業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、緊急事態宣言等が各地で断続的に発出されるなど新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けるなか、原材料などの価格高騰やサプライチェーンの混乱による調達難などの要因も加わり、本格的な景気回復には至りませんでした。

このような環境下にあって当社グループは、ウィズコロナが常態化した市場のニーズに対応した営業活動や、社会課題の解決に資する商品・サービスの開発に注力するなど、中期経営計画「Creation'21」の目標達成に努めました。

この結果、売上高は1,322億円(前年同期は1,221億円)、営業利益は75億2千万円(前年同期は32億円)、経常利益は87億8千万円(前年同期は42億4千万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は56億円(前年同期は22億円)となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下、「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。これに伴い、当連結会計年度における経営成績に関する説明は、前連結会計年度と比較しての増減額及び前年同期比(%)を記載せずに説明しております。

収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は108億円減少し、営業利益、経常利益はそれぞれ6千万円増加しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

セグメントの業績は、以下のとおりであります。

 

(繊維事業)

糸は、国内やブラジルを中心とした海外子会社の受注が回復し、順調でした。

テキスタイルは、ユニフォーム及びカジュアル向け素材が、前年度の新型コロナウイルス感染症拡大による大幅な受注の減少から回復傾向でした。

繊維製品は、カジュアル衣料の受注増により回復傾向となりました。

また、製造・販売の両面において引き続き収益改善策を実施しました。

この結果、売上高は446億円(前年同期は421億円)、営業損失は1億7千万円(前年同期は営業損失18億2千万円)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は54億円減少しております。

 

(化成品事業)

軟質ウレタンは、自動車メーカーにおける車載向け半導体不足の影響を受けたものの、前年度の新型コロナウイルス感染症拡大による大幅減産に伴う受注低迷からは回復しました。

機能樹脂製品は、好況な半導体業界の影響を受けて、半導体製造装置向け高機能樹脂加工品が好調に推移し、また自動車向け機能フィルムの販売が堅調でした。

住宅用建材は、新規に開始した防熱工事の受注が順調に推移しましたが、景観材などの販売が低調でした。

不織布は、自動車用フィルターが堅調でした。

この結果、売上高は516億円(前年同期は485億円)、営業利益は29億7千万円(前年同期は14億円)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は53億円減少しております。

 

(環境メカトロニクス事業)

エレクトロニクスは、好況な半導体業界の影響を受けて、液体成分濃度計及び基板検査装置が好調に推移し、子会社でも半導体洗浄装置の大型案件がありました。また、前連結会計年度末に連結子会社となった㈱セイキの業績も寄与しました。

エンジニアリングは、排ガス処理設備などが堅調に推移し、子会社でも大型プラント案件がありました。

バイオメディカルは、撹拌脱泡装置は順調に推移しましたが、新型コロナウイルス抗体検査試薬キットの販売が減少しました。また、工作機械は、国内向けの販売は低調に推移しましたが、米国及び中国向けの販売が回復しました。

この結果、売上高は235億円(前年同期は186億円)、営業利益は27億7千万円(前年同期は15億6千万円)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は4億円増加し、営業利益は4千万円増加しております。

 

(食品・サービス事業)

食品は、新型コロナウイルス感染症の影響長期化に伴う、内食需要の継続により成型スープの販売が好調でした。

ホテル関連は、緊急事態宣言等による行動制限などの影響により、宿泊や宴会が引き続き低調でした。

この結果、売上高は84億円(前年同期は86億円)、営業利益は2億7千万円(前年同期は2億7千万円)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は6億円減少しております。

 

(不動産事業)

不動産賃貸は、賃貸事業の推進に注力しましたが、一部の賃貸物件の契約期間満了により、売上高は37億円(前年同期は40億円)、営業利益は27億4千万円(前年同期は28億4千万円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ79億8千万円減少し、当連結会計年度末には140億7千万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、92億4千万円(前連結会計年度は80億7千万円の資金の増加)となりました。これは、棚卸資産の増加による資金減36億8千万円があったものの、税金等調整前当期純利益84億1千万円や減価償却費の内部留保51億9千万円があったことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、33億4千万円(前連結会計年度は32億6千万円の資金の減少)となりました。これは、有形及び無形固定資産の取得による支出34億8千万円があったことなどによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、140億6千万円(前連結会計年度は13億2千万円の資金の減少)となりました。これは、短期借入金の純減額94億8千万円や自己株式の取得による支出15億3千万円があったことなどによるものです。

 

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりであります。

 

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

自己資本比率(%)

52.8

52.5

53.7

54.8

57.4

時価ベースの自己資本比率(%)

40.4

24.8

32.2

23.2

20.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

1.6

2.4

2.9

3.0

1.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

47.0

33.9

29.4

40.9

51.8

 (注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」を使用しております。

4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しております。

 

③生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

繊維事業(百万円)

31,979

化成品事業(百万円)

42,710

環境メカトロニクス事業(百万円)

17,142

食品・サービス事業(百万円)

5,430

合計(百万円)

97,263

(注)1.セグメント間の取引については、仕入先の属するセグメントにおいて相殺消去しております。

2.繊維事業には、上記生産実績のほかに、販売を主たる事業とする会社の商品仕入実績が、7,542百万円あります。

3.不動産事業は、生産活動を行っておりません。

4.金額は製造原価で記載しております。

5.収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しております。これに伴い、前年同期比の記載は省略しております。

 

イ.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

化成品事業

1,530

781

環境メカトロニクス事業

12,006

136.6

5,983

合計

13,537

154.0

6,765

(注)1.上記以外は、主として見込生産を行っております。

2.収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しております。これに伴い、受注残高の前年同期比の記載は省略しております。

 

ウ.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

繊維事業(百万円)

44,669

化成品事業(百万円)

51,695

環境メカトロニクス事業(百万円)

23,593

食品・サービス事業(百万円)

8,461

不動産事業(百万円)

3,795

合計(百万円)

132,215

(注)1.セグメント間の取引については、販売会社の属するセグメントにおいて相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、相手先別販売実績が総販売実績の10%未満のため、省略しております。

3.収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しております。これに伴い、前年同期比の記載は省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

ア.当連結会計年度の経営成績の分析

(ア)売上高

当連結会計年度の売上高は1,322億円(前年同期は1,221億円)となりました。これは「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、繊維事業や化成品事業において新型コロナウイルス感染症拡大による大幅な受注の減少から回復傾向となったことに加え、好況な半導体業界の影響を受けて、化成品事業や環境メカトロニクス事業の半導体関連商品が好調に推移したことなどによります。

(イ)営業利益

当連結会計年度の営業利益は75億2千万円(前年同期は32億円)となりました。これは、繊維事業や化成品事業、環境メカトロニクス事業の売上が増加したことなどによります。

(ウ)経常利益

当連結会計年度の経常利益は87億8千万円(前年同期は42億4千万円)となりました。これは、営業利益の増益に加え、営業外損益が為替差益の発生などで前連結会計年度に比べ2億1千万円改善したことによります。

(エ)特別損益

当連結会計年度の特別利益は5億2千万円でその主なものは、投資有価証券売却益4億円であります。一方、特別損失は8億9千万円でその主なものは、減損損失3億4千万円、関係会社株式評価損2億1千万円であります。

(オ)親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は56億円(前年同期は22億円)となりました。これは、税金費用は増加したものの、経常利益が増益となったことなどによります。

また、1株当たり当期純利益は280.35円(前年同期は107.32円)となりました。

 

イ.当連結会計年度の財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産や売上債権は増加しましたが、現金及び預金や投資有価証券が減少したことなどにより、1,672億円と前連結会計年度末に比べ31億円減少しました。

負債は、仕入債務は増加しましたが、短期借入金が減少したことなどにより、698億円と前連結会計年度末に比べ55億円減少しました。

純資産は、自己株式の取得はありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどにより、974億円と前連結会計年度末に比べ24億円増加しました。

以上の結果、自己資本比率は2.6ポイント上昇して57.4%となりました。

 

 

ウ.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2021年度を最終年度とする中期経営計画「Creation'21」では、重点施策に「高付加価値ビジネスの拡大」や「海外事業の強化・拡大」を掲げて、業容の拡大に取り組んでまいりました。結果、半導体製造関連などの事業は、業容拡大に繋げることができましたが、グループの基盤事業である繊維事業は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大による市場の縮小、物流の停滞、ロックダウンによる海外生産拠点の閉鎖といった影響を大きく受け黒字転換に至らず、同様に基盤事業の軟質ウレタン事業や住宅用建材事業も、自動車生産台数の減少や原材料の高騰を受けて、収益力が低下するなど、グループ全体では、「Creation'21」でKPIとして掲げた売上高、営業利益、ROA、ROEの目標数値には届きませんでした。

 

指標

Creation'21(a)2021年度計画

2021年度(b)(実績)

計画比(b)-(a)

売上高

1,700億円

1,322億円

△377億円

営業利益

90億円

75億円

△14億円

R O A

5.0%

4.5%

△0.5ポイント

R O E

6.6%

5.9%

△0.7ポイント

(注)収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しており、2021年度(実績)については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。

 

エ.経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ア.キャッシュ・フロー

「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

イ.契約債務

2022年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超2年

以内

2年超3年

以内

3年超4年

以内

4年超5年

以内

5年超

短期借入金

8,307

8,307

長期借入金

4,056

556

2,002

413

221

758

103

リース債務

833

123

105

106

103

101

294

その他有利子負債

532

407

124

上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

当社グループの第三者に対する保証は、社会福祉法人の借入金に対する債務保証であります。保証した借入金等の債務不履行が保証期間に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2022年3月31日現在の債務保証額は、361百万円であります。

 

ウ.財務政策

当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備などの長期資金は、固定金利の長期借入金での調達を基本としております。また、当社及び国内子会社は、CMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入することにより、各社の余剰資金を当社へ集約し、一元管理を行うことで、資金の効率化を図っております。

なお、マーケット環境の一時的な変化など、不測の事態への対応手段確保のため、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計9,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております(借入未実行残高9,000百万円)。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

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