文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年3月31日)現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、2009年4月1日、㈱バイタルネットと㈱ケーエスケーの株式移転により共同持株会社「㈱バイタルケーエスケー・ホールディングス」を設立し、バイタルケーエスケー・グループとして新たなスタートを切りました。
バイタルケーエスケー・グループは、「私たちは、健康で豊かな社会の実現に貢献します」を企業理念として掲げ、長期ビジョンである「業界内プレゼンスの向上と先進的な医薬品流通の追求」を実現すべく「経営のスピードアップと市場開拓の強化」「IT技術の駆使と長年培った医薬品流通技術の融合・進化」「シナジーの発揮による収益力の向上」に取り組んでおります。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年が目前となり、これまでも実施されてきた社会構造変化を見据えた社会保障費の抑制と制度の見直しは今後も継続するものと考えられます。同様に、当社グループのコアビジネスである医薬品卸売事業の市場においても底堅い需要はあるものの全体としては伸長が抑制されるという状況も継続すると思われます。特に特許切れ品(長期収載品・GE品)は、数量は大幅に伸長しても薬価制度の見直しと毎年の薬価改定により商品単価は従来以上のスピードで下落し、急速に収益が減少していくことが予想され、安定供給継続のためにもさらなる流通の効率化を実現しなければなりません。
一方、特許品市場では多様なモダリティ(※1)の抗がん剤や希少疾患薬などアンメット・メディカル・ニーズ(※2)に応えた高額薬(大半がいわゆるスペシャリティ薬)が市場伸長の中心になっていきます。これらの薬剤は限られた専門医療機関で使用されますが、より高度な情報提供などその専門性に応じた新たな医薬品流通上のニーズも生じることから、その対応が課題となります。
また、医療では先端技術を活用した新たな診断技術や治療技術の提供が大きなイノベーションをもたらしつつあります。再生医療に加え、新たな診断薬、医療機器、ロボットなど、新たな診断・治療手段は今後の市場伸長を牽引する一方、流通上の新たな課題も生じさせるものと思われます。さらに、医療を中心としたヘルスケア領域におけるDXの進展は、地域のヘルスケア提供の効率化・高度化などに寄与するとともにそこに関わるすべてのビジネスに大きな変革をもたらすと思われます。
このような市場構造変化と経営環境変化を踏まえて、当社グループでは2023年3月期から2025年3月期までの3年間にわたる第5次中期経営計画を策定しました。第5次中期経営計画では、第3次中期経営計画で掲げた2025年に目指す姿としての長期ビジョン「医療・介護を支える商品やサービスを戦略的に提供することにより、地域・コミュニティのヘルスケアになくてはならない存在となる」に引き続き取り組むとともに「次代を見据えたビジネスモデルの革新」を中期ビジョンとして実行してまいります。
(中期ビジョン)
「次代を見据えたビジネスモデルの革新」
1.市場の構造変化と市場特性に合わせた医薬品流通モデルの追求
2.医療のDX進展に伴う流通・マーケティングモデルの進化
3.プライム市場に対応したグループ経営推進
(主な実践課題)
<医薬品卸売事業>
1.市場構造変化を踏まえた体制整備
(1) 効率化・適正化推進によるローコストオペレーションの実現
(2) 処方元への効率的・効果的マーケティング活動の実施
(3) MS機能の拡張(MR機能の代替へ)
2.地域の医療提供の中核となる“病院”への取組み強化・営業体制刷新
3.調剤薬局のDX推進
4.サプライチェーンマネジメント力の持続的向上
(1) 在庫管理システムを活用したパッケージ納品の拡大
(2) 3PL事業の展開
(3) 調剤センターを活用したサプライチェーン構想実施
(4) 物流品質と効率化の持続的向上
<グループ経営戦略>
1.財務戦略
(1) ROE 5%以上
(2) 適正な株主還元策の実行
配当性向25%以上
(3)政策保有株式の縮減
2.より高度なコーポレート・ガバナンスの検討・整備
3.コーポレート・コミュニケーション(CC)のさらなる充実
(1) ネット時代と財務戦略を踏まえた適切なCC活動の実施
(2) 英文開示の充実(当社ホームページ、株主総会招集通知書など)
(3) ESGに加え、TCFDを見据えたCC活動
※1 モダリティ
低分子医薬だけでなく、抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治療薬などを研究開発する様々な創薬基盤技術の方法や手段
※2 アンメット・メディカル・ニーズ
いまだ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ
医療用医薬品は、2019年10月、2020年4月、2021年4月、2022年4月と約2年半の間に4回の薬価改定が行われました。今後も毎年の薬価改定が予定されており薬剤費の抑制政策は継続されることが予想されます。
このような状況の中、当社グループでは2022年4月から第5次中期経営計画をスタートさせました。医薬品卸売事業においては、医療用医薬品市場の低成長下においても効率化を進めて利益を創出し続ける事業体制を確立するだけでなく、医薬品卸売事業で培った医療機関へのネットワークに加え、自治体・介護業者など地域のヘルスケアの提供者とのネットワークで地域のヘルスケアに深耕しているという当社グループの強みを基盤に、様々な商品・サービスを通して、サポート及びソリューションを提供するとともに成長分野を着実に取り込み、メーカー、行政、顧客、地域から選ばれる企業集団になることを目指してまいります。特に、今後急速に進むことが予想される医療のDX化にいち早く対応できるよう注力してまいります。
当社では、VKマーケティングという社内システムを構築し、得意先ごとの売上高、売上総利益に加え、取引に関わる詳細なコストも算出し得意先別営業利益を「見える化」してまいりましたが、「取引コストの低減と取引コストをふまえた価格交渉」「利益に応じた提供サービスの内容・レベルの見直し」を徹底し、得意先別営業利益の改善に取り組みます。その取組み推進のため、スポーツ界でも採用されているオープン・シェア革命を取り入れ、取組み状況、改善成果等を可視化・共有し、MS一人ひとりが得意先別営業利益改善のため、自発的・主体的また切磋琢磨して取組むよう推進しております。こういったオープン・シェアの仕組みを導入することで、何よりも利益を重視した組織風土に変えてまいります。
また、コストの見直しにも着手しております。その一環として、物流拠点の統合を行っております。当社は、非常事態下にあっても確実に医薬品を届けるために最低限必要な物流拠点数を把握した上で、もっとも効率的かつ効果的な物流拠点網を各営業エリアに整備していく考えです。昨今の道路インフラの整備状況などを踏まえて物流拠点の最適化を随時進めてまいります。
更に、100店舗に近い規模になった当社グループの薬局事業において、医薬品卸が経営している薬局グループだからこそ可能なサプライチェーンの構築を推進してまいります。具体的には、医薬品払い出しデータを活用した適正な在庫管理に加え、処方情報に基づく予測自動発注機能、そして発注や検品業務を効率化できるパッケージ納品の活用など、様々な機能を組み合わせて流通に係るコスト全般の削減を図ってまいります。また、そこで構築できたサプライチェーンモデルを今後グループ外の得意先にも広げていき、地域ヘルスケアの効率的な運営に貢献してまいります。
さらに、ニューノーマル時代に相応しいDXを活用したプロモーション活動に加え、創薬モダリティの変化に対応するべくスペシャリティ医薬品の流通業務を受託するなど、新しいビジネスの拡大にも積極的にチャレンジしております。
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