業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

資産、負債及び純資産の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は、23,018,904千円となり、前連結会計年度末比で10,677,380千円の増加となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末より9,080,703千円増加し、20,264,011千円となりました。これは主に、現金及び預金が361,952千円、売掛金及び契約資産が247,647千円、棚卸資産が8,545,047千円増加した一方、営業出資金が180,316千円減少したことによるものであります。

 固定資産は、前連結会計年度末より1,493,878千円増加し、2,652,093千円となりました。これは、有形固定資産が462,389千円、無形固定資産が258,639千円、投資その他の資産が772,850千円増加したことによるものであります。

 繰延資産は、前連結会計年度末より102,798千円増加し、102,798千円となりました。これは当期において株式交付費を102,798千円計上したことによるものであります。

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ8,758,936千円増加し、13,220,571千円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末より3,297,730千円増加し、5,141,325千円となりました。これは主に、短期借入金が3,075,090千円増加したことによるものであります。

 固定負債は、前連結会計年度末より5,461,205千円増加し、8,079,246千円となりました。これは主に、長期借入金が5,374,000千円増加したことによるものであります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末より1,918,444千円増加し、9,798,332千円となりました。これは主に、新規公開株の発行、新株予約権の行使及び株式報酬制度の導入により資本金が503,902千円、資本剰余金が503,902千円それぞれ増加したことによるものであります。また、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が881,547千円増加しております。

 なお、自己資本比率は42.3%となっております。

 

② 経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症対策の徹底やワクチン接種が進展する一方で新たな変異株が出現するなど、厳しい状況が継続しております。また原材料価格の上昇や金融資本市場の変動等によって不透明感がみられます。他方でコロナ禍に対応する産業界の動きとして、業界横断的にデジタルトランスフォーメーション(DX)の機運の高まりが継続し、成長加速ないし厳しい状況からの再生に向けた取り組みが各所に見られます。

こうした中、当社は「A DECADE AHEAD 今の先鋭が10年後の当たり前を造る」をミッションに掲げ、大きく2つの事業を展開してまいりました。1つ目の事業は、不動産業界を中心とする様々な業界の業務改善に向けて、機械学習等の先進テクノロジーを活用したモジュールをベースに、パッケージ型クラウドツールやテーラーメイド型アルゴリズムを提供する「AI クラウド&コンサルティング」事業であります。2つ目の事業は、不動産プロフェッショナル集団にテクノロジーを積極導入することで高度化・効率化させた不動産売買仲介等の不動産流通事業と、IoT技術を活用した高付加価値のマンション開発・販売等を行うスマートホームサービスを展開する「不動産テック」事業であります。

不動産事業という実業(リアル)を自ら手掛け、業務上の非効率や課題に直面することで、機械学習等の高度なテクノロジーの活用の可能性を見出し、当社グループの内部オペレーションにそのテクノロジーを取り込み、競争力・効率性の改善を図っております。同時に、不動産事業のテック化により生まれた業務推進・効率化ツールは、当社自身がユーザーとして使い勝手をフィードバックすることで実務有用性を磨き込み、不動産業を手掛ける同業他社のお客様や金融機関に提供しております。加えて、ツールのベースとなるモジュールを活かすことで、差異化されたコンサルティングを幅広い産業のお客様にご提供するビジネスモデルを構築しております。

実業(リアル)を手掛けることが、実務有用性の高いAIソリューション・クラウドツールを提供していくことに密接かつ効果的に機能しており、「リアルビジネスを内包したテックプロバイダー」という独自の顧客提供価値の追求により、不動産業界や金融業界など様々な業界のDXや事業拡大に貢献しております。

当社グループが手掛けるAIクラウド&コンサルティング事業の業務環境をみれば、新型コロナウイルス感染症拡大により露呈した日本のデジタル化の遅れを解消すべく、2021年9月にデジタル庁が発足し、デジタル化の加速の動きがみられ、当社事業においても追い風となっております。不動産テック事業の業務環境をみれば、当社が「AIFLAT(アイフラット)」の名称で開発・販売を手掛ける個人向け賃貸マンションの需要は底堅く推移し、居住用不動産に対する投資ニーズの高まりが引き続きみられます。また、個人向け住宅の仲介事業につきましては、首都圏のマンション総販売戸数を中心に持ち直しの動きがみられます。

このような業務環境下、当社グループは、不動産売買契約書の作成業務をオンラインで手掛けることが可能な「不動産売買契約書類作成クラウド」等、不動産業界、金融業界に対して積極的にクラウドサービスを提供し、その他産業に向けても自社の持つAIモジュールを活かしたコンサルティングサービスを幅広く提供してまいりました。また、中長期的な成長を見据えて、世界的に意識が高まりつつある気候変動対策に資するカーボンニュートラルソリューションの開発、不動産や保険を含むトータルな資産管理・設計ツールの開発等、不動産領域の知見と実務有用性の高いAI/IT技術を活かした多様な産業向けのAIモジュールの創出に向けた取組みを加速しております。

なお、2021年6月に経済産業省と東京証券取引所より「DX銘柄2021」、及び、"デジタル時代を先導する企業"として、全上場企業約3,700社から2社のみ選定された「DXグランプリ2021」を受賞し、一層の知名度向上が進みました。知名度向上により、ビッグデータ基盤整備・データ活用ソリューションの事業リードやデジタル人材の育成・技術指導の実績が豊富なチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)の招聘等、優秀なエンジニア・コンサルタントの採用を加速するとともに、クラウドサービスにおけるアウトバウンドセールスのパートナー企業の拡大やインバウンドセールス施策の強化等セールス体制増強を進めてまいりました。また2022年3月にはヤフー株式会社との提携見直しやギグセールス株式会社との資本業務提携を実施するなど、外部パートナー企業との戦略的なアライアンスを構築してまいりました。

 

これまでの業務拡大に向けた当社グループ会社全体の取り組みの結果、クラウドサービスの課金契約数が期初計画を大きく上回る1,971社で着地し、チャーンレートも引き続き0.5%と低位安定させながらクロスセルを強化、コンサルティングサービスも獲得数が着実に伸長したことで、第4四半期実績を基に年換算したARR(アニュアルリカーリングレベニュー)は1,676,156千円と、大きくストック収入を積み上げました。加えて、不動産仲介サービス及びスマートホームサービスの体制増強とオペレーション改善を推進した結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高13,572,867千円(前年同期比6,233,241千円増(84.9%増))、営業利益1,391,934千円(前年同期比335,271千円増(31.7%増))、経常利益1,300,502千円(前年同期比277,296千円増(27.1%増))、親会社株主に帰属する当期純利益892,407千円(前年同期比225,385千円増(33.8%増))、と大幅な増収増益となりました。

 

当連結会計年度のセグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

 

<AIクラウド&コンサルティングセグメント>

クラウドサービス(不動産価格推定エンジンなどのディープラーニング技術を核とするパッケージ化されたAIを用いたクラウドサービス)は、長期化するコロナ禍の影響と政府によるデジタル化推進の動きが相まって不動産業界のデジタライゼーションの機運が高まったことが追い風となりました。加えて、確かなプロダクトメリットを提供しつつ、アウトバウンドセールスのパートナー企業拡大やインバウンドマーケティングの拡大等セールス体制増強を進めたことで、課金契約数が期初計画を大きく上回る1,971社で着地し、チャーンレートも引き続き0.5%と低位安定させながらクロスセルを強化してまいりました。

コンサルティングサービス(幅広い業界におけるマーケティング活動、営業活動といった顧客企業の様々な経営課題に対して、将来予測分析ツールを用いた解決策の提供又はシステム提供を行うサービス)は、成功事例の横展開や案件リード組成の仕組み化を進めるとともに、AIモジュールを活かして差異化されたコンサルティングを提供することで、着実に事業を拡大させてまいりました。

中長期的な成長を見据えて、世界的に意識が高まりつつある気候変動対策に資するカーボンニュートラルソリューションの開発、不動産や保険を含むトータルな資産管理・設計ツールの開発等、不動産領域の知見と実務有用性の高いAI/IT技術を活かした多様な産業向けのAIモジュールの創出に向けた取組みを加速しております。加えて2022年3月にはヤフーとの提携見直しやギグセールス株式会社との資本業務提携を実施するなど、外部パートナー企業との戦略的なアライアンスを構築してまいりました。

 

その結果、クラウドサービス・コンサルティングサービスともに顧客基盤が着実に拡大し、第4四半期ベースのARRが1,676,156千円と、大きくストック収入を積み上げたことで、当連結会計年度におけるAIクラウド&コンサルティングセグメントの売上高は2,021,778千円(前年同期比886,642千円増(78.1%増))、営業利益は874,758千円(前年同期比147,862千円増(20.3%増))となっております。

 

<不動産テックセグメント>

不動産仲介サービスにつきましては、伝統的な仲介業務にAI不動産査定ツール等の当社テクノロジーを活用した新たな仲介サービスを提供するとともに、スマートホームサービスとして、マルチファンクションライトやスマートロック等のIoT技術を活用した個人向け賃貸マンション「AIFLAT」の開発及び投資家や富裕層向けの販売を戦略的に実施しております。また、2022年度以降のアセットマネジメントフィービジネスの展開を見据え、資産運用会社を設立するとともに、シードアセットの積み上げを図っております。当社グループは、これらの不動産テック事業の全てにおいてテクノロジーを活用したDXを推進するとともに、その中で生まれた気付きを幅広いお客様に提供するAIソリューション・ツールに反映しております。また、シードアセットは将来的なカーボンニュートラルソリューションを展開する際のオフセット商材としての活用も企図しております。

その結果、不動産仲介サービス及びスマートホームサービスの体制増強とオペレーション改善の進展と相まって、当連結会計年度における不動産テックセグメントの売上高は12,000,406千円(前年同期比5,488,291千円増(84.3%増))、営業利益は571,714千円(前年同期比190,969千円増(50.2%増))となっております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ361,952千円増加し、2,999,148千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は7,305,968千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,246,862千円、減価償却費258,278千円等の資金増加要因が、売上債権及び契約資産の増減額215,983千円、棚卸資産の増減額8,543,915千円、法人税等の支払額447,569千円等の資金減少要因を下回ったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は1,637,907千円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出481,592千円、無形固定資産の取得による支出368,462千円及び関係会社株式の取得による支出425,856千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は9,305,829千円となりました。これは主に、株式の発行による収入887,522千円、短期借入れの増減による収入414,000千円、長期借入れによる収入10,588,090千円等の資金増加要因が、長期借入金の返済による支出2,582,489千円等の資金減少要因を上回ったことによるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b 受注実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c 販売実績

当連結会計年度の販売実績は下記のとおりであります。

売上分類の名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

売上高(千円)

前年同期比(%)

AIクラウド&コンサルティング

1,572,461

190.0

不動産テック

12,000,406

184.3

合計

13,572,867

184.9

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は下記のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

売上高(千円)

割合(%)

売上高(千円)

割合(%)

B社

3,672,073

50.0

C社

1,835,470

13.5

D社

1,666,000

12.3

E社

1,620,043

11.9

※成約した案件は非公開案件であるため社名の公表は控えさせて頂きます。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営成績等の状況に関する分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。また、経営成績等に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に含めて記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社の資金需要は、継続的な事業成長実現に向けた人件費、採用費、業務委託費、広告宣伝費、AIクラウド&コンサルティング事業の開発費、及びIoTスマートホーム物件取得に係る借入金の返済や営業用不動産の取得費用となります。財政状態等を勘案しながら、自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等による資金調達を考えております。

流動資産と流動負債のバランスを注視し、財政状態の健全性を評価しており、当連結会計年度末時点で健全な財務体制であると判断しております。

 

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