課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、アパート・賃貸マンションの経営を通してそれに関わる全ての人々(オーナー・入居者・従業員・株主・ステークホルダー)に「ウェルス」と「安心・安全・安定」を提供し続けることを経営理念として、オーナーから賃貸マンション・アパートを一括して借上げ、一般入居者に転貸する一括借上事業を行っております。今後も、「オーナーの資産価値の最大化」を実現すべく、新たなサービス、商品、事業を開発し、事業規模の拡大、さらには、企業価値の向上を目指してまいります。

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(2) 中長期的な経営戦略

 当社グループは創業以来「オーナー資産の最大化」を経営におけるミッションとして位置づけ、その実現へ向け一括借上事業を中心に、事業活動に取り組んでまいりました。その結果、オーナーから運用を委託されている運用戸数は当連結会計年度末時点において106,640戸と、賃貸住宅業界において一定のポジションを確立できたものと考えています。

 そして、今後の持続的な企業価値向上に向けて、2030年末までに25万戸超を運用し賃貸住宅マーケットの一角に加わることをビジョンとし、その実現並びに2030年以降の更なる成長を<短期~中期><長期><2030年以降>の3つのフェーズに分けて考えています。

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<短期~中期 (2021年~2025年)>

 短期:コロナ禍収束まで 運用戸数拡大に注力

 中期:コロナ禍収束以降 収益性向上に注力 2025年までに運用戸数16万戸

 

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、非正規労働者の移動の減少や、学生の実家帰り、法人の転勤需要減少などの要因でヒトの移動が制限されたことにより、空室リスクが高まり、賃貸住宅オーナーからの一括借上のニーズが高まっています。当社グループにおいても新規で受託した物件の収益化のスピードが鈍化するなどの影響を受けておりますが、コロナ禍が収束した後にヒトの移動が復活することを見越して、コロナ禍においては運用戸数拡大に注力いたします。

 コロナ禍が収束し、ヒトの移動が復活した局面においては入居促進を強化し、収益性向上に注力いたします。コロナ禍において受託した物件が多ければ多いほど利益成長は大きくなるものと想定しております。

 短期~中期は2021年~2025年を想定しており、この期間の取組や数値目標に関しては中期経営計画「JPMC2025」において公表しております。数値目標に関しては「(3)目標とする経営指標」に記載のとおりです。

 

<長期 (2026年~2030年)>

 長期:収益構造の多様化に注力 2030年までに運用戸数25万戸

 

 運用戸数の拡大により16万戸超の巨大な経済圏の確立による収益構造の多様化を目指してまいります。具体的には下記のような取組を目指していきたいと考えています。

 

・入居者向けサービスをサブスクリプション型のビジネスモデルにより提供

 16万戸超の巨大な家賃収納プラットフォームを活かし付帯商品をワンビリングで提供可能となる強みを活かし、様々な付帯サービスをサブスクリプションで提供することを考えております。付帯サービスとは入居者に対して快適な住生活サービスの提供、例えばコンシェルジュサービスを入口とし、家事代行サービス、配送サービスといったサービス提供が考えられます。

 

・賃貸住宅オーナーや業界へワンストップサービスを展開

 賃貸住宅オーナー、入居者、業界など巨大な経済圏を形成しており、さまざまなサービスの展開が考えられます。賃貸住宅オーナーに対しては賃貸住宅経営からのより一層の手離れを実現するサービス、例えば税務相談や法律相談、会計アウトソーシングといったサービスなどが考えられます。また、業界に対しては労働力不足の解消やその補完サービス、例えば契約書自動出力やコールセンターサービスなどの展開が考えられます。

 

 また、2030年までに運用戸数25万戸を実現し、賃貸住宅業界の主要プレイヤーの一角に加わることを当社のビジョンとしております。

 

<2030年以降>

 次なる成長時期と位置づけ、25万戸超の巨大な家賃収納プラットフォームやPropTech(※)によるビッグデータを活用した新たな事業領域への展開を目指していきたいと考えています。

 

※PropTech:Property Management Technologyの略。当社グループではAIとICTの融合により賃貸住宅業界の課題を解決する技術と定義しています。

 

(3) 目標とする経営指標

 当社グループでは運用戸数の増加による事業基盤の拡大、資本効率を重視しています。そのため「運用戸数」「新規申込戸数」「売上高」「ROE」「配当性向」の5つの指標を重要な経営指標としています。

「運用戸数」  :事業規模を示す指標。2025年までに16万戸、2030年までに25万戸を目標としています。

「新規申込戸数」:新たに運用を受託した戸数。運用戸数拡大へ向けての成長見通しを示す指標。

運用戸数の目標の達成に向け、2025年までの5カ年累計110,000戸、2030年までの5カ年累計154,000戸を目標としています。

「売上高」   :運用戸数拡大による安定収入の拡大を目指しております。2025年に770億円、2030年に1,110億円を目標としています。

「ROE」   :20%以上を目標水準としています。持続的に資本コストを上回ることが重要であると考えています。

「配当性向」  :40%以上を目標水準としています。

 

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(4) 経営環境

 賃貸住宅業界においては、新設住宅着工戸数(貸家)が4年ぶりに増加に転じました(※)。賃貸マンションの供給過多に起因する空室率の高さが社会問題化する中で、これまでマーケットの成長を牽引してきた賃貸住宅メーカーによる建築に依拠したビジネスモデルの成長ポテンシャルは限定的であり、今後は既存の物件の収益性をいかに高めていくかという点が社会的なテーマになると考えております。

 また、労働人口の減少という社会問題が顕在化する中、新型コロナウイルス感染症拡大が収束した後には外国人労働者の受入れが加速していくことが予想されます。今後増加する外国人労働者へ住まいを提供することは、当社グループの収益性を高めるだけでなく、社会問題の解決へも寄与するものと考えており、当社グループはこのような社会情勢の変化を的確に捉え、新たな社会的価値を創出することで持続的な成長を実現していきたいと考えております。

 

※国土交通省が発表した建築着工統計調査報告によると、2021年の新設住宅着工戸数(貸家)は321,376戸と4年ぶりの増加となっている。

 

(5) 優先的に対応すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループはオーナー、パートナー、入居者等の顧客満足度を向上させることで事業収益の拡大を図ることにより、持続的かつ飛躍的な成長を確実にし、より強固な経営基盤を確保すべく、以下の事項を重要課題と捉え、その対応に引き続き取り組んでまいります。

 

① 持続的な成長のための事業基盤の強化

 当社グループは創業より現在までパートナーの増加及びパートナーを動員した運用戸数の増加により、売上高を順調に成長させてまいりました。

 先行き不透明なコロナ禍においても持続的な成長を継続していくためには、借上物件数の増加と借上対象の拡大を図り、ストックビジネスを極めていくことが最優先課題であります。借上物件数の増加を達成するために必要な、オーナー及びパートナーとの厚い信頼関係を構築していくために、オーナー対象の賃貸マンション経営に関するセミナーや、パートナー対象の勉強会等の内容の充実を図ってまいりたいと存じます。

 また、入居者への滞納保証、収納代行及び家財保険といったサービスによって付加価値向上を図るとともに、借上対象に高齢者向け賃貸住宅を加えるなど、顧客ニーズを先取りした事業の拡大に努めてまいりましたが、新たに法人の社宅需要向け賃貸事業や、入居者向けの家具・家電のレンタルサービス事業をスタートさせるなど、新規領域への参入に積極的に挑戦しております。今後も更なる企画・開発により、持続的な成長を目指してまいります。

 

② 効率性の追求

 当社は、現在においても、業界の中においては一定の収益性の高さを実現できていると考えておりますが、持続的な成長を遂げていくためには、競争力の向上と効率性の追求により、さらなる利益体質の強化が不可欠であります。

 その実現に向けては、運用物件の価値向上に向けての企画力や提案力などのスキルや専門性を向上させるための人材育成の強化と、リフォーム、滞納保証、高齢者向け賃貸住宅、家財保険などを手掛けるグループ会社間のシナジーの最大化により、競争力を向上させていくことが重要と考えます。

 あわせて、業務プロセスの徹底的な見直しや、コロナ禍で定着したテレワークやリモート商談をはじめとした新しい働き方を通じ、そこで創出した時間や費用を最大限活用し、より高い業務効率を目指してまいります。さらに、各種システムの統合的な整備を図り、ビッグデータ活用技術やAI技術の導入による入居者の問い合わせ対応や顧客データ管理、査定業務の円滑化を図るなど、効率性を徹底的に追求し、利益体質の強化につなげていく所存であります。

 

③ 実効性のあるコーポレート・ガバナンスの実現

 当社グループは、長期的かつ安定的な株主価値の向上、企業価値の最大化を図るため、ステークホルダーに対する社会的責任を果たすとともに、企業経営の健全性や透明性を高めることにより、より実効性のあるコーポレート・ガバナンスの実現に向けての取り組みが重要であると認識しております。

 企業統治が有効に機能する体制構築に努め、業務の増大に対応し、常時支障なく業務が遂行できるよう、内部統制の仕組みを改善し、必要に応じて管理部門の人員を強化してまいります。

 

 

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