(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、2年以上に亘って猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、相次ぐ緊急事態宣言の発出など、企業活動への影響は大きく、雇用環境や設備投資は弱含みの状態が続きました。また、新型コロナウイルス感染拡大の中、世界的な資源価格の上昇やサプライチェーンの混乱が続いており、経済の先行きは不透明かつ不確実な状態が続いています。
防災事業の分野では、新型コロナウイルス感染拡大の猛威により多くの人命が奪われており、パンデミックへの備えは人類が取り組むべき永続的なテーマであることが改めて認識されています。
また、近年、各地で局所的な地震が頻発しており、首都直下地震、南海トラフ地震、千島日本海溝地震による脅威もますます高まっています。10月の千葉県北西部を震源とする地震では、東京都区部で震度5強を観測し、交通や水道など、インフラ面での被害が発生し、都市基盤の脆弱さが改めて浮き彫りとなりました。7月には静岡県熱海市で豪雨による大規模な土石流が発生し、甚大な被害が発生しました。豪雨や暴風は毎年のように発生し、河川の氾濫や土砂災害を引き起こすなど、国民生活や企業活動に大きな混乱を生じさせています。
12月の大阪でのビル放火事件では、可燃性液体が施設内に持ち込まれ、大きな被害が発生しました。世界各地で発生するテロはもとより、特殊災害分野においても多くの人命が奪われるなど、災害リスクが広範なものとなっており、激甚化、多発化、多様化する災害に対する官民挙げての防災体制の確立がますます重要となっております。
繊維事業の分野では、リネン(麻)につきましては、麻素材の市場定着が進んでまいりましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響から市場は停滞しております。
一方、耐熱、耐切創、高強力など優れた機能を特徴とする高機能繊維につきましては、防護服分野に加え、EV向けなど資材分野での新たな用途や市場の開拓、新規商材の開発を進めております。
2020年度からスタートした第五次中期経営計画「帝国繊維(テイセン)2022」では、
≪ 先進的防災事業を確立・発展させ
多発化・激甚化する自然災害・気候変動による脅威から
社会や事業の安心・安全を守る! ≫を目標に、
1.大量送排水システムによる新たな市場開拓
基幹産業のBCP対策、国土交通省・自治体による水害対策への貢献
2.セキュリティビジネスの新たなフロンティアを切り拓く
セキュリティビジネスにおける商材開発強化と空港を足掛かりとする市場拡大
3.防災特殊車輌ビジネスの確立
革新的な防災特殊車輌により、消防防災・産業防災の装備刷新・充実に貢献する
4.当社事業の基盤である足元の事業を固め、一層磨き上げる
消防ホース・防災車輌・資機材・防火衣等特殊被服の4事業分野で確固たる業界№1の地位を確保する
5.消防ホース・防災車輌生産体制の刷新
6.収益力の持続的強化を目指す
などのテーマを掲げ、グループ一丸となって取り組んでまいりました。
これらの取り組みの結果、国土交通省および自治体などから、大量送排水システム(ハイドロサブシステム)の受注獲得に成功しております。セキュリティビジネスにおいては、コロナ禍により訪日外国人旅行客が大きく減少している状況下にあっても、ロスプリベンション対策やテロ対策の必要性は高まっており、当社グループでは爆物検知器やボディースキャナーなどの商材開発への取り組みを強化しつつ、セキュリティビジネスの新たなフロンティアの開拓に取り組んでおります。
生産体制については、ホース工場としての鹿沼工場に次ぐ第二の拠点として下野工場を新設し、防災車輌の製造拠点として8月より稼働を開始いたしました。下野工場における防災特殊車輌の開発・製造拠点機能拡充のための設備新設(第Ⅱ期工事)及び鹿沼工場におけるホース生産ラインの増設ならびに施設整備にも着手し、今後の当社事業を支える生産体制の刷新・再構築に鋭意取り組んでおります。
(財政状態)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ58億1百万円増加し、742億8千万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ33億3千7百万円増加し、166億3千5百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ24億6千4百万円増加し、576億4千5百万円となりました。
(経営成績)
当連結会計年度の売上高は329億9千3百万円(前期比2.0%増)、営業利益は49億1千万円(前期比17.2%増)、経常利益は56億9千3百万円(前期比17.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は39億7千8百万円(前期比17.7%増)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
防災事業では、前期業績に寄与した空港向けセキュリティ機材等の反動減があった一方で、原子力発電所向けなどの大型防災資機材が大きく売上を伸ばしたほか、空港用化学消防車や救助工作車も堅調に推移したことから、売上高は前期対比18億7千3百万円増加し、271億7千万円となりました。
繊維事業では、官公庁向け繊維資材の売上が減少したほか、コロナ禍により産業資材およびアパレル向け麻素材の売上が減少したことから、売上高は前期対比12億1千3百万円減少し、52億5千5百万円となりました。
不動産賃貸事業・その他は、順調に推移しており、売上高で5億6千7百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の収入は、売上債権やたな卸資産の増加などにより、前期比60億8千万円減少し、1千9百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、防災車輌工場の新設やホース生産ラインの増設への投資などにより、前期比4億7百万円増加し、46億1千5百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の支出は、短期借入による収入などにより、前期比9億5千9百万円減少し、1億9千7百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期比47億9千3百万円減少し、71億4百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
前年同期比(%) |
防災(千円) |
5,795,991 |
193.2 |
繊維(千円) |
1,836,365 |
93.6 |
不動産賃貸(千円) |
- |
- |
その他(千円) |
- |
- |
合計(千円) |
7,632,356 |
153.8 |
(注)1.生産金額は製造原価にて記載しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額には外注による生産実績を含んでおります。
3.金額には消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高 |
前年同期比(%) |
受注残高 |
前年同期比(%) |
防災(千円) |
15,988,222 |
115.3 |
11,123,135 |
103.3 |
繊維(千円) |
1,630,966 |
95.0 |
1,233,519 |
79.3 |
不動産賃貸(千円) |
- |
- |
- |
- |
その他(千円) |
- |
- |
- |
- |
合計(千円) |
17,619,188 |
113.1 |
12,356,655 |
100.3 |
(注)1.金額は販売価額にて記載しております。
2.金額には消費税等は含まれておりません。
c.製品仕入実績
当連結会計年度の製品仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
前年同期比(%) |
防災(千円) |
15,259,804 |
107.8 |
繊維(千円) |
2,336,179 |
74.2 |
不動産賃貸(千円) |
- |
- |
その他(千円) |
- |
- |
合計(千円) |
17,595,983 |
101.7 |
(注)1.金額は仕入価額にて記載しております。
2.金額には消費税等は含まれておりません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
前年同期比(%) |
防災(千円) |
27,170,653 |
107.4 |
繊維(千円) |
5,255,125 |
81.2 |
不動産賃貸(千円) |
532,850 |
99.9 |
その他(千円) |
34,587 |
104.0 |
合計(千円) |
32,993,215 |
102.0 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額には消費税等は含まれておりません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
||
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
官公庁 |
10,820,689 |
33.5 |
9,538,343 |
28.9 |
合計 |
10,820,689 |
33.5 |
9,538,343 |
28.9 |
4.金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社グループの連結財務諸表の作成にあたり、当連結会計年度末における資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用の報告数値並びに開示に影響を与える会計上の見積りを行っております。当該見積りに際しましては、過去の実績や状況に応じて、合理的と考えられる要因等に基づき行っております。しかしながら、見積り特有の不確実性により、実際の結果は異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会計上の見積りに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績の分析
<連結経常利益> (百万円)
|
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
連結経常利益 |
6,196 |
4,865 |
5,693 |
当社は過去5次にわたる中期経営計画(第五次中期経営計画を含む)において、収益力の持続的拡大に取組んでまいりました。その結果、大口案件による影響から単年度における増減はありますが、連結経常利益の水準は持続的に拡大しており、「帝国繊維(テイセン)2022」における連結経常利益の水準50億円に拡大するという目標は着実に進展していると認識しております。新たな市場開拓に取り組むことで、引き続き収益力の拡大に取り組んでまいります。
<売上> (百万円)
セグメント |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
防災 |
28,235 |
25,297 |
27,170 |
繊維 |
6,598 |
6,468 |
5,255 |
不動産賃貸他 |
559 |
566 |
567 |
計 |
35,393 |
32,332 |
32,993 |
<受注残> (百万円)
セグメント |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
防災 |
10,311 |
10,768 |
11,123 |
繊維 |
2,840 |
1,555 |
1,233 |
計 |
13,152 |
12,324 |
12,356 |
<防災>
2020年度末の受注残高が2019年度を上回る水準であったこと、また、2021年度に民間企業向け大型防災資機材の受注があったことを要因として、当連結会計年度の売上は増加いたしました。2020年度からスタートした「帝国繊維(テイセン)2022」では、水害対策としての送排水ビジネスにおいて、初年度から国土交通省及び自治体などから、大量送排水システム(ハイドロサブシステム)の受注獲得に成功しております。セキュリティビジネスにおいては、コロナ禍により訪日外国人旅行客が大きく減少している状況下にあっても、ロスプリベンション対策やテロ対策の必要性は高まっており、当社グループでは爆物検知器やボディスキャナーなどの商材開発への取り組みを強化しており、事業基盤は着実に拡充しつつあります。
<繊維>
官公庁向け繊維資材の売上が減少したほか、コロナ禍により産業資材およびアパレル向け麻素材の売上が減少したことから、当連結会計年度における売上高は減少しました。
b.当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の財政状態を概観いたしますと、総資産は、現金及び預金が減少した一方で、売上債権や有形固定資産が増加したことから、前連結会計年度末対比58億1百万円増加し、742億8千万円となりました。
負債は、仕入債務が増加したことから、前連結会計年度末対比33億3千7百万円増加し、166億3千5百万円となりました。
純資産は、利益剰余金が増加したことから、前連結会計年度末対比24億6千4百万円増加し、576億4千5百万円となりました。この結果、自己資本比率は76.6%となりました。
c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性の分析
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
<キャッシュ・フロー> (百万円)
区分 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
営業活動 |
1,893 |
6,099 |
19 |
投資活動 |
1,482 |
△4,208 |
△4,615 |
財務活動 |
△1,124 |
△1,156 |
△197 |
計 |
2,251 |
734 |
△4,793 |
当連結会計年度における営業活動による資金収入は、1千9百万円となりましたが、これは利益計上の一方で、売上債権やたな卸資産が大きく増加したことによるものです。
投資活動による資金の支出は、46億1千5百万円となりましたが、主として防災車輌工場の新設およびホース生産新ラインの増設に伴う設備資金です。
財務活動による資金の支出は、1億9千7百万円となりましたが、これは配当金の支払いの一方で、短期借入金による収入があったことによるものです。
当社グループの運転資金及び投資資金は、営業活動によって生み出される自己資金を原資としております。
様々なリスクへの対処及び将来の事業展開への備えとして資金の確保により財務基盤の安定に努め、同時に収益に応じた配当を継続的に実施しつつ、中長期的な視点で時期を見極めた上で必要とされる投資活動を実施してまいります。
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