更なる成長に取り組んでいきます。
③マルチチャネル化
当社グループの売上の中心は直販チャネルが占めていますが、消費者認知の向上や顧客接点の創出という観点から、量販店やドラッグストア等の流通チャネルの重要性は高く、更なる販売力の強化及び展開店舗数の拡充に取り組む必要があります。2021年12月期においては、TVCM等の「からだにユーグレナ」を中心としたプロモーション活動を推進するとともに、当社の流通チャネル販売網を通じた「C COFFEE」等の当社グループ会社商品の展開を開始することで、売上成長とグループ内シナジーの創出に取り組んできました。今後も流通チャネルにおける営業活動の強化や取扱いブランドの拡充を進めるとともに、マーケットプレイス等の新規チャネル開拓にも取り組むことで、ブランド認知や顧客接点を拡大し、ヘルスケア事業の持続的な成長を目指していきます。
(エネルギー・環境事業)
気候変動問題への対応策としてバイオ燃料に対する期待がグローバルに高まっており、国際的な規制強化や政策インセンティブも後押しして、今後飛躍的な市場拡大が見込まれております。当社グループは、エネルギー・環境事業において、将来的な商業化を見据えたバイオジェット・ディーゼル燃料の製造・供給体制の構築と微細藻類ユーグレナのバイオ燃料用・飼料用原料としての利用可能性に関する研究開発を推進しております。エネルギー・環境事業に関して当社グループが対処すべき課題は以下のとおりと認識しており、これらの課題を早急に解決することで、中長期的に新たな事業の柱として確立することを目指してまいります。
①バイオジェット・ディーゼル燃料の供給先の拡大
当社グループは、2020年3月に本格稼働を開始した神奈川県横浜市鶴見区の実証プラントにおいて、バイオジェット・ディーゼル燃料の製造、供給を続けております。2020年3月に完成した次世代バイオディーゼル燃料については、供給先がバス、鉄道、物流、船舶など幅広い業種に拡大しております。また、2021年3月にはバイオジェット燃料が完成し、2021年6月に国土交通省飛行検査機及び民間航空機でのフライトを実現しました。将来的なバイオ燃料製造・供給の商業化に向けて、今後も実証プラントの稼働を継続しながら、「陸・海・空」の全ての領域においてバイオジェット・ディーゼル燃料の供給先の更なる拡大に取り組んでいきます。
②バイオジェット・ディーゼル燃料製造商業プラントの製造・供給体制の構築
当社グループは、実証プラントの竣工を機に「日本をバイオ燃料先進国にする」を合言葉とする『GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)』宣言を公表し、2025年までに商業プラントの建設を目指す方針を発表いたしました。商業プラントの建設の実現には、実証プラントの稼働データを取得・分析するとともに、プラントの立地選定・用地確保、バイオジェット・ディーゼル燃料原料の確保、プラントの設計・建設、プラント運転に要する人員・用役の確保、供給先や販売パートナーの確保等、様々な課題に取り組む必要があります。2019年9月期よりプラント立地候補地調査や事業パートナーの開拓等を進めてきており、2021年10月より建設想定地における商業プラントの予備的基本設計を開始しました。今後、国内外のパートナーと連携しながら、商業性評価、基本設計、建設計画策定を推進し、2025年の商業プラント完成を目指していきます。
③微細藻類ユーグレナのバイオ燃料用・飼料用原料としての利用可能性
当社グループは、微細藻類ユーグレナのバイオ燃料用・飼料用原料としての利用可能性に関する研究開発を進めており、将来的な商業生産の実現を目指しております。商業生産の実現には、生産コストの更なる削減、大規模生産技術の確立、大規模生産の候補地調査と現地データ収集、ユーグレナの品種改良や用途に関する研究等、様々な課題に取り組む必要があります。2020年10月に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「バイオジェット燃料生産技術開発事業/実証を通じたサプライチェーンモデルの構築、微細藻類基盤技術開発」に、当社が進めているバイオジェット燃料製造の実証事業及び燃料用微細藻類の海外培養実証に関する研究開発が採択され、インドネシアにおいて微細藻類ユーグレナの大規模培養実証の準備を進めてきました。コロナ禍及び現地パートナー事情により準備が難航した結果、インドネシアでは小規模培養試験を継続して現地生産性評価を行いつつ、三重県多気郡多気町の藻類エネルギー研究所において各生産工程のコスト低減及び製品品質や価格を向上させる技術開発を行う実証に計画変更いたしましたが、中長期的には引き続き海外における大規模培養実証・商業化を目指してまいります。
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